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ニートtokyoが8月で「第一幕」終了。SEEDAが挙げたのは「新しいスタンダード」だった

日本語ラップのインタビューを4721本ためこんできたYouTubeチャンネル・ニートtokyoが、8月いっぱいで「第一幕」を閉じる。主宰のSEEDAが8月1日に発表した。

発表文で本人が前面に出したのは、「次の時代へ進化させる、新しいスタンダード」を見つけられなかったことだ。資金や人手が無関係だとまでは、この発表文だけからは言えない。

チャンネルが第三者の不正アクセスで一度消え、10日で戻ってきたのが7月7日。復旧からひと月も経たないうちの決断である。

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8月いっぱい。最後の1カ月は毎日投稿

音楽ナタリーが8月1日19時45分に報じたところによれば、SEEDAはニートtokyoの「第一幕」を8月いっぱいで閉じると発表した。

理由についてのコメントはこうだ。

「ニートtokyoを次の時代へ進化させる、新しいスタンダード」までは見つけることができませんでした

続けて、こう語っている。

これまで出演してくださったすべてのアーティストの皆さんのことを考えた時、このチャンネルは私SEEDA自身が責任を持って守ることが大切だと感じました。だからこそ、今のニートtokyoのまま第一幕を閉じることが、カルチャーにとっても一番良い選択だと判断しました

最後の1カ月は毎日動画が投稿される。SEEDAは「第一幕の締めくくりにふさわしい特別な仲間たちにご出演いただきます」としている。

「第二幕」がいつ、どんな形で始まるのかは発表されていない。既存の4721本が8月以降も公開されたまま残るのかどうかも、現時点では明らかにされていない。

4721本、43.4万人

規模を数字で押さえておく。

公式チャンネル @neettokyo のページを2026年8月2日時点で確認すると、チャンネル登録者数は43.4万人、公開されている動画は4721本。

自己紹介文には「Japan’s biggest hiphop interview archive」とある。これはチャンネル自身の表現だ。公開本数4721は実測できるが、国内最大という順位は第三者の網羅的な比較がないため確定しない。

1回の収録で15問前後を撮り、質問ごとに切り出す。だから1本は数分で、ラッパーが一つの問いに答えて終わる。

8月2日時点で動画タブの上のほうに並んでいるのは、Mummy-D(RHYMESTER)、OhGeesy、ksr:3、クボタカイ、KO-ney、X 1arkといった面々の回だ。ベテラン、USのラッパー、セルフプロデュースの新人が同じ列に混ざる。この雑多さがニートtokyoの形だった。

始めたのは、SEEDA一人ではない

ひとつ前提を置く。ニートtokyoは、SEEDAが思いついて一人で回してきたチャンネルではない。

運用開始は2017年11月1日。きっかけは、ライターの山田文大がSEEDAに相談したことだった。誌面ではない新しい形式のインタビューをやりたい、日本でまだ誰もやっていないもので何かないか——そう聞かれたSEEDAが、当時海外で広がっていたショートインタビューの形を教えた。

これは推測ではない。2018年2月26日のblock.fm『INSIDE OUT』に3人で出た回で、SEEDA、山田、ディレクターの伊江成晃が自分たちでそう説明している。グリーンバックを背に座らせ、一問一答で15問ほど投げる形は、SEEDAのイメージを起点に3人で詰めていったものだと伊江は語っている。質問を考えていたのは山田だ。SEEDAは発明者ではなく、形式の目利きとして入っている。

この立ち位置は、彼が2006年から続けてきた仕事と変わらない。SEEDAはDJ ISSOと『CONCRETE GREEN』シリーズを回し、まだ名の売れていないラッパーを自分のコンピに乗せてきた。自分が前に出るのと同じ熱量で、他人が出る場所を作る。ニートtokyoはそのYouTube版だった。

だから今回の「このチャンネルは私SEEDA自身が責任を持って守る」という一人称には、少し引っかかるものがある。現在の運営体制は公表されていないので、いまが何人なのかは分からない。ただ、始まりは三人だった。

6月27日の消失と、その10日後

今回の発表を、6月の事件と切り離して読むのは難しい。

ニートtokyoのチャンネルは、第三者による不正アクセスで6月27日に削除された。復旧したのは7月7日。10日間、4000本を超えるアーカイブがネット上から消えていた。復旧後に最初に公開されたのは、セルフプロデュースアーティスト・ksr:3へのインタビュー動画だった。

HIPHOPCsはこの消失を、日本語ラップの「肉声」がひとつのYouTubeチャンネルに集中するリスクとして書いた。バックアップの有無や非公開の保全体制は外部からは確認できない。一方で、第三者の不正アクセスによって公開面から4000本以上が10日間見えなくなったことは確認できる。

削除事件の復旧から第一幕終了の発表までは1か月弱だ。ただし、SEEDAは二つを因果で結び付けていない。本稿でも、近い時系列として並べるにとどめる。

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「新しいスタンダード」という言い方

終了の理由の置き方が、いつもの畳み方と違う。

SEEDAは「続けられなくなった」とは言っていない。「次の時代へ進化させる、新しいスタンダードまでは見つけることができませんでした」と言っている。主語は環境ではなく、編集の基準だ。

「スタンダード」という言葉は、2017年に始めた編集フォーマットと対比して読める。グリーンバックを背にラッパーを座らせ、一問一答で15問ほど撮り、質問ごとに切り出す形だ。ただし、発言の意味をフォーマットだけに限定はしない。

投稿ペースは途中で毎日から不定期へ落ちたが、この撮り方は8年以上変えていない。だから4721本が同じ形で積み上がった。今回言っているのは、それを更新する次の型を作れなかった、ということだろう。

2023年1月、SEEDAはKAI-YOUの取材でこう語っていた。

毎日投稿して、翻訳をつけて、良い感じにすべてをこだわってやるのがぶっちゃけ厳しくて。お金も時間も人材も足りなくて

このとき彼は、始動以来続けてきた毎日投稿を不定期に切り替えている。足りないものの名前が、はっきりしていた時期だ。

今回の発表に、その種の話は出てこない。出てくるのは、出演者への責任と、「今のニートtokyoのまま」閉じるという判断だけだ。畳むのではなく、劣化する前に止める、という言い方をしている。

そして最後の1カ月、ニートtokyoは毎日投稿に戻る。3年半前に手放した形で終わらせる、ということでもある。

この言い方は、4月にSEEDAがPOP YOURSのアーカイブ公開方針を批判したときの問題意識とも接続して読める。あのとき彼が批判したのは、再生数で公開するパフォーマンスを選ぶ方針だった。ただし、本人は二つの発言を直接結び付けてはいない。

公開された4721本には、キャリアも再生規模も異なる出演者が同じ形式で並ぶ。その編集方針と今回の「守る」という発言は併記できるが、終了判断の直接の理由とまでは言わない。

誰が困るのか

ニートtokyoが止まって実際に不便を被るのは、リスナーよりも、これから出てくるラッパーのほうだ。

ニートtokyoが担ったのは、新人とベテランを同じ質問数・同じ背景で公開する枠だった。雑誌、テレビ、ポッドキャストの数を網羅的に比較したわけではないため、他の発言機会の多寡までは断定しない。

ニートtokyoは、キャリア年数にかかわらず、同じ椅子と質問形式で公開してきた。ksr:3のような新しい名前とMummy-Dが、同じ画面設計で並ぶ。その一律のフォーマットが、アーカイブの特徴だった。

もうひとつは、10年後の話だ。日本語ラップの歴史を後から検証するとき、当事者が同時代に何を考えていたかを本人の声で引ける資料は、活字よりこの4721本のほうが厚い。

だから、このアーカイブが8月以降どう扱われるのかは、終了そのものより重い。SEEDAが「守る」と書いた対象が、これから撮るものなのか、すでに撮ったものなのか。そこはまだ読めない。

8月中に確かめること

  • 8月中に公開される「特別な仲間たち」の顔ぶれ。誰を最後に呼ぶかは、SEEDAがこの8年10カ月で何を作ったと考えているかの答えになる
  • 既存4721本のアーカイブが9月以降も残るのか、非公開化されるのか
  • 「第二幕」の有無、時期、形態。現時点では何も発表されていない
  • 空いた枠を誰が埋めるのか。日本語ラップのインタビュー動画枠は、いま実質的に空席になる

主要参照リンク

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