なかむらみなみ、ホームレス経験から世界へ【HIPHOPCs独占インタビュー】
アイキャッチ撮影: Utae
神奈川県藤沢市辻堂出身のラッパー、なかむらみなみ。2015年にKamuiらとHIPHOPユニット『TENG GANG STARR』を結成。2019年に活動休止し、ソロ活動を開始。
代表曲である『TREKKIE TRAX CREW & なかむらみなみ – 令和 (Reiwa)』は、彼女にとって最初のシングルでありながら、世界中のDJによってクラブやフェスでプレイされた。地元である辻堂と自身のライフスタイルを歌ったシングル曲『Ride』とともに、この2曲は彼女の代表曲となっている。
FUJI ROCK FESTIVAL 2023に単独出演、TREKKIE TRAX CREWの客演としてULTRA JAPAN 2025のメインステージにも出演するなど、華々しいキャリアを積んでいる。そんな魅力溢れる彼女だが、実はホームレス経験者というハードな経歴をもっている。どのようにして、なかむらみなみという人物が誕生したのか、これまでの生い立ちとともに、現在の音楽活動を詳しく聞いた。
生い立ちから現在に至るまで
佐藤杜美
なかむらみなみさんの自己紹介をお願いします。
なかむらみなみ
神奈川県藤沢市辻堂生まれ育ち、今でも住んでいるなかむらみなみと申します。ラッパーです。よろしくお願いします。
佐藤杜美
今も辻堂に?
なかむらみなみ
はい、そうです。生まれも育ちも。
Sam
小さい頃ってどんな感じの子でしたか?
なかむらみなみ
人と一緒にいなきゃというのができなくて、1人でいて成り立つというか。声かけてくれたらありがとうみたいな感じで(笑)。
Sam
1人でいることは嫌じゃない感じですか?
なかむらみなみ
1人でいることは嫌じゃなかったです。でも自分からはいけなかったです。なので、声をかけてくれる友達がいたのは嬉しかったですね。1人で絵を描いてたり迷路を描いてたりしてたので。
佐藤杜美
現在の活動内容について具体的に教えてください。
なかむらみなみ
ラップをしております(笑)他にはラッパーやアーティストの方に作詞作曲を提供しています。YouTuberのとうあさんの『MY Routine』という曲の歌詞やフロウを考えたり、他にも『電音部』や『CHUNITHM』というゲームの楽曲も担当しました。自分のラップをするのも楽しいんですけど、他の方の楽曲を作るのも別の脳を使うのでとても楽しかったです。
佐藤杜美
結構幅広く活動している感じなんですね。
なかむらみなみ
そうですね!
撮影: andrew(TREKKIE TRAX) /撮影協力: Bushman Acoustics
日本の伝統文化をきっかけに音楽をスタート
佐藤杜美
音楽活動を始めたのはいつ頃だったのでしょうか。デビューに至るまでの経緯や当時のエピソードについて教えてください。
なかむらみなみ
音楽活動を始めたのは、小学3年生の頃からです。神社のお祭りで演奏するお囃子の太鼓や篠笛、鉦を始めて。 中学生の頃にはバンドもやっていたりしたんですけど、MTR(マルチトラックレコーダー)に1人で全部パート入力して遊んだりもしていました。
とあることがきっかけでホームレスになるんですけど、18、19歳の頃に世代が近いホームレスのコミュニティーにいて、そこにいた時に後にグループになるKamuiさんが来てくれました。Kamuiさんがそこにいる子たちに1人1人、なんでホームレスをやっているかとか、今何を思っているかとか、いっぱい聞いてくださって。今、私はこうやってインタビューでもお話ができるんですけど、当時は何が辛いかとか言語化できなかったんですよ。Kamuiさんに言われてノートにどういう感じで生きてきたか、何を思っているのかを書いたときに「ラップした方が良いよ」と言ってくれたんです。それがきっかけでラップを始めました。『TENG GANG STARR』って2人組っていうイメージがあると思うんですけど、実は最初は何人かいて。
Sam
11年くらい前ですよね。2015年くらい?
なかむらみなみ
はい、そうです。
佐藤杜美
太鼓もしていたとインタビューで見たんですけど、その太鼓が音楽に何か影響を与えていることってありますか?
なかむらみなみ
太鼓をやっていたからリズム感あるだろうって思われがちなんですけど、お囃子って昔からあるものなので録音機能がない。なので、教え方が口伝(口で伝える)なんですよ。言葉で伝わってきたものなので、リズムが複雑で。一度メトロノームを流しながら練習したことがあったんですけど、途中で裏拍になったり、西洋のリズムとの違いを感じたりしたんです。私の考えなのですが、お囃子というものは五線譜の楽譜とは違う文化だから=私にはリズム感がないのかもと思っていて。ラッパーとしてはリズム感あった方がいいじゃないですか(笑)なので最初はライブの練習もめちゃくちゃしてました。そこでリズム感を培ったのかなと。
ホームレス時代を乗り越えて
佐藤杜美
丸山ゴンザレスさんの動画で、18〜21歳頃まで路上生活をされていた時期があったと拝見しました。その頃はどのような状況だったのでしょうか。
なかむらみなみ
私がいたホームレスのコミュニティーは、半分外みたいな場所でした。その当時は原宿に行って飲みかけのタピオカを拾ったりしてました。タピオカってデカいから飲み切ることができなくて、捨てる人がいるんですよ。それを拾っていて。PizzaLoveと撮影の時にいつもの癖で「タピオカ落ちてる!」って思って拾ったら、ドン引きされました(笑)ホームレスと言ってもそれぞれ価値観があるので、ホームレス代表みたいなことは言わないように心がけています。
佐藤杜美
その経験が現在の音楽活動やリリック制作に影響を与えていると感じることはありますか。
なかむらみなみ
ソロ曲の『Kokodoko』という曲では、結構ホームレス時代のことを歌っています。タピオカの話もそうなんですけど、コンビニって空調が効いてるだけでなく、床も冷たいんですよね。真夏の時にサンダルを脱いで素足で、暖の逆。冷が取れる。こういうのも『Kokodoko』には入っています。
撮影: andrew(TREKKIE TRAX) /撮影協力: Bushman Acoustics
音楽のルーツと収録曲のきっかけ
佐藤杜美
ダンスミュージック寄りの活動も多く見られますが、もともとはTRAPやHIPHOPから大きな影響を受け、そこからクラブミュージック、海外アーティストとの制作、ゲームやフェスなどへ活動の幅を広げてこられたと伺っています。まず音楽を始めたきっかけと、ジャンルや活動のフィールドを広げていった理由について教えてください。
なかむらみなみ
ホームレスだった時に、ホームレス仲間のところにKamuiさんが来てくれて、皆でVICEのアトランタ特集を見ていました。その後にChief Keefさんの『I Don’t Like』のMVを見るんですけど、私と一緒にホームレスをやっていた子の中には身分の明かせない子もいて。その時にChief Keefさんの『I Don’t Like』を見た時に、あの動画って自宅謹慎中に友達集めて動画を撮っていたんですよね。それを見て親近感というか、制限されているけど制限されている中で、表現できることってあるよね!ということもラップを始めたきっかけの一つです。その影響がデカくて。もともとTRAPは好きだったんですけど、もっと好きになりました。そこが地続きで原点なのかなと。『TENG GANG STARR』は2019年にアルバム出して、ツアーやリリースパーティーをしたり。ツアーが終わる頃には活動休止ということは決まっていたんですよ。その時は正直自分は、ソロをやったことがなくて、続けるかどうかすごく迷ったんですよね。でも『TENG GANG STARR』をやっている時に、私と一緒に曲を出して欲しいと思っている人が数人いて、Lil’Yukichiさんだったり『TENG GANG STARR』のバックDJもしてくれていたTREKKIE TRAX のandrewさんだったり、餓鬼レンジャーのポチョムキンさんが言ってくださってて。せっかくそういう風に言ってくださるし、1人でもやったことがなかったので、やってみたいなと思ってソロ活動を始めました。その時のマネージャーのシマさんも「TREKKIE TRAXとやるの面白そうだね」と、後押ししてくれました。2019年にTREKKIE TRAX CREWとなかむらみなみで『Reiwa』という曲を出すんですよ。その時点でEDC JAPAN2019 というフェスにTREKKIE TRAX CREWが出ることが決まっていて。新しい元号が発表されて、その1ヶ月後に『Reiwa』を出したんですけど、今まで作っていたラップの感じとは全然違うし、『TENG GANG STARR』の時はほぼバースしか書いたことがなくて、フックもサビの1部分しかやったことがなくて。自分で1曲を作ることがなかったので、相談をたくさんしました。TREKKIE TRAXの皆さんは10年以上活動しているんですけど、質問をしたらなんでも答えてくれるんですよ。仲間がいたから広がった部分はあります。彼らと音楽の話をめっちゃしてて、すごくそれが参考になっているというか。
佐藤杜美
5月29日にリリースされた、オランダ出身のDrum&BassアーティストTANTRONとの楽曲『Turbo Fire』が、レースゲーム『Forza Horizon 6』に収録されました。収録が決まった際の率直なお気持ちをお聞かせください。
なかむらみなみ
実はこの曲、ゲームに入るって言われてなかったんです。経緯をお話すると、インスタの鍵アカウントからいきなりDMが来て。ドラムンベースは90年代からあるジャンルなんですけど、その人はその中でも30年くらいの歴史があるレーベル、Hospital Recordsのスタッフだって言うんです。ちょっと怪しい、詐欺じゃない?みたいに思ってたんですけど、ホームページを見て、DMから送られてきたメールアドレスと合っていたので、本物かもしれん!ということで連絡を入れました。コンピレーションアルバムに入ってほしい、という連絡で、ぜひ!という形でお受けしました。車と上手くマッチしていてよかったなと思いました。
Sam
どのタイミングでゲームのサントラになるんですか?
なかむらみなみ
曲を作り終わって、納品して、向こうからマスターがきて。で、メールのCCにMicrosoftの方が入ってきて。
Sam
俺が見ている感じだと、アーティストさんにゲームの主題歌を作ってくれって言って送るじゃないですか。なんかちょっと逆じゃないですか。曲を聴いて、それをゲームに入れたいってめちゃくちゃ自信になりません?
なかむらみなみ
そうです。よかったと思って。『Turbo Fire』という曲にしてよかったなと思いました。
Sam
普通と逆のパターンですよね。気に入ってもらって曲を使われるのと、これを使いたいって言われるのは違いますよね。
なかむらみなみ
『Forza Horizon 6』に入りますって言われたのがすごく嬉しかったです。
佐藤杜美
その時の周囲の方々からはどのような反応がありましたか。
なかむらみなみ
Hospital Recordsからリリースされることを周りがすごくお祝いしてくれました。ラッパーとしては日本人ではじめてHospital Recordsからリリースしたアーティストになれたので、すごく嬉しかったです。曲を聴いてもらって褒めていただいて。TANTRONは激しいドラムンベースもあるし、Hospital Recordsの歴史ある、キラキラとしたメロディアスな両方要素として入っている。Hospital Recordsをずっと好きだった方も、ドラムンベースが好きな方も両方から褒めてもらったのは、すごく嬉しかったです。ゲームが好きな方からも、おめでとう!と言ってくれました。
佐藤杜美
活動の幅を海外のクラブミュージックシーンへと広げてこられましたが、その中で特に印象に残っている出来事やエピソードがあれば教えてください。
なかむらみなみ
めちゃくちゃいっぱいあるんですけど、直近で印象に残ったことは、ULTRA JAPAN2025です。TREKKIE TRAX CREWとメインステージに出演することになったので曲を作りました。2025年に出た時に、曲の時点で「ここで手を挙げてもらおう」というのを想像して、リリックを書いてレコーディングをしてっていうのをやったんですけど、実際に披露して「Everybody put your hands in the air!」って言ったらマジで皆やってくれて。お腹が空いているかもしれない昼の11、12時くらいに皆が手を挙げて踊ってくれて。リリースしたばかりだったので、聞き覚える時間もない感じだったのに、皆が踊ってくれたのが印象に残っています。一体となってくれたことも嬉しいし、チャンスをくれたTREKKIE TRAX CREWの皆には感謝しています。
もう一つが、2025年のコーチェラで私の顔面ドアップで映し出されたことです。後ろの画面に私が歌っているところを映してくれて。デスゲームの主催者みたいになってて(笑)皆で見て大喜利しまくりました。
saluteさんがDMをくれて、一緒に曲を作ろうって言ってくれて。Ninja Tuneからリリースすることを後から知って。これも偶然というか、コーチェラに出たくて作りました!ではなく、流れでといった感じです。
撮影: andrew(TREKKIE TRAX) /撮影協力: Bushman Acoustics
今後の挑戦&目標
佐藤杜美
音楽活動に限らず、今後挑戦してみたいことや実現したい目標があれば教えてください。
なかむらみなみ
音楽を続けていきたいっていうのが第一にあって。今までは誰かに誘ってもらって客演に入ることが多かったんですよ。こだわりが強いのもあって自分名義のリリースは1年に1回くらいになっちゃってますね。最近だと『Miracle Body』という曲を出しました。最近の感覚だと、プロデューサーの方が、私がのったら面白いなというビートを作って送ってくれるんですよ。プロデュースしてくれるというか。私に合いそうという感じで曲を作ってくれるんです。今までは元々あるスタイルのジャンルにラップをのせてみないか?と言われて、そこからクラブに行って勉強して乗り方を覚えて作るとかだったんですけど、今はビートが私の声とかラップとかを引き出してくれているみたいになってきているなと思っています。ビートに自分が引き出されるってHIPHOP的だなと思うし、今まではそのための修行期間だったのかも?とも思います。今後はもっとその感覚で曲を作っていきたいと思います。
Sam
音楽以外でやってみたいことはありますか?
なかむらみなみ
変わるかもしれないんですけど、他の人への作詞作曲提供やプロデュースは引き続きやりたいと思っています。他にはお祭り事とかで言うと、先生とか役員とかもやっているんですけど、基本お祭りは土日でクラブと被っちゃうことが多いので、早くシュシュっと移動できるようになりたいです(笑)お祭りにもいっぱい出たいし、クラブでも遊びたいし、フェスにも行きたいし、スケジュール調整をできるようになりたいです。
佐藤杜美
最後に、記事内でぜひ伝えておきたいことや、読者に向けたメッセージがありましたらお聞かせください。
なかむらみなみ
頑張ります!インタビュー記事を読んでくださってありがとうございます。謎な部分がたくさんあると思うので、曲だったりとか今回のインタビューを通して知ってもらえたら嬉しいです。7月24日に『Turbo Fire』がHospital Recordsから今度はレコードがリリースされます!その次のリリースは9月にも何かあるかもよって感じです。よろしくお願いします!
▼『Turbo Fire』レコード購入はこちらから
https://hospitalrecords.bandcamp.com/album/forza-horizon-6-hospital-records
なかむらみなみ
X なかむらみなみ / Nakamura Minami(@namcooooo) / X
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YouTube なかむらみなみ (Nakamura Minami) – YouTube
撮影・撮影協力
アイキャッチ撮影: Utae
本文撮影:
andrew(TREKKIE TRAX)
TREKKIE TRAXのメンバーであり、なかむらみなみのA&Rを務める。
撮影協力:
Bushman Acoustics
Bushman Acousticsのモデルルームで撮影。

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