千葉雄喜 & BABYWOODROSE『Documentary』制作クレジット全7曲ガイド
千葉雄喜とBABYWOODROSEの『Documentary』を全7曲の制作クレジットから読む。プロデューサー・作曲者・ラップ参加の違い、ChaseTheMoneyの5曲、BABYWOODROSE自身の作品を案内。公式MV、人物プロフィール、関係者インタビューへつなぐ。
千葉雄喜とBABYWOODROSEの『Documentary』は、2026年4月25日にYC Soundsから発表された、全7曲・約15分の共同名義アルバムだ。作品の中心には、5曲でプロデューサーとしてクレジットされるChaseTheMoneyがいる。ただし、その数字だけで制作を一括りにすると、冒頭曲の共同作曲者や、アルバムを形にした別の役割を見落とす。
この作品で追いたいのは、誰がどの曲を作り、誰が全体をまとめ、その上に二人の名義がどう置かれているかだ。公式MVのプロデューサー表記と、配信元の作曲・演奏クレジットを照合すると、海外との接続を「日本かアメリカか」の二択より具体的に読める。以下では確認できる制作記録を示した上で、曲順と共同制作の意味を考える。
全7曲――プロデューサーと作曲者の表記を分ける
Apple Musicの作品ページは、千葉雄喜とBABYWOODROSEのアルバムとして、2026年4月25日、7曲、15分、YC Soundsと記載している。発売時点の事実を押さえる入口になるのが、この作品情報とTuneCore Japanの配信クレジットだ。
下表の「プロデューサー」は「曲」の公式MV説明欄、「作曲者」はTuneCore Japanの掲載内容に基づく。役割の違う欄なので、一方の名前で他方を上書きしない。
| 曲順・曲名 | MV説明欄のProducer | 配信ページの作曲者 |
|---|---|---|
| 1. 曲 | ChaseTheMoney | ChaseTheMoney、Jayx、Rapha.beatz |
| 2. 生活習慣 | JayUncut | JayUncut |
| 3. ジョージ・ワシントン | ChaseTheMoney | ChaseTheMoney |
| 4. ボブ・マーリー | ChaseTheMoney | ChaseTheMoney |
| 5. 墓行け | ChaseTheMoney | ChaseTheMoney |
| 6. スパスタ | ChaseTheMoney | ChaseTheMoney |
| 7. ビバリーヒルズ | Ambezza | Mathias Liyew |
特に1曲目は、プロデューサーの代表表記だけならChaseTheMoneyだが、作曲者欄にはJayxとRapha.beatzも並ぶ。制作の貢献を詳しく知りたい読者には、この三名の記録まで渡す必要がある。7曲目も、公式映像と配信ページで表記が異なることをそのまま残した。二つの欄が示す範囲を確認しながら読むためだ。
全曲の作詞者欄には千葉雄喜とBABYWOODROSEが並び、ミキシングとマスタリングにはChris Bhikooが記載される。一方で、3曲目「ジョージ・ワシントン」の「ラップ」欄は千葉雄喜のみ。共同名義のアルバムであること、共同作詞の表記があること、各トラックの実演者欄は、それぞれ別の情報だ。全曲で二人がラップしている、とクレジットだけからまとめることはできない。
冒頭と3〜6曲目を結ぶ、ChaseTheMoneyの5曲
ChaseTheMoneyの担当は1曲目と3〜6曲目。2曲目「生活習慣」でJayUncutを挟み、中盤の4曲が続いた後、7曲目「ビバリーヒルズ」でAmbezzaへ移る。5曲という数だけでなく、この配置が制作クレジットから見える本作の特徴だ。
冒頭の「曲」と、中盤の「ジョージ・ワシントン」を並べると、同じプロデューサーでも登録された制作陣は同じではない。「曲」の作曲者は三名で、ラップ欄にも千葉雄喜とBABYWOODROSEの二名が並ぶ。「ジョージ・ワシントン」の作曲者はChaseTheMoney、ラップ欄は千葉のみ。共同名義は変わらず、曲ごとの制作と実演の記録が変わっている。
この違いは、アルバム全体の名義と一曲の担当を分けて読む理由になる。プロデューサー欄だけを抜き出せば同じ名前の二曲でも、作曲とラップの欄までたどれば別の組み合わせが現れる。本文のこの比較はクレジットの分析であり、未確認の音色やフロウ、本人の制作意図を補ったものではない。
音源の制作と、作品全体をまとめる仕事
公式MV説明欄には、ビート以外の担当も載っている。Chris Bhikooがミキシングとマスタリング、Kota Yamamotoがカバーデザイン、Ryo Takahashiがエグゼクティブ・プロデューサーとクリエイティブ・ディレクター。A&RはShumpei Shoji、2曲目にはSTEELO as STEEKNOWSの名も記されている。映像の監督はEillyhustlehardだ。
曲ごとの担当が替わる一方、ミックスとマスタリングは全7曲でChris Bhikooが担い、作品全体のクリエイティブにはRyo Takahashiが記される。制作を「ビートメイカーの国籍」だけで分けるより、トラック単位の仕事とアルバム全体をまとめる仕事の違いが見えてくる。
クレジットには各工程の録音場所や契約上の主導権までは書かれていない。ここで確認できるのは、二人の日本語の作詞、曲別の制作担当、音の仕上げ、映像やデザインに関わった人の名前と役割だ。
BABYWOODROSEは全7曲の作詞者、6曲のラップ欄に
作品の名義は「千葉雄喜 & BABYWOODROSE」。TuneCoreの記録では、BABYWOODROSEは全7曲の作詞者に入り、「ジョージ・ワシントン」を除く6曲でラップ欄にも記載される。共同名義という看板の下に、曲をまたいだ具体的な参加の記録がある。
例えば「生活習慣」は、作曲者がJayUncut、作詞とラップは二人。「ビバリーヒルズ」も、作曲者欄にはMathias Liyew、作詞とラップには二人が並ぶ。アルバムの中でプロデューサーが切り替わる場所にも、BABYWOODROSEの名前は続いている。一曲だけ招かれたゲストとして紹介すると、この配置を伝えられない。
BABYWOODROSE自身の作品を知る入口には、TuneCoreの本人名義の作品一覧がある。『Documentary』だけでなく、2025年の『Trapadelic』、2026年の『Fuck Da Industry』や『Addicted』も並ぶ。この共同アルバムから、相手のソロ名義のカタログへ戻れる。
この資料ガイドで大切にしたいのは、千葉の海外での活動を説明するための補助役に、BABYWOODROSEを押し込めないことだ。二人を組ませた狙いや交渉の経緯は当事者への取材を要するが、まず公表されている作詞・実演の参加範囲と、本人の作品への入口を押さえられる。
千葉雄喜の海外との接点――今回だけを「始まり」にしない
千葉雄喜の国際的な活動には、KOHH時代からの蓄積がある。代表例にはKeith Ape「It G Ma」、Frank Ocean『Blonde』のフィジカル版に収録された「Nikes」への参加がある。2024年にはMegan Thee Stallion「Mamushi」でも共演した。名義の変化を含む経歴と各作品の参照先は、千葉雄喜の人物プロフィールにまとめている。
本人の考えを知る資料としては、J-WAVEによる高木完との対話記事も重要だ。千葉は「Mamushi」の録音について、日本で自分のバースとMeganのフックを録り、その後Meganがアメリカで自身のバースを録って送り返したと説明している。ひとつの曲の中でも、制作の工程は複数の場所にまたがっていた。
同じ対話では、LAへの移動を考えていたことと、グラミー賞を目指す気持ちも本人が語っている。この発言は活動の方向を理解する材料になる。ただし、2025年の本人の説明から、翌年の『Documentary』の具体的な組み方まで決まっていたと読むことはできない。
ワーナーミュージック・ジャパンの2025年7月4日発表では、包括契約と300 Entertainment Japanへの所属、LAへ拠点を移す予定が告知された。レコーディングに加え、マネジメント、マーチャンダイジング、ライブ制作を含む契約だ。一方、『Documentary』の配信ページにはYC Soundsとある。包括契約の説明と、個別作品の発売元表記は、対象とする関係が異なる。
この経緯を踏まえると、『Documentary』には、以前からの国外との制作関係を、BABYWOODROSEとの共同アルバムという単位で追える面白さがある。日本語ラップ全体で前例がないと歴史を区切らなくても、この一作の具体的な組み方は十分に検討に値する。
POP YOURSと発売日の近さから、言えること
主催者のラインナップ発表によれば、POP YOURS 2026の開催日程は4月3〜5日で、千葉雄喜は4月4日のDAY 2のヘッドライナーとして告知された。『Documentary』の発売日は、その3週間後の4月25日。同発表にはDAY 1のKoshy & Sonsiも掲載されている。
告知上の出演予定日とアルバム発売日が、同じ4月に並ぶ。ここで参照しているのは開催前のラインナップ発表で、実際の出演内容やフェスを作品の伏線にした意図を確認する資料ではない。Koshyによる制作の仲介も、今回の公式クレジットからは確認できない。
音源から二本のMV、人物と取材へ
アルバム発売と同日の4月25日に「曲」、4日後の4月29日に「ジョージ・ワシントン」の公式MVが公開された。どちらもEillyhustlehardが監督として記載され、二人の共同名義が映像のタイトルにも置かれている。現在は予告の段階ではなく、両方を作品と照らして見られる。
「曲」の映像は、三名が作曲者に記載され、二人のラップが登録された冒頭曲への入口になる。「ジョージ・ワシントン」は、同じ共同名義を保ちつつラップ欄が千葉のみとなる3曲目への入口だ。二本を作品情報と並べると、「二人のアルバム」が曲ごとに同じ参加形態を意味するわけではないことがわかる。
作品から人物へ進むなら、千葉雄喜のプロフィールで名義・代表作・共演歴をたどれる。YTG/SamへのHIPHOPCsインタビューは、子どもの頃からの出会いやスタジオ、ツアーでの時間について、Sam本人が語ったものだ。千葉本人への取材とは区別しつつ、作品クレジットだけではわからない人間関係を読む入口になる。
このアルバムを「海外のプロデューサーが5曲を担当した作品」と紹介するだけでは、冒頭曲の共同作曲者、全曲を仕上げたエンジニア、二人の作詞と曲ごとの実演の違いが抜ける。7曲の表を入口にそれらをつなげると、『Documentary』は、複数の仕事が一つの共同名義に集まった作品として見えてくる。
出典と更新
発売情報はApple MusicとTuneCore Japan、制作陣とMV公開日はEillyhustlehard Filmsの公式映像ページ、契約はワーナーミュージック・ジャパン、本人の録音に関する説明はJ-WAVE、出演日程は主催者の発表を参照した。本文中のリンクから原資料を確認できる。曲順と役割の比較はHIPHOPCsによるクレジットの分析であり、音源の全編実聴レビューではない。
初出:2026年4月26日。2026年10月4日、編集部が一次資料を再照合し、冒頭曲の作曲者を補足。プロデューサーと作曲者の表記、MV公開日の間隔、過去の客演作品の版、制作上の役割を整理した。「日本の関与がほぼない」「前例がない」など根拠が足りない断定と、当事者の意図を推測した説明を改め、公開済みMVへの案内に更新した。
写真:在日米国大使館、2024年8月16日。Wikimedia Commonsのファイル・出典記録では、米国連邦政府の業務著作物として米国内でパブリックドメインとされている。Commons掲載のトリミング済み画像を使用。