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Future『The Real Me』は失敗作か、酷評された「2018」

HIPHOPCs EditorialHIPHOP Cs編集部USヒップホップ7 min read
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Meathead、Pluto、Future Hendrix、Fire Marshal、The WIZRD。15年でいくつもの名前と人格をまとい、その下の素顔だけは誰にも見せてこなかった男が、今度はアルバムを『The Real Me(本当の自分)』と名づけた。

だとしたら、聞くべきことはひとつだ。本当の自分は、ちゃんとそこにいたのか?

7月10日、Futureが10枚目のスタジオアルバム『The Real Me』をリリースした。ソロ・スタジオアルバムとしては『I Never Liked You』(2022)以来、約4年ぶり。フルレングスのソロ作品としては『Mixtape Pluto』(2024)以来となる。Billboard 200で首位に立てば、通算12度目の1位となる。

この間、彼はMetro Boominとの2作でチャートを制し、この10年で最大級のラップ・ビーフに火をつけた。その因縁も2026年には少なくとも音楽上の再接近へ転じ、ICEMANの「Ran to Atlanta」でDrakeと再合流している。ビーフを経て、Drakeとも再合流し、レジェンドとしての地位を固めた“その後”——本作はそこに置かれた一枚だ。そして2025年に亡くなった盟友Young Scooterを失って以降、初めてのメジャー作でもある。

何よりの特徴は、22曲・客演ゼロという振り切った構成だ。全部を一人で背負う——それ自体が「これが本当の自分だ」という宣言になっている。ちなみに3曲目「No Misery」の頭にはAndré 3000の語りが入るが、これは『The WIZRD』期の音声の挿入で、ラップ客演ではない。だから“客演ゼロ”は崩れない。

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読者の反応は、大きく割れた

公開直後、各SNSとYouTubeのコメント欄から、本作への反応を集めた。結論から言うと、評価は大きく割れている。

『正直しんどい』『一枚通して聴けない』と突き放す声がある。一方で、『前半だけなら今年でも上位』『拾える曲はちゃんとある』と評価する声も少なくない。全否定でも全肯定でもない。そのどっちつかずが、初日の空気だった。

とくにYouTubeのコメント欄は反応が速く、賛否がそのまま同居していた。前半を称える書き込みのすぐ下に、後半での失速を嘆く声が続く、という温度感だ。

とにかく叩かれたのが「2018」

名前が挙がり続けたのが「2018」だ。『Future史上ワースト級』『ここだけは飛ばす』『何がやりたいのか読めない』——言い方はバラバラだが、多くの批判は、あの加工されたボーカルに向かっていた。ピッチを大きくいじった声が、とにかく受けつけない、と。

それでも『振り切ってるぶん記憶には残る』という擁護もちらほら。好き嫌いはどうあれ、寄せられた反応の中では、最も多く名前が挙がった曲だった。

面白いのは、その「2018」が22曲中12曲目、ちょうど後半のアタマに置かれていることだ。『ここから一気に失速した』という声が多かったのも、曲順を見れば納得がいく。批判の矛先は、個々の曲より“長さ”に向かった。『あと数曲削るだけで印象が変わったはず』『後半は集中力が持たない』『編集が甘い』。不満は主に、後半の長さと構成へ向けられている。『客演がひとりでもいれば流れが違ったのに』という声も多い。

皮肉なのは、『通しでいちばん良い』と挙がったのが最終曲「Eye To Eye」だったこと。しかもその直前が不評の「Alice」。なんとも据わりの悪い並びだ。

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とはいえ、前半とベスト曲は好評

酷評一色ってわけでもない。ベストに挙がったのは「Fukk a Interview」「Tank Top Pluto」「Money Over Everything」「Snow in Skyami」「Off the Hinge」あたり。序盤の勢いを買う声はとくに多くて、『頭の数曲は今年でも屈指』なんて感想も届いた。ビートの評価も総じて高い。作品ごと切り捨てるというより、『良い曲はちゃんとある』という受け止めが大勢だ。

判断が割れたのは先行シングル「Radio」。推す声がある一方で、『結局いつものFuture』という意見も目立った。

でも、じっくり聴くと“歌詞”の鋭さが見えてくる

HIPHOPCs初日暫定評価:3.6 / 5.0

すべて通して聞いた感想とリスナーの意見を加備した結果、注目すべきは、If I Could・Big Moment・radioだ

各SNSやYouTubeのコメント欄に寄せられた初動反応では、厳しい意見が目立った。だが、それらの意見を踏まえながら歌詞まで含めて本作を捉え直すと、初聴の印象だけでは拾い切れない強さも見えてくる。

HIPHOPCs編集部は本作を、初日暫定で「Solid(3.6/5.0)」と評価する。「本当の自分」という約束は完全には果たされていない。それでも、その断片には、2010年代以来とも言えるFutureの鋭い筆致が刻まれている。

評価の軸にあるのは、Futureとペルソナの関係だ。人格を演じるのは彼の十八番である。

ゾーン6のフレックス、脅し文句、ポン引きの語り。「Fukk a Interview」「Tank Top Pluto」「Konnichiwa」「Trench Coat」あたりは、その手さばきの見本と言っていい。

だが、本作でより重要なのは、その仮面がふとズレる瞬間のほうだ。

「Big Moment」では、世界に見捨てられた感覚こそが自分を作ったと言い切り、粗末な寝床から潔癖な暮らしへ、という半生を一行に畳み込む。

「If I Could」では息子に「オレを超えろ」と説き、亡き祖母を見上げ、収監された仲間を解き放ちたいと願う。

編集部が「もっとも本当の自分に近い」と考えるのが「Radio」だ。取り乱した言葉の合間から本音がこぼれ、悲しみは一行で通り過ぎる。終盤では自分に「調子に乗るな」と言い聞かせながら、フックでは市場そのものを突き放す。HIPHOPCsが注目曲に選んだ「Radio」「If I Could」「Big Moment」は、どれも奇抜な実験ではなく、Future自身の記憶や感情が前面に出た曲である。

本当の自分は、実験の中じゃなく、ペンの中にあった。

編集部としては、どう見たか

各SNSやYouTubeに寄せられた初動反応と、歌詞まで踏み込んだときに見えてくる本作の姿。そのふたつが大きく異なることこそ、『The Real Me』を読み解くカギだと思う。

これは単純な「良い/悪い」の対立ではない。「本当の自分をどこに探すか」によって、作品の見え方が変わっているのだ。

多くのリスナーは、まず声の実験(「2018」)と22曲の物量に反応して、「いつものFutureが、ただ長くなっただけ」と受け取った。批判が「曲が悪い」より「構成が悪い」に集まったのは象徴的だ。

22曲・客演ゼロという設計は「一人で成立させる」という宣言で、その振り切り(長さ・実験)が、逆に完成度を削ったとも読める。

それをいちばんきつく体現したのが「2018」。

いちばん“攻めた”曲が、いちばん嫌われた。アルバムタイトルに呼応するような変化を最も大胆に提示した瞬間、皮肉にもリスナーが求める「いつものFuture」から最も遠ざかった、と言える。

でも、別の層に耳を澄ませると、素顔があったのは違う場所だ。声を歪める実験じゃなく、悲しみや収監、見捨てられた記憶、父としての言葉が仮面を突き破る「Big Moment」「If I Could」「Radio」のなかに。

ここに本作の切なさがあるように感じた。

長年の盟友を失ったあとに届いた一枚には、結果として内省的な瞬間が多く刻まれている

。「これが本当の自分だ」と差し出されたのに、多くの人には「いつもの延長」として届いた——その落差は、小さくない。でも約束は、確かに“断片的に”果たされている。

冗長で穴もあるけれど、ここ数年でいちばん鋭い筆致を抱えた一枚だ。

編集部としては、この評価の割れを、優劣じゃなく“評価軸の違い”として見ている。

つまり、各リスナーが本作の「完成度」と「告白性」のどっちを重く取ったか、という話だ。低評価の側にも、構成・長さ・客演ゼロゆえの単調さという、まっとうな理由がちゃんとある。どっちが正しく聴けたか、じゃない。

『The Real Me』は、本当の自分を一枚通して見せた作品ではない。だが、Futureが仮面を外しかけた瞬間なら、確かに何度も記録されている。問題は、それを22曲の奥まで探しに行けるかどうかではないだろうか。


出典:読者評価はHIPHOPCsの各SNSおよびYouTubeコメント欄に寄せられた反応より

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