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Itaq「2112」 『二十二世紀の君』に着想を得て描く「信徒」の悲哀、『TYGTA -退下駄-』は本日発売

チャート・楽曲評11 min read

Itaq「2112」は、退廃的な近未来の一場面から始まる。ガラス屋根のドームの下、孤児が死神と待ち合わせている。多国籍軍が命懸けで動いている。その屋根から射した光が、黄色い花弁を照らす。1分52秒の曲で、風景の説明はそれだけだ。あとは言葉が次々に乗り換わっていく。

2112年は二十二世紀にあたる。発表元は、この曲が大川隆法の作詞した「二十二世紀の君」に着想を得たものだと書いている。曲名がそのまま年号として置かれている。

要点

  • 曲名:Itaq「2112」。2026年9月11日(金)配信、レーベル表記は「委託 Label」、収録時間は1分52秒
  • 歌詞:退廃的な二十二世紀の情景に、宗教の語彙とゲームの語彙を同じ列で並べる。作詞はItaq
  • 作詞の出どころ:発表元は、大川隆法が作詞した「二十二世紀の君」に着想を得た曲だと説明している
  • クレジット:Lyrics by Itaq/Produced, Mixed & Mastered by :Plue
  • 映像:Itaq自身が全編AI生成で制作したミュージックビデオが配信と同日に公開された
  • 元の曲:「二十二世紀の君」は2023年12月16日発売、作詞・作曲は大川隆法、歌は大澤美也子。公式の紹介文は「平和で幸福な二十二世紀」を願った曲だと書いている
  • アルバム:4thアルバム『TYGTA -退下駄-』が2026年9月18日(金)に発売。全18曲で、「2112」は16曲目。KAI-YOUによれば「対立と統合」がテーマで、Forty Four、Tyga Ichinose、Galan Beatz、yanagamiyuki、プロハンバーガーらが参加している

歌詞は退廃的な二十二世紀に、ゲームの語彙を持ち込む

ドームの場面のあと、視線が「君」に移る。ロシアの衣装を着た相手と隠れんぼをしている。来年でちょうど結婚百周年になる、と続く。百年という単位が出てくる時点で、人間どうしの話ではなくなっている。「君」が誰なのかは書かれない。

そこにヘッドギアが出てくる。映像が繰り返し流れる装置だ。そして救世主でさえ、失敗すればリセットされる存在として書かれる。信仰の中心にいるはずの者が、やり直しのきくゲームのキャラクターと同じ扱いになる。ここで曲の語彙が入れ替わる。

入れ替わったあとの言葉は、ずっとゲームとインターネットのものだ。何度も踏んでいる違反サイト。プレイヤーは極少数しかいないのが常だという認識。それを知っていてもやる気を出してくれ、と誰かに向かって言う。信仰の話をしているはずの曲が、過疎ったオンラインゲームの愚痴のような口調になる。

この落差が「2112」の書き方だと思う。退廃した未来も、信仰の重さも、深刻な声では歌われない。深刻なものを軽い語彙で受けるから、かえって逃げ場がなく聞こえる。

「複製された大川隆法」という一行

違反サイトの話のあとに、名前がそのまま出てくる。

複製された大川隆法
但し (魔改造)

Itaq「2112」より

複製されているが、そのままではない。手を加えられている。「魔改造」は、元の設計を無視して別物に作り変えることを指す俗語だ。二十二世紀に残っているのは本人ではなく、いじり回された複製のほうだという。

その直後に霊界探訪が置かれ、すぐ違反サイトの話に移る。宗教や信仰をめぐる語彙と、ネットの語彙が、改行1つで隣り合う。並べ方に注釈はない。

その先も同じやり方が続く。法則性を導き出すための総力戦。存在しないはずの「ブラザー連合」が登録制になっている。中身のない共同体に入会手続きだけがある、という書き方だ。そして毒によって固まった思考回路は強い、と続いていく。

元の曲「二十二世紀の君」は、同じ世紀を反対向きに描いている

着想のもとになった「二十二世紀の君」は、2023年12月16日にCDで発売されている。作詞・作曲が大川隆法、歌は大澤美也子。発売はARI Production。8分15秒ある。公式チャンネルの紹介文は、平和で幸福な二十二世紀を願って作られた曲であり、人類への限りない愛と未来への希望が込められていると書く。紹介文が引いている歌詞の一節も、二十二世紀も世界は美しかった、それだけで涙が出た、という内容だ。「2112」の発表文が同じ世紀に置くのは、退廃的な近未来である。同じ百年先を、片方は希望として、もう片方は荒れた景色として書いている。Itaqは同じ二十二世紀を、別の景色として置き直している。

発表元はこの曲を、期待された通りの生を歩むことのできない「信徒」としての悲哀を書いたものだと説明している。歌詞の側から見ると、その悲哀は嘆きの形を取っていない。信仰にまつわるものを、リセットや登録制や改造といった、扱いの軽い言葉に置き換えていく。そうやって扱えるところまで軽くしないと持てない、という手つきに見える。

トラックとミックスとマスタリングは:Plue

「2112」のクレジットは、Lyrics by Itaq、Produced, Mixed & Mastered by :Plue。作詞以外を:Plueが1人で担っている。発表元は:Plueを「盟友」と書く。

先行第1弾の「Evangelion」(9月4日配信)は分担が違った。Produced by Galan Beatz、Recorded by Itaq、Mixed & Mastered by :Plue。トラックの作り手が入れ替わり、音の仕上げだけが2曲を通して同じ人物のままになっている。

発表元は「2112」の音像を、神秘的なバイブレーションを纏うシンセサイザーを軸にした、Low-keyな質感と浮遊感を併せ持つものだと説明している。

MVはItaq本人が全編AIで作った

配信と同じ9月11日、ミュージックビデオが公開された。制作したのはItaq自身で、映像は全編がAI生成である。公式チャンネルでの表記は「Itaq – 2112 [AI Music Video] Prod. :Plue」。AI映像であることをタイトルに出している。

選択として筋は通っている。歌詞に出てくるのは、ヘッドギアに繰り返される映像であり、複製されて改造された人物だ。生成された映像で作るというのは、その題材の延長にある。発表元も、現実と虚構の境界が曖昧なAI映像によって描き出した作品だと書いている。

使用したツール名、制作期間、外部スタッフの有無は公表されていない。先行第1弾「Evangelion」にはMVが付いていない。映像が作られたのは先行2曲のうち「2112」だけだった。

『TYGTA -退下駄-』は全18曲、「2112」は16曲目

4thアルバム『TYGTA -退下駄-』が、本日9月18日に発売された(公式配信リンク)。全18曲。客演表記のあるトラックはなく、18曲すべてがItaq名義で登録されている。

曲順は次の通り。

  1. 扉 -intro-
  2. 開端
  3. Back in the day
  4. Faded View
  5. STAR SEED
  6. qualia interlude
  7. godlovesme dubplate
  8. 堕天使の火葬
  9. Evangelion
  10. T.Y.G.T.A
  11. Within the Womb
  12. trash talk
  13. 4Shodo Flow
  14. ターコイズの魔法
  15. Sharing the Fire
  16. 2112
  17. N0 Heaven Yet
  18. Kawthar

「2112」は16曲目に入った。先に出た「Evangelion」は9曲目で、アルバムのほぼ中央にある。先行2曲は前後に離れて置かれた。

「2112」の前が「Sharing the Fire」、後ろが「N0 Heaven Yet」。終わりから3番目という位置になる。曲名を並べると、堕天使の火葬、Within the Womb、N0 Heaven Yet、Kawthar と、宗教にまつわる語が全体に散っている。Kawtharはクルアーンに出てくる語で、KAI-YOUもこのアルバムがクルアーンから影響を受けていると書いている。特定の教団の語彙だけで固めた並びではない。

アルバムの参加陣は、発売前日の9月17日にKAI-YOUが報じている。Forty Fourのブーンバップ、Tyga Ichinoseのローファイなギター、Galan Beatzのトラップ。New JazzやPluggの影響を受けたビート、レゲトンまで入る。yanagamiyukiとプロハンバーガーもプロデューサーとして参加している。同記事はアルバムのテーマを「対立と統合」とし、信仰と堕落、虚構と現実、ヒップホップの新旧という組み合わせを挙げる。オーウェル『1984』とクルアーンの影響、そしてアルバム名がプレアデス星団の恒星タイゲタに由来することも書かれている。ただし全18曲のトラック別クレジットは揃っていない。

よくある質問

「2112」というタイトルは何を指すのか

発表元は、この曲が大川隆法の作詞した「二十二世紀の君」に着想を得たものだと説明している。2112年は二十二世紀の年号にあたる。元の曲が希望として書いた百年先に、荒れた景色を置き直した題名だと読める。

プロデュースは誰か

:Plueが1人で3役を担っている。アルバム全体では作り手が分かれ、Forty Four、Tyga Ichinose、Galan Beatz、yanagamiyuki、プロハンバーガーの名が挙がる。:Plueが3役そろって立つのは、いまのところ「2112」で確認できる形だ。

「2112」はアルバムの何曲目か

16曲目。1分52秒で、18曲のなかでは短いほうに入る。その後ろに「N0 Heaven Yet」と「Kawthar」が続いて終わる。

  • POP YOURS 2026とItaqの違和感(2026年4月11日):Itaqを主題に扱った単独記事。フェスの名称をめぐる発言を、ECDやEric.B.Jr.の議論に接続して読んだ
  • ラップスタアは賞レースになったのか(2026年6月19日):ラップスタア誕生2026の賞金1000万円をめぐる記事。Itaqの応募と「1000万円が欲しいわけではない」という説明にも触れている

出典

最終確認日:2026年9月18日。歌詞の引用と読み取りは、プチリリに表示されている範囲にもとづく。宗教・信仰に関する固有名詞や事実説明は歌詞またはリリース情報に基づく。語彙の配置や対比についての読み取りは本誌の解釈である。宗教団体そのものへの評価は行っていない。全18曲のトラック別クレジット、ミュージックビデオの制作ツールと制作期間、本作に関連するライブ日程は、本誌確認範囲では見つからない。誤りの訂正は訂正方針に従い更新ログに記録する。

画像

アイキャッチ:Itaq「2112」のSpotify配信カバー(引用)。

更新ログ

  • 2026-09-16:記事作成。ULTRA-VYBE, INC.のリリース情報2件をcurlで取得・保存し、Spotify oEmbedとiTunes Search APIで配信レコードを照合。
  • 2026-09-18:歌詞の内容を軸に本文を書き改め、アルバム発売日の情報を更新
  • 2026-09-18:アルバム参加陣と元曲の情報を追加し、出典の注記を改めた

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