Eminem未発表曲流出事件:元エンジニアJoseph Strangeが10月22日に有罪答弁へ──2025年1月の発覚から司法取引までの経緯
Eminemの未発表曲をインターネットで売ったとして刑事告発された元エンジニアのJoseph Strangeが、現地時間2026年10月22日(木)に著作権侵害の罪で有罪答弁を行う予定である。The Detroit Newsの報道を引用したComplexが、9月15日に連邦裁判所の記録として伝えた。司法取引では、上限禁錮10年の盗品州際輸送の訴因が取り下げられる見通しで、Strangeは著作権侵害1件について上限禁錮5年に直面する。
要点:Joseph Strangeは2007年から2021年までEminemのサウンドエンジニアを務めた人物。ミシガン州ファーンデールのスタジオで、音源の入ったハードドライブに触れられる4人のうちの1人だった。
いまの段階:Complexによれば、著作権侵害1件の有罪答弁の予定日は現地時間2026年10月22日(木)。司法取引で盗品の州際輸送の訴因は取り下げられる見通しで、残る著作権侵害1件の上限は禁錮5年である。
起訴文書が示す範囲:2026年8月28日付の起訴文書(Information)は、2024年7月ごろから2025年1月ごろにかけて、180日間に一つ以上の著作物のコピーを計10点以上、権利者の許可なく複製・頒布したと訴追している。これはコピーの数量であり、流出した楽曲の数を示すものではない。
未確定:答弁の開始時刻は確認できておらず、日本時間では22日または23日にあたる。量刑期日は確認した資料に記載がない。
スタジオ側が気づいた未発表曲リストの画像
2025年1月16日ごろ。ミシガン州ファーンデールにあるEminemのスタジオの従業員が、FBIに連絡を入れた。Rolling Stoneが刑事告発状をもとに伝えているところによれば、従業員はEminemの未発表曲が流出し、売りに出されていることに気づいた。さらに、ネット上にあった未発表曲のタイトル一覧の画像を、スタジオのハードドライブから撮られたものだと認識した。
2025年3月の告発状によれば、無断で公開・配布された25曲超は、1999年から2018年に制作されたものだった。XXLによると、Ja RuleとSuge Knightに触れた未発表曲もその中に含まれていたという。
ファーンデールのスタジオでハードドライブに触れられたのは4人だけだった。Strangeと、別のエンジニア2人(うち1人はStrangeの叔父)、そしてマネージャー。使っていないときは金庫に入れていた。XXLが告発状を引用して伝えている管理体制である。
1月28日の家宅捜索、3月19日の刑事告発
FBIは未発表曲を買った複数の人物を特定し、そのいずれもが売り手としてJoseph Strangeの名前を挙げた(Billboard)。2025年1月28日、捜査当局がStrangeのミシガン州ホリーの自宅を捜索した(告発状、連邦検察のプレスリリース)。そこで見つかったのはEminemの手書きの歌詞やメモ、未公開のミュージックビデオが収録されたVHSテープ、そして本人と共作者たちの音源が入ったハードドライブだった。
2025年3月19日(水)、ミシガン州東部地区の連邦検察が刑事告発を発表した。発表したのはJulie Beck連邦検事代行。罪名は著作権侵害と、盗品の州際輸送の2件である。プレスリリースによれば、流出した音源はEminemが「まだ制作の途中だった」ものだった。
「創作者の排他的な権利を守るうえで、知的財産を窃盗犯から守ることは決定的に重要だ」。Beck検事代行の声明を、BillboardとRolling Stoneがそろって引用している。捜査を担当したのはFBIデトロイト支局オークランド郡分駐所、訴追はTimothy Wyse、Alyse Wuの両連邦検事補(連邦検察のプレスリリース)。
司法取引で取り下げられる訴因と、残る1件
刑事告発だけでは裁判に進むとは限らない。捜査のあとに重罪の正式起訴を求めるかどうかが判断される、とXXLは2025年3月の時点で書いている。2026年8月28日、ミシガン州東部地区連邦地裁に著作権侵害1件の起訴文書(Information)が提出された(事件番号2:26-cr-20567)。表紙には2025年の告発事件25-mj-30160に基づく旨が記されている。
Joseph Strangeが10月22日に有罪答弁を行う予定であることを、Complexは9月15日に連邦裁判所の記録として伝えた。認めるのは著作権侵害1件。上限禁錮10年の盗品州際輸送の訴因は、司法取引で取り下げられる見通しである。残る1件の上限は禁錮5年で、罰金は25万ドルまで(連邦検察のプレスリリース)。実際の量刑は答弁のあとの手続きで決まり、確認した資料に量刑期日の記載はない。
2026年8月28日付の起訴文書(Information)は、2024年7月ごろから2025年1月ごろにかけて、180日間に一つ以上の著作物のコピーを計10点以上、権利者の許可なく複製・頒布したと訴追している。これはコピーの数量であり、流出した楽曲の数を示すものではない。2025年1月にネット上へ現れたと報じられた25曲超とは、集計の対象も単位も異なるため、直接比較できない。
この文書は検察が何を訴追したかを示すもので、答弁合意書そのものではない。答弁で本人がどこまで認めるかについては、Complexが「未発表曲のコピーおよそ10件を流出させたことを認める見込み」と伝えている。訴追の範囲と、答弁で認める範囲は分けて読む必要がある。
弁護人のWade Finkは、双方の負担を抑えるために解決交渉を続けてきたと説明し、それは依頼人にとって公正な結果になる場合に限るとも述べた。Finkは、依頼人が自身と家族のために判断するとの見方を示した。一方、告発内容は真実とかけ離れていると主張している(Complex)。
ビットコインで売られていた未発表曲
捜査側は、Strangeが未発表曲をビットコインで売っていたと見ている。告発状によると、買い手の「Doja Rat」はカナダ・オンタリオ州の購入者で、ファンのグループと資金を出し合い、約6か月間に約5万ドル相当のビットコインをStrangeに送ったとFBIに話した。買った曲は25曲ほどだという。
接点は、StrangeがDope Editの名前で運営していたYouTubeのチャンネルだった。やり取りはDiscordからSignalへ移り、2024年8月に約4曲を8,500ドルで買ったのが最初の取引だったと告発状にはある。ネット上に曲が公開されたのは、資金を出したファンのグループの誰かによるものだとDoja Rat本人は考えている、とも記されている。
この経路が浮かんだきっかけは、英国にいるファンからの情報提供だった。Eminem側のFred Nasserが流出音源の拡散をやめるよう呼びかけた投稿に反応した人物が、「Doja Rat」を名乗る相手とのやり取りをNasser経由でFBIへ渡した。告発状はそのやり取りをこう要約している。「Doja Ratは、Joseph Strangeという、Mathersの元従業員である男から曲を買ったと主張した。Doja Ratは、Joseph Strangeにおよそ5万ドルを支払ったと主張した」。
Eminem側は何を言ってきたか
Strangeが働き始めたのは2007年。エンジニアとしてクレジットされているのは、2009年の『Relapse』から2020年の『Music to Be Murdered By』までのアルバムである。2021年に契約が終わった(Complex)。
今回の答弁予定を受けて、Complexが伝えたEminemの広報担当Dennis Dennehyの声明は厳しい。「この件の当初に述べたとおり、Joe Strangeが引き起こした損害の大きさは、言い尽くせるものではない。StrangeはEminemの作品を守ることを託されていた。彼が自らの犯罪行為について責任を問われるのを見るのは納得のいくことだが、法の許す限りの処罰を受けることを望む。この男が長年にわたって重ねた嘘と欺瞞、犯罪の程度は、理解しがたく、忘れがたく、法的にも道義的にも非難に値する」。
2025年3月の告発時点でも、Eminemの長年の広報担当がXXLに声明を出していた。FBIデトロイト支局の捜査への謝意に続けて、「信頼していた従業員がEminemの芸術的な遺産と創作上の誠実さに与えた損害は言い尽くせない。それに加えて、数十年分の仕事を守られるべき多くの創作者や共作者が被った経済的損失も大きい」。
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事件の舞台になったファーンデールとデトロイトは、本誌のRap Atlas US:デトロイトでEminemと8 Mile Road周辺まで扱っている。連邦の刑事事件がその後どう進んだかは、Lil Durk事件の全経緯まとめで追った。Eminemが2025年8月、映画『Stans』の公開に合わせて未発表曲「Everybody’s Looking At Me」をリリースした件はこちらの記事にまとめている。
FAQ
Joseph Strangeはどういう立場の人物か
Eminemのサウンドエンジニアで、2007年から2021年まで働いていました。XXLが刑事告発状を引用して報じたところでは、ミシガン州ファーンデールのスタジオで、音源の入ったハードドライブに触れられる4人のうちの1人でした。エンジニアとしてのクレジットは2009年の『Relapse』から2020年の『Music to Be Murdered By』まで(Complex)。
10月22日に何が起きるのか
Complexが連邦裁判所の記録として伝えているのは、Strangeが著作権侵害1件で有罪答弁を行う予定日が現地時間2026年10月22日(木)だということです。開始時刻は確認できておらず、日本時間では22日または23日にあたります。答弁は量刑そのものではなく、量刑期日については確認した資料に記載がありません。
刑はどれくらいになるのか
著作権侵害の上限は禁錮5年、罰金は25万ドルまでです(連邦検察のプレスリリース)。盗品の州際輸送(上限禁錮10年)は、司法取引で取り下げられる見通しです。実際の量刑は答弁のあとの手続きで決まります。
流出した曲は何曲で、いつのものか
2025年3月の告発状によれば、無断で公開・配布された25曲超は、1999年から2018年に制作されたものでした。一方、2026年8月28日付の起訴文書(Information)が訴追しているのは、2024年7月ごろから2025年1月ごろにかけて、180日間に一つ以上の著作物のコピーを計10点以上、権利者の許可なく複製・頒布したことです。後者はコピーの数量であり、流出した楽曲の数ではありません。集計の対象も単位も異なるため、直接比較はできません。
買った側は罪に問われるのか
確認した資料の範囲では、買い手が訴追されたという記載はありません。捜査当局は複数の購入者を特定し、彼らの証言から売り手としてStrangeを割り出しました(連邦検察のプレスリリース)。約5万ドル相当のビットコインを送ったオンタリオ州の購入者「Doja Rat」も、FBIの事情聴取に応じた人物として告発状に出てくるだけで、訴追されたという記載はありません。
出典
- United States v. Strange, 2:26-cr-20567(ミシガン州東部地区連邦地裁)の起訴文書(Information、ECF No. 20、2026年8月28日提出)— 訴追事実は「2024年7月ごろから2025年1月ごろにかけて、180日間に一つ以上の著作物のコピーを計10点以上、権利者の許可なく複製・頒布した」。小売価格の合計が2,500ドルを超えるとも記載。適用条文は17 U.S.C. § 506(a)(1)(A)、18 U.S.C. § 2319(a)・(b)(1)。表紙には2025年の告発事件25-mj-30160に基づく旨がある。
- 同事件の刑事告発状と、FBI特別捜査官による宣誓供述書(ECF No. 1、2025年3月19日提出)— 25曲超が1999年から2018年に制作されたものであること(第11項)、「Doja Rat」がオンタリオ州の31歳の男性であること(第20項)、約6か月間に約5万ドル相当のビットコインを送り25曲ほどを買ったこと(第23・24項)。
- Complex「Former Eminem Engineer Set to Accept Guilty Plea Deal For Leaking Unreleased Songs」(2026年9月15日、Joe Price)— 10月22日の答弁予定、答弁で認める見込みの範囲、Dennis Dennehyと弁護人Wade Finkのコメント。同記事はThe Detroit Newsを出どころとして示している。Complexは答弁の対象を「未発表曲1曲のコピーおよそ10件」と書いているが、起訴文書の文言は「一つ以上の著作物のコピー10点以上」であり、本稿は訴追の範囲を起訴文書に従って書いた。流出音源の制作年代についても、本稿は告発状の記載(1999年から2018年)に従った(Complexは1998年からと記載)。
- Billboard「Eminem’s Former Employee Criminally Charged With Selling the Rapper’s Unreleased Music Online」(米東部時間2025年3月19日。記事の構造化データはUTC表記で3月20日)— 3月19日の発表、罪名と量刑の上限、捜査・訴追の担当。
- Rolling Stone「Eminem’s Ex-Employee Charged With Selling Rapper’s Unreleased Music」(米東部時間2025年3月19日。記事の構造化データはUTC表記で3月20日)— 2025年1月16日の通報、リスト画像とハードドライブの照合。
- XXL「Eminem’s Former Employee Caught Stealing and Selling Unreleased Songs for $50,000」(米東部時間2025年3月19日。記事の構造化データはUTC表記で3月20日)— ハードドライブの管理体制、1月28日の家宅捜索、告発状の「Doja Rat」に関する記述、2025年3月時点のEminem広報の声明。
- 米司法省ミシガン州東部地区連邦検察「Former Employee of Marshall Mathers, AKA Eminem, Charged With Criminal Infringement of a Copyright and Interstate Transportation of Stolen Goods」(2025年3月19日)— 発表日、被告の居住地(ミシガン州ホリー)、罪名2件、上限刑(著作権侵害は禁錮5年・罰金25万ドル、盗品の州際輸送は禁錮10年)、Julie Beck連邦検事代行とFBIデトロイト支局のCheyvoryea Gibson特別捜査官による声明、担当のFBIオークランド郡分駐所と連邦検事補Timothy Wyse・Alyse Wu。justice.govが直接のアクセスにボット判定を返すため、2026年9月17日にInternet Archiveの2025年3月19日時点の保存版で本文を確認した。9月16日時点ではBillboardとRolling Stoneの引用に依拠していた。
- Strangeの年齢について、Complexは48歳、XXLは2025年3月時点で54歳としており、資料間で食い違っていた。告発状と連邦検察のプレスリリースは2025年3月時点で46歳としている。本記事では年齢を記載していない。
- 家宅捜索を受けた自宅の所在地について、Complexはデトロイトとしていたが、告発状と連邦検察のプレスリリースはいずれもミシガン州ホリーとしている。本記事は後者に従った。
画像クレジット
アイキャッチ:Eminem本人のInstagram(@eminem)が2026年4月11日に投稿した亡き盟友Proofを追悼する投稿の1枚目(Eminem本人とProof。本件の事件とは関係のない写真)(投稿ページ)。掲載用に縮小(元ファイル 800×533px)。
更新ログ
2026年9月17日:裁判所に提出された起訴文書(Information)と2025年の告発状、連邦検察のプレスリリースの原文を確認し、記述を差し替えた。訴追されているのは「一つ以上の著作物のコピーを計10点以上」であり、当初書いた「未発表曲1曲のコピーを10件以上」という限定を改めた。流出音源の制作年代は告発状の記載に従い、1998年からを1999年からに訂正。ビットコインでの取引の説明を告発状に基づいて一本化し、2026年8月28日の起訴文書提出という経緯を加えた。罪名ごとの上限刑と罰金の説明は司法取引の節にまとめ、関連記事へのリンクを独立させ、アイキャッチを差し替えた。最終確認日は2026年9月17日。
2026年9月16日:原稿作成・資料確認。最終確認日は2026年9月16日。10月22日の答弁、量刑期日、検察発表の原文について続報が出た場合は本記事に追記する。事実関係の誤りを見つけた場合は、お問い合わせから連絡してほしい。訂正が生じた場合はこの欄に記録する。