2026年9月第2週ヒップホップニュース|Lil Durk無罪評決、Jay-Z控訴棄却──決着のあとに残るもの
文責:Rei Kamiya/HIPHOPCs Intelligence Unit
対象期間:2026年9月7日(月)〜9月12日(土)23:59〈日本時間〉。米欧の出来事は現地日付を併記し、対象期間への採否は日本時間で判断する。
お急ぎの方へ:まずランキングと結びへ。国内の週末情報は国内ウォッチにまとめた。
9月11日金曜の夕方、ロサンゼルス。
陪審が評決を読み上げると、Lil Durk(リル・ダーク)はうつむいて泣いた。5つの罪状すべてで無罪。それでも、その日のうちに法廷の外へ出ることはなかった。分離された別の起訴の公判が、来月に控えている。
同じ週の水曜、カリフォルニアの控訴裁判所はJay-Z(ジェイ・Z)の訴えを退けた。判決文には、告発そのものの真偽については判断していない、という一文が置かれていた。
火曜には、Rod Wave(ロッド・ウェイヴ)が4枚目の全米1位を取った。数字は99,000。10万に届かなかったことが、1位と同じくらい語られた。
評決、判決、順位。今週は「答え」が次々に出た。
ただ、その答えはどれも、一枚の紙に収まらなかった。無罪評決の先に次の公判があり、控訴棄却の中に「真偽は判断しない」の一文があり、首位の裏に届かなかった数字がある。答えが何を決めて、何を決めなかったのか。今週はそこをたどる。
2026年9月第2週のヒップホップニュースランキング
HSIは本誌が選んだニュースの編集指数。採点内訳は末尾の付録へ。数字を作品の良し悪しや、人物の価値に読み替えない。
1位|Lil Durk──無罪評決と、まだ続く拘置
HSI 85
9月8日、ロサンゼルス連邦地裁で最終弁論が行われた。公判13日目。検察のIan Yanniello検事補は、この事件はラップの話でも有名人の話でもなくSaviay’a Robinsonの話だと述べ、King Von(キング・ヴォン)の死への報復としてQuando Rondo(クアンド・ロンド)を狙ったという構図を示した。
弁護側のDrew FindlingとBrian Steelは、協力証人の信用性を正面から争った。終身刑を避けるためにDurkを巻き込んだ、という主張である。Findlingは元アシスタントのKavon Grantを「詐欺師」と呼び、Steelも協力証人らを厳しく追及した。
評議は9月9日に始まり、3日目の11日夕方に結論が出た。女性7人、男性5人の陪審は、共謀、凶器を用いたストーキング、死亡結果を伴うストーキング、殺人依頼に関する2件の計5罪状すべてについて無罪とした。
法廷でDurkは泣き崩れた。Findlingは、司法省とFBIの総力に対する完全な勝利だと語った。
ここで、三つのことを分けて書く。
一つ。無罪評決は、これらの罪状について検察が合理的疑いを超える立証に至らなかったという判断である。事件が起きなかったという認定ではない。2022年8月19日、ビバリーセンター近くで24歳のSaviay’a Robinsonが命を落とした事実は変わらない。
二つ。同じ陪審は、共同被告のDeandre WilsonとDavid Lindseyについて、殺人依頼では無罪としつつ、ストーキング共謀・ストーキング・死亡結果を伴うストーキングで有罪とした。二人は終身刑の可能性に直面している。同じ評決の中に、無罪と有罪が並んでいる。
三つ。Durk本人の拘置は続く。7月14日、同じFitzgerald判事は、検察が6月の第3次追起訴で加えたVICAR(ラケッティアリング活動を助けるための暴力犯罪)と銃器の訴因を、今回の公判から分離していた。対象には2022年1月のシカゴでのStephon Mack殺害と、2019年のアトランタでの殺人未遂が含まれる。評決の後、連邦検察は声明で、Durkに関する陪審の判断は残念だとしつつ、10月5日に予定される第2の公判で証拠を示すと述べた。弁護団によれば、それまで拘置は続く。
法廷の外にも余波があった。検察は最終弁論で、DJ AkademiksのインタビューでDurkが「Vonのために動く」ことを問われた場面を証拠として使っている。Boosie Badazzはこれを受け、ポッドキャストでの発言が公判に持ち込まれる時代への警告を発した。
本誌が8月20日の開廷前に整理した論点は、ここで一度の答えを得た。ただしそれは、一つの起訴についての答えである。
評決は出た。係争はまだ残っている。この二つを同じ文に入れずに書き分けることが、今週の記録になる。
出典:Rolling Stone:評決と法廷の様子 / Rolling Stone:最終弁論 / ABC7:評決と次の公判 / UPI:共同被告の評決 / NBC Los Angeles:連邦検察の声明と10月5日 / Rolling Stone:7月14日の分離決定 / LA Mag:最終弁論の詳報 / HotNewHipHop:Akademiksの発言が証拠に / HotNewHipHop:Boosieの警告 / 本誌:Rap Atlas US シカゴ
2位|Rod Wave──4度目の首位と、届かなかった10万
HSI 78
レイバーデー明けの9月8日火曜、Billboardは9月12日付のチャートを発表した。Rod Waveの『Don’t Look Down』が初登場1位。『SoulFly』(2021年)、『Beautiful Mind』(2022年)、『Nostalgia』(2023年)に続く4枚目の全米首位である。
初週99,000ユニット。うちストリーミング換算が90,000(オンデマンド再生9,507万回)、アルバム実売が9,000。Top Streaming Albumsで1位、Top Album Salesでは13位という内訳になる。8月28日にAlamoから出た7作目で、配信版は24曲、客演はSummer JoyとLuv Vonのみ。
Billboardの記者座談会では、10万に一歩届かなかったことが話題になった。前作『Last Lap』(2024年、2位)までの2作は初週127,000以上。2020年の『Pray 4 Love』(72,000)以来の水準だという。一方で、8作連続のトップ10入りという一貫性は変わらない。
同じ週、Hot 100には『Don’t Look Down』から16曲が入り、通算107曲に達した。Beyoncéと並ぶ数字で、100曲到達はHot 100史上24組目、2026年ではJ. Cole、Ariana Grandeに続く3組目になる。ここで押さえたいのは、トップ10ヒットが一曲もないまま100曲に届いた点である。
Hot 100の上位はカントリーが1〜3位を占め、Ella Langley「Choosin’ Texas」が通算21週目の首位。トップ10にラップはない。Global 200ではKarol G、Judeline、rusowsky「BbY WOW」が初の首位に立った。
1位という結果と、99,000という数字。どちらか一方だけを見ると、この作品の現在地を読み違える。
出典:Billboard:初週内訳と首位 / Billboard:記者座談会 / 105.1 The Bounce:Hot 100通算107曲 / イマオト:9月12日付Hot 100とGlobal 200
3位|Ye──先週の2夜に、興行の数字が付いた
HSI 77
先週2位で扱ったシカゴ・ソルジャーフィールドの2公演に、今週は数字が付いた。Pollstarが9月10日に報じたところでは、シカゴのプロモーターSPKRBX Presentsの報告として、9月3日と4日の2夜で129,562枚が売れ、興行収入の合計は2,980万ドル。金曜の2日目単日は15,761,063ドルで、収容63,200人のこの会場についてPollstarに提出された単日の報告の中では最も高い。
先週書いたのは、誰がステージにいたかだった。Big Sean、Kid Cudi、Chief Keef、Common。今週分かったのは、その2夜がどれほどの興行規模になったかである。
ここは言葉を選びたい。Pollstarが書いているのは「同会場について提出された単日の報告の中で最も高い」であって、会場史上の全公演と比べた記録ではない。数字はプロモーターが自ら報告したものであり、報告のない公演は最初から比較に入らない。ラップの単独公演としても、Pollstarは2025年5月のKendrick Lamar/SZA(シアトルLumen Field、60,941枚で1,540万ドル)を上回るとしつつ、厳密な比較ではないと但し書きを付けている。
動員は、いま人が集まるかどうかを測る一つの指標である。それが過去の言動への評価を代替するわけではない。Yeの公演に行くこと自体をめぐる議論は、数字が出たあとも続いている。
出典:Pollstar:SPKRBX報告の数字と単日記録 / HotNewHipHop:国内外への波及 / 本誌:先週の2公演
4位|Snoop Dogg──VMAの司会に立つ年の、候補一覧を見る
HSI 76
9月10日、CBSとMTVは、2026年MTV Video Music Awardsの司会をSnoop Dogg(スヌープ・ドッグ)が務めると発表した。9月27日、ロサンゼルスのPeacock Theater。VMAが西海岸で開かれるのは2017年以来で、Snoopは製作総指揮にも名を連ねる。
13回のノミネートと3回の受賞。1994年の初登場、1999年のDr. Dre、Eminemとのクロージング、2005年のNotorious B.I.G.トリビュート、2022年のEminemとの共演。本人は「原点に戻る瞬間」と語った。
では、その年の候補一覧はどうなっているか。8月18日に発表されたノミネートを部門ごとに見る。
Video of the Yearには、Gener8ion feat. Yung Lean「Storm」が入っている。Yung Leanはスウェーデンのラッパーで、監督はRomain Gavras。Best Direction、Best Choreographyにも同じ作品が並ぶ。総合部門にラップ名義の作品がない、という書き方はできない。
一方、Artist of the Year(Ariana Grande、Bruno Mars、Madonna、Morgan Wallen、Sabrina Carpenter、Taylor Swift)、Song of the Year、Best New Artistの3部門には、ラップのアーティスト名がない。Song of the YearにはBTS「Swim」やElla Langley「Choosin’ Texas」が並ぶ。
Clipse、Kendrick Lamar、Pusha T、Malice「Chains & Whips」は、Best Collaborationの候補である。Best Hip-HopにはCardi B feat. Kehlani「Safe」、Don Toliver「E85」、Drake「Janice STFU」、Megan Thee Stallion「Lover Girl」、Travis Scott「Dumbo」、Tyler, The Creator「Sugar on My Tongue」。
本誌は8月第3週号で、ラップの主要部門での位置を扱った。今回、部門ごとに確認して見えたのは、もう少し狭い事実である。ラップ作品が総合部門から消えたのではなく、アーティスト名で競う部門(Artist of the Year、Best New Artist)と、その年の一曲を選ぶ部門(Song of the Year)に、ラップ勢の名前がない。
その賞の顔として、Snoopが立つ。
出典:Paramount Press Express:公式発表 / Complex:Snoopのコメントと経歴 / Wikipedia:2026 MTV VMA 全部門の候補一覧 / Billboard:ノミネート全リスト(8月18日)
5位|Jay-Z、パリ──「Holy Grail」を、3人で
HSI 75
現地9月10日木曜、サン=ドニのスタッド・ド・フランス。JAŸ-Z30の欧州公演の最終日は完売で、Jay-Zがこの会場に立つのは2018年以来だった。
中盤、Pharrell Williams(ファレル・ウィリアムス)が登場する。「Excuse Me Miss」「La-La-La」「I Just Wanna Love U (Give It 2 Me)」「Frontin’」「Allure」。The Neptunesの時代を、本人たちで並べ直した。
続いてJustin Timberlake(ジャスティン・ティンバーレイク)が「Holy Grail」のフックを歌い、そのまま自身の「Until the End of Time」をスタジアムに歌わせた。
先週のロンドンでは、Lauryn HillやDaveが客席に「誰と演奏したか」を残した。パリでは、2000年代のJay-Zを形作った二人が並んだ。7月10日のヤンキー・スタジアムで始まったツアーは、10月23日・24日のSoFi Stadiumで終わる。
新曲がないツアーを、何が支えているのか。今週も答えは、共演者の名前で書かれた。
出典:theGrio:共演者と楽曲 / iHeart:セットの流れ / ArtistDirect:ツアー日程 / 本誌:Rap Atlas US バージニア
6位|Jhené Aiko『Westside Whimsy』──6年ぶりの作品に、Kendrickの一曲
HSI 75
9月11日、Jhené Aiko(ジェネイ・アイコ)が4作目『Westside Whimsy』を発表した。『Chilombo』(2020年)から6年。Def JamとArtClubからの全20曲で、本人はこれをロサンゼルスへの手紙と説明している。
14曲目「So Good」にKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)が参加した。曲を書いたのもLamarである。二人の共作は『Overly Dedicated』の「Growing Apart (To Get Closer)」(2010年)、『Sail Out』の「Stay Ready (What a Life)」(2013年)に続く3度目で、10年以上ぶりになる。
ほかにAb-Soul「Love Bomb」、Tyga「Like, Whatever」、Larry June「Neighbors」、OHMA「Golden Coast」。LAの人脈でLAを描くという設計が、客演にも表れている。
Kendrickの新作は出ていない。だが今週、彼の声を聴ける新しい場所が一つ増えた。
出典:Rolling Stone:「So Good」の内容 / Billboard:作品全体の紹介 / Complex:曲目と共演歴 / 本誌:Rap Atlas US ロサンゼルス
7位|Jay-Z対Buzbee──裁判所は「真偽を判断しない」と書いた
HSI 70
現地9月9日水曜、カリフォルニア州第2控訴裁判所は、Jay-ZがテキサスのTony Buzbee(トニー・バズビー)弁護士を相手に起こした恐喝・名誉毀損訴訟について、下級審の却下判断を支持した。3人の判事による全員一致で、判決文はAnne Richardson判事が書いた。意見は公刊対象外とされている。
経緯を整理する。Buzbeeは2024年、Jay-ZとSean Combsが2000年に13歳の少女を性的暴行したとする訴訟を代理で提起した。原告は2025年2月、再提訴不可の形で自ら取り下げた。Jay-Zは提訴前の請求書簡が恐喝にあたるとしてBuzbeeを訴えたが、ロサンゼルス上級裁判所のMark Epstein判事は2025年、反SLAPP法に基づいてこれを却下していた。
控訴審は、提訴前の請求書簡は訴訟特権で保護され、Buzbeeが虚偽と知りながら告発したという証拠はない、と判断した。Jay-Z側が調査員を通じて録音した原告のインタビューは、伝聞として証拠から外されている。
そのうえで裁判所は、この判決が告発の内容の真偽を判断するものではない、と明記した。
Buzbeeは、提訴前の請求書簡は恐喝ではないと述べ、弁護士費用の回収に言及した。Jay-Z側のAlex Spiro弁護士はコメントを出していない。
今週示されたのは、この恐喝・名誉毀損訴訟を退けた下級審の判断を維持する、という結論である。取り下げられた告発の真偽は、どの法廷でも判断されていない。
出典:Billboard:控訴審の判断 / Rolling Stone AU:控訴棄却の報道 / rolling out:判決が判断しなかったこと / ShockYa:判事名と録音の扱い
8位|Quavo──10月2日の日付と、T.I.との一曲
HSI 68
9月11日、Quavo(クエイヴォ)が3作目『QRÖMELIFE』を10月2日に発売すると発表した。Quality Control Music/UMGからのリリースで、レーベルの告知もRolling Stoneも、Pharrell Williams(ファレル・ウィリアムス)の役割を製作総指揮(executive producer)と記している。一部に全曲プロデュースとする記述があるが、本稿は公式の表記に合わせる。ソロとしては、Takeoffに捧げた『Rocket Power』(2023年)以来になる。
同日、T.I.との「Backwards」が配信された。アトランタの二世代が、ひとつの曲に並ぶ。先週WWE『Sunday Night Main Event』で先行披露された曲でもある。
アルバムは、6月の「Haavin」、8月の「Trance (Walk It Down)」、この「Backwards」に11曲を加えた構成で、全曲目はまだ公開されていない。Quavoは制作について、Pharrellはフック、ブリッジ、ヴァースの組み立てという「レコードの作り方」を優先させた、という趣旨を語っている。
同じ週、Quavoはアトランタのラジオ局V-103で、Migosのアルバムとツアーが動いているという趣旨の発言をした。ここは本人の発言として記録し、日程や形態は確定情報として扱わない。
「Backwards」という曲名で前へ進む。今週のQuavoは、その言い方がいちばん近い。
出典:Rolling Stone:製作総指揮の表記と収録曲数 / The Music Universe:Quality Control Music/UMGの告知 / HotNewHipHop:Migosに関する発言 / HotNewHipHop:9月11日のリリース一覧 / 本誌:Rap Atlas US アトランタ
9位|RAPSTAR 2026──放送日が決まり、ビートは番組の外から集める
HSI 68
9月11日、AbemaTVは『RAPSTAR 2026』を10月10日(土)22時からABEMAで独占無料放送すると発表した。優勝者に贈られる活動資金は1,000万円で、発表によればシリーズ史上最高額になる。
応募動画用のオリジナルビートを手掛けるのは、Chaki Zulu、D3adStock、GRADIS NICE、krynX、Lion Melo、Neetz、rxlの7名。
あわせて、FINALS進出をかけた「RAPSTAR CAMP」で使うビートを、番組として初めて一般公募する。受付は9月18日(金)から27日(日)23時59分まで。条件が細かい。ボーカルを含まないWAVの2mix、長さは1分30秒程度、1名または1組につき1曲、応募者本人が単独で制作したもの、そしてサンプリングは一切禁止。
ラップする側だけでなく、トラックを作る側も番組の当事者になる。ただしその入口は、既存の音源を切り貼りしない作り方に限定されている。オーディションの範囲が広がると同時に、通り道が一本に絞られた。
出典:PR TIMES:AbemaTVの発表(賞金・ビートメイカー・公募要項)
10位|Daichi Yamamoto『Hakka』──4都市に、4人の相手
HSI 67
9月11日、Daichi Yamamotoの4都市ジョイントツアー『Daichi Yamamoto Joint Show Series “Hakka”』のゲストが発表された。10月4日の福岡DRUM LOGOSに折坂悠太、10月23日の札幌PENNY LANE 24に鈴木真海子、11月8日の名古屋ReNY limitedにWatson、11月29日の広島CLUB QUATTROに中村佳穂。
鈴木真海子、Watson、中村佳穂とは楽曲制作を通じた交流があり、折坂悠太とは今回が初めての共演になる。オフィシャル二次先行は9月20日23時59分まで。
先週、鈴木真海子の年末ワンマン発表を前号で書いた。その名前が、今週は別の会場に置かれている。Daichi Yamamotoは2027年2月に自身初の日本武道館公演『Still Quiet』を控え、そちらはすでに完売している。
武道館の前に、4つの街で、4通りの組み合わせを試す。ツアーの設計そのものが、いまの立ち位置を語っている。
出典:Spincoaster:ゲストと日程 / ABEMA TIMES:発表
11位|9月11日のリリース群──静かだった先週の反動
HSI 65
HotNewHipHopは、先週の少なさと対照的な週末として9月11日を挙げた。EST Gee『BIGGER THAN THE DEVIL』、Nine Vicious『SEDITION』、Rio Da Yung OG『The World Is Yours』、Hoodrich Pablo Juan『The Bloprint』、Don Trip & Starlito『Step Brothers 5』、Pac Div『Still Sealed, Vol. 1』、TisaKorean『RAW』。
楽曲ではNav & Young Thug「Woah」、Rich The Kid & Gunna「Too Bad」、Fivio Foreign「SOLDIER」、D-Block Europe & French Montana「WORLDWIDE WAVE」。BabyTronとAnkith Woodsの共作もある。
ここは単独の事件ではなく、同日の一覧に何が並んだかを捉える一項目として採点した。ルイビル、デトロイト、ロンドン。首位の一枚だけを追っていると落ちる名前を、ここに残しておく。
12位|Drake『FOMO』──撮影は目撃された、中身はまだ分からない
HSI 64
9月9日、HotNewHipHopはDrake(ドレイク)がMVを撮影している様子が目撃されたと伝えた。9月15日の米東部時間21時に「FOMO」を配信するという告知は前号の通りで、それがアルバムなのか、ツアーなのか、映像作品なのかは、まだ本人が明かしていない。
手がかりは増えるが、答えはまだ置かれていない。次号は、15日の後に書かれる。
出典:HotNewHipHop:撮影の目撃報道 / HotNewHipHop:FOMOとは何か
13位|DJ KRUSH『TOKYØHUM』──14作目を携えて、9都市へ
HSI 64
9月11日、DJ KRUSHが最新アルバム『TOKYØHUM』を携えた全国9都市ツアーを発表した。6月に配信、7月に2LP/CDで出た通算14作目は、『再生 -Saisei-』から2年ぶり。「都市の鼓動」を主題に、UKグライムのRiko Dan、ケニア生まれウガンダ拠点のYallah、日本からELIMが参加している。アートワークはB-BOY彫刻家のTAKU OBATA(小畑多丘)。
同時期にはILL-BOSSTINOとの初の共作アルバム『XO』も語られている。一つのツアー発表の背後に、四半世紀分の交流がある。
出典:Spincoaster:ツアー発表 / Spincoaster:DJ KRUSH × ILL-BOSSTINOインタビュー
14位|AKLO「ZOOM」──BACHLOGICと、もう一度
HSI 61
9月9日、AKLOがBACHLOGICと再びタッグを組んだ新曲「ZOOM」を配信した。あわせて、AKLO×ZORNのツーマン『A2Z 2026』のチケット二次先行受付が始まっている。
新曲と、その先のツーマン。片方だけでは記事にならない発表が、同じ日に並んだ。
15位|MO3殺害事件──一人の終身刑の後で、次の公判が動いた
HSI 59
現地9月4日、ダラス郡の陪審はKewon Whiteにcapital murderの有罪評決を出し、判事は仮釈放なしの終身刑を言い渡した。検察が死刑を求刑しなかったため、この量刑が唯一の選択肢だった。本誌は前号で、この評決を「9月5日付で確認できた報道」として記したが、評決と量刑は現地9月4日である。ここで訂正する。
そして9月9日、Yella Beezy(イエラ・ビージー、本名Markies Conway)の弁護側が、9月14日に始まる予定の自身の公判について延期を申し立てた。理由は二つ。専門家証人Julianna Mooreが9月21日の週に出廷できないこと、そしてWhiteの公判記録の写しを得たうえで、重複する証人を反対尋問したいこと。弁護人のToby Shookは、Whiteの公判が開廷から量刑まで2週間かかったこと、Beezy側の公判で検察が264人の証人を挙げていることを挙げている。
判事が認めるかどうか、9月12日時点で公表された判断はない。第三の被告Devin Brownの公判も残っている。
Whiteへの評決を、Yella Beezyの責任の認定に読み替えることはできない。Beezyは無罪を主張している。一人に結論が出たからこそ、次の公判をどの材料で始めるかが争点になった。
出典:NBC 5 Dallas-Fort Worth:9月4日の評決と量刑 / FOX 4:延期申立て / AllHipHop:申立ての内容 / XXL:第三の被告と量刑の背景 / 本誌:Rap Atlas US ダラス
16位|DJ ONEWAY「BOBSON」──回す側が、作る側として名を出す
HSI 57
9月9日、DJ ONEWAYがキャリア初のプロデュース作「BOBSON」をリリースした。NIPPS、VIKN、BENKEIが参加し、11月には7インチも出る。
クレジットの位置が変わった一曲を、16本の最後に置く。
国内ウォッチ──週末の会場と、次の日付
ここからは順位表を離れて、9月12日までに届いた国内の知らせへ。
Tiji Jojo──9月26日、DJたちの並ぶ現場へ
9月10日、TSTエンタテイメントが『Urban Jam』を9月26日(土)に開催すると発表した。DJ CHARI、DJ TATSUKI、DJ KANJI、DJ NORIO & DJ LUKE、DJ NOGUらの並びに、6月に日本武道館ワンマンを終えたTiji Jojoが入る。
武道館公演を終えたラッパーが、今度はDJたちの並ぶパーティーに加わる。会場の規模ではなく、出演者の顔ぶれのほうに目が行く発表だった。
週末の現場──Watsonは松本、RHYMESTERは横浜
イープラスの公演一覧には、9月11日に長野・松本ALECXでWatson、9月12日にYOKOHAMA BAY HALLの30周年公演でRHYMESTER × MIGHTY CROWNの日程が掲載されている。Daichi Yamamotoのツアーで11月に名古屋へ来る名前が、この週は地方の会場に組まれていた。
ここで確認できるのは公演の予定であり、本誌が当日の実施や内容を取材したものではない。大きな発表のない週末にも、日程表は動いている。
短報──この週に出た曲、届いた知らせ
- Miyauchi × WAZGOGG『Natural Fit』。川崎出身のMiyauchiとWAZGOGGの共作アルバムを9月9日に配信。
- MILES WORD.「Okayy Pt.2」。MVも同時公開。
- noma『Pin』。夜猫族のリーダーが、キャリア10年目に全曲書き下ろしのアルバム。
- T-STONE「超楽しい Feat. MINMI」。
- DJ KANJI「デコボコフレンズ Remix」。ENEL、MIKADO、SKy NETを迎えた。
- 神(妄走族)「ガミカリー」。渋谷・三軒茶屋のハードコア・ヒップホップ集団から。
- SARYU「pace feat. Sakutin」。立川のWestie Boyzのリーダーによる1stアルバム収録曲。
- NYANPiPi × cuffboi × spankgus「RainbowRoad」。9月12日配信。
- tofubeats、11月29日にKanadevia Hall。過去最大規模のワンマンと、最新EPのリミックス企画。
- T-Pain、Akonの Konvict Entertainmentを提訴。約50万ドルの未払いロイヤリティを主張。訴状の主張であり、認定ではない。
- Diddy、名誉毀損訴訟で一部の請求が継続。連邦判事はAriel Mitchell弁護士への請求の一部を進行させ、NewsNationへの請求は絞り込んだ。
- Carmen BryanがN.O.R.E.を提訴。1999年の出来事を主張する20ページの訴状をニューヨークで提出。N.O.R.E.側は主張を否定している。いずれも主張の段階。
- Emory Jones、大統領恩赦。Jay-Zの友人として知られ、連邦薬物事件で有罪判決を受けていた人物。
- Snoop Dogg伝記映画、Biggie役にSwayvoTwain。D’AngeloとAngie Stoneの息子。Universal、Craig Brewer監督。
- Kodak Black、逃走に関する訴因が却下。
- NPR「今週のヒップホップ」。Critical Mindedの批評家報告と、キーフ・D事件でのDJ Vladの手法を、ラップ・メディアの持続性という視点から論じた回。
追悼|Buc Wild
9月9日、Star(Troi Torain)がYouTubeの配信で、Timothy “Buc Wild” Josephの死を伝えた。47歳。HOT 97も訃報を確認している。9月6日、ブルックリンのPink Housesで亡くなったという。死因は公表されていない。
『The Source』の「Reality Check」、MTVの『Beat Suite』、そして2000年からのHOT 97の朝。Star & Buc Wildは、ニューヨークのラジオがヒップホップの声だった時代を作った一組だった。Starは「息子の死」と呼び、識字の困難を抱えた相棒とフラッシュカードで練習した日々を語った。
ここは順位を付ける欄ではない。マイクの前で話す仕事を、二人でやり続けた人の名前を残しておく。
出典:HOT 97:訃報 / theGrio:経歴
今後の注目日程
公演や配信の予定は変更される場合がある。日時は表記したタイムゾーンで確認する。
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 9月13日 | 2Pac没後30年。鈴木真海子の公演先行受付は23:59まで。 |
| 9月14日(米国現地) | Yella Beezyの公判、陪審選任開始の予定。延期申立ての判断は未公表。 |
| 9月15日・米東部21時 | Drake『FOMO』配信予定。日本時間の開始時刻は公式案内を確認。 |
| 9月16日 | Lily Spacey × O-PNG「DANCING CRAZY TILL YOU DIE」。 |
| 9月18日〜27日 | 『RAPSTAR 2026』ビート一般公募。27日23:59締切。 |
| 9月19日 | AFBのリリースイベント(Zepp Shinjuku/ZEROTOKYO)。MUBIで『JAŸ-Z IN 8』配信開始(米国・カナダ以外)。 |
| 9月20日 | Daichi Yamamoto『Hakka』二次先行受付〆切(23:59)。 |
| 9月21日・22日 | SHOW MUST GO ON 2026、京都KBSホール。 |
| 9月25日 | EVISBEATS × Nagipan『Beauty』配信予定。 |
| 9月26日 | 『Urban Jam』(Tiji Jojo出演)。 |
| 9月27日(米国現地) | MTV VMAs、Peacock Theater。司会Snoop Dogg。 |
| 10月2日 | Quavo『QRÖMELIFE』。French Montana × Max B『Night To Remember』。 |
| 10月4日 | Daichi Yamamoto『Hakka』福岡(折坂悠太)。 |
| 10月5日(米国現地) | Lil Durk、VICAR・銃器の訴因をめぐる第2の公判。連邦検察が声明で言及した予定日。 |
| 10月10日 22:00 | 『RAPSTAR 2026』ABEMAで放送開始。 |
| 10月13日(米国現地) | キーフ・Dの量刑予定。 |
| 10月23日・24日 | JAŸ-Z30、SoFi Stadium(ツアー最終)。 |
| 10月25日 | FORCE FESTIVAL 2026、川崎・東扇島東公園。 |
| 11月17日 | Tohji Last Live “TOKYO MALL”、東京ドーム。 |
| 11月29日 | tofubeats、Kanadevia Hall。Daichi Yamamoto『Hakka』広島(中村佳穂)。 |
| 12月20日 | 鈴木真海子、恵比寿The Garden Hall。 |
| 2027年2月27日 | Jinmenusagi「ONE MAN ALXVE」、Spotify O-EAST。 |
本誌で、もう一歩読む
- 【8月20日開廷】Lil Durk連邦裁判 完全整理
- 2Pac殺害事件:キーフ・Dへの有罪評決で確定したこと、していないこと
- 2Pacはなぜ殺されたのか。事件当夜から30年越しの裁判まで
- 【独占インタビュー】Doll-E Girl「20年以上やってるけど、まだあたしはPrimeだよ」
- Rap Atlas US:シカゴ
- Rap Atlas US:ロサンゼルス
- Rap Atlas US:ダラス
- 2026年8月のヒップホップニュース総括
- 前週のヒップホップニュース(第35号)
結び|答えが出た日に、決まらなかったこと
今週は、答えが多い週だった。
陪審は無罪と言った。控訴裁判所は訴えを退けた。チャートは1位を告げ、Pollstarは2,980万ドルを数えた。MTVは司会者の名前を出した。
それでも、どの答えも次の一行を残している。Lil Durkは10月の法廷に戻る。取り下げられた告発の真偽を判断した裁判所はない。Rod Waveの99,000は、10万との差で読まれる。VMAでは、アーティスト名で競う部門にラップ勢の名前がないまま、ラッパーが司会に立つ。
決まったことを、決まっていないことと分けて書く。それだけを、今週も守った。
明日、9月13日は2Pacの没後30年にあたる。先週、陪審は一つの答えを出した。本人の言葉は、法廷で読まれた後も、まだ聴かれ続けている。
ニュースは答えを置く。音楽は、その答えの外側に残る。今週の16本を閉じたあと、どの一曲に戻るか。それを決めるのは、順位ではない。
付録:HSIの採点内訳・選定基準
HSI-W v2.0:16項目の採点内訳
HSI-W v2.0は、注目度(ATT)×0.35、市場インパクト(MKT)×0.35、文化的意義(CULT)×0.30で算出するHIPHOPCsの編集指数である。作品の優劣や人物の価値を採点するものではない。表示は四捨五入した整数、順位は丸め前の値で決める。
本号の採点対象は順位表の16項目。国内ウォッチ2件、短報、追悼は順位外。法的責任の有無、事実確認の確度、編集指数は、それぞれ別のものとして扱う。
| 順位 | ニュース | ATT | MKT | CULT | 算出値 | 表示HSI |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | Lil Durk、全5罪状で無罪評決 | 98 | 62 | 96 | 84.80 | 85 |
| 2 | Rod Wave『Don’t Look Down』首位 | 76 | 88 | 70 | 78.40 | 78 |
| 3 | Ye、シカゴ2公演の興行収入 | 78 | 86 | 66 | 77.20 | 77 |
| 4 | Snoop Dogg、VMA司会 | 80 | 70 | 78 | 75.90 | 76 |
| 5 | Jay-Z、パリ公演 | 78 | 74 | 74 | 75.40 | 75 |
| 6 | Jhené Aiko × Kendrick「So Good」 | 78 | 72 | 76 | 75.30 | 75 |
| 7 | Jay-Z対Buzbee、控訴棄却 | 80 | 52 | 78 | 69.60 | 70 |
| 8 | Quavo『QRÖMELIFE』発表 | 70 | 70 | 64 | 68.20 | 68 |
| 9 | RAPSTAR 2026、放送日と公募 | 70 | 66 | 68 | 68.00 | 68 |
| 10 | Daichi Yamamoto『Hakka』ゲスト | 62 | 64 | 76 | 66.90 | 67 |
| 11 | 9月11日のリリース群 | 62 | 66 | 66 | 64.60 | 65 |
| 12 | Drake『FOMO』撮影と配信予定 | 78 | 58 | 56 | 64.40 | 64 |
| 13 | DJ KRUSH、9都市ツアー | 56 | 60 | 78 | 64.00 | 64 |
| 14 | AKLO「ZOOM」 | 58 | 58 | 68 | 61.00 | 61 |
| 15 | MO3事件、Yella Beezy側の延期申立て | 62 | 42 | 76 | 59.20 | 59 |
| 16 | DJ ONEWAY「BOBSON」 | 50 | 52 | 72 | 57.30 | 57 |
採点と読解の補足
- 5位と6位は表示が同じ75だが、算出値75.40と75.30で順位を分けた。8位と9位も同様(68.20/68.00)。
- Lil Durkの項目は、無罪評決を注目度と文化的意義で高く見る一方、市場点は公判の性質上抑えた。指数を本人の潔白の度合いとして読まない。
- Jay-Zは公演と訴訟を別項目にした。前者は共演者と動員、後者は司法判断の射程という、別の読み方を求めるため。
- Yeの項目はPollstarの数字を報道経由で扱い、本誌が原資料を照合したものではない。
- Rod Waveの市場点は首位と初週ユニット、Hot 100の16曲同時チャートインを含む。「10万未満」という評価はBillboard記者の見方であり、本誌の判断ではない。
- Snoop Doggの項目は、司会の発表を採点対象とした。ノミネート一覧の内訳は記事内で扱うが、採点の対象には含めない。
- 9位RAPSTAR 2026は、二次集計の応募者数ではなくプレスリリース記載の事項(賞金額・ビートメイカー・公募要項)に差し替えたが、採点は据え置いた。事実が精密になったのであって、規模が変わったわけではないため。
- 9月11日のリリース群は、単独の作品ではなく一覧の広がりとして採点した。
- 順位の外に国内ウォッチ2件と短報を置いた。そこへ便宜的な点数は付けない。訃報も順位化しない。
前号からの訂正
- 前号(第35号)15位で、Kewon Whiteへの有罪評決と量刑を「9月5日付で確認できた報道」として記載した。評決と量刑は現地9月4日である。本号15位で訂正した。
選定と出典の扱い
対象は日本時間2026年9月7日00:00から9月12日23:59までの発表・発売・公演・司法上の動き。実際の発生時刻と記事の掲載日を混同せず、時間を特定できないものはその限界を残す。訃報は順位化しない。
事実の説明には公式発表、個別報道、配信ページ、本誌の関連記事をつなぐ。本文中の比較や結びは編集部の解釈であり、当事者が述べた意図に置き換えない。出典確認・編集日:2026年9月12日。
算出方法の基本はHSI|HIPHOPCs Scene Indexとはを参照。