HIPHOPCs Global Hip-Hop, JP.

HPCIとは何か──制作クレジットを4軸で読むHIPHOPCs独自プロファイル

HPCI(HIPHOPCs Production Constellation Index)は、アルバムの作詞・作曲・プロデュースのクレジット分布をC・R・D・Sの4軸で記述する、本誌独自の指標です。作品の良し悪しや制作上の主導権を採点するものではありません。

このページは定義・入力・人物同定・計算方法をまとめた正本です。R軸は「Top-5 concentration/上位5名クレジット集中率」です。名称の訂正でRの式は変えていません。v5で変わった実測値は、人物同定と入力の訂正によるものです。

4つの軸が見るもの

たとえば、5曲すべてに同じ5人の名前が記載された作品を考えます。各人は5回、合計25回登場します。HPCIはこの「名前の登場の仕方」を数えます。担当した作業量やスタジオで過ごした時間は数えません。

HPCIの4軸
軸名称測るもの原値の単位
CConcentration/制作集中度全員の登場回数の偏り0〜10,000
RTop-5 concentration/上位5名クレジット集中率上位5名の登場回数が全体に占める割合%
DDensity/協働密度1曲あたりの対象クレジット人数の平均人/曲
SSelf-involvement/本人関与率本人がwriterまたはproducerとして記載された曲の割合%
合成例。本人を含む同じ5人が全5曲にクレジット。原値はC=2000.00、R=100.00、D=5.00、S=100.00。描画値は順に20、100、50、100。
実作品ではない合成入力を通常の計算コードに渡した概要図。C×D=2000×5=10,000で、定義上の制約を満たします。合成入力CSVと計算結果を参照できます。

対象にするクレジットと人物同定

1曲の対象集合は、(writers ∪ producers)− sampling_rights_holdersです。同じ曲でwriterとproducerの両方に載る人も、確認済みの別名が複数ある人も、1人につき最大1回(1 mention)として数えます。サンプル・インターポレーション元の権利者として入力で区分した名前は除きます。本人や客演者もこの対象集合にあれば数えます。歌唱参加だけでwriter・producer欄にない人、演奏・技術スタッフだけの名前は加えません。

人物同定は出典付きalias辞書で行います。辞書には統一名、別表記、判断内容、出典URL、確認日を収録しています。複数人のユニット名は1人に置き換えるaliasにせず、出典で確認した個人名へ入力段階で展開します。たとえばGNXのKenny & Billyは、配信の作曲者表記K.S GnanasundaramとB.S. Gnanasundaramの2人として数えます。個人名も同じ曲に記載されていれば重複を統合します。

v5では、全入力8ファイルの区切り記号・別名・同定注記を点検しました。配布する実作品入力は6ファイル・112曲です。Stwo=Steven Vidal、D10=Dalton Tennant等を統合し、Diamanté BlackmonはGordoへ訂正しました。Mustard(Dijon McFarlane)とは別人です。Cubeatz、Wallis Lane、FnZ、The Loud Packも各2人へ展開しました。曲別の訂正・照合記録に出典と変更前後の注記を収録しています。

この処理は誤同定を抑えるためのもので、クレジットの完全性を保証するものではありません。確認できない本名は推定して統合しません。Take Care「Headlines」のHikwa MMはAllMusicのAdditional Production表記を残し、別人物とのalias対応は作成していません。配信版との記載差は入力注記に明示しています。今回の訂正では、他の曲のクレジット追加・欠落やサンプル区分を全面的に再収集していません。値は配布した入力の範囲を記述します。

計算式

曲数をT、曲tの対象人物集合をAt、人物iの登場曲数をni、全mention数をM=Σniとします。T>0、M>0の場合、次のように計算します。

  • C=10,000×Σ(ni/M)²。人数そのものに加え、各人の登場回数の偏りにも反応します。
  • R=100×(登場曲数上位5名のniの合計)/M。人数が5名未満なら全員を採用します。同数者の順序は名前の昇順で固定し、5位同数者を全員追加しません。同数者の選択でR値は変わりません。
  • D=Σ|At|/T=M/T。作品全体のユニーク人数を曲数で割った値ではありません。
  • S=100×(本人のwriter/producerクレジットがある曲数)/T。本人の別表記は本人alias定義で照合します。S=100でも制作上の決定権や作業量は分かりません。

本人を含む同じ対象集合を各軸に使います。全曲クレジットが空の作品は実作品集計から除外します。欠落のある入力は人数・mention数・各軸を変えうるため、入力とデータ品質フラグも併読してください。

CとRはともにクレジット集中の側面を測り、互いに無関係な4指標ではありません。定義からC≥R²/5が成り立ちます。またni≤TよりΣni²≤TMなので、C×D≤10,000です。レーダーの形を自由に組み合わせられるわけではありません。

Rと曲間の重なりはどう違うか

Rは上位5名への集中率です。同じ5人が全5曲に載る場合も、5曲それぞれに別の1人が載る場合も、Rは100になります。Rだけでは、同じ人が曲をまたいで参加しているかを区別できません。

既存の補助指標RP(Repeat-Participation rate/反復参加率)は、100×(2曲以上に登場した人のmention合計)/Mです。「曲間の重なりの補助指標」であり、分母は人数ではなく、本人を含む全mention数です。

実作品と分けた合成例
入力全mention上位5名mention反復参加者mentionRRP
同じ5人が全5曲252525100.00100.00
各曲に別の1人、全5曲550100.000.00

RP=100でも固定メンバーが全曲に参加しているとは限りません。たとえば4曲の集合が{A,B}、{A,B}、{C,D}、{C,D}なら、全員が2曲に参加するためRP=100ですが、全4曲に共通する人はいません。

固定メンバーの確認には曲別クレジット集合を確認します。RP・平均Jaccardは補助情報として扱います。既存の平均Jaccardは、全曲ペアについて|A∩B|/|A∪B|を計算した算術平均(0〜1)です。曲ペアの共通性を測りますが、平均値から人物名や役割は特定できません。空集合同士のペアは除き、有効なペアがなければ値は未定義です。

対象6作品の観測値(v5)

以下は配布入力の収録曲範囲で計算した値です。ジャンル全体の標準値や、アーティストの全作品の傾向を示す標本ではありません。各作品名から曲別CSVを取得できます。C・R・D・Sが4軸、RP・Jaccardは補助指標です。

原値。R・S・RPは%、Dは人/曲、Jaccardは0〜1
作品曲数ユニーク人数mentionCRDSRPJaccard
Take Care1831861070.8562.794.78100.0074.420.33
Views204799721.3550.514.9595.0062.630.21
Scorpion2561110709.0943.644.40100.0053.640.18
For All the Dogs2374127461.9035.435.5295.6553.540.13
GNX123685715.5751.767.08100.0074.120.32
10 Til' Midnight1420381606.6560.532.71100.0060.530.29

6作品の合計は112曲・545 mentionです。曲数で重み付けした観測平均は545/112=4.87人/曲、作品別のDは2.71〜7.08人/曲でした。本人を含む対象クレジット人数の平均であり、ヒップホップ全体の標準的な制作人数へは一般化しません。

Take Careは上位5名54 mention/全86 mentionなのでR=62.79、2曲以上に登場する人の64 mention/86なのでRP=74.42です。GNXはそれぞれ44/85、63/85で、R=51.76、RP=74.12となります。全員の曲別登場回数は作品別JSONのintermediate_values.collaborator_countsで確認できます。

GNXのC(715.57)は、比較したDrake4作品のうちTake Care(1070.85)・Views(721.35)を下回り、Scorpion(709.09)・For All the Dogs(461.90)を上回ります。R(51.76)はTake Care(62.79)を下回り、残る3作品を上回ります。DはGNX(7.08)がTake Care(4.78)より高い値です。これらの大小から特定人物の制作上の役割は推定できません。

図の読み方と丸め方式

図は上から時計回りにC・R・D・Sを配置します。描画値はC′=min(C/100,100)、R′=min(R,100)、D′=min(D×10,100)、S′=min(S,100)です。D=10人/曲を描画上限とする換算で、10人が標準という意味ではありません。Dが10を超えても表には原値を表示します。面積や各軸の長さを総合点として比較しません。

本文・表・図中の表示・CLIは、小数第2位までROUND_HALF_UPに統一しています。算出した値をDecimal(str(value)).quantize(Decimal("0.01"), rounding=ROUND_HALF_UP)で表示します。計算途中で小数第2位への丸めは行わず、レーダー座標には丸め前の正規化値を使います。境界例の25/8=3.125は3.13です。配布JSONは丸め前の数値と、この規則による表示文字列を分けて収録します。

Take CareとGNXのHPCI比較。Take CareはC=1070.85、R=62.79、D=4.78、S=100.00。GNXはC=715.57、R=51.76、D=7.08、S=100.00。Rは上位5名クレジット集中率。
v5入力から再生成した比較図。C・R・D・Sの表示は上表と共通の丸め方式です。原値と描画用換算値の単位は異なります。
Cは全員の登場回数の偏り、Rは上位5名の占有率、Dは曲あたり人数、Sは本人の記載曲率。RPと平均Jaccardは補助情報。固定メンバーは曲別クレジット集合で確認する。
クレジットに記載された分布を読み、作品の質や人物の役割の判定とは分けます。

入力・コードと再計算の手順

ファイル索引(index.json)には入力6点、alias辞書、算出・読込・描画コード、本人alias定義、作品別結果、図版、合成入力、独立検算スクリプトの一覧とSHA-256を収録しています。6作品の再計算JSONは実作品だけをworksに収録し、合成例は別ファイルに分離しています。データの利用条件はCC BY 4.0です。

  1. 索引の各ファイルを、相対パスを保って取得します。SHA-256を索引と照合し、下の更新ログに記載したコード・辞書の版とも一致させます。
  2. Python 3.9以降でpython3 reproduce_v5.py --root .を実行します。このスクリプトは算出コードをimportせず、入力とaliasから分数で6作品を独立計算し、JSON・本文の値・全ファイルの指紋を照合します。
  3. URLから直接照合する場合はpython3 reproduce_v5.py --url https://hiphopnewscs.jp/data/hpci/を使います。正常終了時のchecks_passed: trueと、対象6作品のR・RPを確認します。
  4. 通常の算出コードでも、python3 src/compute_hpci.py --album take_care --csv inputs/take_care_input.csv --aliases aliases.csv --out-json calculated/take_care.json --out-csv calculated/results.csvで再計算できます。描画環境とGNXの実行例は同梱READMEを参照してください。

名称と読み取れる範囲

現行の正式名称はHPCI(HIPHOPCs Production Constellation Index)です。名称の履歴は更新ログに記載しています。

HPCIはクレジットの分布を記述します。記載されない作業、貢献時間、報酬配分、作品の質、制作上の決定権は測れません。Sが高いことを「本人主導」、低いことを「外部主導」と読み替えません。同じRでもCやD、曲別の人物集合は異なりえます。比較するときは、収録曲の版、入力の採録範囲、人物同定の版を揃えてください。

更新ログ

2026年9月11日・公開反映:R軸の旧称「Repeat/反復参加度」を「Top-5 concentration/上位5名クレジット集中率」に訂正しました。式は変えていません。RP(反復参加率)は既存の補助指標です。入力・人物同定を訂正したv5の値、図版、再現データを本ページへ反映しました。

現行の正式名称はHPCI(HIPHOPCs Production Constellation Index)です。一部の記事に「Production Concentration Index」という名称が残っていました。現行コードのコメントに確認できるのは、旧Concentration版(按分式WCI/PCI)とは別の指標であるという記載までです。変更理由や移行時期を裏付ける記録は、この方法論では提示していません。

2026年9月11日・データ版v5:人物同定辞書と複数人名義の入力を訂正し、6作品を再計算しました。Rの名称・式・曲間の重なりの限界を明記し、RPと平均Jaccardの用途、丸め方式、図版を統一しました。以下は2026年9月10日データ版v4からv5への変更です。Take Careの数値は変わっていません。作品本文の公開日を表す日付ではありません。

表示値の変更前(v4)→変更後(v5)
作品CRDSRPJaccard
Take Care1070.85 → 1070.8562.79 → 62.794.78 → 4.78100.00 → 100.0074.42 → 74.420.33 → 0.33
Views635.46 → 721.3547.17 → 50.515.30 → 4.9595.00 → 95.0058.49 → 62.630.19 → 0.21
Scorpion685.59 → 709.0942.86 → 43.644.48 → 4.40100.00 → 100.0052.68 → 53.640.18 → 0.18
For All the Dogs456.54 → 461.9035.16 → 35.435.57 → 5.5295.65 → 95.6554.69 → 53.540.13 → 0.13
GNX731.29 → 715.5752.38 → 51.767.00 → 7.08100.00 → 100.0075.00 → 74.120.33 → 0.32
10 Til' Midnight1250.00 → 1606.6552.27 → 60.533.14 → 2.71100.00 → 100.0061.36 → 60.530.26 → 0.29
計数値の変更前(v4)→変更後(v5)
作品ユニーク人数全mention上位5名mention反復参加者mention2曲以上参加した人数
Take Care31 → 3186 → 8654 → 5464 → 649 → 9
Views54 → 47106 → 9950 → 5062 → 6210 → 10
Scorpion63 → 61112 → 11048 → 4859 → 5910 → 10
For All the Dogs74 → 74128 → 12745 → 4570 → 6816 → 15
GNX35 → 3684 → 8544 → 4463 → 6314 → 14
10 Til' Midnight24 → 2044 → 3823 → 2327 → 237 → 5

数値の大小関係も訂正します。v4ではGNXのCがViewsを上回っていましたが、v5ではGNX 715.57、Views 721.35で、GNXが下回ります。GNXはScorpion 709.09・For All the Dogs 461.90を引き続き上回ります。解釈はこの比較対象4作品の範囲に限定します。

今回の照合対象は次の5コードファイル(算出・読込・図2点・本人alias定義)と人物同定CSVです。リンク先のファイル内容に対するSHA-256を全桁記載しています。入力・結果・その他の配布ファイルの指紋は索引に収録しています。

v5コード・人物同定辞書の実測指紋
照合対象SHA-256
src/compute_hpci.py8e4965eb39aae7c92500a88ef8a0c821fceca6b4440125347b457477c569205c
src/load_credits.pycaa3a5bfd961e5dd1bf611a973bc3e03e10dc161a137e0327d40eacd1f6f6038
src/generate_chart.py327886c1869a51097f460f44645c49efd9075d32c2d9357f1691456d2c8cda8e
src/generate_comparison_chart.py48d69ef2d6bf187d849f626ef368ba969e33af5d0b4c667e287c2bf863cd91b5
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aliases.csve30fe976c74bf9b36ff61f87041299309cfbd0a85c2703229f4e09f40ec46126