Daz Dillinger、2Pacエステートを再提訴:名作『All Eyez on Me』の「未払い印税問題」

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本誌でもお馴染み、西海岸の日本人レジェンドDJ、DJ 2highさんと仲の良い「あの御仁」のニュースが米国ヒップホップニュースの一面を飾っているのでお届けする。

Tupac Shakur(トゥパック・シャクール)こと2Pacの死から30年が近づく中、再び彼の「遺産」を巡る争いが表面化した。今度の相手は、Death Row(デスロウ)時代を支えた盟友の一人、且つ親日家としても有名なTha Dogg Poundの、Daz Dillinger(ダズ・ディリンジャ―)だ。

ダズが、2Pacの遺産管理会社であるAmaru Entertainment(アマル・エンターテイメント)を相手取り、未払い印税を巡る訴訟を起こしたことが明らかになった。訴状は5月8日にロサンゼルス連邦裁判所へ提出されている。

ダズは、1996年の歴史的アルバム『All Eyez on Me』で中心的役割を果たした人物の一人。『Ambitionz az a Ridah』『I Ain’t Mad at Cha』『2 of Amerikaz Most Wanted』をはじめ、『Got My Mind Made Up』『Skandalouz』など、2Pacカタログの重要曲で共同制作・プロデュースに関わってきた。

今回の訴訟によれば、ダズ側は2024年10月に正式な印税支払い請求と会計資料の開示を要求。その後、アマル側から約9万1000ドルの支払いが行われたものの、どの作品分なのか、どの期間の収益なのか、あるいは控除内容などの詳細説明は一切なかったという。この件は以前の2high氏のインタビューで少し触れられているので、ご興味があれば一読頂きたいが、ダズはその印税で、10人のベイビーママ一人ずつ、10万ドル(約1500万円)以下の土地付きの家を10軒購入したそうだ。

ダズ側は、「支払いがあったこと自体が未払い金の存在を認めている」と主張。一方で、明細が提示されていないため、本当に正確な金額なのか確認できないとしている。さらに訴状では、会計開示請求、契約違反、誠実義務違反などを含む複数の請求が並び、未払い印税の全額支払いに加え、損害賠償や利益返還まで求めている。

2Pacのエステートを巡るトラブルは、これが初めてではない。母であるAfeni Shakur(アフェニ・シャクール)が設立したアマル・エンターテイメントは、長年にわたり権利問題や金銭トラブルで法廷闘争を繰り返してきた。アフェニ亡き後の2016年以降は、元Warner Bros. Records(ワーナーブラザーズレコーズ)CEOのTom Whalley(トム・ウォーリー)が遺産管理を担当。しかし近年は、2Pacの異父妹であり、Tupac Amaru Shakur Foundation(トゥパック・アマル・シャクール財団)代表のSekyiwa Shakur(セクィーワ・シャクール)との対立も表面化している。

またこのニュースの1日前、2Pacが青春時代を過ごした街メリーランド州ボルティモアで、彼の名前を冠した通りができたということで、再び注目を集めた。Brandon Scott(ブランドン・スコット)ボルチモア市長は先週、同市ペン・ルーシー地区のグリーンマウント・アベニューの一部を、改めて「Tupac Shakur Way(トゥパック・シャクール通り)」として再献納した。ここは、弊社の記事でも触れたが、2Pacが母のアフェニとともに10代を過ごした場所として知られている。通り自体は、2Pacが1996年に亡くなった後に命名されていたが、今回改めて地域イベントとして再献納が行われた形だ。この通りは、ボルチモア北地区グリーンマウント・アベニュー4000番地付近に存在している。

さらに同日には、地元MLB球団Baltimore Orioles(ボルティモア・オリオールズ)が「2Pacボブルヘッド・ナイト」を開催。ボルチモア出身アーティストとして、街ぐるみで2Pacを称える一日となった。式典には、上記の異父妹のセクィーワも参加。彼女はピースポール(平和の柱)の除幕も行った。ちなみにこのピースポールは、地域社会の中でストリート暴力を終わらせる象徴として設置されたものだという。

約40年ぶりにボルチモアを訪れたセクィーワは、財団の理念について次のように語っている。「私たちの使命は、この地域で活動する団体と手を取り合うこと。幼稚園から大学まで子どもたちを支え続けることです。このコミュニティで育つ子どもたちのために、私たちは資源、知識、心、そして資金を捧げていきます」

また彼女は、その夜に行われたBaltimore Orioles対Oakland Athletics(オークランド・アスレチックス)戦にも登場。ベイエリアと深い繋がりを持つShakur家にとって、オークランドの球団との対戦は象徴的な一戦でもあった。そして彼女は始球式も務めている。

ちなみに2Pacの名を正式に冠したストリート名は、2023年にカリフォルニア州はオークランド市議会が満場一致で可決し、Tupac Shakurが90年代初頭に住んでいたマッカーサー・ブールバードの一部が「Tupac Shakur Way」に続いて2つ目となる。

今回のボルチモア再献納は「生まれ育った東海岸のPac」を称える動きで、オークランドの通りは、「西海岸のPac」を象徴しているのが感慨深い。それを象徴するようなオリオールズ対アスレチックス戦が、全てを物語っている。

今回のダズによる提訴に話を戻そう。この件は、2Pacビジネスの裏側に再びスポットライトを当てる形となった。伝説的作品が今なお莫大な利益を生み続ける中、その利益は誰に、どのように分配されるべきなのか。当時その作品を作り上げたクリエイターたちが、「本当に正しく報酬を受け取っているのか」という避けて通れない問題を浮き彫りにしている。特にダズ・ディリンジャ―は、単なる客演ではなく、Death Row時代の2Pacサウンドを支え、偉大なる名曲を作った中心人物の一人だっただけに、今回の主張には一定の重みがある。

一方で、時を経てもこうした争いや祝福すべき話題が繰り返されるたびに感じるのは、2Pacの偉大さだ。彼の名前、音楽、思想は亡くなってからも利益をのみならず、人々に影響を与え新たな価値や対話を生み出し続けている。だがその周囲には常に権利・金銭・管理を巡る問題が付きまとっているのだ。

皮肉なのは、2Pac自身が生前、音楽業界の搾取構造やビジネスの不透明さを何度も批判していたことである。もし彼が今の状況を見たら、どう感じるのだろうか。ふとそんなことを考えさせられるニュースでもある。ヒップホップ史に残るレジェンドのカタログを巡る問題は、30年近く経った今も終わりを見せていない。

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2Pacは、ただ過去のレジェンドとして語られる存在ではない。今も通りの名前になり、球場で称えられ、家族や財団の活動を通じて地域に還元され、その一方でカタログの権利や印税を巡る争いの中心にも立ち続けている。祝福と係争、記憶とビジネス、母への愛と遺産管理。そのすべてが同時に存在していることこそ、2Pacというアーティストが今なお“終わっていない”証拠なのかもしれない。

そして今回のDaz Dillingerの訴えは、単なる金銭トラブルとして片付けられるものではない。『All Eyez on Me』を支えた制作者たちの貢献が、時代を超えてどのように記録され、評価され、報われるべきなのか。2Pacの名前が今も世界中で語られ続けるほど、その問いもまた大きくなっていく。

文:Sei(HIPHOPCs)

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