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MGK×千葉雄喜「JJK」考察──MGKは「なる」、千葉雄喜は「である」。2つのヴァースに刻まれた、アニメとの距離

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米国時間7月28日(日本時間29日)、MGKと千葉雄喜のコラボレーション・シングル「JJK」が配信された。本誌が第一報で報じた一曲だ。

タイトルの「JJK」は『呪術廻戦』の英題略称。ただし、これを「アニメ好きのUSスターが日本のラッパーとアニメの話をした曲」として聞くだけなら、いちばん面白いところを素通りすることになる。

歌詞を通して読むと、2人はまったく違うことをやっている。MGKはアニメに「なろう」とし、千葉雄喜はアニメで「自分である」ことを説明している。同じ題材を使って、向きが正反対だ。

トラックはNo Love for the Middle Child、BazeXX、SlimXXの3人によるもの(Complex)。ミュージックビデオの監督はSam Cahill。日本風の寺院を2人が歩く映像で、Complexによれば全編がモノクロ、そのなかでMGKだけが黄色、千葉だけが赤で抜かれている。アニメーション仕立てのシングル・アートワークはMaggiolinaが手がけた。

千葉雄喜の側から見れば、この曲は突然の出来事ではない。Megan Thee Stallion「Mamushi」(2024年)、Will Smithが参加した「TEAM TOMODACHI (REMIX)」(2024年11月)、そしてBig Sean「Ski Ga Ski(隙が好き)」(2025年10月)。USスターとの共作を積み上げてきた線の、いちばん新しい点にあたる。

その「Ski Ga Ski」の音源を米国で最初に出したのは、音楽メディアではなかった。アニメ配信大手Crunchyrollが、自ら「EXCLUSIVE」「Debut」と掲げて公開している(米国時間2025年10月17日)。

曲の初披露はさらに1か月前だ。9月18日、LAのThe Roxy。千葉にとって初の米国ヘッドライン公演に、Big Seanがサプライズで現れた。2人はその日の午後に録り終えたばかりの曲を、その場で披露している。

アニメという回路は、MGKが来る前から開いていた。

そのMGKは8月14日の大阪を皮切りに、15日・16日の東京まで、SUMMER SONIC 2026の3日すべてでステージに立つ。来日直前のリリースである。

なお、本稿の執筆にあたり歌詞は千葉雄喜の所属マネジメントより提供を受けた。記して感謝したい。本稿は歌詞の転載ではなく読解に徹する。本文中の英語ヴァースの逐語引用はComplexが記事中に引いた行に限り、引用符の中以外はすべて筆者の要約と解釈である。

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MGKのヴァース──参照の速射カタログ

MGKのヴァースは、参照の密度で押し切る設計だ。

『呪術廻戦』の五条悟と六眼から入る。『鬼滅の刃』の刀、『チェンソーマン』、『HUNTER×HUNTER』のキルアと神速。そこからまた『呪術廻戦』に戻って、脹相の血の操術、伏黒の式神、虎杖悠仁。さらに『新世紀エヴァンゲリオン』、『ドラゴンボール』のクリリンの気円斬、『NARUTO』の九尾、『デスノート』のリューク。ここまでで8作品。まだヴァースは終わっていない。

動詞を見るといい。Complexが引いた行は「JJK, I’m going gojo, six-eye technique」で始まり、少し先で「”Hunter x Hunter,” I’m like Killua, goin’ Godspeed」と続く。I’m going、I’m like。「〜になる」「〜みたいにやる」という変身の文法だ。キャラクターは到達目標であり、憑依の対象になっている。

告知の時点で、それは出ていた。MGKはリリース前日、千葉雄喜と並んだ写真をインスタグラムに上げ、「ANIME GANG」と書いた。曲の中身より先に、どこに属しているかを言う。

このヴァースで最も気の利いた仕掛けは、『チェンソーマン』への言及に「ラップの悪魔」という自称を重ねた行だ。Complexが引用した原文は「”Chainsaw Man,” I’m the rap devil, who the fuck try me?」。悪魔がモチーフのアニメと、2018年にMGKがEminemへのアンサーとして放った「Rap Devil」が、一行の中で重なっている。あのタイトルを8年越しに鳴らし直している──と読める(解釈は筆者のもので、本人の言明はない。Complexも見出しでこの自己引用を拾っている)。

アニメ参照の羅列に見えて、自分のキャリアの傷跡がちゃんと縫い込まれている。イッセイミヤケに日本デニムを合わせる着装の行も含め、MGK側は一貫して「日本を纏う」演出だ。

参照はアニメにも閉じていない。モータルコンバットのリュウ・カン、『リック・アンド・モーティ』のピクルス・リック、そしてGothBoiClique。USエモラップの系譜への目配せまで混ざる。

MGKが見せているのは「日本アニメに詳しい」ことではない。ゲームもカートゥーンもエモも同じ棚に並んでいる、雑食のオタク体験そのものだ。日本のアニメは、その棚のいちばん大きな一角として真ん中に置かれている。

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千葉雄喜のヴァース──本棚の自画像

千葉雄喜のヴァースは、カタログではない。自画像だ。

冒頭、『呪術廻戦』の領域展開を宣言して自分たちを主人公の側に置く。ここまでは同じだ。だが、その後の使い方が決定的に違う。

ルフィに例えるのは自分ではなく「友達」。自称ではなく伝聞の形を取る。コジコジには「食って寝て遊ぶ」自由の哲学を託し、『ザ・ファブル』には「殺すより生かす」という反転を託す。殺し屋が主人公なのに殺さない、あの漫画の設定を借りて、ラップの定型的な威嚇(やってしまうぞ)を裏返している。

轟焦凍の冷と熱の半々、スピードワゴン財団の懐の厚さ、レオリオの金と酒、『美味しんぼ』と『トリコ』の食。キャラクターは到達目標ではなく、自分の性格と生活を説明するための語彙として使われている。

そして頂点が、虎杖悠仁と千葉雄喜を「正直者」という一語で並べる行だ。ユウジとユウキ。音の近い名前を持つ『呪術廻戦』の主人公と自分を等号で結び、その根拠を強さではなく正直さに置く。

飾らない一人称で団地の日常を差し出すところから始まったキャリアを知っていれば、この自己規定は韻遊びでは済まない。ヴァースの締めは、生まれ育った東京。参照の旅は、必ず自分の住所に帰ってくる。

選ばれている作品も違う。コジコジ、『美味しんぼ』、『ザ・ファブル』。MGKが並べる世界的な定番と比べれば、はるかに国内の視聴・読書体験に寄ったタイトルだ。

MGKの参照が世界に輸出されたヒットのカタログだとすれば、千葉の参照は国内の本棚である。バトル漫画に限らず、ギャグ、グルメ、青年誌まで跨ぐその並びは、「勉強したアニメ」ではなく「家に置いてあった漫画」の質感を持つ。

習得した教養と、生まれ育った家具。2つのヴァースのアニメとの距離は、そのまま太平洋の幅だ。

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『サムライチャンプルー』の一行が背負う22年

千葉のヴァースには『サムライチャンプルー』への言及もある。何気ない一行に見えて、この曲では意味が重い。

2004年、渡辺信一郎が監督し、音楽をNujabes、Tsutchie、Fat Jon、FORCE OF NATUREが手がけた作品。オープニングの「battlecry」は、Nujabesのトラックの上でShing02が英語でラップする曲だった。日本のアニメと日本のヒップホップが、最初から英語で外へ出ていた。

adult swim枠で米国の若者に届いたこの作品は、今のUSラッパーがアニメを語る土壌の一つになった。つまり「JJK」は、『サムライチャンプルー』が開けた道の先に立っている。

かつてUSのヒップホップは日本をサンプリングした。借りて、切って、貼る関係だ。Meganと千葉の「Mamushi」では、日本語そのものがHot 100まで運ばれた。そして「JJK」では、日米のラッパーがアニメという共有財産の上で共作している。借りるから、一緒に持つへ。

「JJK」が到達した場所

「なる」と「である」の非対称は、優劣ではなく分業である。MGKが橋を架け、千葉が土地を証明する。橋だけでは渡る意味がなく、土地だけでは誰も来ない。この分業が成立しているからこそ、英語ヴァースと日本語ヴァースがどちらも翻訳されないまま1曲に同居できる。

千葉雄喜の側から見れば、この曲は明確な線の上にある。「チーム友達」で国内のリミックス網を作り、「Mamushi」ではHot 100に初登場68位で入り、最高36位まで上げた。初週の再生数は730万回。日本語詞のまま米国のチャートを上っていった数字だ。そして「JJK」では、日米が対等に持っている文化の上で共作している。

来日の中身も、この曲の話とずれていない。MGKは8月14日の大阪、15日・16日の東京と、SUMMER SONIC 2026の3日すべてに名前がある。大阪8/14と東京8/16はBABYMETALがキュレーションするSONIC “METAL” STAGE、東京8/15はMARINE STAGE。ラッパーがメタルのステージと大箱のメインを行き来する招かれ方は、ゲームもカートゥーンもエモも跨いで参照を並べたこの曲の作りとよく似ている。リリース告知では、サマソニの後に日本でのポップアップも予告された。

そして、これは往復になっている。

千葉雄喜は今年、自身初の北米ヘッドライン・ツアーを回る。11月3日のサンディエゴを皮切りに、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトル、ニューヨーク、ワシントンD.C.、そして12月2日のアトランタ。確認できるだけで7都市だ。

プロモーターの表記は「First North America Headline Tour」。バンクーバーとトロントのカナダ2公演も確認でき、「北米」の名に実体がある。ワシントンD.C.のUnion Stage公演は、7月29日時点ですでにSOLD OUTになっている。

去年のThe Roxyは一本きりだった。8月にMGKが日本のステージに立ち、11月に千葉が米国の小屋を回る。「JJK」は、その往復の途中に置かれた曲だ。

見るべきは初動チャートと、この3日間でこの曲がどう鳴るかだ。来日の直前に出したのは、当然、偶然ではない。

主要参照:

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