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【独占インタビュー】Kiii「為替レートはない」SHEEF THE 3RDとの「Wire Transfer / 電信送金」、ブラックカルチャーの重み

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サクラメントを拠点に活動するアーティスト/プロデューサー、Kiii。自分の音楽の権利を自分で持ち、インディペンデントのまま、この1年でアルバムを3枚作ってきた。

その3枚目『THE VIEW FROM HERE』が、9月18日にリリースされる。収録曲「Wire Transfer / 電信送金」でヴァースを蹴っているのは、神奈川・藤沢のMC、SHEEF THE 3RDだ。

SHEEF THE 3RDは、MILES WORDとの2MC、BLAHRMYで知られるリリシスト。

地元の藤沢を“Moss Village”と呼び、DLiP Recordsから作品を出し続けてきた。2021年にはBLAHRMYとして9年ぶりのアルバム『TWO MEN』と、ソロEP『Piece is. EP』を発表している。

Kiiiが最初に聴いたSHEEFの作品も、この『Piece is.』だった。

アルバムと同時に、インターナショナル・ツアー『THE SIDE QUEST』も動き出す。サンパウロ、ロサンゼルス、藤沢、東京、京都、ロンドンの6都市7公演。組んだのは、Kiii自身が運営するツアーエージェンシー、TSE4VRだ。

日本は3公演。その初日は渋谷ではなく、SHEEFの地元・藤沢に置かれている。

インディペンデントであること、SHEEFとの制作、そして日本で作ろうとしているものについて、Kiiiに聞いた。

Kiiiのアルバム『THE VIEW FROM HERE』アートワーク。赤い月と浮遊する島々を見つめる、ジャッカルの耳をしたキャラクターの後ろ姿
Kiii『THE VIEW FROM HERE』(2026年9月18日リリース)
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インディペンデンスは反抗ではなく「設計」

HIPHOPCs編集部:まず、Kiiiさんは自分の音楽の権利を所有しながら、インディペンデントで活動していますよね。そこに強くこだわるようになった理由から聞かせてもらえますか?

Kiii:子どもの頃、アルバムのクレジットを教科書みたいに読んでいました。

父がプロデューサーだったこともあって、「プロデュース」という言葉の意味を理解するより先に、どうやって一枚のレコードが作られるのかに興味を持っていたんです。

その感覚は今も変わっていません。プロデューサーから、たった一つのアドリブまで、自分の作品に何かを加えてくれた人は全員重要です。

そして母からは、まだ自分が何も所有していなかった頃から、「所有すること」の価値を教わりました。

だから僕にとってインディペンデンスは、反抗ではありません。

それは設計であり、自由です。

TDEのような組織や、VallejoのE-40のようなアーティストのモデルも研究してきました。でも、僕は僕自身に合う形を作っています。

メジャーと契約していなくても、メジャーと同じスケールで考えることはできる。

それを証明する設計図を残したいんです。

誰かが架ける橋を待たない。『THE SIDE QUEST』の作り方

HIPHOPCs編集部:その考え方は、今回の『THE SIDE QUEST』にもつながっていそうですね。大手のエージェンシーに任せるのではなく、各地域のアーティストやコミュニティと直接つながりながらツアーを作ったのは、なぜだったのでしょうか?

Kiii:誰かが橋を架けてくれるのを待っているなら、その橋を渡るために、まだ誰かの許可を待っていることになる。

TSE4VRは、最初からツアーを視野に入れて作りました。

僕自身かなり現場に入るタイプなので、従来のツアーシステムに「選ばれる」のを待つのではなく、インディペンデントのアーティスト同士で、都市、国、文化を越えて直接インフラを作れるのかを確かめたかったんです。

僕にとって、その過程で生まれる関係性は、ルートや収益以上の価値があります。

もしこの仕組みを再現可能なものにできれば、次のアーティストはゼロから始めなくていい。

Kiii『THE SIDE QUEST』ワールドツアーのポスター。サンパウロ、ロサンゼルス、藤沢、渋谷、京都、ロンドンの7公演の日程
『THE SIDE QUEST』ツアーポスター。日本は藤沢(10月30日)、渋谷(11月6日)、京都(11月14日)の3公演

「いつか」と言うのをやめた年

HIPHOPCs編集部:今回、そのツアーの中に日本も入っています。そもそも、Kiiiさんにとって日本はどんな場所だったんでしょう?

Kiii:実際に足を踏み入れる前から、日本にはどこか親しみを感じていました。

母が去年日本を訪れて、すっかり魅了されて帰ってきたことも大きかったです。

それ以前から、音楽やファッションなどを通して、日本とヒップホップの関係は見ていましたし、アニメをはじめ、日本文化が世界に与えてきた影響にも昔から強く惹かれていました。

だから、日本は偶然選んだ場所ではありません。

いつか行く場所だった。2026年は、ただ僕が「いつか」と言うのをやめた年です。

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SHEEF THE 3RDと「Wire Transfer / 電信送金」

SHEEF THE 3RDのアーティスト写真

HIPHOPCs編集部:日本とのつながりという意味では、SHEEF THE 3RDとの「Wire Transfer / 電信送金」も大きいと思います。SHEEFのことは、どうやって知ったんですか?

Kiii:日本のDJがSHEEFを教えてくれたのがきっかけです。彼女に好きなアーティストを5人挙げてもらった時、その中にSHEEFの名前があって、すぐに『Piece is.』を聴きました。最初に耳を奪われたのは、彼のデリバリーでした。

「Wire Transfer」をプロデュースした時、もうSHEEFの声が聴こえていたんです。彼は1週間もしないうちにヴァースを返してくれて、僕が想像していた以上のものを持ってきてくれました。

実際、この曲が日本での活動をより具体的なものにしてくれました。『THE VIEW FROM HERE』は、僕が“Blackout Week”と呼んでいた期間に作りました。7月の約1週間、ほとんど外の世界から消えて、アルバムだけに集中したんです。

8月はフィーチャリングを受け取りながら、同時にツアーを組み立てていった。

SHEEFは、その二つの世界をつないでくれました。

HIPHOPCs編集部:「Wire Transfer」というタイトルも面白いですよね。この言葉には、どんな意味を込めていますか?

Kiii:文化の通貨です。ビートはアメリカから日本へ渡った。SHEEFは、自分の視点を乗せて送り返してきた。為替レートはない。それが、この曲の“Transfer”です。

HIPHOPCs編集部:実際にSHEEFの音楽に触れて、アメリカと日本のヒップホップにはどんな共通点や違いを感じましたか?

Kiii:本物のMCは、言葉には責任があると理解しています。それはどこの国でも通じると思います。

ラップの強気な表現は、その背景を知らない人には単なるエゴに見えることがあります。でもBlack American cultureの中では、その言葉の多くがサバイバルから生まれている。自分を小さく感じさせるように作られた環境の中で、自分自身を大きくするための言葉でもあるんです。

SHEEFの音楽には、その文化的な理解を感じます。彼は、その姿勢の裏側にある重さを理解している。

一方、日本で特に印象的なのは、保存されていることです。

ブレイキンをはじめ、ヒップホップの基礎を作った要素が、今も目に見える形で生きている。

アメリカで生まれた文化を、別の国が深く学び、守りながら、そこに自分たちの言語を加えている。

それを見ると、ヒップホップはもう地理より大きなものになったんだと改めて感じます。

パスポートが変わっても、音楽まで観光客になってはいけない

『THE VIEW FROM HERE』は、ほぼ全編をKiii自身がプロデュースしている。そこにSHEEF THE 3RDのほか、Stevie Crooks、Chi Sees、SujoGroundのMatheus CoringaとValente、ノースカロライナのYumz Awkword、DMVエリアのMélanjeが声を乗せた。Mélanjeがラップを披露するのは、この作品が初めてだという。

唯一の共同プロデュース曲が、TSE4VRのLoTheDemigodを迎えた「Free Lo」。相手は、オークランドからサンパウロへ拠点を移したプロデューサー、ShawnIsADHD!だ。

HIPHOPCs編集部:今回のアルバムには、さまざまな国や地域のアーティストが参加していますよね。国境を越えて誰かと音楽を作る時に、大事にしていることはありますか?

Kiii:パスポートが変わっても、音楽まで観光客になってはいけない。

そこはかなり意識しました。

海外アーティストとのフィーチャリングは、やり方を間違えればすぐにギミックになる。僕はすべてのコラボレーションが、「意外」ではなく、必然だったように聴こえてほしかった。

このアルバムでは、僕のプロダクションが共通言語になっています。

全員がそれぞれの土地を背負っている。でも、誰一人として飾りではない。

見せるためだけのジェスチャーもいらない。

国旗を集めるつもりもない。

国際的な作品である前に、人間的な作品でなければならなかった。

日本で作りたいのは「インフラ」

HIPHOPCs編集部:そう考えると、今回の日本公演も単発のライブでは終わらせたくない?

Kiii:そうですね。

僕が日本で作っていきたいのは、インフラです。インディペンデントのアーティストが、こうした場所をもっと自由に行き来できる仕組みを作りたい。

今、僕はSão Pauloにいますが、ここでSHEEFがMatheus Coringa、Valente、ShawnIsADHDと出会ったらどれだけ面白いだろうと考えています。あるいはL.A.でChi SeesやStevie Crooksとつながることもできる。

これは、単にライブをブッキングすることより大きな話です。違う世界で出会ったアーティストたちが、いつか互いに出会えるようにしたい。

それは、文化の通貨が流通し始めるということです。

その最初の現場が、10月30日の藤沢になる。

2026年10月30日に江ノ島オッパーラで開催される「出吉舞ってる WITH SIDE QUEST TOUR」のフライヤー。KiiiとSHEEF THE 3RDがSP LIVEで出演
10月30日(金)江ノ島オッパーラ「出吉舞ってる WITH SIDE QUEST TOUR」

会場は、片瀬江ノ島駅そばの江ノ島オッパーラ。パーティー「出吉舞ってる」に『THE SIDE QUEST』が合流する形で、SHEEF THE 3RDのスペシャル・ロングセットと、KiiiのSPライブが並ぶ。22時から翌朝5時までのオールナイトだ。

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守りたいのはautonomy。1年で3枚という速度

HIPHOPCs編集部:ここまで話を聞いていると、Kiiiさんにとって「インディペンデント」は、単にメジャーレーベルに所属していないという意味ではなさそうですね。

Kiii:違います。

インディペンデンスに絶対的な形はないと思っています。僕にとって重要な言葉は、autonomy――自己決定権です。

誰が所有しているのか。

誰が決めるのか。

誰が「NO」と言えるのか。

アートには、作っている本人さえ驚かせられるだけの自由が必要です。

その自由を守るのが、autonomyです。

HIPHOPCs編集部:もう一つ印象的なのが制作ペースです。1年で3枚のアルバムを発表するというのは、かなり速いですよね。なぜ今、これほどのペースで作品を残しているのでしょう?

Kiii:未来の自分に、「若かった自分は何を怖がっていたんだ?」と思わせたくない。

この時期の意味は、たぶん何年か経ってからの方がよく分かると思います。

でも、それでいい。

今の僕は、自分自身を完全に理解するより速いスピードで、自分自身を記録している。

いつか僕がなった男が、若い僕の残した証拠を見て驚いてほしいんです。

10年後に残っていてほしいもの

HIPHOPCs編集部:最後に、少し先の未来について聞かせてください。10年後に振り返った時、今回の日本での活動が、何の始まりになっていてほしいですか?

Kiii:インディペンデントのアーティスト同士が文化を交換する方法、そのルネサンスの始まりです。

日本とヒップホップの関係は、外から来た人間が「珍しいもの」として消費するだけでは足りないほど深い。

ヒップホップは、声を失ったように感じていた僕に声をくれた。

弱かった僕に力をくれた。

そして今、世界へ出るためのパスポートまでくれている。

それほど力のあるものを、誰かが門の前で管理するべきだとは思いません。

10年後、ただ「Kiiiが日本に行った」という話だけが残っていてほしくない。

人間関係、レコード、ツアー、そして新しい機会を遡っていった時、その始まりがここにあってほしい。

僕たちの距離は、業界が思わせていたほど遠くなかった。

それに気づいた瞬間として、今回の日本での活動が残っていてほしいです。

取材後記|送金先は、藤沢だった

海外アーティストの来日は、たいてい東京から始まる。Kiiiの日本は、藤沢から始まる。

『THE SIDE QUEST』の公式発表は、このツアーを「各地域のアーティスト、プロデューサー、会場、そしてインディペンデントなコミュニティと直接関係を築くことで実現した」ものだと説明している。10月30日のフライヤーは、その説明の実物だ。

ライブに名を連ねるザ・イルエストブラザーは、D.huskyとMSPのユニット。MSPはDINARY DELTA FORCEのメンバーで、SHEEFの『Piece is. EP』にも客演していた。DJのBAKU(KAIKOO)は、BLAHRMYとのジョイントアルバム完成が9月17日に配信されたばかりだ。

SHEEFが長く一緒に音を作ってきた面々の場に、Kiiiが入っていく。そういう夜になる。

「Wire Transfer」で、ビートはアメリカから日本へ渡り、ヴァースが送り返された。今度は本人が海を渡って、送金先の地元に立つ。

フライヤーの入場料は「2,000円」ではなく、「2,000縁」と書かれている。Kiiiは、この曲で動いているのは文化の通貨で、為替レートはないと言った。藤沢の側が用意していた単位は、縁だったようだ🤫

リリース/ツアー情報

Kiii『THE VIEW FROM HERE』

  • リリース日:2026年9月18日(予約受付は9月12日開始)
  • プロデュース:Kiii(「Free Lo」のみShawnIsADHD!との共同プロデュース)
  • 参加アーティスト:SHEEF THE 3RD、Stevie Crooks、Chi Sees、Matheus Coringa、Valente(SujoGround)、Yumz Awkword、Mélanje、LoTheDemigod(TSE4VR)

『THE SIDE QUEST』全日程

日付都市
9月19日(土)サンパウロブラジル
9月23日(水)サンパウロブラジル
10月17日(土)ロサンゼルスアメリカ
10月30日(金)藤沢日本
11月6日(金)渋谷(東京)日本
11月14日(土)京都日本
12月5日(土)ロンドンイギリス

日本初日|出吉舞ってる WITH SIDE QUEST TOUR

  • 日時:2026年10月30日(金)22:00〜翌5:00
  • 会場:江ノ島オッパーラ(神奈川県藤沢市片瀬海岸1-12-17 江ノ島ビュータワー4F)
  • 料金:2,000円(フライヤー表記は「2,000縁」)
  • SP LIVE:Kiii(from Sacramento, CA)、SHEEF THE 3RD
  • LIVE:ザ・イルエストブラザー(D.husky × MSP)、句潤、ENEMY
  • DJ:BAKU(KAIKOO)、BUNTA、Rhyme&B、SAW、yuidesudomo
  • BEAT LIVE:sarutobiii、MeS The Funk

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取材・構成:John Aira/原文:英語(日本語訳:HIPHOPCs編集部)

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