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0.0の次は「音楽ではない」──Tyga『$TARFACE』に初週約2,000ユニット・チャート圏外・Fantanoの採点拒否が並んだ48時間

Pitchforkが19年ぶりの0.0を付けたとき、これが底だと思われていた。違った。それから48時間で、『$TARFACE』には商業成績、本人の反論、そして新たな批評的却下という三つの動きが重なった。

初週成績は2,000ユニット未満と報じられ、アルバムはBillboard 200のチャート圏外に沈んだ。本人はTMZの生放送に現れ、「AIは俺の曲を書いてもいないし歌ってもいない」と反論した。そして登録者308万人の批評系YouTuber、Anthony Fantano(theneedledrop)は、点数を付けることそのものを拒否した——動画のタイトルは「Tyga’s $tarface is NOT MUSIC(Tygaの$tarfaceは音楽ではない)」である。

0.0という最低点の次に来たのは、より深い却下だった。「悪い音楽」ですらなく、「音楽ではない」。

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商業の判定──2,000ユニット未満と、チャート圏外

HotNewHipHopが8月13日に報じたところによれば、『$TARFACE』はBillboard 200にチャートインせず、初週の売上は2,000ユニット未満にとどまった(数字は集計系アカウントKurrcoの報を経由したもので、Luminate等の公式集計の公表は本稿時点で確認できていない——確定値が出れば追記する)。約15年のキャリアを持ち、「Rack City」や「Taste」で全米上位の常連だったラッパーの新作としては、異例の初動である。

同記事は、AI使用を認めたFenix Flexinの「RUBBERZ」への反発と並べて、この数字を「AIへの国民投票(referendum)が本格化している」証拠と位置づけた。もっとも、低調な初動がAIへの拒否なのか、単に作品が届かなかっただけなのかを切り分ける材料はまだない。確かなのは、批評の拒否と商業の不発が同じ週に同じ作品へ並んだ、という事実だけだ。

本人の反論──「AIは曲を書いてもいないし、歌ってもいない」

数字が出た8月13日、Tyga本人はTMZ Liveに80年代風の衣装で登場し、火のついたタバコを手に反論した。主張の核はこうだ——AIを使ったのはシンセとギターソロの一部だけで、スタジオには3か月入り、全曲を自分で書き、全ボーカルを自分で歌った。騒動の原因は「Z世代が俺の元の発言を読んでいないこと」だという。

この線引き自体は、本誌が8月8日に整理した本人のAI使用の認め方——「書くことに関しては、ボーカルは全部俺だ」——と一貫している。変わったのは態度だ。Pitchforkの0.0については「Pitchforkが何なのか、よく知らない。知っているのは、悪魔がピッチフォーク(熊手)を使うってことだけだ」と茶化してみせた。

番組ではDoja Catの辛辣な一言——「AIアルバムを出すなんて、Tygaはろくでなしだ」(原文は“Tyga is a penis”という直截な侮辱)——も再生された。Tygaは笑いながら、こう返している。「聞いてくれ、Dojaは大好きだ。でも彼女は悪魔的なアルバムを作った。それでも愛してるよ」。AIは進化するテクノロジーのひとつであり、15年のキャリアが機械より上であることの証明だ、というのが本人の立場だ。『$TARFACE』は「実験」であり、次もAIを使うかは決めていない——ただし、この騒動が大量の宣伝になったことは本人も認めた。

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批評の最終形──点数を付けない、という却下

そして8月14日、Anthony Fantanoの16分22秒のレビュー動画が公開された。タイトルは「Tyga’s $tarface is NOT MUSIC」。概要欄の評価欄はスコアではなく「nah」の一語で、「Tygaはアーティストではない」とまで書いている。

Fantanoは、AI音楽そのものへの立場をかねて文書で明確にしてきた批評家だ。2025年には「AI Music is Evil(AI音楽は邪悪だ)」と題した動画を公開しCurrent Affairs誌のロングインタビューでは、AI音楽をめぐる最大の問題として、学習元となったアーティストに補償や承認が与えられる仕組みが未整備で、参照元が見えにくくされている点を挙げている。また作品には、完全な独創性よりも、作者固有の識別可能な特徴が表れていることを重視すると説明した。この過去発言を踏まえれば、「NOT MUSIC」という命名は、単なる低評価ではなく、生成AIをめぐる制作倫理への拒絶を前面に出したものと読める。

Fantanoのチャンネルには、低評価作に点数を付けない「NOT GOOD」という定番の却下枠が存在するが、「NOT MUSIC」というタイトルは視聴者にとっても見慣れないものだった。公開6時間で約8万回再生された動画の最上位コメント(約2,900いいね)は、こう受け止めている——「Tygaは史上初の『NOT MUSIC』判定を受けたミュージシャンとして自己改革を果たした」。別のコメントは同チャンネルの却下の系譜を並べてみせた。「0/10→Not Good→Unreviewable→Unlistenable→Not Music【新設】」。

二つの却下は、形が違う。Pitchforkは作品として審査したうえで長文のレビューを書き、0.0と判定した。Fantanoは16分以上にわたって作品を論じながら、通常の採点枠には載せず、概要欄の「Listen」を「nah」で終わらせた。二つの却下を並べたとき、問われているのは単なる完成度ではなく、作品を作品として成立させる制作姿勢と作者性そのものだった——と本誌は読む。

「問われて開示した者」への三つの返答──AIの夏の現在地

思い出したいのは、この作品が「隠してバレた」アルバムではないことだ。Tygaは問われて使用を認め、擁護までした。7月30日にレコード各社が策定しIFPIが世界のチャート網へ展開を始めた適格性の新原則が「使うな」ではなく線引きと透明性の枠組みだったことを踏まえれば——配信サービス上の正式なAI表示こそ確認されていないが——彼は少なくとも、取材で問われて使用を開示した側にいた。

その作品には同じ週、批評・市場・同業者という三方向から反応が重なった。批評は0.0と「NOT MUSIC」で、初週は2,000ユニット未満と報じられ、同業者からはDoja Catの一言が飛んだ。Tyler, The Creatorの「すべてのデータセンターに死を」からKanye Westの制作現場のAI訴訟まで、この夏のヒップホップはAIをめぐる立場表明の連続だったが、『$TARFACE』の一件はその中で最も明確な前例を残しつつある——制度の運用が固まる前に、批評の拒絶と商業的不発が同じ作品に重なった。AI使用が不振の直接原因だったとは断定できない。それでも、AIをめぐる最大級の批評的反発と商業的な不発が、同じ週に同じ作品へ同時発生した事実は残る。そして批評の側の返答は、「低い点」ではなく「採点しない」という形を取り始めている。

Tygaは「$TARFACE TOUR」と題した限定2公演を発表しており、9月10日にLAのThe Roxy、9月12日にブルックリンのMusic Hall of Williamsburgで、この80年代ペルソナを初めてステージに上げる。「音楽ではない」と判定された作品が、ステージの上でどう鳴るのか。皮肉ではなく、それはAIの夏の次の観測点になる。

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