「AIではない」50 Cent×Eminem×2Pac、『Street Fighter』主題歌へが22年前の論争を呼び戻す
最終確認:2026年7月26日 本稿では、50 Cent本人が語った内容、映画公式情報から独立して確認できる事実、現時点では確認できない情報を分けて記載している。
50 Cent(Curtis Jackson)が、Eminemと2Pacの未発表ボーカルを使った新曲を制作し、実写映画『Street Fighter』の主題歌として発表すると明かした。
50 Cent自身もBalrog役で出演する映画は、カプコンとLegendary Entertainmentが共同製作し、Paramount Picturesが配給する。公開予定日は2026年10月16日。楽曲については、本人が米NBCの朝番組『Today』出演時に「じきに出る」と説明している。
だが、このニュースで最も重要なのは、50 Cent、Eminem、2Pacという名前の大きさだけではない。
50 Centは、誰かに質問されるより先に、一つの説明を加えた。
使用した2Pacの声は、AI生成ではない。
この一言は、楽曲の補足情報ではない。2026年に故人の声を世に出すうえで、最初に提示しなければならなくなった真正性の証明である。
そして、この三者の組み合わせは初めてではない。22年前、Eminemが中心となって制作した2Pacの遺作アルバム『Loyal to the Game』には、50 Cent率いるG-Unitも参加していた。
商業的に成功しながら、故人の声をどこまで加工していいのかという批判を残した作品である。
今回起きているのは、単なる「夢の共演」ではない。
一度きしんだ三者の組み合わせが、AIによって声そのものを作れる時代に、別の順序で戻ってくる。
速報:50 Centが明かしたこと
現在までに報じられている内容を整理する。
| 項目 | 現時点の情報 | 確認状況 |
|---|---|---|
| 楽曲 | 50 Cent、Eminem、2Pacの未発表ボーカルを含む新曲 | 50 Cent本人の発言 |
| 用途 | 映画『Street Fighter』のテーマ曲・主題歌 | 50 Cent本人の発言 |
| 2Pacの声 | AI生成ではなく、未発表カタログに残されていた実際のボーカル | 50 Cent本人の説明 |
| 音源の提供 | 2Pacのエステート側から提供されたと説明 | 50 Cent本人の説明 |
| 遺族・エステートの反応 | 完成した楽曲を気に入ったと50 Centが発言 | エステート側の独立声明は未確認 |
| リリース時期 | 「coming out shortly」と説明 | 正式な日付は未発表 |
ここで大切なのは、「50 Centがそう説明した」という事実と、その内容が第三者によって独立確認されたかどうかを分けることである。
50 Centがテレビ番組で楽曲の存在と内容を語ったことは確認できる。一方、2PacのエステートやEminem本人から、この曲に関する独立した正式声明は、本稿公開時点では確認できていない。
まだ確認できていないこと
- 曲名は発表されていない。
- 正式なリリース日と配信形態は発表されていない。
- Eminemがラップ、プロデュース、作詞、エグゼクティブ・プロデュースのどこまでを担当するのかは明らかにされていない。
- 使用される2Pacのボーカルが、いつ、どのセッションで録音されたものなのかは不明である。
- ボーカルのピッチ、テンポ、単語、構成に、どの程度の編集が加えられているかは分からない。
- 2Pacの遺族、Shakurエステート、Amaru Entertainment、Interscopeからの独立した公式声明は確認できていない。
- 最終的なアーティスト名義、フィーチャリング表記、楽曲クレジットも未発表である。
つまり、現時点で確認できるのは、完成した楽曲の音そのものではなく、50 Centによる説明までである。
映画『Street Fighter』側で確認できること
映画については、カプコン、Legendary Entertainment、Paramount Picturesの公式情報から、次の内容が確認できる。
- 公開予定日:2026年10月16日
- 製作:カプコン、Legendary Entertainment
- 配給:Paramount Pictures
- 監督:Kitao Sakurai
- 舞台:1993年
- 主要キャスト:Andrew Koji(Ryu)、Noah Centineo(Ken Masters)、Callina Liang(Chun-Li)
- 50 Cent:Balrog役として出演すると報じられている
- 日本との接点:E.本田役として新日本プロレスの後藤洋央紀が出演
カプコンの日本語公式発表にも、公開予定日は2026年10月16日と記載されている。したがって「日本公開日は不明」と断定するのではなく、日本向けの上映館、宣伝、吹替、サウンドトラック展開などの詳細が今後どのように発表されるかを焦点とする方が正確である。
なぜ22年前の『Loyal to the Game』に戻る必要があるのか
このニュースを「レジェンド三人による豪華コラボ」として消費すると、最も重要な歴史を取り落とす。
2004年12月14日、2Pacの遺作アルバム『Loyal to the Game』がAmaru Entertainment/Interscopeから発売された。
Eminemがアルバム制作の中心を担い、Luis Restoと共に、2Pacが生前に残していた主に初期のボーカルへ新しいプロダクションを与えた作品である。
商業的には成功した。米Billboard 200で初登場1位を獲得し、2005年2月15日にはRIAAのプラチナ認定を受けている。
しかし、作品としての評価は割れた。
批判の中心にあったのは、2Pacの声を使ったこと自体ではない。彼の声とフロウを、Eminem側のサウンドや2000年代の文脈へ合わせるために、どこまで手を加えたのかという問題だった。
ボーカルのピッチやテンポが変更され、録音された言葉を組み合わせることで、2Pacが生前には使うはずのなかった当時の固有名詞や表現が作られたと指摘された。
AllMusicも、Eminemの制作に敬意と技術があることを認めながら、2Pacの声やリズムに対して彼のプロダクションが必ずしも最適ではなかったと評している。
重要なのは、『Loyal to the Game』が単純な失敗作ではないことだ。
商業的には成功し、制作意図にも敬意があった。それでも、故人の声を現代の音へ合わせる行為は、本人の表現を更新したことになるのか、それとも上書きしたことになるのか。
その答えが出ないまま、作品は残った。
さらに、アルバムのタイトル曲「Loyal to the Game」には、50 Cent率いるG-Unitがクレジットされている。2Pac名義の「The Realist Killaz」には、50 Cent本人もフィーチャリングで参加している。
つまり、今回のニュースは初対面の三者が出会う話ではない。
2004年にはEminemが2Pacのカタログを動かし、その作品に50 Centが参加した。2026年には50 Centが起点となり、Eminemと2Pacのカタログを映画へ引き寄せている。
三者の名前は同じでも、権力の中心が入れ替わっている。
HIPHOPCsの視点:本物の声でも、本人の意思とは限らない
今回のニュースの本質は、三つある。
1. 「AIではない」が作品情報になった
2004年、未発表2Pac音源をめぐる争点は「本人の声に、どこまで手を加えていいのか」だった。
声が2Pac本人のものであることは、疑う必要のない前提だった。
2026年、その前提は消えた。
現在は、故人の声に似た音声をAIで生成できる。既存のボーカルを変換し、本人が一度も発していない言葉を、本人の声に近い音で歌わせることも技術的には可能になった。
だから50 Centは、曲の内容や2Pacのバースについて詳しく説明するより先に、声の出自を保証した。
かつては「実際の音源を加工したこと」が減点要素だった。いまは、その前段階にある「少なくとも実際の音源から始まっている」こと自体が加点要素になっている。
「NO AI」は、制作手法の説明であると同時に、音楽の信頼性を売るための表示になった。
2. 声の真正性と、本人の意思は別である
ただし、「AIではない」と確認できれば、すべての問題が解決するわけではない。
| 確認すべき層 | 問い | 現時点 |
|---|---|---|
| 音源の真正性 | 本当に2Pac本人が生前に録音した声なのか | 50 Centは実音源だと説明 |
| 利用許諾 | 音源を管理する権利者が使用を認めたのか | 50 Centはエステートが提供・承認したと説明 |
| 本人の意思 | 2Pac本人が、この映画、この曲、この編集方法を望んだのか | 本人が不在である以上、完全な確認は不可能 |
本物の声であること、権利者が許可していること、本人の意思に沿っていることは、同じではない。
AIではないという説明が解消できるのは、主に一つ目の疑いである。
エステートの許諾が確認できれば、法的・管理上の問題は前へ進む。しかし、それでも「Pac自身が、この使われ方をどう思うか」という最後の問いは残る。
故人の音楽を管理するエステートは、声を所有していても、本人の意思そのものを所有しているわけではない。
だから、AIかどうかだけを論点にすると、死後リリースの本質を見失う。
3. 50 Centは一本の映画で三つの席を取った
50 Centは、この映画にBalrog役として出演する。
同時に主題歌を制作し、そこへEminemと2Pacの未発表カタログを引き寄せた。
- 俳優としてスクリーンに立つ
- 音楽制作者として映画の音を担う
- 交渉者として、巨大なアーティストと故人のカタログを動かす
この三つを同時に成立させている。
G-Unit Film & TelevisionやSTARZで映像事業を積み上げてきた50 Centの立場が、音楽へ戻ってきた形である。
ここで記録されるべきなのは、2Pacの音源が使われたという事実だけではない。
誰が、その音源を動かすことができたのか。
2004年はEminemだった。2026年は50 Centである。
日本発IPと2Pacの未発表音源が交わる意味
日本の読者にとって見落としやすいのは、このニュースが作っている交差点そのものである。
『Street Fighter』は、カプコンが1987年から展開してきた日本発のゲームIPだ。今回の映画には、新日本プロレスの後藤洋央紀もE.本田役として参加する。
一方、2Pacの未発表音源は、アメリカのヒップホップ史、ブラック・ミュージックの所有権、故人のカタログ管理という文脈に属している。
日本語圏では、映画は「人気ゲームのハリウッド実写化」として報じられ、2Pacの音源は「海外ヒップホップの大型コラボ」として別々に扱われやすい。
だが実際には、日本企業が育てた世界的IPの映画が、1996年に亡くなった黒人アーティストの未発表音源を主題歌へ組み込むという出来事が起きている。
これは音楽ニュースであると同時に、グローバルIPと死後カタログが結びつく音楽ビジネスのニュースでもある。
Billboard JAPANは2025年12月、50 Centが『Street Fighter』のサウンドトラックにEminemを迎える可能性を示した件を報じていた。
しかし、その時点では2Pacの未発表音源、エステートによる提供、そして「AIではない」という説明は出ていなかった。
今回加わった情報によって、ニュースの性格は変わっている。
今後の焦点
- 曲名とリリース日。映画公開前のどの時点で配信されるのか。
- Eminemの参加形態。ラップ、プロデュース、作詞、ミックスのどこまでを担当するのか。
- 2Pacの録音時期。どのセッションのボーカルが使われるのか。
- 編集の範囲。ピッチ、テンポ、単語、バース構成にどこまで手が加えられているのか。
- エステートの公式声明。50 Centを通じた説明とは別に、Shakur家や管理団体が正式な見解を出すか。
- クレジット表記。2Pacがフィーチャリング、共同名義、アーカイブボーカルのどの形で記載されるか。
- 検証可能性。「AIではない」という説明を、クレジットや音源管理の履歴によって第三者が確認できるか。
- 映画とサウンドトラック全体。他の参加アーティストや、日本市場での展開がどう発表されるか。
FAQ
2Pacの声はAIなのか?
50 Centは、AI生成ではなく、2Pacが生前に録音した未発表ボーカルだと説明している。ただし、音源の詳細や第三者が検証できる資料は現時点で公開されていない。
楽曲のリリース日はいつか?
正式な日付は未発表。50 Centは「じきに出る」と発言している。映画は2026年10月16日に公開予定である。
Eminemはラップで参加するのか?
現時点では不明。Eminemがラッパーとして参加するのか、プロデューサーとして参加するのか、または両方なのかは発表されていない。
2Pacの遺族は承認しているのか?
50 Centは、遺族とエステートが完成した楽曲を気に入ったと説明している。ただし、遺族やエステートからの独立した公式声明は確認できていない。
映画『Street Fighter』の公開日はいつか?
カプコン、Legendary Entertainment、Paramount Picturesの公式情報では、2026年10月16日公開予定となっている。
主要参照リンク
- Billboard:50 Cent Teases 2Pac & Eminem Collab for ‘Street Fighter’ Soundtrack
- Complex:50 Cent Confirms ‘Street Fighter’ Theme Features Eminem and Unreleased Tupac
- The Source:50 Cent Taps Eminem and Unreleased Tupac Record for ‘Street Fighter’ Soundtrack
- カプコン公式
- Legendary Entertainment公式
- Paramount Pictures公式
- AllMusic
- RIAA
- Billboard JAPAN
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