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【HIPHOPCs独占インタビュー】サウスにコネクションを築いた唯一の日本人ラッパー──Cz TIGERとレジェンドBun B(UGK)“Let’s Get To It”制作秘話

アメリカ南部、いわゆる“サウス”に足を踏み入れること。普通の感覚じゃ「行きたくない」と思う空気があると思う。そんな空気に、“HIPHOPファン”としてではなく“同じ目線で”飛び込みコネクションを築いた日本人が何人いるのか。 https://youtu.be/EydIfdtHODA?feature=shared 英語が通じると思ってる人は多いが実際、サウスでは「英語」ではなく「訛り(スラング)」が支配しているし、そもそも英語が通じないところもある。 他の地域なら、すでに多くのアジア系が暮らしていて、音楽カルチャーに参加する入り口は多いのも事実だろう。 https://youtu.be/NqtVgabWVkc?feature=shared King Von がATLのクラブ外で、Quando Rondo関係者との口論から銃撃戦になり、亡くなった抗争も如実に土地柄を表していると感じる。 Bun Bは、Pimp Cと共にUGKとして全米チャート1位を獲得 彼はUGK(Underground Kingz)という伝説的デュオの一人として、1980〜90年代からテキサス州ポートアーサーを拠点に、南部(サウス)のリアルを叩きつけるラップで地位を築いた。つまり、南部ヒップホップの土台を作り、Jay-Zすらもリスペクトを表明するリアルと知性を兼ね備えた南部の王者である https://youtu.be/Cgoqrgc_0cM?feature=shared https://youtu.be/CQL-IFEk6hw?feature=shared Bun B、まさにアンダーグラウンドのキング その意味の重みは関わった人間にしかわからないからこそ、Cz TIGERがBun Bやその他のラッパーと築いたとコネクションや信頼は、日本のヒップホップ史上でも極めて特殊で異質だと言える。多くのリスナーは気づいているのだろうか そしてそんなCz TIGERさんに今回は貴重なインタビューをさせていただいた。 インタビュー・Bun B(UGK)との出会いについて Cook:Bun B(UGK)といえば真のレジェンドですよね。出会いについて是非教えて頂きたいです!どんなエネルギーを感じましたか? Cz TIGER : 今までコラボした海外アーティストの人とは制作する曲の意見交換とかVibesを会うなり、どうしても会えないならビデオ通話で制作を進めてきました。 Bun B ( UGK ) に限っては当時中学の頃から聴いていてかなりのファンだったので例外で、僕のことをデビューする前から応援してくれてた DJ 3cho から電話が来て...

DJ KORINが語る「ARMAND」誕生の背景 Jetlag×T.U.G.を結んだビート、その先にあるアルバム像

兵庫県出身、大阪を拠点に活動するDJ/プロデューサー/ビートメーカー、DJ KORIN。一昨日リリースされた最新曲「ARMAND」は、Jetlag、T.U.G.という二人のラッパーを迎えた一曲であり、近づくアルバムの先行シングルとして位置づけられている。 注目したいのは、この曲が「誰かのアイデアをビートに落とし込んだ」タイプの制作ではないという点だ。出発点はJetlagからのひと声、そこに乗ったのはKORIN自身の「この2人ならこう乗ってほしい」という想像力であり、最終的に形になったのはT.U.G.を含む参加ラッパーの熱量だった。つまり「ARMAND」という曲は、信頼と想像力のうえに成り立ったビートとして語るのが最もフェアである。 HIPHOPCsでは今回、その「ARMAND」がどう生まれ、どのようなアルバムへとつながっていくのかを、DJ KORIN本人に訊いた。ビートメーカーとしての核となる美学と、アーティスト同士の距離感、そして作品の温度が見えてくる内容になっている。 DJ KORINというビートメーカー ── 哀愁とペインを軸にする大阪の才能 まずは本人のプロフィールから聞いた。 まずはじめに、DJ KORINさんご自身について、簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか。 DJ KORINです。2000年兵庫県出身で、大阪を拠点にクラブDJ、プロデューサー、ビートメーカーとして活動しています。 2000年生まれ、関西拠点。クラブDJとしての現場感とビートメイクの両輪を持つタイプのアーティストであり、後述する「哀愁漂うペイン系」というワードは、そのまま彼の音楽的IDとして読める。 「ARMAND」は、得意な質感と2人の熱が噛み合った一曲 リリースされた「ARMAND」は、DJ KORINさんにとってどのような位置づけの作品なのでしょうか。 今回の「ARMAND」は、アルバムの先行シングルのひとつです。自分がビートを作る時に得意としている、哀愁漂うペイン系の質感がしっかり出ている曲でもあって、そこにJetlag君とT.U.G.君の熱いリリックが乗った、自分の中でもすごく思い入れのある一曲になっています。 単に先行で出した曲というより、自分のビートの色と、2人のラップの強さがしっかり噛み合った曲という意味で、すごく大事な作品ですね。 ここで一度押さえておきたいのは、「先行シングル」という言葉の扱いである。一般にそれは「アルバムの顔として戦略的に切り出された一曲」を指すが、DJ KORINが語る「ARMAND」は少し違う。本人の言葉を借りれば「ビートの色と2人のラップの強さが噛み合った曲」であり、アルバムの顔というよりも、作品全体の質感を一番素直に示すサンプルとして機能している一曲だ。まずはその音を確認してほしい <!-- Spotify例: --> 出発点は、Jetlagからのひと声だった 「ARMAND」が生まれたきっかけや、制作の出発点についてお聞かせいただけますでしょうか。 実は、Jetlag君が「T.U.G.君と曲を作りたいから、ビート作ってや」と言ってくれたところから始まりました。そこがこの曲の出発点ですね。 そこから自分の中で、「この2人が乗るなら、どういうビートが一番ハマるか」を考えていって、結果的に自分の得意な哀愁のあるペイン系のビートにたどり着きました。最初のきっかけはシンプルなんですけど、そこからイメージを膨らませていった感じです。 https://www.instagram.com/reel/DWd0X7fgZDT/?igsh=MTBid2ZweGV5bzJtcA== 制作の発端が「ラッパー側からのオーダー」であった点は、曲の性格を読む上で無視できない。ビートを作る側が先に世界観を決め、そこにラッパーが合わせに行く構図ではなく、Jetlagが「T.U.G.と組みたい」と持ちかけ、その化学反応を最大化するためにビートが後から設計されたという順序である。KORINの「哀愁漂うペイン系」が選ばれたのは、2人の声と言葉の熱をもっとも強く受け止められる器だったからこそ、と考えると筋が通る。 Q. 今作にはJetlagさん、T.U.G.さんが参加されていますが、この組み合わせに込めた意図や意味があれば教えてください。 この組み合わせ自体は、さっき言った通りJetlag君の「T.U.G.君と曲を作りたい」という流れから始まっているんですけど、自分としてもすごく意味のある並びだと思っています。 この2人には、こういう空気感の上でラップしてほしいな、というイメージが自分の中にあったので、その想像をビートとして形にしたところはありました。実際に出来上がったものを聴いても、2人それぞれの熱量や言葉の重さがしっかり出ていて、この組み合わせだからこそ生まれた曲になったと思います。 「想像をビートとして形にした」という表現に、この曲の制作姿勢が凝縮されている。KORINは2人をスタジオで座らせてから考えたのではなく、ビートの段階ですでに2人がマイクの前に立っている風景を描いていた。その想像力の解像度こそが、ペイン系という質感の選択理由であり、結果的に「この組み合わせだから生まれた曲」という手応えに直結している。 “派手さ”ではなく、“痛みが残る空気感”を優先する . 「ARMAND」を制作される中で、特に意識されたことや、大切にされていた空気感があればぜひお聞きしたいです。 この作品は、2人が作り上げてくれたものだと思っています。自分はビート以外の部分で大きく関与したわけではないんですけど、そのぶん、ビートを作る段階では「この2人にはこんなふうに乗ってほしいな」という想像をすごく大事にしていました。 そこで意識していたのは、派手さだけじゃなくて、哀愁とか痛みみたいなものがちゃんと残る空気感です。いわゆるペイン系のビートの良さって、ただ暗いとかエモいとかではなくて、その上に乗る言葉や感情がより強く届くところにあると思うので、そこは特に大切にしていました。 ここはこのインタビューでもっとも重要なパートだと言っていい。「ペイン系=暗い、エモい」で消費されがちなジャンル観に対して、KORINは「その上に乗る言葉や感情がより強く届くための器」として定義し直している。言い換えれば、ビート自体が主役として泣くのではなく、ラッパーの言葉を最後のひと押しで突き刺すための余白を確保するビート、ということだ。「ARMAND」を聴くときに最初に注目すべきは、この「余白」の設計である。 DJ KORINさんにとって、T.U.G.さんはどのような存在でしょうか。今回の作品を通して感じたことも含めてお聞かせいただけましたら幸いです。 T.U.G.君は、やっぱり言葉や熱量に説得力のあるアーティストだと思っています。今回の曲でも、その存在感はしっかり出ていたし、自分がイメージしていた以上の形で応えてくれた感覚がありました。 ビートを作る側としても、「この人ならこういう質感にどう向き合ってくれるか」が想像できるアーティストってすごく大きいんですけど、T.U.G.君はまさにそういう存在だと思います。今回の作品を通して、その強さを改めて感じました。 「T.U.Gなら、この質感にどう向き合ってくれるかが想像できる」──この一言は、KORINが日頃からラッパーの声や言葉の持ち方まで含めてビートを設計していることを示唆する。ビートメイカーにとって「想像できる相手」がいることは、単なる制作効率の話ではない。自分の音の出口を確信できる関係があるということであり、それは作品の強度に直結する。 先行シングル「ARMAND」が示す、アルバムの輪郭 今作が先行シングルとなっているアルバムについて、差し支えない範囲でどのような作品になりそうか教えていただけますでしょうか。 まだ詳しくは言えない部分もあるんですけど、自分の中で大事にしている音の質感や空気感がしっかり詰まった作品になると思います。「ARMAND」はその中のひとつであって、アルバム全体としても、自分らしいビートの世界観を感じてもらえる内容になりそうです。 先行でこの曲を出したのも、アルバムの空気をひとつ象徴する曲だと思っているからです。 そのアルバムには、どのような思いやテーマを込めていらっしゃるのか、お聞かせいただけますと幸いです。 自分の中では、ただ曲を並べるというより、今の自分が鳴らしたい音や空気感をちゃんと形にしたいという思いが強いです。特に、自分が得意としている哀愁や痛み、熱量みたいなものを、ひとつの作品としてまとめて聴いてもらえるようなアルバムにしたいと思っています。 ビートメーカーとしての自分の色を、よりはっきり見せられる作品にしたいですね。 この2つの回答を並べると、アルバムの性格がかなり明瞭になる。コンピレーション的に客演を並べていく集合体ではなく、「DJ KORINというビートメーカーの輪郭をはっきり見せること」そのものが目的のプロジェクトである、ということだ。「ARMAND」はそのうち、2人のラッパーを迎えた形でペイン系という軸を最も素直に示したサンプル ──という位置づけになる。裏を返せば、アルバムには別の角度から同じ美学を照射する曲が控えていると読むのが自然だ。 今回のアルバムには、どのようなアーティストの方々が関わっていらっしゃるのでしょうか。可能な範囲で教えていただけましたら幸いです。 現時点で詳しくはまだ言えないんですけど、「ARMAND」に参加しているJetlag君、T.U.G.君のように、それぞれちゃんと個性と熱量を持ったアーティストたちが関わってくれています。アルバム全体としても、ただ名前が並ぶというより、自分のビートとしっかり化学反応を起こしてくれる人たちが集まっていると思います。 「名前が並ぶ」ではなく「化学反応を起こす」という言い回しに、前述した制作姿勢がそのまま反映されている。参加アーティストの選定基準はネームバリューではなく、KORINの哀愁/ペインという器に意味のある温度で向き合えるかどうか。アルバムの全貌が明らかになった際、この発言は答え合わせの材料として効いてくるはずだ。 「リスナーに届く熱」を信じて作った作品 最後に、「ARMAND」そしてアルバムを通して、リスナーの方々に最も伝えたいことがございましたら、お聞かせください。 まずは純粋に曲を聴いてほしいです。その中で、ビートの空気感だったり、Jetlag君とT.U.G.君の言葉の熱だったり、自分たちが込めたものを感じてもらえたらうれしいですね。 「ARMAND」は、自分の得意なビートの質感と、2人のラップの強さがしっかり重なった曲なので、そこを受け取ってもらえたらと思います。そしてアルバムでも、もっといろんな角度から自分の音を聴いてもらえたらうれしいです。 作品の起点にあったのは、信頼と想像力だった 改めて整理するとこうなる。「ARMAND」は、Jetlagのひと声で始まり、DJ KORINの「こう乗ってほしい」という想像力を設計図として、T.U.G.を含む参加ラッパーの表現で完成した。単なるコラボレーションではなく、互いの熱量と信頼関係のうえに成り立った制作である。 「派手さだけではなく、痛みが残る空気感」という本人の言葉通り、ペイン系ビートの良さをラッパーの言葉を届けるための器として設計し切ったこの一曲は、アルバムの顔というより、アルバムの核にある美学を最も素直に示したサンプルとして機能している。そしてその核は、これから続くアルバムで別の角度からも照射されるはずだ。DJ KORINというビートメーカーの輪郭は、「ARMAND」の次にこそ、より鮮明になる。 「ARMAND」を聴く https://youtu.be/QMnWTDr0BQ0?si=6ktNkrs9wqy8XFjN ▶ Spotifyで聴く DJ KORIN ▶ Instagram

【HIPHOPCs独占インタビュー】DJ2high第2弾!TLCの故Lisa”Left Eye”Lopezとの友情と思ひ出を初告白

DJ 2high。西海岸で活躍する、唯一無二の日本人プロデューサー。且つTha Dogg Pound(ザ・ドッグパウンド)唯一の日本人メンバー。レジェンドDJ。 そんな彼が、90年代を一世風靡した伝説のトリオ、TLCのラップを担当していたLeft Eye(レフトアイ)ことLisa Lopez(リサ・ロペス)と仲良しだったという噂を聞きつけた筆者は、その真相を確かめるべく2high氏に再度直撃インタビューを試みた。 前回の記事の通り、メルローズ・アベニューのMarathon Burgerで腹ごしらえした後、その裏にあるポインセチア・レクレーションセンターに場所を移し、話を伺った。 https://hiphopnewscs.jp/2026/02/17/dj2high-la-hiphop-spots-marathon-burger-biggie-death-row/ SEI:2highさん、今日もお時間いただきありがとうございます。前回は2Highさんの生い立ちとか、音楽活動とかそういう話を聞かせていただいたんですけど、 今日はちょっと小耳に挟んだんですけど、かの伝説的ガールズトリオグループ、TLCとかともなんか過去に繋がっていらっしゃったとかで、是非お話をお聞かせ頂きたいなと思いまして。今回は質問状とかないんですけど、フリースタイルでお話して頂けたらなと思っています。TLCの誰と仲良かったんですか? 2high:Left Eye(レフトアイ)です。 SEI:彼女、2002年の4月25日に事故で亡くなっていますよね? 2high:出会ったのは1999年、『No Scrubs』が出た後くらいですね。 https://youtu.be/FrLequ6dUdM?si=056RjT2bsc7atKSs SEI:え、『No Scrubs』?!あの時のレフトアイ、めっちゃ可愛かったんですが(動画参照)。どこで知り合ったんですか? 日本?アメリカですか? 2high:日本です。どうやって知り合ったかっていったら、もともとはシャヒードっていう僕の友達のデザイナーの人がいて、 彼がTLCの『CrazySexyCool』の絵を描いたデザイナーさんです。 SEI: 私、そのイラストのTシャツ持ってるんですけど。あの3人の絵ですよね。めっちゃ好きなイラストです。シャヒードさんにさっき2highさん電話していましたよね? 2high: そう。それを描いたのが シャヒード・アリー。俺はシャーって呼んでるんだけど。 SEI:彼はどこにいらっしゃるんですか? 2high:今はニューヨークです。ちょっと前までLAにいたんだけど。シャーと出会ったのは日本。 98年に僕がKSRって会社を作った時に、その時に雇ってた外国人が仲良かったらしくて。確か彼は当時クラブ「ハーレム」で遊んでたの。その当時シャーは固定の宿がなかったので日本滞在時は僕の家に滞在させていたの。 SEI:あ、そういう経緯だったんですね。へー、なるほど。 2high:で、シャーがアメリカ帰る時に、成田まで送って。その時に、「絶対レフトアイ紹介するから」って言われて。そんなこと言ってたけど、 気にもしてなくて。実際に紹介する人って少ないし。だから僕、そこの部分は気にしていなくて。でも、シャーとのコミュニケーションがすごく好きだったから、またシャー会いたいなと思ってたんだよね。 だけど、ここからね、2ヶ月、3ヶ月ぐらい経って、俺とレゲエのCorn Head(コーンヘッド)と一緒に横浜の中央市場にある『さがみや』っていう、子供の頃から行きつけの寿司屋さんでご飯食ってたら、知らない090の番号から電話かかってきて。誰だこれと思って電話出たんですよ。そしたら、リサって言うんですよ。「Who?Who?(誰?誰?)」って聞いたら「LEFTEYE FOOL(レフトアイよ、バーカ)」って言われて「WTF?(なんだ?)」って? SEI:えーホントですか? うわー、やばいやばいやばい。 2high:「何してんの?」って聞いたら「今日本にいるんだけど、ヒマ」って返事で。 SEI:えっ!?レフトアイ日本にいたんですか? 2high:そう、「今日本にいるんだけど I'm bored(退屈してるんだ)」って。だから自分は「Do you have anybody...

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2026年4月第1週:週刊ヒップホップニュース |Kanye『BULLY』SoFi 7万人、J. Cole中国バスケ参戦、POP YOURS 2026開幕

Ye、J. Cole、POP YOURS。4つの動きを通して、2026年4月第1週のヒップホップを「越境」と「清算」という視点から整理する週刊ニュース。

スーパートラップとは何か──”壊れた音”が快感に変わる時代のヒップホップ

最近、「スーパートラップ」という言葉を耳にする機会が増えてきた。 街中で流れてくる音、SNSのコメント、友人との何気ない会話──その中で、断片的にこの言葉が現れる。 だが、それが何を指しているのか、明確に説明できる人は多くないはずだ。 そして実際に音を聴いてみても、「何かが違う」「異様に気持ちいい」「でも説明できない」という感覚だけが残る。 その違和感の正体こそが、いまヒップホップの中で起きている変化である。 それは単なる流行ではない。 それは「何が気持ちいい音なのか」という基準そのものの変化である。 綺麗な音が正義だった時代は、静かに終わりつつある。声は割れ、ビートは歪み、ミックスはあえて破綻させられる。それが「ミス」ではなく「表現」として成立する。むしろ、それによってしか到達できない快感がある──そういう領域が、いま確実に広がっている。 本稿では、その変化を「スーパートラップ(Super Trap)」という概念で定義する。 スーパートラップとは、"壊れた音が快感になる"トラップの進化形である。 日本語でこのサブジャンルを体系的に整理した記事は、少なくとも筆者の観測範囲では見当たらない。だからこそ、ここで書く。 スーパートラップとは何か─定義 まず、定義を説明しよう。。 スーパートラップとは、重く歪んだ808、壊れたように加工されたボーカル、変則的で癖の強いビート、そして異世界的な空間演出によって成立する、トラップの過激化・実験化された進化形である。 それは"強いトラップ"ではない。"壊れた音が快感になるトラップ"である。 通常のトラップは「ノらせる」ことを目的とする。重低音のキック、規則的なハイハット、気持ちいいフック。リスナーは身体を動かすことで音楽に参加する。 スーパートラップはその前提を崩す。 リスナーは「ノる」のではなく、「飲み込まれる」。808の圧、空間の歪み、壊れた声──そのすべてが同時に作用することで、知覚そのものが書き換えられる体験。それがスーパートラップの本質である。 一文で言い切るならこうだ。スーパートラップは、トラップの"スーパー版"ではなく、トラップを異世界化・過激化・実験化したサウンドである。 起源──Travisが入口を開き、Cartiがその扉を蹴破った スーパートラップは、ある日突然誰かが発明したものではない。トラップの中で静かに進行していた変化が、ある時点で臨界に達した結果として生まれたものである。 その変化を理解するには、二人のアーティストから始める必要がある。 美学の起点──Travis Scott Travis Scottの功績は、トラップを「聴く音楽」から「入る音楽」に変えたことにある。 『Rodeo』(2015年)。サイケデリックなシンセ、ディストーションされたボーカル、没入感のあるプロダクション。このアルバムはトラップの定番として広く認知されているが、その実態は従来のトラップとは決定的に異なっていた。Scottはトラップに「空間」を持ち込んだ。リバーブ、シネマティックな演出、声の加工。それによって、リスナーは楽曲を「外側から聴く」のではなく「内側に入る」体験をするようになった。 『Astroworld』(2018年)ではこの方向性がさらに深化し、楽曲ごとに異なる音響空間を構築する手法が確立された。トラップが「ノるための構造」から「体験のための構造」に変わった瞬間だったといえる。 ここにスーパートラップの土台がある。過剰なリバーブによる空間支配、声を「意味」ではなく「音響」として扱う感覚、シネマティックな世界観──これらはすべて、Scottが最初に入口を開いた領域である。 表現の拡張──Playboi Carti Scottが開いた扉を、蹴破ったのがPlayboi Cartiである。 『Whole Lotta Red』(2020年)。F1LTHYらWorking on Dyingクルーによる不協和なプロダクションの上で、Cartiのボーカルはほとんど意味を持たない音として機能した。叫び、つぶやき、唸り。言語としてのラップではなく、音響現象としてのボーカル。 Cartiが押し広げたのは、「声は何を言っているかではなく、どう響くかが重要だ」という認識である。Scottが空間を変えたとすれば、Cartiはその空間の中で「声そのものを壊した」。人格を超え、人間性を超え、純粋な音響現象としてのボーカルが成立することを証明した。 Scottが土台を作り、Cartiがそれを極端な領域まで拡張した。この二段の変化によって、「すべてを壊すことで成立する音楽」──スーパートラップの地盤が完成した。 輪郭の整理──DX / HiTek、そしてプロデューサー経済圏 ScottとCartiによってすでに生まれつつあったこの感覚に、名称とフレームワークを与えたのがプロデューサー側の動きである。 2018年前後、プロデューサーのDxvid808(DX)がGrim Brxzy、JodyBとともに、トラップにグリッチやダーク・エレクトロニックの要素を融合させた新しいサウンドを「Super Trap」と呼び始めたとされる。3人は当初PrxjectSin, LLCとして活動し、2023年12月にHiTekへリブランドしている。 彼らの役割は「発明者」というよりも、すでに空気中に漂っていた美学を結晶化し、ドラムキットの販売、YouTubeのtype beat、TikTokのハッシュタグを通じて流通させた「整理者」として捉える方が正確だろう。ジャンルの「顔」として広く知られるようになったReddaは、スーパートラップにポピュラーな要素を加えレイジ寄りに簡素化し、Grim Brxzyはサウンドの密度と複雑さを最大化する方向へ進んだ。この二極分化が、スーパートラップの音像に幅をもたらしている。 この成立過程自体が、従来のヒップホップとは異質である。T.I.が『Trap Muzik』でトラップを命名し、Migosがトリプレットフロウで定義したように、これまでのサブジャンルはラッパーの作品を通じて形成されてきた。スーパートラップはそうではない。プロデューサー経済圏の中で名付けられ、ビートメイカーが輪郭を与えた。この構造そのものが、2020年代のヒップホップの地殻変動を映し出している。 スーパートラップを定義する5つの軸 スーパートラップを支える要素は、5つの軸に整理できる。 重要なのは、これらが個別に存在するのではなく、すべてが同時に作用することで「壊れた音が成立する」状態を生んでいる点である。どれか一つが欠ければ、それは通常のトラップか、レイジか、トラップメタルか、別の何かになる。 軸① 低音の凶器化──地面が揺れるレベルの808 スーパートラップの808は、通常のトラップのそれとは別物である。 ただ重いのではない。歪んでいる。ディストーションがかかり、飽和し、時にクリッピングする。サブベースは身体を通り抜けるのではなく、身体を掴む。カスタム808と呼ばれる独自に加工された低音が標準的に使用され、テンポは概ね150BPM前後に設定されることが多い。 ──808は土台ではなく凶器になる。 軸② ビートの変則性──ノれない、けどハマる スーパートラップにおいて、ビートは安定しない。 キックやスネアは不規則に配置され、ドロップはズレ、時にビート自体が歪む。ハイハットはビートの上を絶えず走り回るように複雑なパターンを刻み、グリッチ処理が施されたパーカッションが違和感を生む。 それでも楽曲として成立するのは、もはや「ノるための音楽」ではないからだ。リスナーはリズムに身体を預けるのではなく、違和感そのものに引き込まれる。 ──ノるのではなく、違和感でハマらせる。 軸③ ボーカルの破壊的加工──声を音響現象にする スーパートラップの中心にあるのは、ボーカルの扱いの根本的な変化である。 ディストーション、クリッピング、過激なオートチューン、極端なピッチシフト、シャウト。声はあえて割られ、歪まされ、人間の枠を超えさせられる。 ここで重要なのは、オートチューンの使い方の質的な違いである。T-Pain以降、オートチューンは「歌を上手く聞かせるための道具」として普及した。スーパートラップにおけるオートチューンは真逆だ。声を壊すために使う。人間らしさを剥ぎ取るために使う。 その結果、リスナーは歌詞の意味より先に「衝撃」として声を受け取る。ボーカルは言語ではなく音圧として機能し、人格ではなく音響現象として作用する。この非人間的な響きが、スーパートラップが「Alien Trap」とも呼ばれる所以であり、特有の異様な魅力を生んでいる。 ──声が人格ではなく、音響現象になる。 軸④ 異世界的な空間演出──音の中に"入れられる" リバーブも常識的な範囲を大きく超えて使用される。 通常のミックスにおいて、リバーブは「音を空間に配置する」ための道具である。スーパートラップでは、声が空間に溶けるのではなく、空間そのものを覆い尽くす。リスナーは音の外側から聴くのではなく、音の内側に「入れられる」。 ダーク、浮遊感、シネマティック、エイリアン的な空気。これらの音響的世界観が、スーパートラップの「体験」を決定づける。単に曲を聴いているのではなく、別の空間に放り込まれている──そういう感覚を設計するのが、スーパートラップの空間演出である。 ──音を聴くのではなく、音の中に入れられる。 軸⑤ 快感の質の変化──"異常なのに気持ちいい" 最後にして最も本質的な軸がこれである。 従来の音楽は「聴きやすい」ことが快感の条件だった。クリアなミックス、適切なダイナミクス、綺麗な音。しかしスーパートラップでは、その前提そのものが崩れる。 歪み、飽和、破綻。これらはミスではなく、表現として選ばれている。ボーカルだけでなくトラック全体が壊れている状態──それでも成立するどころか、それによってしか到達できない快感がある。 ──異常なのに、気持ちいい。 トラップの系譜──スーパートラップはどこに位置するのか スーパートラップを正確に理解するには、トラップの系譜の中に配置する必要がある。 黎明期──アトランタ、2000年代前半 トラップの起点は2000年代前半のアトランタにある。T.I.の『Trap...

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POP YOURS 2026とItaqの違和感──「HIPHOP YOURS」から続く、外側からの声を読み解く

POP YOURS 2026が「多様性の制度化」を完了させた直後、ラッパーのItaqは「呼び方を分けたほうがいい」と静かに違和感を表明した。本稿では、この発言を孤立した愚痴ではなく、ECDの「MASS対CORE」やEric.B.Jr.の「HIPHOP YOURS」から続く「外側」の闘争の最新形として位置づける。ポップカルチャーとしてのヒップホップが確立した今、同じ名前の中で複数の中心を同時に描き出すことの重要性を論じる批評。

2026年4月第2週:今週のヒップホップニュース|Afrika Bambaataa死去──功績と罪を抱えた創始者の死が突きつけたもの

Afrika Bambaataa死去──功績と罪を同時に抱えた創始者の遺産。ヒップホップが何を記憶し、何を拒絶し、何を次の標準として認めるのか。国家によるKanye Westへの制裁や、POP YOURSが証明した国内シーンの成熟など、基準そのものが大きく揺れ動いた2026年4月第2週を読み解く。

Afrika Bambaataa(アフリカ・バンバータ)死去、68歳|「Planet Rock」の創始者、前立腺がんで他界——功績と性的虐待告発のすべて【AP一次取材】

via @Afrika Bambaataa Official instagram Afrika Bambaataa(アフリカ・バンバータ)が2026年4月9日、ペンシルベニア州で死去した。68歳。死因は前立腺がんで、本人の弁護士がAP通信に明かした。「Planet Rock」とUniversal Zulu Nationでヒップホップ文化の土台を築いた人物であると同時に、2016年以降は複数の性的虐待告発の中心にもいた創始者である。 📌 一次ソース表示|本記事の死亡情報は、Bambaataaの代理人弁護士がAP通信に直接明かした内容を一次ソースとしています。年齢・死因・死去場所はすべてAP発表準拠(68歳/前立腺がん/ペンシルベニア州)。日本語他媒体で散見される「67歳」表記は初動段階のTMZ系報道に基づくもので、本記事ではAPに従い68歳を採用します。性的虐待告発の経緯については、AP通信、ABC7 New York、およびUniversal Zulu Nationが2016年に発表した公開謝罪書簡を参照しています。 本記事は速報の追認ではない。「創始者の功績」と「告発の重さ」を、どちらも値引きせずに同時に置く——その作業を一本の記事として引き受けるためのものだ。 この記事でわかること 死去の確定情報:2026年4月9日、ペンシルベニア州、68歳、前立腺がん(AP通信/本人弁護士発表) 年齢表記が67/68で割れている理由と、本記事がAP準拠で68歳を採る根拠 功績側:「Planet Rock」(1982)、Universal Zulu Nation、808、Kool Herc/Grandmaster Flashと並ぶ三大創始者という位置 告発側:2016年Ronald Savageの告発、複数男性の続報、Zulu Nation自身による謝罪書簡、民事訴訟の欠席判決まで HIPHOPCsの立場:「英雄か断罪か」の二択を拒否し、両方を同じ重みで併記する理由 基本情報(早見表) 本名:Lance Taylor(ランス・テイラー) 出身:ニューヨーク・ブロンクス(ジャマイカ/バルバドス系) 死去:2026年4月9日/ペンシルベニア州 享年:68歳(AP通信報道) 死因:前立腺がん(本人弁護士がAPに発表) 代表曲:「Planet Rock」(1982)、「Looking for...

コラム

なぜ2Pacは史上最高のラッパーと呼ばれているのか?レジェンドの人生大解説!【マキャベリ編】

マキャベリとは、刑務所の中で生まれ、Death Row時代に完成し、『The Don Killuminati』という作品の中で表現された人格であり、2パックの哲学そのものだった。16世紀イタリアの政治思想家マキャヴェッリの『君主論』に影響を受けた彼が、裏切り渦巻くヒップホップ業界で「生き残るための思考」として辿り着いた最終形態を、制作背景と楽曲分析から紐解く

Doja Catが境界性パーソナリティ障害を告白──「ずっと自分に嘘をついてきた」、8年の治療と”正直になる”ことの意味

Doja Catが境界性パーソナリティ障害(BPD)の診断を公表。「子どもの頃から全部大丈夫なふりをしてきた。それが追いかけてきた」。Chappell Roan擁護を起点に語られた8年の治療と、ヒップホップにおけるメンタルヘルスの現在地。

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