HIPHOPCs Global Hip-Hop, JP.

【HIPHOPCs独占インタビュー】Young zetton名義終了の真意──『LAST ALBUM』と“次の名前”

インタビュー24 min read
ホーム » インタビュー » Young zettonインタビュー

【結論】Young zettonは本インタビューで、『LAST ALBUM』を「Young zettonとしてのラスト」と明言し、本名にまつわる新たな名前で活動したい意向を明かした。

スポンサーリンク

このインタビューで語られたこと

  • 人物:京都を拠点に活動してきたラッパー、Young zetton
  • 作品:『LAST ALBUM』(2026年7月11日リリース、全24曲、客演なし)
  • 制作:全曲をHomunculu$がプロデュース。当初約14曲だった企画が24曲へ拡張した経緯
  • 主な論点:幼少期、ALMAR$$$、RAPSTAR 2023、社会への視線、京都のシーン、過去との対話、Young zetton名義の終幕と次の名前

話者表記:zetton=Young zetton(回答)/Lucie=聞き手・執筆/Sam=YTG Sam(同席)


どんな物語にも、いつか終わりは訪れる。そして不思議なことに、物語は最も続きを見たくなった瞬間に幕を下ろす。 


今回、栞がその役目を終えたのは、Young zettonの物語だ。


青い照明の中で片目を手で覆うYoung zetton

「最後の怪獣」を意味する”ゼットン”の名を冠した彼は、2017年頃からヒップホップクルーALMAR$$$の一員として活動を本格化。過去の経験が嫌というほどに反映されたリリック、多様なデリバリーを駆使するスタイルにより、着実にリスナーを集めてきた。

そして、『RAPSTAR 2023』に出演した際にはサイファーステージまで進出。過去の後悔、経験から得てきた学びについて、対比表現を用いながら赤裸々に語るリリシズムを披露し、審査員の心を掴んでいた。

また、昨年には社会に対する疑問を呈した楽曲「僕なりの意見」「僕なりの意見 pt.2」を公開。リスナーたちにとっては、ヒップホップの本来の目的や意義を再確認する良い機会となっただろう。

彼の音楽には、ジャンルという境界線がほとんど存在しない。 エモーショナルなビートはもちろんの、トラップメタルまであらゆる音を乗りこなす。それでいて”zettonバイブス”はしっかりと感じられるし、オリジナルだから飽きが来ない。そんなアーティストである。

そんなYoung zettonが6月30日(火)、アルバム『LAST ALBUM』のリリース、そして活動終了を発表した。

Young zettonの活動歴を振り返るモノクロのコラージュ

その後、7月3日(金)に公開された「あの日に戻りたくねぇ」のMVのコメント欄には、彼の引退を惜しむ声が多く寄せられている。

私も1人のリスナーとして、彼らと同じ思いである。「なぜ今のタイミングでラストアルバムをリリースするのか」「どんな経緯でアルバムが完成していったのか」「今後の動きは」等々、聴きたいことは募るばかり。

栞を抜いたその先に、どんな言葉が待っているのか。その答えを聞くべく、今回もYTG Samとともに話を伺った。

アルバムリリース直後のYoung zettonにインタビュー

彼の遍歴や降ろされた幕『LAST ALBUM』など、ヒップホップ界の宇宙恐竜を解剖

Lucie:今回は、最後のアルバム『LAST ALBUM』についての話を聞けるとのことで、とても楽しみにしていました(嬉)。

それでは、改めて自己紹介をお願いします!

zetton:京都で活動しているYoung zettonです。よろしくお願いします。

Lucie:ずっと気になってたところではあるんですけど、Young zettonっていう名前は何か由来があるのでしょうか?

ゼットンって聞くと、もう僕はウルトラマンしか思い浮かばないのですが…。

zetton:それ、結構言われるんですけど(笑)。

最初、周りの子らが僕のことを”Young z”って呼んでて、その後にYoung zettonって名前を友達につけてもらったみたいな感じです。

Lucie:なるほど?そもそも何故”Young z”って呼ばれてたんですか?

zetton:いや、あんま分かんないんですけど…。なんかそう呼ばれてて。

Lucie:本名にまつわるとかでもなく?

Sam:漫画の『クローズ』にも、ゼットンってキャラクター出てくるっすけど、それでもない?

zetton:いましたね。でも、違うんですよ。ただ、気に入ってたって感じです。

愛に満ちた幼少期、ラップとの出会い

Lucie:zettonさんの楽曲には結構ハードな話とか、サグな話が出てくることが多いですよね。

僕の中で印象的だったのは「おじいちゃんが闇金だった」というリリックですね。zettonさんがどんな世界を見てきたのか、僕には想像できなくて…。

どんな幼少期を過ごしていたのか、教えていただけますでしょうか。

zetton:幼少期に関しては、特にめっちゃ家庭環境が悪いとかではなかったんです。

まぁ…親は家にはいなかったんですけど、ずっとおばあちゃんに預けられてて、普通に生活してました。でも、実は大変だったことを後から知りました。でも、僕は楽しく生きてた記憶があります。

Lucie:わぁ…感じ取ることが無いようにおばあ様が育ててくれたんですね。素晴らしいです。

ちなみに京都出身とのことですが、どんな場所で育ったのでしょうか?

zetton:久御山っていう所です。工場と田んぼ、久御山イオンがあるぐらいで、田舎ですね。

Lucie:zettonの楽曲を聞いていると、なんだか…治安悪そうなイメージを抱いたりしたのですが…。

zetton:でも、久御山は普通ぐらいだと思います。田舎ヤンキーが中学ぐらいの頃からちょいちょいいるかな…みたいな。特別悪いとかではないです。

Lucie:なるほど。そのような土地で幼少期を過ごし…ヒップホップとはどのように出会ったのでしょうか?

zetton:中学の頃はレゲエが好きだったんですけど…「FATE」でANARCHYさんとか「何もできねえけど」で般若さんを知ったりして、そこから結構ヒップホップを聴くようになりました。AK-69さんも聴いてました。

それから、中学校卒業した次の年ぐらいに高校生ラップ選手権を知って、高ラに出てるラッパーの音源ディグったり、R-指定さんとかMCバトルに出てくる方の音源を聴いたり。Kohh(現・千葉雄喜)さんも好きだったし。

USとかになると…友達に教えてもらったWiz Khalifaとかですかね。

Lucie:なるほど、やっぱり高ラって存在はデカいな…。ちなみに、影響を受けたなと思うようなアーティストの方はいらっしゃいますか?

zetton:多分、沢山いると思います。

最初の方はYdizzyさん、めっちゃ影響を受けてました。後はJin Doggさんとかじゃないでしょうか。

楽曲制作に至る経緯、ALMAR$$$の現在

Lucie:2017年、2018年頃から作品はリリースされているわけですが、ラップを始めた当時はフリースタイルをしていたという話を伺いました。

「音源を作ろう」って思い立ったきっかけとは?

zetton:始めたての頃は高ラとか見てたんで、それでサイファーとか行くようになったんですけど。

そのサイファーに行った時、高ラに出てたS-MA BISKET(現・B1SKET )がいて、仲良くなって一緒にフリースタイルしてたんです。

でも、彼が徐々にフリースタイルより音源に集中し始めて、ライブもやり始めたのを見て「そっちの方がかっこいいな」って思い始めたのが大きいかもしれないですね。

Lucie:なるほど、S-MA BISKETさんの影響が大きかったと。そして2017年頃からクルー、ALMAR$$$としての活動をスタートしますよね。

ちなみに、現在ALMAR$$$はどのような状態なのでしょうか?

zetton:解散したわけでもなく、気づいたら活動してるのが自分だけになってたっていう感じですね。結構みんな、仕事とか家族とかで忙しくなってしまったっていう印象があります。

Lucie:ふむふむ。今のzettonさんにとって、ALMAR$$$はどんな存在ですか?

zetton:MVの作り方とか色々が最初はわからないじゃないですか。ALMAR$$$の人たちはビデオの撮り方とか、編集の仕方とかを一通り教えてくれた先輩ですね。

Lucie:なるほど、how toを教えてくれた人たちなんですね。

個人的に気になってたのは、同じくALMAR$$$のメンバーであるbigsosさんと喧嘩してしまったという旨のリリックが楽曲にあって。「今は和解できてるといいな」なんて勝手に思っていたのですが…。

zetton:そうですね。もう仲直りは出来てると思ってて、ギクシャクしてることはないです。

やはり、ジャンルは”Young zetton”

Lucie:クルーと個人の作品も含めると、2017年頃からプロジェクトをどんどんリリースしていく中で、zettonさんのデリバリーの変化を感じたんですよね。だから、すごい聴いてて面白いというか。

今回のアルバムに関しても同じく変化を感じましたし、その変化は意識して訪れたモノなのでしょうか。

zetton:多分、時期によって自分の好みが変わるっていう感じ。自分の芯はブレないんですけど、カッコいいって思うものとか作りたい音楽、表現したいモノは変化してると思います。

Sam:わかるっす。自分の中での流行りがあるんですよね。

zetton:そうですそうです。それをどれだけ自分を変えずにできるか、表現できるかを試行錯誤してたら…って感じです。

Lucie:なるほど。意図的に行っているわけではなく、素直に出てきたものが変化になってた訳ですか。過去のインタビューでも「ジャンルはYoung zettonだ」って仰っていたので、まさに体現しているわけですね。

そして、ヘッズとして記憶に新しいのは『RAPSTAR 2023』に出演されていたことです。

僕その時のバース、歌えるくらい好きなんですけど。あの対比がどんどん並んでいくリリックは天才だと思いました。出演した経験は現在の活動にどんな影響を与えていますでしょうか。

zetton:そうですね。僕はサイファーまでですけど…知ってもらうきっかけになったんで、それは大きかったと思います。

Lucie:やはり、あの番組は認知広がりますからね。その回に出てた999dobbyさんとの曲もヤバかったですよね。MVのクオリティもエグかったなって。

で、『RAPSTAR』の楽曲に「奪い取ったモノはすぐ消えるまじ」ってラップしていましたが、何というか…過去を振り返る姿勢が見えるというか。それは『LAST ALBUM』でも同様に感じることができたんです。

サグい時期を振り返って…じゃないけど、そういうのがある気がしてて。いつ頃からその価値観が生まれたのかなって思ったんです。

zetton:まぁ…多分、人は経験を経て学んでいくと思うんで、僕はホンマに単純にそれを繰り返してただけですね。

最後のアルバムはHomunculu$の一言から

Lucie:では、問題の『LAST ALBUM』ですが…アルバムの構成はどのように決めていったのでしょうか?

zetton:そもそも、最初は最後のアルバムを作ろうと思っていなかったんです。普通にホムさん(Homunculu$)とコラボアルバムを作ろうってだけだったし、曲数ももっと少なかったんですよ。

Lucie:今回すごいボリューミー、24曲も入ってますもんね。

『LAST ALBUM』全24曲の曲名を記した白いTシャツを掲げるYoung zetton

zetton:そうですね。最初、ホンマに14曲くらいだったんですけど。

最近僕の中で、Young zettonとして「それなりにやったよな」っていう感覚があったんです。なら、今回のプロジェクトをラストアルバムにして、綺麗にYoung zettonの物語を終わらせようかなって。

だから、曲数も自ずと増えていった感じですね。ホムさんとも、どんなビートが足りないかを話し合いながら完成させました。

Lucie:で、最初24曲って見た時「絶対に何人か客演入ってるよなぁ」なんて思ってたら、客演なしみたいな(笑)。しかも、プロデュースは全てHomunculu$さんっていう。

だいぶ前からHomunculu$さんとは一緒に制作してきたと思うんですけど…。あの方は和歌山で、zettonさんは京都じゃないですか。そもそも、初めの出会いは?

zetton:さっきのクルーの話に戻るんですけど、Anubisくんっていう先輩がいて。

最初は、アヌくんがホムさん、あとSAVAGE LIONっていうラッパーと一緒に曲作ってたんです。そこで「ビートヤバいな」ってなって、繋がったっていう感じですね。

ちなみに、SAVAGE LIONは今のLion Meloがラッパーだった時の名前です。

Lucie:へえぇぇ面白い話!Lion Meloさん、今回『RAPSTAR』のビート出してるじゃないですか!

zetton:そうです、間違いない。

Lucie:僕がHomunculu$さんを知ったのは、2020年の『ラップスタア誕生』…TOFUさんのHood Stageに出演した時でした。それからあの方のビートのヤバさが世間にも広がったという印象なんですが…。

和歌山では結構OGみたいな感じなのでしょうか?

zetton:僕が知ったのは2017年の終わりくらいですかね。その頃には、もう僕らの周りでは「Homunculu$のビートがやばい」っていう声が上がってました。

Lucie:やっぱり昔から和歌山で名を轟かせていたんですね!そんな方と「マンツーマンでやろうぜ」ってなった経緯とかあるんですか?

zetton:最初はオールプロデュースしてもらうつもりは無くて、いくつかビートをもらって何曲か作りたいと思ってただけだったんですけど。

ホムさんから「どうせならフルでプロデュースしたい、そっちの方が自分の良さがちゃんと出せる」って言ってくれて。

ちょうどその時、MIKADOとホムさんのアルバムが出てて説得力ヤバかったし、光栄で贅沢なことで有難いことってわかってたので、「ぜひお願いします」ってことで受けたって感じですね。

Lucie:いやぁ…ホントに『HOMUNCULUS』は名盤でしたからね。確かに説得力しかない(笑)。

「あの日に戻りたくねぇ」の”あの日”、世間に対する反抗声明

Lucie:では、アルバムの中身に入っていきたいと思います。

実はアルバム出ることを知る前、たまたまYouTubeで「あの日に戻りたくねぇ」のMVが流れてきて。普通に「やべぇじゃん」ってなった後にインタビューの話を頂いたんです。

「映画始まるじゃん」みたいなワクワク感が沸々と湧いてきたし、「見せるよ翼」でバサッッッて羽生えてきた瞬間は鳥肌立ちました。もっとあのビートで聴きたいとも思ったし…。

ただ、気になってたのは「あの日に戻りたくねぇ」の”あの日”って、どの日なのかなって。

zetton:”何月何日”っていう特定の日にちを指しているわけでなくて、自分の人生を振り返った時にいくつかある日を全て指してる感じなんですよね。

ラップやってなくて全然人生を上手く進めることができなかった時とか、ちょっと捕まっちゃったりしてるタイミングとか…。そんな日全てに”あの日”っていう言葉で光を当てたって感じですかね。

Lucie:なるほど。他にもzettonさんのリリックに”あの日”っていうフレーズが出てくる時があって。

「前座でライブしてたあの日」みたいな…そういう頃のことも指してるのかなーなんて思ってたんですけど。

zetton:そうですね。本当にそういう日々があったから今があるんで、それも示してますね。

Lucie:ふむ、悔しかった時期全部みたいな感じですか。なるほど。

そして「あの日に戻りたくねぇ」から始まり、「気をつけろ」「REAL RICH」と続き、いいねいいねぇなんて余裕こいてたら、めちゃくちゃ鋭い「陰謀論」が入ってくるっていう。社会に対する風刺がはっきりと歌われていますよね。

「あの日に戻りたくねぇ」MVで実験台に拘束されるYoung zetton
「あの日に戻りたくねぇ」MVより(掲載許諾確認済み)

それこそ、去年の財務省解体デモぐらいの時にも「僕なりの意見」という曲を出していて…なんか、『RAPSTAR』の時の印象からガラッと変わったというか。「社会派ラッパーになりつつあるのかな?」なんて思った時もありました。

社会への怒りとか、問題意識を持ち始めたのはいつ頃からだったんでしょうか。

zetton:そうですね…中学の時とかに話が戻るんですけど。

その頃はレゲエが流行ってて、レゲエアーティストさんたちが時々国に対する意見を曲の中で言ってたんです。やっぱりレベルミュージック、反抗の音楽なんで。

そういう言葉とかを調べてる内に、実はこの国は正しくないってことを知っていったんですよね。テレビが正しい情報を発信してるわけじゃないとか、警察は裏で悪いことしてるとか、最初は簡単なことから知っていって。

で、ヒップホップを含めブラックカルチャーでは、社会に対して歌ってるようなラッパー結構いるじゃないですか。だから、自分たちの住んでる地域とか国とか、少しでも良い方向に向かってくれるのであれば、ヒップホップの1つの形として正解なんじゃないかなって思って。

それがきっかけかもしれないです。

Lucie:正しいと思います。同意です。

本当に「僕なりの意見」の時期は、世論がデモの話題で持ちきりと言っても過言ではないくらいだったし、zettonさんが楽曲で呼びかけたことで問題意識をリスナーさんに与えるようなこともあったはずです。

でも、中学生の時からその意識持ってたっていうのは、中々に思慮深い中学生というか…。

zetton:いやぁ…(笑)。まあ、でもあれです。

中学の頃はめっちゃ意識持ってたっていうより、ぼんやりしてました。でも、だんだん知性がついてきて理解し始めたっていう感じです。

Lucie:なるほど。僕のイメージとして、zettonさんは社会に対してだけではなく、シーンに対しても「それは違うだろ」って臆さず意見を述べているイメージがあるんですけど。

どうでしょうか、最近のシーンに対して何か思うことありますか?

zetton:うーん…。でも、今振り返ってみると、そんな感じで言ったのはアレですね。ちょっと自分も大人げなかったなと、正直思ってます。

そもそも別に自由やし、言わなくてもよかったかもって。自分も完成された人間じゃないし、たまにダサいこともしちゃうし。そう思ってもらえたら良いかなとも思ってるっすね今は。

Lucie:おお、何だか…。

リスナーさんの中にはzettonさんに対して激しいイメージを抱いてる人って結構いると思うんです。昔の曲の感じとか見ると、それこそHomunculu$さんプロデュースで、Jin Doggさんとbigsosさんとの共作である「奇襲」の時とかも激しくシャウトしてたので。

でも今日話していると、実は内省的で冷静に物事を見てるんだなって感じますね。

zetton:いや、でもホンマに時々「ちょっとストーリーで小突いてやるか」みたいな、ダメな部分が出てしまうこともあるので。結局、言った後に後悔します。

だから、今は全然なんとも思ってないです。自分で勝手に言っといてなんですけど。

Lucie:いや…でも、でもですよ。僕の個人的な意見ですけど。

zettonさんの意見に「その通りだよな」って同意するリスナーさんは多いと思いますし、僕もその1人だったりするんです。…果たして、それがヒップホップ的に正解なのか、手放しに頷けないようなことをする方も、中にはいらっしゃるわけじゃないですか。

zetton:まぁ確かに…僕自身「よく言ってくれた!」みたいな声を頂くこともあります。

ただ…例えば、”本職”の道を行ってる人からすれば、僕の歌を聴いて「ただのラッパーが何言ってんだ」みたいに思うかもしれない。それに対して、僕は何も言えない。加えて、アメリカの本場でドンパチしている人にも何も言えない。

結果、ヒップホップで測るべき基準って「そこじゃないよな」って、今はちょっとわかってきたのかなって思います。あんま、大人げないことはしたくないっすね。

Lucie:結構、メタ視点の鬼ですね。その視点が持てるのは素晴らしいです。

ウザい出来事、お金に汚い大人たち、

Lucie:特に「Stupid Boy」では、zettonさんのストーリーテリングが一際輝いていると思います。

「こんな物語がスッと入ってくるか」ってくらいに情景が浮かんできたんですよね。もちろん実体験が元になっていると思うのですが…。

「たまにタグ付けされてウザい売ってもない*****」って…これってどういう話なんですか?

zetton:本当にそのままです。真っ暗なアイコンのアカウントが、”そういうモノ”の写真に僕のことをタグ付けして、「なんちゃらクッシュ」とか勝手に名前をつけて投稿するみたいな。

自分が直接見て知ることもあれば、ファンの子がDMで教えてくれたり。そんなことが一時期結構な頻度であったんですよね。

Sam:それはダルすぎる(笑)。

zetton:ホンマに(笑)。

Lucie:他にも「先輩の女に絡んで丸刈り、笑われたよ本当に漫画みたい」っていうリリックも気になりました。本当にそんなことあるんですね。

zetton:そういうこともあるんですよ。ホンマに絡んだだけで丸刈りなりましたね。

絡んだというか…自分が「今度遊びましょうね」みたいな感じで話しただけなんですけど、たまたまめっちゃお気に入りの子やったらしくて。

Lucie:お気に入りの子…それで丸刈りにされる世界線…嫌だ!めんどくさいです(笑)。

で、「ニャース」ですよね。フックが耳に残ってしょうがないですし、”ニャース”って言われたらとりあえず「小判、お金だな」って思い浮かぶので。

あと、パンチラインだと思ったのは「奴らは音楽が好きなんじゃない、その後ついてくる数字が大好き」っていうラインです。やっぱり、そういう”ヤツら”って実際にいるんですね。

zetton:いっぱい見てきました。名前は絶対出せないですけど。

その曲を作ってる時、ホムさんと喋ってて。ある有名なプロデューサーとラッパーの裏話をいきなり暴露してきて、「やっば」みたいな(笑)。僕は話聞くまでその人たちを知らなかったんですけど。

その話してる時に作ってるビートが「ニャース」のビートやって、ラップのトピックどうしようか考えてたら、ホムさんが「ニャース」とだけ言ってどっか行っちゃったんですよ。

じゃあ「もうニャースやな…」ってなった感じです。別に特定の誰か1人だけを指してるわけじゃないんですけど、そういう大人ってどこの業界にもいると感じてたので、そのまま書きました。

Lucie:やっぱりいるんですねぇ、セコい人たちは絶対に。

フックがすごい耳に残るし、「ニャース」って言いたくなるじゃないですか。この曲は絶対みんなライブで歌ってくれそうですよね。

セルフタイトル、京都のシーンの様相

Lucie:そして、ここぞとばかりのセルフタイトル「Young zetton」。

楽曲タイトルを自分の名前にする行為って「覚悟決まってんな、自分を使い切ろうとしてるのかな」なんて思ったのですが。

zetton:確かに、そうかもしれないですね。「Young zetton」を作った時、既にラストアルバムにしようって決めてたタイミングだったんで、セルフタイトル入れるならこの時しかないと思って入れました。

ホンマに19曲目とか、結構ケツの方まで出来上がってる最後の最後に足したって感じです。

Lucie:「京都砂漠」でも、zettonさんの覚悟を感じることができると思うんです。

”京都のシーンをより広げてやる”といった旨の覚悟を感じたし、「京都砂漠」っていうワードは「東京砂漠」と対比になっているわけなので、東京のシーンに対する宣戦布告のようにも思いました。

zetton:そうですね。でも、実はそもそも「東京砂漠」知らなかったんです(笑)。

Lucie:知らずにできたマジか(笑)。zettonさんは現在の京都のシーン、どう見ます?

zetton:まぁクラブとかは多いんで、地方のラッパーさんが結構ライブで来てくれたりして、盛り上がってはいるんですけど…。

音楽的な面で言えば、普通ぐらいだと思います。めっちゃ遅れてるとも思わないし、めっちゃ進んでるとも思わないし、至って普通のシーンかなって思います。

最近は若い世代のラッパーが沢山出てきてますけど…自分は今よりもっと盛り上げたいってめっちゃ思ってて。正直、全然足りてないですね。

Lucie:なるほど。やっぱり京都っていうと、ANARCHYさんっていうイメージがあるし。あの方の流れみたいなのもありそうですよね。

zetton:そうですね。逆にANARCHYさんくらいしかいないんじゃないですかね。レジェンドって呼べる人って言うと。

Lucie:でも、zettonさんの名前もしっかり知られているはずですから。「俺からの影響感じるな」なんて感じる瞬間とか、アーティストに出会ったこともあると思うんですけど…どうでしょうか?

zetton:そうですね。「実はこの時、zettonくんの子の曲めっちゃ聞いてました」とか、教えてくれる子が結構いたりとか。自分は全然知られてないって思ってましたけど、意外と早い段階から聴いてくれてる子がいることを知った時は嬉しいですね。

冷たく暗い過去と対話、Young zettonの終わり

Lucie:もう終盤になりますが「冷たい朝」ですね。過去の傷を自ら開いているような感覚を覚えましたし、”冷たい”って聞くと”そういうモノ”が浮かぶというか。

先程も話に出てきましたが、”あの日”がどうしてもあるじゃないですか。それに対するネガティブなマインドを昇華させているのかなと思いますが…その時期をどう抜け出したのでしょう。

zetton:多分、音楽とかモノ作りが好きだっていう自分の軸がブレなかったからだと思います。

落ちてる時でも、良くないことしてる時とかも、どこかで「いや、本当にやりたいことはこれじゃない」って思っていたので、やるべきことをこなしてたら結局抜け出してた…みたいな。

ホンマに自分に必要なモノに気づいたら…って感じじゃないですかね。

Lucie:素晴らしい。もう音楽に対する意思で抜け出したということですね。

そして、ラストトラックの「B型で繊細」。これも名前がすごい良い!

この楽曲に関しては「誰がお前を苦しめた」と歌っていて、誰かに向けて言ってるようにも聴こえるし、自分自身に言っているようにも聴こえるんですよね。この一言がとても力強く感じたんです。

zetton:受け取り方は人によって変わってくるし、色んな受け取り方してもらっていいんですけど。

鏡に映った落ち込んだ自分に語りかけているようなニュアンスというか…自分自身にも語りかけてるようで、相手にも言ってるような情景を意識してます。そんな感じですね。

Lucie:なるほど!めちゃくちゃわかりやすく説明していただきました。この「B型で繊細」により、希望を残すような形で『LAST ALBUM』は幕を閉じるわけですが…。

「これでラストなんて…そりゃねえよ!」って思ってるし…終わらないで欲しいんですけど…。このアルバムは”Young zettonとしてのラスト”と捉えても良いですか??

zetton:そうですね。もうそろそろ本名にまつわる名前で活動したいと考えていたので、そんな感じにとらえて頂いて大丈夫ですね。

Lucie:そういうことなんです!

それでは、今までYoung zettonさんの楽曲を聴いてきたリスナーの皆さんに、メッセージ等ありますでしょうか?

zetton:本当にたくさん聴いてくれて、ありがとうございました。

スポンサーリンク

Closing Note ~”Young zetton”の羽化~

そう、終わってしまう。本当にYoung zettonの物語は幕を閉じるのである。

宇宙恐竜の殻を脱ぎ捨て、ようやく人間となった彼がラッパーとして歩むのか、はたまた別の道で名を馳せるのか。彼のエピソードⅡがどのような展開を見せるのか、我々にはわからない。

しかし、ようやく”イモムシ”だった彼の背中に大きな翼が生えた様子を、我々は目撃することができたのだ。エンドロールは流れても、そこには不思議と希望が残っていた。その後に待つかもしれないポストクレジットシーンを、誰が期待せずにいられるだろうか。

私たちは、その日を待つ。

『LAST ALBUM』by Young zetton

『LAST ALBUM』を締めくくるYoung zettonのモノクロコラージュ




https://music.apple.com/jp/album/last-album/6786137263


https://open.spotify.com/intl-ja/album/4usA0Y79d3QnjbUboQVjUm?si=RZaMAyjYTNu6ZDZxV7U_0w


ラッパーYoung zettonによる最後のプロジェクト『LAST ALBUM』


全24曲からなる同アルバムは、全ての楽曲を和歌山の実力者Homunculu$がプロデュース。Young zettonの持ち味を深く理解した上で構成されたビートの上で、彼は自身が抱えてきた本音や葛藤、社会への眼差しなど、多岐にわたるトピックを赤裸々に吐露している。 
多彩なのは語られるテーマだけではない。エモーショナルなフロウから力強いデリバリーまで、Young zettonがこれまで培ってきたスキルのすべてが凝縮されている。全24曲という大作でありながら、1曲ごとに異なる彼を見ることができるのだ。
つまり、『LAST ALBUM』はYoung zettonというラッパーの歩み、思想、そして技術のすべてを詰め込んだ1枚である。



スポンサーリンク

Instagram(@homunculus1121)

取材・クレジット

取材・文:Lucie(HIPHOPCs)
同席:YTG Sam(HIPHOPCs)Instagram(@ytg_sam)

媒体:HIPHOPCs(運営:株式会社みかも)/Instagram(@hiphopnewscs.jp)X(@hiphop_cs)

※本記事の掲載画像は、Young zetton側より掲載許諾を得て使用しています。画像の無断転載はお控えください。

コメントを残す