BATTLE SUMMIT III 現地レポート|元BAD HOPの5人を4試合連続で倒し、5,000万円は沖縄へ
文責:Rei Kamiya(現地取材)/HIPHOPCs
2026年8月11日(火・祝)神奈川・Kアリーナ横浜
優勝したOZworldとCHICO CARLITOが、1回戦から決勝まで誰と当たったかを並べてみる。
- 1回戦:Bark & Deech
- 準々決勝:Benjazzy & Bonbero
- 準決勝:YZERR & Tiji Jojo
- 決勝:T-Pablow & Zeebra
4試合すべてに、元BAD HOPのメンバーがいる。
Bark、Benjazzy、YZERR、Tiji Jojo、T-Pablow。解散したグループの5人は、4つのタッグに分かれてこの大会に出場していた。
OZworldとCHICO CARLITOは、その4組を1回戦から順番に、1つ残らず倒して優勝した。
川崎の物語として始まった夜を、沖縄の2人が終わらせた。
大会概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日程 | 2026年8月11日(火・祝) |
| 会場 | Kアリーナ横浜(約2万人収容) |
| 形式 | 2on2 タッグバトル |
| 規模 | 32人16組 |
| 優勝賞金 | 5,000万円 |
| DJ | DJ YANATAKE |
| MC | UZI |
| 配信 | ABEMA PPV(見逃しは8月24日23:59まで) |
BATTLE SUMMITは、KING OF KINGS、SPOTLIGHT、戦極MCBATTLE、真ADRENALINE、凱旋MC Battle、口喧嘩祭、Red Bull Roku Maru、NEO GENESIS、高校生RAP選手権といった国内の主要バトル団体から選抜された出場者が集まる大会である。3回目の今回は、MCバトル初挑戦のラッパーを含む16組がトーナメントを戦った。
大会前の見どころ整理は開催前日の記事にまとめている。
トーナメント結果
1回戦
| 対戦 | 勝者 |
|---|---|
| T-Pablow & Zeebra vs 髑髏 & D-Nut’s | T-Pablow & Zeebra |
| Tee Shyne & X 1ark vs Siero & jellyy | Siero & jellyy |
| CHEHON & Red Eye vs Watson & Eric.B.Jr | CHEHON & Red Eye |
| YZERR & Tiji Jojo vs MIKADO & HARKA | YZERR & Tiji Jojo |
| 漢 a.k.a. GAMI & DABO vs MC TYSON & YOU THUG | MC TYSON & YOU THUG |
| Benjazzy & Bonbero vs OSAMI & Spada | Benjazzy & Bonbero |
| 紅桜 & J-REXXX vs SANTAWORLDVIEW & Hezron | 紅桜 & J-REXXX |
| OZworld & CHICO CARLITO vs Bark & Deech | OZworld & CHICO CARLITO |
※髑髏 & D-Nut’sは第23回高校生RAP選手権の優勝者とMVPによるタッグ。
準々決勝
| 対戦 | 勝者 |
|---|---|
| 第1試合:T-Pablow & Zeebra vs Siero & jellyy | T-Pablow & Zeebra |
| 第2試合:CHEHON & Red Eye vs 紅桜 & J-REXXX | CHEHON & Red Eye |
| 第3試合:OZworld & CHICO CARLITO vs Benjazzy & Bonbero | OZworld & CHICO CARLITO |
| 第4試合:YZERR & Tiji Jojo vs MC TYSON & YOU THUG | YZERR & Tiji Jojo |
準決勝
| 対戦 | 勝者 |
|---|---|
| T-Pablow & Zeebra vs CHEHON & Red Eye(延長) | T-Pablow & Zeebra |
| OZworld & CHICO CARLITO vs YZERR & Tiji Jojo | OZworld & CHICO CARLITO |
決勝
OZworld & CHICO CARLITO vs T-Pablow & Zeebra
開幕──前大会覇者のライブから始まった
大会は、般若、FORK、J-REXXXらによるシークレットライブで幕を開けた。
般若は2024年8月、代々木第一体育館で行われたBATTLE SUMMIT IIの優勝者である。決勝で破った相手はBenjazzyだった。
その般若がステージに立ち、敗れたBenjazzyが今日は挑戦者として控えている。大会が3回目にして、自分の歴史を参照できるようになったということでもある。
本誌は2025年4月、般若に「飾らない強さ」とヒップホップへの誇りについて話を聞いている。あのとき聞いた姿勢は、優勝者としてステージに戻ってきた今日も変わっていなかった。
2万人規模のアリーナでMCバトルを成立させるには、最初に音で空間を埋める必要がある。その役割を、ライブが果たしていた。
1回戦|世代とキャリアがぶつかった
T-Pablow & Zeebra vs 髑髏 & D-Nut’s
初戦から、この大会の縮図のようなカードだった。
高校生RAP選手権・第23回の優勝者とMVPが、その大会の出身者であるT-Pablowと、日本語ラップの制度そのものを作ってきたZeebraにぶつかる。
高校生RAP選手権をめぐる文脈、音源での実績、作品制作への姿勢。互いのキャリアを突き合う応酬になった。勝ったのはT-Pablow & Zeebraで、この時点で優勝候補としての存在感を示した。
CHEHON & Red Eye vs Watson & Eric.B.Jr
「キング」の座をめぐる応酬が展開された。
先攻を選んだRed Eyeが勢いを作り、CHEHONがスキルと強いライムで続く。CHEHON & Red Eyeが勝ち上がった。
この日、いちばん惜しかったのはWatson & Eric.B.Jrだと思う。初戦敗退ながら、会場に残した熱量はベスト8以降のいくつかの試合を上回っていた。2人はこの後、その熱を別の形で回収することになる(後述)。
Benjazzy & Bonbero vs OSAMI & Spada
過去のグループ解散や、ビジネス上の対立にまで踏み込んだディスが飛んだ。
互いの背景を深く知っているからこそ出てくる言葉と、固い韻の応酬だった。この日いちばん、私生活の距離が近いバトルだった。
YZERR & Tiji Jojo vs MIKADO & HARKA
YZERRとTiji Jojoは、事前の練習なしで臨んだという。
それでも、準備不足を感じさせないフリースタイルと連携を見せて勝ち上がった。
16組のうち15組目、最後に発表されたタッグだった。
準々決勝|数字、出自、タッグの完成度
ここでは、現地で特に印象に残った3試合を振り返る。
YZERR & Tiji Jojo vs MC TYSON & YOU THUG
この日いちばん「実績」が武器になった一戦だった。
チケット価格と動員という、後から検証できる数字がそのまま韻に乗る。
Tiji Jojoは日本武道館公演を完売させている。MC TYSONも2025年1月に武道館単独公演「KING KONG in日本武道館」を成功させているが、こちらは全チケット一律3,000円という、主催者自身が「破格の設定」と告知した価格だった。
その差を突く形の応酬になった。
さらにTiji JojoがYOU THUGのフローを演歌調だとディスすると、MC TYSONがそのフローで返し、YOU THUGが「演歌ではなくブルースだ」と応じる。ここは今大会屈指の連鎖だった。
そこへYZERRが「俺らはグルーヴを生んでいるが、グループじゃねえ」と返す。Tiji Jojoが畳みかけて、勝負が決まった。
解散したグループの2人が、「グループではない」と言い切って勝つ。その構図が、この夜のYZERRとTiji Jojoを説明していた。
OZworld & CHICO CARLITO vs Benjazzy & Bonbero
OZworld & CHICO CARLITOは、2小節ごとにマイクを交代するコンビネーションを見せた。個々のスキルではなく、タッグとしての完成度で押し切る形である。
ここが2組目の元BAD HOP撃破だった。この時点で、優勝までの道筋が見えていた。
CHEHON & Red Eye vs 紅桜 & J-REXXX
この日の準々決勝で、もっとも出自が入り組んでいたのが第2試合である。
CHEHON、Red Eye、J-REXXXの3人は、レゲエのフィールドと深く接続してきた。Red Eye自身、公式プロフィールでヒップホップとレゲエのハイブリッドを掲げている。日本語ラップのバトル大会の準々決勝が、事実上レゲエ由来のマイクさばきの見本市になっていた。
ヒップホップのバトルとして見ると異色だが、日本のマイク文化の実態としてはむしろ自然な光景でもある。ディージェイのフロウとラップのフロウが同じステージで比較される機会は、そう多くない。
そして対戦した両サイドの中心にいる2人に、本誌は直接取材している。
紅桜に話を聞いたのは、この大会のわずか8日前、8月3日である。DJ KAJIとの『BACK TO THE HIPHOP』について、「やっぱりラップおもしれー」と語ってもらった。原点回帰がテーマの取材だった。
その8日後、彼はKアリーナ横浜のステージで、実際にラップで戦っていた。取材で聞いた言葉が、そのまま行動になって出てきた形である。
対するCHEHONへの取材は6月30日、豊洲PITの直前だった。「生身の人間が一番強い」という言葉を軸に、25年のキャリア、ジャマイカ、そしてAIについて語ってもらった。
MCバトルは、その「生身の人間が一番強い」を最も純粋な形で試す場所である。譜面もなく、録り直しもきかない。その場の応酬に、AIが介在する余地はほとんどない。8小節ごとに、その人が持っているものだけが出る。
判定はCHEHON & Red Eye。この2人は準決勝で、延長までもつれる大会屈指の一戦を戦うことになる。
取材で聞いた言葉と、目の前のラップがつながった試合だった。
バトルが終わってから勝者が決まるまでの数十秒を、3枚で残しておく。



準決勝|延長にもつれた第1試合
T-Pablow & Zeebra vs CHEHON & Red Eye
大会屈指の一戦だった。名フレーズのサンプリング、相手の言葉を即座に切り返すアンサーが次々に出て、判定がつかず延長へもつれ込んだ。
延長は、T-PablowとRed Eyeの応酬が中心になった。
Red Eyeが「お前なんて今のシーンに要らねえ」と言い切る。会場が沸いた。だがこの一言が、T-Pablowのスイッチを完全に入れてしまった。
この日、Red Eyeがいちばん格好よかった場面が、同時にいちばん相手を強くした場面でもあった。T-Pablow & Zeebraが決勝へ進んだ。
OZworld & CHICO CARLITO vs YZERR & Tiji Jojo
「おんぶに抱っこ」という言葉をめぐる挑発が飛び、会場全体を巻き込む展開になった。
勢いとグルーヴを保ち続けたOZworld & CHICO CARLITOが勝利。3組目の元BAD HOP撃破である。
ここで元BAD HOP勢は、決勝に残ったT-Pablowの1組だけになった。
決勝|日本語ラップの正史と、沖縄のグルーヴ
T-Pablowは固いライムと攻撃的な言葉で相手を追い込み、Zeebraは経験を生かして試合を組み立てた。
日本語ラップのバトルの「正史」を、そのまま2人で背負ったような布陣である。高校生RAP選手権が生んだ最大級のスターと、そのシーンの土台を作った人物。この2人に勝つことは、系譜そのものに勝つことに近い。
対するOZworldとCHICO CARLITOが持ち込んだのは、それとは別の武器だった。
沖縄出身の2人にしか出せない空気感と、この日ずっと保ってきたコンビネーション。相手を上回るというより、会場の空気を自分たちのグルーヴへ引き込んでいく戦い方だった。
判定は、OZworld & CHICO CARLITO。
4組目の元BAD HOP撃破であり、5,000万円の獲得だった。
大会翌日|敗者たちが、熱を音源へ変えた
大会翌日の8月12日、負けた側が相次いで動いた。
初戦で敗れたEric.B.JrとWatsonは、コラボEP『HIPHOP SUMMIT』を配信リリースした。収録は4曲。それぞれのソロ曲とコラボ曲2曲という構成で、プロデューサーにHibachi In Da Crib、june、FEZ BEATZが参加している。
同じ日、準々決勝で敗れたBenjazzyとBonberoも、B2B名義のアルバム『B2B』を8月28日にリリースすると発表し、先行シングル「R2R」の配信を開始した。
敗れた2組が、大会翌日にはバトルの熱を音源へ接続していた。
BenjazzyとBonberoには、その動きにつながる前史がある。2人はFSLで対戦したのち、BAD HOP「B2B feat. Benjazzy & Bonbero」などで共演してきた。今回も共同名義に「B2B」を掲げている。バトルと音源を往復する関係は、この2人にとって初めてではない。
バトルで生まれた注目には賞味期限がある。この大会は、勝敗を決める興行であると同時に、バトルで生まれた注目を音源へ接続する導線としても機能している。なお、いずれの作品も大会前から制作されていたとみられ、大会がリリースを生んだわけではない。
総括|4試合で証明されたこと
現地で見ていて、勝敗以上に印象に残ったことがある。
この大会は、ラッパーの生き方とキャリアが、そのまま武器になる場所だった。
高校生RAP選手権の出身であること。グループが解散したこと。武道館を売ったこと。そのチケットがいくらだったこと。過去に誰と組み、誰と別れたか。すべてが小節の中に持ち込まれ、検証され、返される。
即興のうまさだけでは勝てない。何を背負ってきたかが問われる。
2on2という形式は、それをさらに増幅させた。相方が誰かということ自体が、その人の立ち位置の表明になるからだ。
元BAD HOPの5人が4組に分かれたことは、開催前から今大会最大の構図だった(背景の分析)。5人が別々の相方を選んだこと自体が、解散後それぞれがどこに立っているかの表明でもあった。
そして結果は、その4組すべてが同じ2人組に敗れるというものだった。
Bark & Deech、Benjazzy & Bonbero、YZERR & Tiji Jojo、T-Pablow & Zeebra。OZworldとCHICO CARLITOは、元BAD HOPの5人がそれぞれの相方と作った4つのタッグを、1回戦から決勝まで順番に破った。
結果として4試合連続で成立した以上、これは記録である。
本編はABEMA PPVで8月24日23:59まで視聴できる。エンディングでは次回大会『BATTLE SUMMIT 4』への言及もあった。
参照
- BATTLE SUMMIT公式X(@battlesummit1)
- 音楽ナタリー「賞金5000万円『BATTLE SUMMIT III』優勝チームが決定」(2026年8月11日)
- 音楽ナタリー「バトサミ沸かせたEric.B.JrとWatson、コラボEP『HIPHOP SUMMIT』配信」(2026年8月12日)
- THE MAGAZINE「『BATTLE SUMMIT III』にタッグ出場のBenjazzyとBonbero、コラボアルバム『B2B』リリース決定」(2026年8月12日)
- ABEMA PPV公式発表(2026年8月7日/株式会社AbemaTVプレスリリース)
- MC TYSON「KING KONG in日本武道館」公式発表(2024年7月17日)
- 現地取材・写真撮影(2026年8月11日、Kアリーナ横浜)
- HIPHOPCs独占インタビュー:紅桜(2026年8月3日)、CHEHON(2026年6月30日)、般若(2025年4月)
本記事の写真はHIPHOPCsが現地で撮影したものである。無断転載・二次利用を禁じる。掲載や写真利用を希望する場合は、HIPHOPCs編集部まで問い合わせのこと。
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出場者への独占インタビュー
本誌が本人に直接取材した記事。今大会の出場者・出演者では次の3本がある。
- 【HIPHOPCs独占インタビュー】紅桜「やっぱりラップおもしれー」──DJ KAJIと語る『BACK TO THE HIPHOP』の原点回帰(2026年8月3日/English)
- 【HIPHOPCs独占インタビュー】CHEHON「生身の人間が一番強い」25年。豊洲PIT直前、執行猶予・みどり・ジャマイカ・AIを語る(2026年6月30日)
- 般若、リアルを生きる|「飾らない強さ」とHIPHOPへの誇りを語る(2025年4月)
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