2Pac殺害裁判、証拠審理が終了──キーフ・Dは証言せず、8月31日に最終弁論へ
最終確認:2026年8月28日13時(日本時間)/Duane「Keffe D」Davis被告は無罪を主張している。本稿で記す関与内容は、検察側の主張と法廷で提示された証拠の概要であり、有罪が確定した事実ではない。
1996年9月のTupac Shakur(2Pac)銃撃死事件をめぐるDuane「Keffe D」Davis被告(63)の2Pac殺害裁判は、現地8月27日、弁護側が元ラスベガス市警察の3人を証人として呼んだ後に立証を終えた。Davis自身は証言せず、証拠の提示は9日間で終了。陪審は8月31日(月)に最終弁論を聞き、その後、評議に入る予定だ。
この最終日で見えたのは、「証人を何人呼んだか」以上に重い構図だった。弁護側が呼んだ元捜査官の証言は、Davisの話の一部に独立した裏付けを得られなかったことと、当時の捜査官が彼の逮捕状を求めようとするほどその話を重く見ていたことの両方を示した。最後の証人は、弁護側にも検察側にも利用できる「両刃」の証言を残した。
現在地を1分で確認
- 検察側、弁護側ともに立証を終了した。
- 弁護側の証人は、元ラスベガス市警察の3人。弁護側の立証は2時間弱で終わった。
- Davisは証言しなかった。これは憲法上の権利の行使であり、その理由は公表されていない。
- 8月31日は最終弁論の日であって、評決日とは限らない。最終弁論の後に陪審評議が始まる。
- ネバダ州法上、評決には陪審員全員の一致が必要となる。
弁護側の3証人は、何を残したのか
「白いキャデラック」は1台だけだったのか
最初の2人、元巡査部長Stan Hytと元警部補Charlie Mangrumは、銃撃当夜、Death Row Records共同創業者Marion「Suge」Knightのラスベガス宅周辺で、パーティーの混乱を防ぐための時間外勤務に就いていた。両者は、クリーム色または白色のキャデラックがKnight宅の出入りに関わり、Knightが2Pacを乗せたBMWで出発した際にも、車列の中に淡い色のキャデラックがあったと証言した。
検察側は、Davisが白いキャデラックの助手席におり、銃を後部座席へ渡したと主張する。弁護側が淡色のキャデラックを別の車列の文脈に置いたことは、その車の特定に不確実性を持ち込む狙いと読める。
ただし、この証言だけで「別の車が銃撃した」とは言えない。検察側の反対尋問でMangrumは、自身の報告書に敷地に入った車両のナンバーが記録され、当時の殺人課が確認したはずだと認めた。また、銃撃を後続車から見たOutlawzのMalcolm「E.D.I. Mean」Greenidgeは、白いキャデラックをKnight側の車列とは別の車として証言している。陪審が見るのは、「淡色のキャデラックがあった」という一点だけではなく、その前後の一致度だ。
元刑事Dan Longの証言が「両刃」になった理由
最後の証人は、元ラスベガス市警殺人課刑事Dan Long。Longは、2009年にDavisをロサンゼルスで聴取した人物だ。彼はDavisの話を裏付けるため、Orlando「Baby Lane」Andersonが事件前の暴行後に病院で治療を受けたという記録、そして白いキャデラックのレンタル記録を探したが、確認できなかったと証言した。Davisが実際にキャデラックに乗っていたことを示す、彼自身の発言から独立した証拠も持っていなかった。
ここまでは、弁護側が初日から示してきた「捜査は本人の言葉を独立に裏付けていない」という主張に沿う。だが、Longは同時に、聴取を終えてラスベガスに戻った際、Davisを殺人容疑で逮捕するに足る相当な理由があると考え、逮捕状を求めようとしたと述べた。検察側から法的な複雑さを理由に待機を指示されたという。
さらに反対尋問でLongは、Davisが名指したキャデラックの4人が、捜査側がすでに疑っていた4人と一致したと証言した。つまり、「確認できない細部」と「当時の捜査情報と一致する核心」が、同じ証人の口から示された。陪審は、どちらにより大きな重みを与えるかを判断する。
キーフ・Dが証言しなかったことは、何を意味するのか
Davisは証言台に立たなかった。弁護人Michael Sanftは閉廷後、証言するかどうかは被告自身の憲法上の権利であり、どちらの選択も強いていないと説明した。
「本人が証言しなかった」ことと、「検察が有罪を証明した」ことは、法的に別の問題だ。ネバダ州法は、刑事被告人が自らに不利な証言を強制されない権利を定め、同時に、被告人は有罪が証明されるまで無罪と推定されるとしている。立証責任は最後まで検察側にある。
このため、Davisが証言しなかった理由を「反論できなかったから」などと推測するのは正確ではない。この裁判で陪審が評価するのは、Davisが今、新たに何を語るかではない。すでに証拠になった2008年・2009年の聴取、BETのドキュメンタリー、2019年の回顧録、YouTube動画、そして逮捕後の留置場からの通話に残った、彼の過去の言葉の信用性だ。
9日間の後、陪審に残った争点
検察側は、Davisが引き金を引いたとは主張していない。MGM Grandで甥Andersonが2Pacらから暴行を受けた後、Davisが報復を組織し、銃を用意して後部座席に渡したことで殺人に加わった、という構成である。元Compton市警のRobert Laddは検察側の証人として、DavisはSouth Side Compton Crips内の「ショットコーラー」であり、同乗した年下のメンバーが彼の許可なしに発砲することはなかったと証言した。
一方、弁護側は、Davisが捜査で有利な取引を得るため、そして後に本や出演で金と注目を得るため、事件への関与を創作または誇張したと主張する。Davisを事件現場やキャデラックに直接結ぶDNA、指紋、映像、回収された凶器は示されていない。弁護側は、当局が長年にわたり独立した裏付けを得られなかったことを、合理的疑いの中心に置いた。
したがって、陪審が判断する中心は、「2Pacを撃った人物を完全に特定できたか」だけではない。Davis自身が繰り返した話と、それに一致する周辺証拠の組み合わせによって、検察側が彼の殺人への刑事責任を合理的疑いを超えて証明したか。そこが評決の核心になる。
8月31日の最終弁論の後、何が起きるか
陪審は8月31日朝に法廷へ戻る。最終弁論では、検察側と弁護側がそれぞれ、9日間の証拠をどのように読むべきかを陪審に示す。最終弁論自体は新しい証拠ではない。その後、Carli Kierny判事が適用すべき法と評決の基準を説明し、陪審員が評議に入る。
ネバダ州改正法典175.481は、評決に陪審員全員の一致を求めている。評議がどれくらい続くかは決まっていない。「8月31日に評決が出る」とはまだ言えない。Davisは、犯罪組織の助長・支援を意図した凶器使用の殺人罪1件に問われており、有罪となれば終身刑の可能性がある。検察側は死刑を求めていない。
30年の謎と、1人の被告に対する証明は別だ
この裁判は、2Pac殺害をめぐるあらゆる説を確定する場ではない。陪審に問われるのは、起訴されたDavisという1人について、州が起訴内容を証明したかどうかだ。その区別を失うと、未解明の細部が残ることを無罪と同一視するか、逆に過去の自述が多いことを有罪と同一視するかの二択に陥ってしまう。
HIPHOPCsが2Pac殺害裁判の第1週総括で記録したように、この公判の中心は、被告がメディアの中で繰り返した「語り」が、法廷でどこまで証拠になるかという点にある。立証の最後に証言台に立ったのはDavisではなく、過去の彼の言葉を裏付けようとした元捜査官だった。その元捜査官が、裏付けの限界と逮捕に踏み切ろうとした判断の両方を語ったことは、この公判の矛盾をそのまま映している。
事件当夜から30年越しの裁判までの全体像は、2Pacはなぜ殺されたのか【永久保存版】で時系列に整理している。また、事件当夜に2Pacを最後に止めた元警官の初日証言から読むと、9日間で法廷に何が積み上がったかを追える。HIPHOPCsは最終弁論と評決を継続して確認する。