【HIPHOPCs 独占インタビュー】CityBabyはなぜ、いま“Artist”を名乗るのか──「On Me」「Artist」2曲が刻む、“ラッパー”を超える再定義

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最終更新:7月2日13時

by.Lucie

アーティストにとって、傍観者でい続けることは苦しい。ステージを見上げる自分を客観視した瞬間、自分の無力さと、これまで積み上げてきたものが霞んでいく恐怖に襲われる。

だからCityBabyは、もう一度立ち上がった。見上げる側から、見上げられる側へ。自分をもう一度“Artist”たらしめるために。

2026年のCityBabyは、明らかにギアが違う。年明けから立て続けにシングルを出し、MVも次々に公開してきた。客演にはSwag Dawg Mafia(旧名Freekoyaboiii)や136Youngboss、Link HoodのKfk Vega、Sadboiterraらが並ぶ。そして7月1日(水)、新シングル「Artist」をリリースした。

HIPHOPCsは、そのリリースに先駆けてCityBabyに話を聞いた。生い立ちから、アーティストとしての思想、ラジオ番組ホストとしての顔、楽曲とMVの裏側まで。彼が描く“Artist”像とは何か。(インタビュー・文=Lucie)

デニムジャケットにサングラス姿で青い照明の中に立つラッパーCityBabyのアーティスト写真
CityBaby|画像提供:CITYBABY ENTERTAINMENT
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はじまりは、母のレコード棚だった

Lucie:まず自己紹介をお願いします。

CityBaby:CityBabyと申します。4月10日生まれ、福岡県出身です。

Lucie:アーティスト情報に「幼少期にMichael Jacksonに衝撃を受け…」とありますよね。ブラックミュージックに触れた原体験は、どう訪れたんですか。

CityBaby:母がブラックミュージック好きだったのが大きいですね。幼い頃から家にレコードやCDがたくさんあって、触れる機会が多かった。幼かったので、誰のどの曲かは全然わかってなかったですけど(笑)。母は僕を産む直前までジャズバーを経営していて、R&Bや海外の曲がずっと身近にあった。母の存在はとても大きいと思います。

黒いスーツにドット柄のネクタイを合わせたCityBabyのモノクロ・ポートレート
“ラッパー”の枠を超えることを掲げるCityBaby|画像提供:CITYBABY ENTERTAINMENT

夜の世界から、音楽へ

Lucie:18歳でリリックを書き始めた後、壁にぶつかって数年間“夜の世界”へ身を投じていた、という過去がありますよね。今、その時期をどう振り返りますか。

CityBaby:必要な時間だったと思ってます。社会の仕組みやお金の稼ぎ方を覚えられたし、その経験が今の音楽活動に活きている部分もある。だから必要な時間だったのかなって。

Lucie:2019年から本格的に制作を再開します。もう一度やろうと思ったきっかけは。

CityBaby:僕、ライブがすごく好きで。働いていた時期も、アーティストのライブを見に行く時間は絶対に取ってたんです。ジャンル問わずいろんなライブを見るうちに「やっぱり自分がやりたいのは音楽なんだな」って、ふと思って。22、23歳くらいで、「若いうちにもう1回挑戦しないとタイミングがない」と感じた。仕事も安定して不自由なく稼げてた時期でしたけど、この生活を続けるより挑戦したいと思って、音楽にシフトしました。

スタイルの変遷と、広いコミュニティ

Lucie:クルーを経てソロに。2022年のアルバム『No Time』の頃は、今よりBoom Bap寄りの“いなたい”スタイルでしたよね。その後2023年からTrapやDrill、Rageなど幅が広がっていく。心境の変化があったんですか。

CityBaby:自分がカッコいいと思う音楽が、どんどん変わっていったのが一番です。高校の頃はKOHH(現・千葉雄喜)さんやAK-69さんが流行ってて、もちろん通りました。ただ地元が福岡でBoom Bapに触れる機会が多くて、最初はそのスタイルがしっくりきてた。そこからいろんなジャンルに一つずつ触れて、自分の表現に落とし込んでいった感じです。

Lucie:福岡は“いなたい”スタイルが多いんですね。

CityBaby:SHITAKILI ⅨとかBIG Iz’ MAFIAとか、いわゆるギャングスタラップをよく聴いてました。福岡はそういうスタイルの人が多い印象です。

Lucie:コミュニティが広いのも特徴ですよね。同郷のSwag Dawg Mafiaさん、京都の136Youngbossさん、千葉のLink HoodからKfk Vegaさん、Sadboiterraさん…。どうやって繋がっていったんですか。

CityBaby:ずっとストリートにいるので必然的に繋がることもあるし、偶然が重なって会うこともある。あとは遊び方が似てるのもあるかも。お酒をめちゃくちゃ飲むメンツが多いので(笑)、パーティーで仲良くなったパターンも多いです。

楽曲とMVに、投資する理由

Lucie:クレジットを見ると、マスタリングに塩田浩さんの名前があったり…投資が惜しみないなと。MVの完成度も高い。見せ方は意識していますか。

CityBaby:意識してます。ブランディング、楽曲からMVまで見せ方には気を遣ってるし、まだまだ力を入れていく予定です。

Lucie:まだまだ!?もう十分な気がしますけど。

CityBaby:全然、もっとこだわると思います。海外進出を真剣に考えてるので、世界で通用するアーティストになりたい。軸はそこですね。あと、照明や音響、スタッフみんなで一つのステージを作り上げるようなライブが昔から好きで。誤魔化しが効かない場所に立った時、ちゃんとパフォーマンスできるアーティストでありたい。だから歌う時のことを考えて、こだわり抜いてます。

ライブを止めた時期のこと

Lucie:2025年あたり、自らライブ活動を制限した時期がありましたよね。理由と、その時期に得たものを聞きたいです。

CityBaby:曲作りにすごく悩んだ時期なんです。新しい曲ができないと、ずっと昔の曲でライブしなきゃいけない。それは楽しくないし、見ている人にも失礼になる。だから一度、自分が満足できる曲を作って、その上でライブをやりたかった。セットリストができるまでは制限しようと。4月ぐらいまで止めてました。

Lucie:ライターズブロックというか。悩んだきっかけは。

CityBaby:今は若い子がたくさん出てきてるじゃないですか。「自分よりイケてるな」と思うアーティストや友達が急に増えて。当時は毎週クラブに行ってて、常に最新の音に触れてたのに、それを全然曲作りに消化できなかった。生活も荒れて、周りが伸びてたのもあって「俺もう無理なんじゃないかな」ってネガティブになっちゃったんだと思います。

Lucie:でも今は抜け出せている。

CityBaby:そうですね。今年に入ってやっと満足できる曲が作れるようになって、リリースの頻度も上げられるようになった。この1年ぐらいの動き方を自分の中で明確にできたので、今はその通りに動いてます。

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日本とタイ、2拠点の現在地

Lucie:タイをはじめアジア圏にも進出していますよね。なぜタイなんですか。

CityBaby:タイが単純にすごく好きで、居心地がいいんです。最初は現地で事業に投資していて、たまたま現地のラッパーとコネクトできたので、タイにいる時間が増えました。今はもう2拠点生活ですね。

Lucie:タイのヒップホップはどんな感じなんですか。

CityBaby:ほんとにストリートな感じです。日本より活気があってパワーがある。それぞれが置かれた場所で必死に生きてるのを感じます。

「On Me」ミュージックビデオの一場面。屋外でしゃがむCityBabyと、英語とタイ語の字幕が表示されている
「On Me」MVより。制作からMVまでタイで完結させたという|画像提供:CITYBABY ENTERTAINMENT

『Baby Radio』という、もう一つの顔

Lucie:去年から『Baby Radio』を投稿していますよね。SadboiterraさんやNia Varanさんら、いろんなアーティストをゲストに呼んで対談する、ポッドキャストに近い内容だと思うんですが。始めたきっかけは。

CityBaby:ずっと何かやりたいなとは思ってて。その時に「今これが一番面白いんじゃないか」と思ったのが対談形式だったんです。自分が一番楽しいと思える形を取った感じですね。

Lucie:今後の広げ方は。

CityBaby:もっと大きくしていく予定です。関わってくれる人も増えて、今は9人くらいのチームで動いてる。コンテンツとしての規模を広げたいですね。

新シングル「Artist」──『地獄に堕ちるわよ』とUK Garage

Lucie:直近だと「On Me」のMVを公開したばかりですよね。どう完成したんですか。

CityBaby:「On Me」は制作からMVまで全部タイで完結させたんです。ビートメイカーのTKSと遊びに行って、コテージで2泊3日、遊びながらラフに作った。カメラマンもいて撮ってもらってたんですけど、最初はMVを撮るつもりもなくて。撮ってるうちに「これそのままMVになるじゃん」と思って、途中からリップ入れました。全部含めて良い思い出です。

「On Me」MVでネオングリーンの「ON ME」サインの前、水辺のガラス張りの家を背にライトブルーのフーディーで立つCityBaby
「On Me」ミュージックビデオより|画像提供:CITYBABY ENTERTAINMENT

Lucie:そして7月1日、新シングル「Artist」。どんな曲ですか。

CityBaby:最近Netflixで話題の『地獄に堕ちるわよ』ってドラマ、あるじゃないですか。あのテーマソングをサンプリングしたUK Garageのビートにラップした曲です。すごく面白かったし、自分の中でトレンドになってたドラマだったので、和歌山のDOCってビートメイカーに「これで作れる?」って言ったら、ヤバいビートが速攻で返ってきて、気づいたら完成してました。

Lucie:あのテーマソング、アイコニックですよね。今日お話を聞くと、CityBabyさんには経営者としての顔もある。ドラマの細木数子と自分を重ねる部分もあったのかな、と。

CityBaby:そうかもしれないですね。自分で音楽を発信してた「CityBaby Entertainment」ってレーベルがあったんですけど、今年で株式会社にして法人化したんです。ある意味、再出発を果たしたので、さらにデカくしていく予定です。

シングル「Artist」のジャケット。赤を基調に、金色の椅子に座る赤いレザージャケット姿のCityBaby
シングル「Artist」ジャケット|画像提供:CITYBABY ENTERTAINMENT

配信リンク:CityBaby「Artist」

目指すのは、時代を作ること

Lucie:音楽を作るアーティストとしての顔と、『Baby Radio』のように文化を広めるメッセンジャーとしての顔。いわば“二面性”がありますよね。最終的に目指す姿とは。

CityBaby:時代を作っていけるような人になりたいですね。自分が生きた証をしっかり残せるくらいに。それぐらいまでカマしきりたい。経営したり頭を使ったりするのも好きだし、嫌々やってるわけじゃない。ただ、あくまで音楽を軸に考えてるので、そこはまだ掴めてないかもしれないです。

Lucie:今は音楽にフルベットする、と。

CityBaby:ですね。7月は「Artist」の他に2曲リリース予定ですし、その後もずっと続くと思うので、楽しみにしておいてください。

“Artist”を、証明する段階へ

新シングル「Artist」は、和歌山県出身のビートメイカーDOCが手がけたUK Garageビートの上で、CityBabyが自身の価値と野心、リアルな生活感をストレートに刻んだ一曲だ。蛇笛のサウンドが印象的な『地獄に堕ちるわよ』のテーマをサンプリングしたビートに、彼から溢れる成功への渇望が乗る。

戦後の夜の世界から成り上がり、経営者となり、時代の寵児になった女帝。その物語のテーマを、夜の世界を経てレーベルを法人化した男が引き受ける。サンプリングは、偶然の借り物ではない。自分の来歴と重なるものを選び取った選択だ。

福岡から夜の街を抜け、いまは日本とタイの2拠点。多言語で鳴らし、ラジオで文化を広げ、会社を興す。CityBabyは“Artist”という言葉を、名乗る段階から証明する段階へと動かそうとしている。見上げる側から、見上げられる側へ。彼の歩みは、まだ途中だ。

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