Lil Durk公判、OTF Jamが関与を証言──Brian Steelが反対尋問、Yeも傍聴
8月27日、ロサンゼルスの連邦裁判所にYe(Kanye West)がいた。Lil Durkの家族の近くに座り、証言台を見ていた。建物の外では「FREE DURK」のTシャツが広げられ、OTF所属のDoodie Loがその写真をInstagramに載せた。
証言台にいたのは、自分もあの銃撃に加わったと認めた男だった。Kacey “OTF Jam” Hester。検察側の協力証人である。この日の午後、Lil Durkの弁護人Brian Steelが反対尋問を始め、それは翌28日いっぱいまで続いた。
Tシャツは証拠ではない。Jamが法廷で語ったことも、それだけでは評決にならない。弁護側はJamの動機と、その説明が過去の供述と食い違う点を争っている。判断するのは陪審であり、Lil Durk、Deondre Wilson、David Lindseyの3人にはまだ無罪推定が及ぶ。
8月27日・28日の2日間で起きたこと: Jamは、Lil DurkがQuando Rondoを狙った計画に加わったと証言した。Steelは、2023年5月の録音供述、収監中に家族と交わした通話、別の協力者との連絡を陪審に示し、その証言がどこまで独立して裏付けられるのかを問うた。Jamの証言は28日に終わった。Yeは27日に来廷した。
傍聴席のYe
カリフォルニア中部地区連邦地裁の8月27日付公式カレンダーは、事件番号24-621(D)-MWFの審理を「JURY TRIAL – DAY 6」と記録している。複数の現地法廷取材によれば、Yeはこの日の法廷に入り、Lil Durkの家族の近くでJamの証言を聞いた。
法廷の外で撮られたのが、Doodie LoのInstagram投稿だ。「最も暗い時に来てくれた」という短い言葉が添えてある。同じ建物には25日にもG Herbo、Dreezy、Doodie Lo、Lil Durkの父、MGKが集まり、XXLが25日と27日の様子をそれぞれ投稿している。
Yeが事件の中身について何かを語った記録はない。Ye本人の公式X(@kanyewest)と公式Instagram(@ye)の公開フィードには、8月29日(日本時間)の確認時点で、公判に関する新しい投稿がなかった。「YeがLil Durkを支持した」とは書ける。「Yeが無罪を主張した」とは書けない。
YeとLil Durkはどちらもシカゴに根を持つ。「Jonah」、Cardi Bの「Hot Shit」、¥$の「Vultures」で共演し、Lil Durkは2021年の「Kanye Krazy」でYeの映像表現を引いた。その関係が今回、レコードの外側に出た。傍聴席は誰でも座れる場所で、そこに誰が座るかはニュースになる。陪審が見ているのは証言台のほうである。
証言台のOTF Jam
争われているのは2022年8月19日、ロサンゼルスのガソリンスタンドで起きた銃撃だ。検察は、Quando Rondoを狙った報復計画が実行され、同行していたSaviay’a “Lul Pab” Robinsonが死亡したと主張している。Lil Durkは無罪を主張している。事件全体の時系列は開廷前の完全ガイドに、今回の陪審が審理する訴因と別公判へ分離された訴因の関係は証拠提示の最初の2日を検証した記事にまとめている。
Jamは自身が銃撃に加わったことを認めたうえで、Lil Durkも計画に関与したという筋書きを陪審に示した。Los Angeles Magazineの主尋問の法廷報告によれば、証言の骨格は次の通りだ。
- ロサンゼルスへ向かうよう告げられた電話のとき、別の電話越しにLil Durkの声を聞いた。
- Atlantaのスタジオで、Quando Rondoを狙う人物への報酬として50万ドルまたは100万ドルが話に出た。Lil Durkもその会話にいた。Jam自身に実行前の支払い提示はなく、実際に支払われてもいない。後日の楽曲参加で受け取った1万ドルを、Jamは事件への報酬と受け取った。
- 一行はホテル、ディスペンサリー、衣料店と移動するQuando Rondoらを追い、ガソリンスタンドで銃撃した。
- 途中で計画を止めようとしたが止まらなかった。銃撃の後、電話でLil Durkの声を聞いた。
- 死亡したRobinsonは、自分にとって争いのない相手だった。
検察は、この証言を通話記録、移動の経路、車両、金融記録、事件前後の通信に接続しようとしている。弁護側が争っているのは、Lil Durk本人の指示と、殺人と金銭を交換する合意が、合理的疑いを超えて証明できるのかという点だ。
Brian Steelが突いた3点
やりとりは荒れた。Robinsonの殺害後になぜ逃げたのかと問われたJamは、誰でも逃げると答え、法廷にいる多くの人は殺人を経験していないとも述べた。SteelはBlack Disciples内で指導的立場を意味するというJamの「Minister」という肩書きを持ち出し、普通の人とは違うのではないかと迫った。Michael W. Fitzgerald判事はこの応酬を「soap opera」と呼んだ。記録に残るのは、その隣で積み上げられた3点のほうだ。
1. 説明が変わっている
最も重いのが、2023年5月の録音供述との差である。この録音でJamは、ロサンゼルスへ行く前にLil DurkとKing Vonの死やQuando Rondoについて話したことを否定していた。Quando Rondoへの報奨についても分からないと答えている。約2時間後、金額は出なかったものの、Quando Rondoを殺せば報われるという集団内の会話があったと説明を変えた。今回の法廷証言はさらに具体的で、Atlantaのスタジオで50万ドルまたは100万ドルという数字が出たことになっている。
Jamの説明はこうだ。最初の質問を、Lil Durkとの一対一の会話についての質問だと理解していた。
2. Jamの言葉以外に何があるのか
Steelは、Lil Durkが関わるとされる各場面について、独立した裏付けの有無を繰り返し尋ねた。電話越しにLil Durkの声を聞いたという証言について、そのとき同席していたとJamが述べた妻は、捜査当局の事情聴取を受けていない。Jamは、聴取するかどうかは警察の仕事だと答えた。
裏付けとして期待されているのは、別の協力者の証言である。ここでSteelは、JamとKavon “OTF Vonnie” Grantを接触させないための制限がある中で、第三者を介した通話とメッセージが交わされていたと主張した。Jamは制限の存在は知っていたが内容を説明されていなかったと述べ、Grantと事件の中身を話したことは否定した。連絡の目的は、同じ施設へ移るため制限を解いてもらうことだったという。裁判所は、両者が証言を合わせたと認定していない。
3. なぜ証言するのか
Jamには有罪答弁合意があり、より短い刑を望んでいることを法廷で認めた。具体的な減刑は約束されておらず、終身刑の可能性も残ると述べている。Steelは、Jamが収監中に家族と交わした通話を持ち出した。協力によって刑を免れる、あるいは短くできると期待していると読める内容だった。Jamは、家族に希望を持たせるため完全な事情を話していなかったと説明し、Lil Durkに終身刑を望んでいるのではなく自分の側の話をしているだけだとも述べた。
このほかにSteelが持ち出したのは、次の2点である。
- Boonie Moeから突然ロサンゼルス行きを告げられたというJamの説明に対し、通話記録ではその前にJam側から2回電話していた。Jamは、突然だったのは電話ではなく話の中身だと答えた。
- Jamは、釈放されて姉の家にいるかのように装う投稿に関与したことを認めた。子どもとの連絡を断たれたことに腹を立て、姉を怖がらせるために仕組んだという。
Steelが反対尋問を終えた後、検察が再主尋問を行い、Jamの証言は終わった。再主尋問でJamは、Lil Durkが自分を護衛役として扱い、銃を持たせることを好んでいたと述べ、釈放を得るためにLil Durkについて虚偽を述べているという見方を否定した。
協力証人の裁判で、実際に決まること
協力証人が中心にいる連邦公判では、証拠が二層になる。一層目は証人が語る筋書きだ。二層目は通話記録、移動の経路、車両、金融記録といった、証人の記憶とは無関係に存在する記録である。検察の仕事は、一層目のどこまでを二層目で押さえられるかを示すこと。弁護側の仕事は、押さえられていない部分を特定し、そこがちょうど被告人の関与に関わる部分だと示すことだ。
反対尋問の2日間で争われたのは、その境界線だった。ロサンゼルスへ向かったこと、一行が移動したこと、銃撃が起きたこと。ここには記録が接続され得る。Steelが独立した裏付けを繰り返し求めたのは、そこではない。Lil Durkが電話の向こうにいたという部分と、Atlantaのスタジオで金額が話に出たという部分である。この2点はいま、Jamの言葉に載っている。
陪審が今後の証言と記録に照らして見るのは、次の3点になる。
- Lil Durkの声を聞いたとする部分と、報奨の会話にLil Durkが加わったとする部分に、Jam自身の言葉以外の裏付けが出るか。
- 2023年の録音供述から今回の証言までの変化を、質問の理解の違いと見るのか、説明そのものの変化と見るのか。
- 今後証言が予定されると報じられているKavon GrantやKeith Jonesの説明が、Jamのものと一致するか。
3点目が、Grantとの連絡をめぐるやりとりに時間を割いた理由でもある。二人目の協力者の証言は、一致すれば検察の裏付けになる。制限下での連絡が強調されれば、その一致自体が弁護側の材料になる。
8月31日付の連邦地裁公式カレンダーは、同日午前8時15分から「JURY TRIAL – DAY 8」を予定している。
Yeが傍聴席にいたことは、Lil Durkがヒップホップの中で孤立していないことを示した。法廷が決めるのは支持者の数ではない。検察が各訴因を合理的疑いを超えて証明したかどうかだけである。
主要資料と確認範囲
事件の基礎は起訴状と連邦地裁の公式カレンダー、公判内のやりとりは現地法廷取材に依拠している。法廷内の描写については、公判を継続して取材しているLos Angeles Magazineへの依存度が高く、同誌の記述はRolling Stoneの当日取材と照合できる範囲で確認した。
Instagram投稿は「誰が何を公に表明したか」の確認にのみ使い、画像は転載せず原投稿へのリンクにとどめている。Xで拡散した同じ場面の映像は転載アカウントによる紹介であり、原典としてはDoodie Lo本人の投稿を採った。Ye本人のInstagram Storyの内容はログアウト状態の公開面から確認できないため、「投稿がなかった」「削除された」とは判断していない。Jamの姉に関する投稿の住所と画像は掲載しない。
- カリフォルニア中部地区連邦地裁・第4次差し替え起訴状(2026年7月31日)
- VICAR murder・interstate-stalking conspiracy訴因の分離命令(2026年7月14日)
- 連邦地裁・8月27日カレンダー/8月28日カレンダー/8月31日カレンダー
- Los Angeles Magazine:OTF Jamの主尋問/反対尋問/反対尋問終了と再主尋問
- Rolling Stone:8月28日の反対尋問、録音供述と収監中通話
- Complex:OTF Jamの協力動機と減刑をめぐる証言/Yeの来廷
- Doodie Lo公式Instagram:Yeへの謝意
※本稿は2026年8月29日11時52分(日本時間)/8月29日9時52分(米太平洋時間)までに確認できた、公判7日目の法廷取材を含む。起訴状の記載、検察の説明、協力証人の証言はいずれも有罪認定ではなく、反対尋問や追加証拠によって評価が変わり得る。