HIPHOPCs Global Hip-Hop, JP.

「Rap Atlas US:ニュージャージー」──Queen LatifahからCoi Lerayまで、8組の記録

Rap Atlas8 min read

ニューアークのQueen LatifahとRedman、イーストオレンジのNaughty by Nature、パターソンのFetty Wap。ニュージャージーのラップは、ひとつの町やひとつの音だけではたどれない。ここでは6つの町につながる8組を、作品とともに紹介する。

対象はニュージャージー州。ニューアークとジャージーシティも本編で扱う。下の地理表から人物へ進み、各項目の最後にある配信リンクで作品を聴ける。

スポンサーリンク

地域とアーティスト

地域との関係 アクト
Newark Queen Latifah、Redman
East Orange Naughty by Nature
South Orange Lauryn Hill、Fugees(Hillの育ちを通した関係)
Jersey City Joe Budden
Paterson Fetty Wap
Hackensack Coi Leray

8組と、聴き始める作品

Coi Leray

XXLの2019年の紹介が地元と記すのはハッケンサック。「Players」ではGrandmaster Flash & the Furious Fiveの「The Message」をサンプリングし、Hot Rap Songsで1位、Hot 100で自身初のトップ10となる9位へ進んだ(XXL、2023年)。古いレコードのフレーズを、次の世代のヒットへつないだ曲である。

2024年のグラミー賞では「Players」がBest Rap Performance、David Guetta、Anne-Marieとの「Baby Don’t Hurt Me」がBest Pop Dance Recordingの候補となった(Recording Academy)。ハッケンサックという地元情報は上記XXLの単独資料に基づく。

まず聴く:「Players」。サンプリングとチャートでの躍進を一曲からたどれる。

Fetty Wap

Pitchforkの2015年評XXLの2023年インタビューは、ともにパターソンとのつながりを記す。2015年に広く届いた「Trap Queen」は、2016年のグラミー賞でBest Rap PerformanceとBest Rap Songの候補となった(Recording Academy)。

セルフタイトルのデビュー作について、Pitchforkは大物客演や有名プロデューサーに頼らず、地元のRGF Productionsの仲間と作った感触が残ると評した。Rolling Stoneの評が注目したのは、加工された歌声と、逆境を越えていく人物の魅力だった。

まず聴く:「Trap Queen」。デビュー作と全国的なブレイクをつないだシングル。

Fugees

本稿でサウスオレンジとFugeesを結ぶのは、メンバーLauryn Hillの育った場所である。Rolling Stoneの1996年の現地取材は、同地の実家で過ごすHillと、ヒット作『The Score』をめぐるグループの活動を描く。

同記事がたどる音楽の背景は、ニュージャージーだけでなくハイチ、ジャマイカ、ブルックリンにも及ぶ。『The Score』は1997年のグラミー賞でBest Rap Albumを受賞し、「Killing Me Softly with His Song」もBest R&B Performance by a Duo or Group with Vocalを受賞した(Recording Academy)。

まず聴く:『The Score』。グループの作品からHillのソロ作へ進むと、同じ人物の二つの活動を聴き比べられる。

Joe Budden

ジャージーシティ出身と紹介するBillboardの2003年評は、デビュー作での気の利いた一行と鋭い比喩、昔のラップを思わせる作りを評価している。XXLの2007年インタビューも同地とのつながりを記し、『Mood Muzik』シリーズを続ける彼を、クラブとミックステープの両方の聴き手に届くMCとして描いた。

「Pump It Up」は2004年のグラミー賞Best Male Rap Solo Performanceの候補曲。2011年にはEminem『Recovery』への参加に伴うAlbum of the Year候補歴もある(Recording Academy)。

まず聴く:「Pump It Up」。2003年のデビュー期を知る入口になる。

Lauryn Hill

Rolling Stoneの2003年取材が記すのは、サウスオレンジでの育ち。ソロ作『The Miseducation of Lauryn Hill』(1998年)の制作では、ニュージャージーの自宅からジャマイカのTuff Gongスタジオへ渡った時期がある(Rolling Stone、1999年)。

アルバムはBillboard 200で1位を獲得し、1999年のグラミー賞でHillは一晩に5部門を受賞した。Recording Academyは同作を、Album of the Yearを初めて獲得したヒップホップ・アルバムと位置づけている(Recording Academy)。

まず聴く:『The Miseducation of Lauryn Hill』。Fugeesと個人名義、それぞれの作品を続けて聴くための一枚。

Naughty by Nature

Billboardの2008年記事Pitchforkの2023年評が結びつける町はイーストオレンジ。Pitchforkは『19 Naughty III』(1993年)を振り返り、商業的な成功とラップとしての説得力を両立させたグループと評した。

続く『Poverty’s Paradise』は、1996年のグラミー賞Best Rap Albumを受賞した(Recording Academy)。

まず聴く:『Poverty’s Paradise』。『19 Naughty III』へ遡れば、二つのアルバムを通して活動を追える。

Queen Latifah

Billboardの2018年記事はニューアークを出生地とし、XXLの2016年特集は同地での育ちに触れている。XXLは、その背景が作品にもたらすストリートの感覚と、親しみやすさを併せて論じた。

「U.N.I.T.Y.」は1995年のグラミー賞Best Rap Solo Performanceを受賞。Recording Academyの記録は、ラップに加えてジャズ、トラディショナル・ポップ分野での候補歴も示す(Recording Academy)。

まず聴く:「U.N.I.T.Y.」。分野をまたぐ活動のうち、ラップでの受賞につながった一曲。

Redman

Billboardの2001年評NPRの2014年インタビューは、Redmanをニューアーク出身と紹介する。『Dare Iz a Darkside』(1994年)は本人が制作の多くを担った一枚。Pitchforkの2026年評は、その閉じた、不穏な世界を東海岸のGファンクとして捉え直している。

グラミー候補となったのは、De La Soul「Oooh.」(2001年の授賞式)とChristina Aguilera「Dirrty」(2003年)への客演である(Recording Academy)。

まず聴く:『Dare Iz a Darkside』。本人のアルバムを聴いた後の客演なら、「Dirrty」へ。

年表:作品と活動の節目

  • 1994『Dare Iz a Darkside』をRedmanが発表。
  • 1995 — Queen Latifah「U.N.I.T.Y.」がグラミー賞を受賞。
  • 1996 — Naughty by Nature『Poverty’s Paradise』がBest Rap Albumを受賞。
  • 1997 — Fugeesが『The Score』と「Killing Me Softly with His Song」で2部門を受賞。
  • 1998–1999 — Lauryn Hillがソロ作を発表。翌年のグラミー賞で5部門を受賞。
  • 2015–2016 — Fetty Wap「Trap Queen」がブレイクし、翌年のグラミー賞で2部門の候補となる。
  • 2024 — Coi Lerayが2部門でグラミー候補に。

作品・受賞の出典は各アーティストの項目に掲載。

スポンサーリンク

このガイドの範囲と出典

掲載順は名前のアルファベット順で、順位ではない。公式配信でのリリースに加え、全国・専門媒体による報道や公式の受賞記録を掲載の根拠とした。出生地、育った場所、地元という表現は区別し、出典が示す範囲で記している。

掲載は地域の全アーティストを網羅するものではなく、受賞歴も選んだ節目を示す。グループとメンバー個人の受賞件数は合算しない。掲載枠は販売せず、広告や協賛によって選出・順序を変えない。訂正は根拠資料とともに受け付け、確認後に日英の本文と地域データへ反映する。匿名での連絡も可能。

調査の基礎は2026年9月15日までの資料。9月21日にRedmanの配信、FugeesとHillに関するRolling Stoneの本文、Queen LatifahのBillboard記事を再照合した。Fugeesの地域表記はHillの育ちとの関係を示す。

よくある質問

最初にどの作品を聴けばよい?
グループとソロを続けて聴くならFugees『The Score』からLauryn Hillへ。シングルから入るなら「U.N.I.T.Y.」「Trap Queen」「Players」が各項目から聴ける。
町の名前は全員の出生地?
出生地、育ち、報道上の地元は別の関係である。Fugeesのサウスオレンジとの関係はHillの育ちを指し、グループの結成地を示していない。
ニューヨークとの関係は?
州境を越えた音楽的なつながりはあるが、このガイドはニュージャージーの町を起点に読む構成としている。

関連ガイド・訂正

Rap Atlas US · 掲載基準 · 訂正・掲載情報を送る

コメントを残す