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福岡・九州のラッパーガイド──7県をたどる、親不孝通りから各地の作品まで【Rap Atlas】

Rap Atlas21 min read

福岡のヒップホップを語るとき、最初に出てくるのはクルーの名前でもレーベルの名前でもない。通りの名前だ。

福岡市天神北の親不孝通り。1990年代、この一本の通りにクラブとレコードショップが密集した。

DJが最新のヒップホップをかけ、ラッパーが腕を競う。それがイベントではなく日常だった。福岡のヒップホップの重要な土台の一つは、この通りで形成された。ただし同じ90年代初頭、熊本ではまむしMC’sが別の現場を動かしている──九州の起点は一つではない。

このページは、福岡を中心に、佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島の7県につながるラッパーを整理し、1990年代から2026年までを年表にしたものだ(一部に年内の開催予定を含む)。2026年9月22日にはFLAGGと泰尊 / TAISONGを代表枠に、ICARUSとAZUを注目枠に加え、公演日程と制作情報も更新した。掲載基準は末尾に記している。

誰が一番かは書かない。代表アーティストの並びは五十音順で、それ以上の意味はない。

そして現在。宗像市出身のRin音は福岡を拠点に全国的なヒットを出し、PEAVISは福岡にいたまま東京のレーベルから1stアルバムを出した。上京を前提としない道が、この地域では複数の実例として成立している。DADAは福岡のクルーNokey Boyzから活動を重ね、ツアーの最終日を地元Zepp Fukuokaに組んだ。

2026年6月には、地元と東京の大きな会場が九州勢の活動に並んだ。DADAのツアーは6月27日のZepp Fukuoka公演を最終日に据えた。長崎出身のKohjiyaは6月1日・2日に日本武道館公演を行い、11月には長崎のアリーナでの公演を予定している。

残る道と、出て戻る道。どちらも動いている。

このページの要点

福岡のヒップホップの重要な土台の一つは、1990年代に福岡市天神北の親不孝通りへクラブとレコードショップが密集し、DJとラッパーの現場が日常になったことにある。

対象は九州7県。1990年代から2026年までの年表と、代表11組・注目3組を掲載基準つきで収録している。

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本稿から見える「通り」と「ハコ」の役割

福岡は、一つのクルーや一つのレーベルが才能を吸い上げて全国へ送り出す、という一本道では説明しにくい。

重要な接点になってきたのは場所のほうだ。90年代の親不孝通りで人がつながり、そのつながりが今もハコに残っている。

1993年開業のSTAND-BOPでは、店を越えたイベントも開かれてきた。RYOTAが告知した2014年の21周年企画は、STAND-BOP、MUSK、VooDoo Loungeを行き来できる形式だった。クラブ同士をつなぐこの催しにも、親不孝通り周辺の人の往来が見える。

同じ親不孝通りエリアには2フロア構成のKieth Flackがあり、ライブとDJナイトを両立させながらローカルのリリースパーティー会場として機能している。

このAtlasで名古屋・東海を作ったときは、TOKONA-Xから¥ellow Bucksまでを一本の線で書けた。福岡ではそれができない。

SHITAKILI IXとOlive OilとRin音を無理に一本の系譜でつなごうとすると、どこかで嘘になる。本稿で確認できた作品と現場からは、人の系譜より場所の継続のほうがはっきり見える。

もうひとつ、福岡で目立つ特色がある。ラップとビート・ミュージックが早い段階から地続きだったという点だ。

福岡を拠点とするビートメイカーOlive Oilは、自身のプロジェクトOILWORKSを軸に国内ビート・シーンの中心人物となった。OILWORKSではデザイナーのPopy Oilがアートディレクションを担い、音とジャケットが同じ設計思想で作られている。

こうして福岡は「ラップの街」であると同時に「ビートの街」としても語られてきた。

抽象論ではない。実物がある。

BIG Iz’ MAFIAが2016年3月にAssault ABUSから出した4作目『FORCE』。ここにOlive Oilが、ZETTONと並んでトラックで参加している(Mikiki、2016年3月15日)。

親不孝通りのハードコア・クルーの中心人物と、ビート・シーンの中心人物が、同じ盤の上にいる。

一度きりの交差でもない。2018年6月6日、Olive OilはラッパーのWapperと組んだアルバム『Wheel Come Full Circle』を出している。

Wapperの籍は、親不孝ストリートを拠点とするクルーPRIDE MONSTER FAMILIA。ゲストにはKOJOE、MILES WORD、RITTOら福岡以外のラッパーも入った(Spincoaster、2018年4月13日)。

二人が名乗ったユニット名は092FC。092は福岡の市外局番だ。

別々のシーンとして扱われがちな者同士が、一枚の作品で交わった実例が福岡には複数ある。通りとハコで人が交わり、ラップとビートが分かれていない。本稿で確認できた範囲では、この二つが福岡の形を特徴づけている。

1990年代から2026年まで:福岡・九州の日本語ラップ年表

出典が確認できた出来事だけを並べた。

時期 出来事
1990年代 福岡市天神北の親不孝通りにクラブとレコードショップが集積し、DJとラッパーが日常的に交差する場が成立。1993年にSTAND-BOPが開業。店の2020年の発表では27年の活動を振り返っている
1990年代初頭 熊本でまむしMC’sがパイオニアとして活動。福岡以外にも独立した現場が存在したことを示す起点となる
2000年代 親不孝通りを拠点とするハードコア・クルーSHITAKILI IX(シタキリナイン)が1stアルバムをリリースし、日本語ラップ・シーンに衝撃を与える。中心人物のBIG Iz’ MAFIAは以後、長期にわたり活動を継続
2000年代後半〜2010年代 福岡拠点のOlive OilがOILWORKSを軸に国内ビート・シーンの中心人物となり、福岡をビート・ミュージックの発信地として位置づける
2014年11月26日 佐賀のmochieが『SOUL TO SOUL』を発表。FLAGGが参加し、bounce誌のレビューにも取り上げられる
2015年 福岡でYelladigosが結成される(PEAVIS、Rio Woodruff、BASHI THE BRIDGEらが在籍)
2018〜2019年 YelladigosのPEAVISがソロ活動を開始。2019年10月には東京の老舗インディーP-VINEから1stアルバム『Peace In Vase』を発表し、Gottz(KANDYTOWN)、田我流、Daichi Yamamoto、YonYon、MANONらが客演する
2020年 宗像市出身のRin音が「snow jam」でSpotify国内バイラルチャート1位を獲得し、同年の日本レコード大賞新人賞を受賞
2022年11月 GADOROが自身のレーベルFour Mud Arrowsの設立を発表
2022年11〜12月 泰尊 / TAISONGが、鹿児島で全4回のラップ講座を実施。かごしま文化情報センターが開催後の様子を記録
2023年5月11日 宮崎県高鍋町がGADOROを第7号ふるさと応援大使に委嘱(委嘱期間3年)
2023年12月5日 泰尊 / TAISONGが『薩摩キッド』を発表。翌年7月3日のLP化は別の発売日
2024年 長崎市麹屋町出身のKohjiyaが、ABEMAのオーディション『RAPSTAR 2024』で優勝。9月25日にはBIM「DNA feat. Kohjiya, PUNPEE」でTHE FIRST TAKEに登場する
2025年 Kohjiyaが5月16日、テレビ朝日『ミュージックステーション』に出演。披露したのはポカリスエットCM曲であるSTUTS「99 Steps feat. Kohjiya, Hana Hope」。12月3日には大分育ちのSkaaiが、自身のレーベルFR WIFIから1stアルバム『Gnarly』をリリース
2026年3月31日 福岡市早良区・野芥のクルーNokey BoyzのDADAが約5年ぶりのソロアルバム『DADA』(全28曲)を配信リリース
2026年6月 DADAのツアー日程は6月27日のZepp Fukuoka公演を最終日とした。同月1日・2日、Kohjiyaは東京・日本武道館でワンマン2DAYS『THE KIDS NEVER MET SHOW』を開催
2026年11月(予定) 長崎スタジアムシティ HAPPINESS ARENAで『BRIDGE 2026』を11月21日・22日に開催予定。DAY1はKohjiyaの凱旋ワンマン、DAY2はフェス形式

SHITAKILI IXの1stアルバム『黄面者演義』の発表年は、確定できなかった。

TuneCore Japanのアーティストページは、紹介文で「2001年に突如発表した1stALBUM」と書きながら、同じページのアルバム一覧では2003年としている。一つのページの中で食い違っている。タワーレコードの商品情報は2004年6月5日発売と記載している。

三つの年が並んでいる以上、本ページでは特定しない。年表の記述を「2000年代」に留めているのはそのためだ(2026年8月3日時点)。

代表アーティスト11組(五十音順・序列なし)

掲載基準は末尾に記載した2つのいずれかを満たすこと。並びは五十音順(アルファベット名義は読みで配列)であり、評価の順位ではない。

Olive Oil|福岡を拠点とするビートメイカー/プロデューサー。OILWORKSを主宰し、福岡をラップだけでなくビート・ミュージックの発信地として確立した。基準1(公式配信リリース+全国メディア掲載)+基準2

GADORO|1990年生まれ、宮崎県高鍋町出身。全国MCバトル「KING OF KINGS」を2016年・2017年と史上初めて2連覇。2017年1月に1stアルバム『四畳半』(日本コロムビア)を出した。2022年11月に自身のレーベルFour Mud Arrowsの設立を発表し(音楽ナタリー)、2023年5月11日には地元・高鍋町から第7号ふるさと応援大使を委嘱されている(委嘱期間3年)。基準1(配信リリース実績+全国メディア/TV出演・全国大会実績)

Kohjiya|2002年生まれ、長崎市麹屋町出身。地元の町名をそのまま名義にしている。所属はIsland State。2024年の『RAPSTAR 2024』優勝から全国区へ抜け、2025年5月の『ミュージックステーション』を経て、2026年6月には日本武道館2DAYSを踏んだ。基準1(配信リリース+オーディション優勝+全国TV出演+武道館公演)

SHITAKILI IX(シタキリナイン)/BIG Iz’ MAFIA|福岡・親不孝通りを象徴する9MCのハードコア・クルーと、その中心人物。1stアルバム『黄面者演義』(Assault Abus Records)で九州のハードコア・ラップを全国に認知させた。BIG Iz’ MAFIAはMikikiに「SHITAKILI IXの重鎮」と書かれる位置に長く立ち続けている。2016年の4作目『FORCE』ではOlive Oilを迎えた。基準2+基準1(配信リリース実績あり)

Skaai|1997年アメリカ生まれ、大分市育ち。大分上野丘高校から九州大学法学部へ進み、大学院で研究者を目指していた。MARY JOYの公式プロフィールによると、大学卒業から大学院入学へ移る2020年春にSoundCloudで楽曲を公開し始めた。2025年12月3日、自身のレーベルFR WIFIから1stアルバム『Gnarly』をリリースしている(WWDJAPAN)。基準1(配信リリース+全国メディア掲載+全国オーディション出場実績)

泰尊 / TAISONG|鹿児島のラッパー。『薩摩キッド』(2023年)は、OWLBEATS、MAHBIE、Michitaらが制作に参加したアルバムで、bounce誌のレビューでも取り上げられた。LIFENESS RECORDINGSの公式クレジットには佐賀のCoga Atsushiも並ぶ。まずはOWLBEATSが手がけた表題曲から聴いてみてほしい。基準1(公式配信作品と全国音楽メディアでの紹介)

地元での活動は音源にも閉じない。かごしま文化情報センターの開催レポートは、2022年11〜12月の全4回のラップ講座を記録している。参加者が日常の言葉を持ち寄り、曲にして声に出す。その活動も、鹿児島からラップを読む入口になる。

DADA|福岡市早良区・野芥のクルーNokey Boyz所属。2021年の「High School Drop Out」以降に活動を積み上げ、2026年3月31日に約5年ぶりのアルバム『DADA』(全28曲)を配信、同年6月27日のZepp Fukuoka公演をツアー最終日に組んだ(音楽ナタリー)。基準1(配信リリース+音楽ナタリー等の全国メディア掲載)

PEAVIS|福岡拠点。2015年結成のYelladigosを経て2018年からソロ。2019年10月の1stアルバム『Peace In Vase』は東京の老舗インディーP-VINEから。Gottz(KANDYTOWN)、田我流、Daichi Yamamoto、YonYon、MANONらが客演した。福岡にいながら東京のレーベルの棚に並ぶ、もう一つの出方だ。基準1(公式配信リリース+全国メディア掲載)

FLAGG|天草生まれ、佐賀県在住。EDITORS SAGAの本人インタビューでは、家族で転居を重ねた後に鳥栖へ落ち着き、駅裏のスケート仲間が流していたヒップホップに触れた経緯を語る。mochieとの制作は『SOUL TO SOUL』(2014年)の収録曲とbounce誌のレビューにも残る。

聴き始めるなら、Coga Atsushiとの共作『The sponge boyz (vol.1)』(2022年)。mochieとの2014年の参加作から進むなら、今度はFLAGGとCoga Atsushiの二人名義による12曲を聴ける。基準1(公式配信作品とbounce誌での言及)

まむしMC’s|熊本のヒップホップ黎明期を支えたパイオニア・グループ(タワーレコード)。90年代初頭から活動し、九州において福岡以外にも独立した現場が存在したことを示す起点にあたる(熊本の例)。基準2(地域シーンにおける歴史的役割が複数ソースで確認できる)

Rin音|福岡県宗像市出身。2025年の本人取材では、福岡を生活の拠点としている。2020年の「snow jam」でSpotify国内バイラルチャート1位(Real Sound)と日本レコード大賞新人賞を獲得した。福岡にいたまま全国的ヒットを成立させた先例であり、以後の「上京しない」選択の基準点になっている。基準1(配信リリース+チャート1位+レコード大賞新人賞)

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注目アーティスト3組(五十音順)

直近24ヶ月のリリース実績に加え、メディア掲載・大会・フェス出演のいずれかが確認できる者を掲載している。

AZU|福岡を拠点に、高校時代からNokey Boyzで活動してきたラッパー/シンガー(音楽ナタリー)。2026年3月14日配信の『as i am』は5曲入り。「Humming」ではDADAが歌い、hashimotoがプロデュースを担当。「This is so much better」には山岸竜之介のギターも入る。クルーでの関係と、曲ごとの制作陣の違いを確かめられる作品だ。

ICARUS|福岡在住で、Rin音との「Sweet Melon」共作や番組「FUKUOKA COLLECTIVE Remix」のMCを務める(所属事務所ROOFTOP)。2024年11月20日配信の「I NEVER DIE」では、EP『Re:Vibes』でも組んだ福岡のBeardと再び制作した(EVENING)。地元の共作者との関係をたどるなら、この曲と『Re:Vibes』を並べて聴ける。

CityBaby|福岡県出身。日本とタイの二拠点で活動し、日英タイの多言語で制作する。2022年のアルバム『No Time』以降、Boom Bapからトラップ/ドリル/レイジへ作風を広げた。2026年には「On Me」「Artist」(7月1日)を連続リリースし、同年に法人化している。経歴はHIPHOPCsの独占インタビューで本人が明言している。

「上京しない」が現実的な選択になった地域

福岡・九州を他地域と分けている最大の論点はここにある。

Rin音は福岡県宗像市出身で、2025年の本人取材でも福岡を拠点に活動していることが確認できる。「snow jam」は、2020年3月12〜18日集計のSpotify日本バイラル週間チャートで1位に立った。同じ年、第62回日本レコード大賞の新人賞を受賞した。

福岡に住んだまま、全国規模の数字が出る。それを結果で示した、この地域のはっきりした先例だ。

Rin音とICARUSが所属するROOFTOPは、東京・中目黒に所在地を置く音楽事務所だ。公式プロフィールはICARUSを福岡在住と紹介している。東京の会社に所属することと、生活や制作の拠点を東京へ移すことは、ここでは別の選択になっている。

DADAが示したのは、もう一つ別の到達点だ。福岡市早良区・野芥のクルーNokey Boyzから出て、2021年の「High School Drop Out」以降に活動を重ねた。2026年のツアーでは、6月27日のZepp Fukuoka公演を最終日に据えた。

DADAがツアーの締めくくりに選んだのは地元福岡だった。LiveFansの公演ページには日程と利用者投稿のセットリストがあるが、会場や主催者による事後報告とは区別している。販売結果・当日動員も本ページでは未確認である。

ただし、これを「上京組の負け」の話にすると読み違える。

同じ2026年6月、長崎出身のKohjiyaは東京・日本武道館で2DAYSを踏んでいる。6月1日と2日。中央のど真ん中だ。

そのKohjiyaが、11月21日に長崎スタジアムシティ HAPPINESS ARENAで凱旋ワンマンを予定している。『BRIDGE 2026』の公式案内では、21日がワンマンのDAY1、22日がフェス形式のDAY2。武道館公演を終えた後に、地元での2日間が発表された。

Kohjiyaは武道館公演の後に長崎のアリーナ公演を発表し、DADAはツアー最終日を福岡に組んだ。全国へ活動を広げることと、地元に公演の場を持つことは両立している。

住む場所より、レーベルを誰が持っているか

九州勢を並べていくと、住所より先に目につくことがある。出し先を自分で作っている。

Olive OilはOILWORKSを主宰し、GADOROは自身のレーベルFour Mud Arrowsから作品を届けている。SkaaiのFR WIFIでは、本人とuin、yuya saito、BadFriendsの4人が制作の中心を担う。WWDJAPANのインタビューで、Skaaiは『Gnarly』の制作・ミックスからライブまでを同じメンバーで進める形を説明している。

GADOROの場合、地元との関係はもっと踏み込んでいる。レーベル設立の翌年、2023年5月11日に高鍋町は彼を第7号のふるさと応援大使に委嘱した。委嘱期間は3年。ラップで名を上げた人物を、町が応援大使に委嘱した記録である(高鍋町)。

本人の説明はもっと素っ気ない。「地元を3日も離れるとホームシックになるし、都会で暮らしたら何を歌えばいいか分からない」(日商 Assist Biz)。

そこに東京側の受け皿も重なる。PEAVISは福岡にいたまま、2019年の1stアルバム『Peace In Vase』を東京のP-VINEから出している。自前で持つか、東京の棚を借りるか。九州の現在地は、この二つが並走している状態だ。

地元に暮らし続ける思いを、作品を届ける仕組みが支えている。GADOROは自身のレーベルから、PEAVISはP-VINEから作品を出した。九州に拠点を置くという選択の中にも、異なる出し方がある。

九州は「一つのシーン」ではない

ここは正確に書いておく必要がある。

九州7県を一つの系譜で説明することはできない。福岡の親不孝通り、熊本のまむしMC’s、長崎の公演やフェスに加え、宮崎のGADORO、大分育ちのSkaaiがいる。佐賀ではFLAGGとCoga Atsushiの共作があり、鹿児島では泰尊の作品制作と地域のラップ講座がある。それぞれの街との関わり方を分けて読む必要がある。

熊本では90年代初頭からまむしMC’sが動き、宮崎からはGADOROがMCバトル経由で出て、長崎ではKohjiyaが2024年のオーディション優勝から全国区に抜けた。

長崎の現場を代表するのが、長崎スタジアムシティ HAPPINESS ARENAで開かれる『BRIDGE』だ。ヒップホップ専門のイベントではなく、ラップとR&Bを主軸に置いた音楽フェスという編成になる。

2025年は11月23日に開催。出演はKohjiya、STUTS、LEX、KM、C.O.S.A.、Yo-Sea、SIRUP、Tete、3House。2026年は11月21日・22日の2日間を予定し、21日がKohjiyaのワンマン、22日がフェスとなる。

長崎出身のKohjiyaやTeteと、STUTS、LEX、SIRUPらが同じ出演者一覧に並ぶ。Teteには福岡でRIVER SIDE HOLLYWOODを結成した経歴もあり、出身地と活動してきた街は一対一ではない。

県境を越えた接点も作品に残っている。佐賀でFLAGGと共作するCoga Atsushiは、泰尊『薩摩キッド』のクレジットにも名を連ねる。まむしMC’sの九州各地での活動も含め、交流をすべて福岡経由と考える必要はない。福岡だけを唯一の中心とはみなせない。

福岡を九州の首都として描くと、実像から離れる。九州は中心が一つではない。

なお、本ページは沖縄県を含んでいない。Awich、唾奇、CHICO CARLITO、OZworldらは、沖縄として一本立てるだけの厚みがある。九州7県と混ぜると、どちらの実像もぼやける。だから意図的に分けた。

クルー・レーベル・ハコ・イベント

クルー

  • SHITAKILI IX(シタキリナイン)|福岡・天神/親不孝通りを拠点とした9MCのハードコア・クルー
  • Nokey Boyz|福岡市早良区・野芥を拠点とするクルー。DADA、AZU、taroらが在籍し、高校時代から活動
  • Yelladigos|2015年結成の福岡のヒップホップ・グループ。PEAVIS、Rio Woodruff、BASHI THE BRIDGEらが在籍

レーベル・音楽事務所

  • OILWORKS|Olive Oilが主宰する福岡のサウンド/ビジュアル・プロジェクト。デザイナーのPopy Oilがアートディレクションを担う
  • ROOFTOP|東京・中目黒の音楽事務所。Rin音と、福岡在住と紹介されるICARUSが所属
  • ISLAND STATE|長崎出身のKohjiyaが所属するレーベル(公式配信クレジットの表記に従う)
  • Four Mud Arrows|GADOROが2022年11月に設立を発表した自身のレーベル
  • FR WIFI|Skaaiの自主レーベル。2025年12月3日の1stアルバム『Gnarly』もここから出ている
  • P-VINE|東京の老舗インディー。福岡拠点のPEAVISが2019年に1stアルバムを出した先で、九州勢の全国流通の受け皿のひとつ

ハコ

  • 親不孝通り|福岡市天神北のストリート。厳密には施設ではなくエリアだが、福岡ヒップホップの土台が形成された場所として外せない
  • STAND-BOP|親不孝通りの1993年開業のクラブ。店の2020年の発表でも27年の活動を振り返っている
  • Kieth Flack|親不孝通りエリアの2フロア構成のクラブ。ローカルのリリースパーティー会場として機能
  • Zepp Fukuoka|福岡の中規模ライブハウス。地元アーティストの到達点の目安になっている

イベント

  • Music Circus Fukuoka|みずほPayPayドームのヒップホップ主軸のオールナイト・フェス。共催者の発表で¥ellow Bucksをヘッドライナーに掲げ、主催者の開催後レポートは2026年6月27日の開催と本人の出演を記録している
  • IRIE Music with JIM BEAM Summer Fest|天神中央公園で開催されてきた入場無料のフェス(2026年は7月24〜26日に開催)。レゲエ・ヒップホップ・沖縄民謡が同居する編成
  • BRIDGE|長崎スタジアムシティ HAPPINESS ARENAで毎年開かれる音楽フェス。ラップとR&Bが主軸。2025年は11月23日開催(Kohjiya、STUTS、LEX、KM、C.O.S.A.、Yo-Sea、SIRUP、Tete、3House)、2026年は11月21日・22日開催予定(DAY1はKohjiyaワンマン、DAY2はフェス)
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掲載基準と、掲載申請の窓口

Rap Atlasは完成品ではない。読者とシーン当事者の指摘で更新される、生きた地図として運用している。

代表アーティストの掲載基準(いずれかを満たすこと)

  1. 公式ストリーミング配信でのリリース実績があり、かつ全国メディア(専門メディア含む)での言及・出演・チャート実績が確認できる
  2. 地域シーンにおける歴史的役割が独立した複数ソースで確認できる

注目アーティストの掲載基準

直近24ヶ月のリリース実績に加え、メディア掲載・大会・フェス出演のいずれか1つ以上。

運用の原則

  • 序列をつけない。並びは活動開始順または五十音順の中立順とし、「誰が一番」は明記しない
  • 反社会的行為に関する未確認情報は書かない
  • 出身地の記載は本人公表または信頼できる報道ベースのみ。推測で地域に紐付けない
  • 掲載の可否・順序を金銭で変えない(PR掲載は明示分離)

掲載漏れ・事実誤認の指摘はお問い合わせ窓口から受け付けている。受け取ったあと、編集部は次の順で処理する。

  1. 一次資料と独立した複数ソースで事実を検証する
  2. 掲載基準に照らして可否を判定する
  3. 掲載する場合、地域データベース・日本語版・英語版の三点へ同時に反映する

反映内容は記事末尾の追補ノートと更新履歴に日付つきで記録する。指摘者のクレジットは本人が希望した場合のみ実名で記載する(匿名・記載不要も選べる)。

基準の全文はRap Atlas 掲載基準に掲載している。

追補(2026年9月22日):FLAGGと泰尊 / TAISONGを代表枠に追加し、佐賀と鹿児島を対象に含めた。ICARUSとAZUは、直近24か月の配信作品と媒体掲載を確認して注目枠へ追加。公演日程、制作情報、出典の対応も一部修正した。既存の歴史資料をすべて再検証した更新ではない。

主要参照

年代確認に使った事典項目

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よくある質問

この福岡・九州編は何を扱っていますか?
福岡を中心に佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島を含む九州7県のラップを扱います。親不孝通りのクラブやレコード店、各地の作品・制作のつながりを、1990年代から2026年まで紹介しています。年表には2026年内の開催予定も含みます。
どのアーティストを掲載していますか?
代表枠はOlive Oil、GADORO、Kohjiya、SHITAKILI IX/BIG Iz' MAFIA、Skaai、泰尊/TAISONG、DADA、PEAVIS、FLAGG、まむしMC's、Rin音の11組です。別にAZU、ICARUS、CityBabyの3組を注目枠で紹介しています。
どのレーベルやクルー、音楽事務所が登場しますか?
SHITAKILI IX、Nokey Boyz、Yelladigos、OILWORKS、ROOFTOP、ISLAND STATE、Four Mud Arrows、FR WIFI、P-VINEを取り上げています。所属、制作、流通など、それぞれの役割を本文で説明しています。
年表はいつから始まりますか?
1990年代の親不孝通りのクラブ・レコード店の集積と、熊本のまむしMC’sの活動から始まります。SHITAKILI IXの1stアルバム発表年は出典間で2001年・2003年・2004年と食い違うため、記事では一つの年に確定していません。
出典や未確認の情報はどこで確認できますか?
出典は本文中のリンクと末尾の「主要参照」で確認できます。資料間の食い違いや未確認の点は本文に明記しています。掲載基準と情報提供先は「掲載基準と、掲載申請の窓口」をご覧ください。