via @kodakblack(Kodak Black公式)instagram
新しいアルバムが出る。普通ならそれだけのニュースだ。でも、Kodak Blackとなると話が変わる。
2026年6月12日、彼は新作『Kodak The Blessing』を配信する。6月7日にInstagramでジャケットとトラックリストを公開、全26曲という大作だ。「祝福(The Blessing)」というタイトル。なのに同じ月、彼は別の場所にもいる──保釈中の被告として。音楽と裁判が、いつものように同時に進んでいる。
この記事は、新譜の告知ではない。「祝福」を掲げる男が、いったい何周目の“やり直し”に立っているのか。それを、HIPHOPCsがこれまで追ってきたKodakの足跡と一緒に読んでいく。
新作アルバム『Kodak The Blessing』、まず何が起きたのか
6月7日、Kodakは自分のInstagramで、新作のジャケットとトラックリストを出した。配信は6月12日(金)。The SourceやComplex Musicが同日報じ、Album of the Yearも6月12日予定として載せている。客演は1900Rugrat、Fridayy、Rylo Rodriguez、G Thugg、Shadea Charai、Albee Alら。全26曲(最終的な曲数はリリース時に要確認)。
面白いのはジャケットだ。木の枝に腰かけたKodakが、ヴァンパイアか悪魔みたいな目をして、かじりかけのリンゴを手にしている。かじったリンゴ=エデンの禁断の果実。アダムとイヴ、つまり「堕落と贖罪」のイメージそのものだ。タイトルの「祝福」と、堕ちることの象徴。最初から、矛盾が一枚に同居している。
本人は発表時、Instagramにこう書いた。「IM FINNA TEAR THIS S*** UP RIGHT KWIK JUST FWM(すぐにこのシーンをぶっ壊す、ただ俺についてこい)」。相変わらず強気だ。
いま確実に言えること
- アルバム名:『Kodak The Blessing』
- 配信予定日:2026年6月12日(The Source、Complex Music、Album of the Yearが掲載)
- 収録曲数:全26曲(本人Instagram発表/要最終確認)
- ジャケット:木の枝に座り、かじりかけのリンゴを持つ構図(禁断の果実のモチーフ)
- 前作:『Just Getting Started』(2025年10月31日、Vulture Love / Capitol Records)
逆に、まだ確定でないものもある。客演やプロデューサーの最終クレジット、リード曲、そしてジャケットに込めた本人の意図。ここは「発表時点の情報」と「確定情報」を分けて読みたい。
なぜ、この新作が気になるのか──引退発言と保釈中リリース
① 「あと2作で引退」と言っていた。 Kodakは2025年10月、新曲「How To Let Go」の告知で「Two More Albums Then I’m Out(あと2枚出したら終わり)」とInstagramに書いた(HIPHOPCs既報)。直後の『Just Getting Started』が“1作目”なら、今回の『The Blessing』は宣言上の“最後の2作目”にあたる。ただ、HIPHOPCsはその時点で、この「引退」を真に受けていない。マーケティングか、あるいは“終わり”ではなく“再出発”の合図では、と読んでいた。その留保は、いまも有効だ。
② 保釈中に出す。 HIPHOPCs既報の通り、Kodakは2026年5月6日、フロリダ州オレンジ郡でMDMA密売の重罪容疑で逮捕された。発端は2025年11月、オーランドでの発砲通報。捜索されたSUVのピンクのバッグから、MDMA約25グラムと約3万7,000ドルの現金が見つかった。そしてそのバッグは──ここがKodakらしい──本人がInstagramに上げていた写真と一致したとされる。翌日の審問で彼は無罪を主張し陪審裁判を要求、判事は12件の重罪前科を理由に保釈金を7万5,000ドルに設定した。
考えてみてほしい。宣伝の舞台であるInstagramが、同時に捜査側の主張を支える材料にもなる。今回のアルバム発表も、同じInstagramから始まった。見せることと、自分を不利にすること。それが同じ画面で起きてしまう。この二重性こそ、Kodakというアーティストの危うさそのものだ。なお念のため、これらは容疑・係争中であり、有罪が確定したわけではない。逮捕と有罪は別物である。
③ そもそも、この振れ幅がKodakだ。 2021年にトランプ前大統領の刑期短縮で釈放されて以降、彼は「音楽の生産力」と「司法トラブル」を常にセットで抱えてきた。「Super Gremlin」で商業的な頂点を経験する一方、逮捕や薬物の報道が絶えない。その落差こそ、彼が“ラップ界の異端児”と呼ばれる理由だ。
HIPHOPCsが見てきた、Kodakとドラッグ
ここは、HIPHOPCsが何年も追ってきたテーマだ。Kodakを語るのに、ドラッグの話は避けて通れない。
彼はかつて、「ドラッグさえあれば俺は冷静でいられる」と言い、パーコセットを一日100錠近く飲んでいた時期があると明かした。2024年末には「もうずっとシラフじゃない」と再使用を認め、健康を心配する声も上がった。かと思えば「もうやめた」と禁欲を語り、2025年の引退発言のときには薬物疑惑を生配信ではっきり否定している。
告白して、否定して、また告白する。やめると言って、また戻る。彼はずっと、その間を行ったり来たりしている。
HIPHOPCsはこのテーマを、Kodak個人の話では終わらせてこなかった。ラッパーとドラッグの関係を、リーン・パーコセット・フェンタニルに即して書き、Juice WRLDやMac Millerのように命を落としたアーティストの悲劇まで踏み込んだ。流行でもファッションでもない。命に関わる問題だ──というのが、ずっと変わらない立場だ。
さらに、市販薬依存から立ち直ろうとする一読者の体験談に、KodakやJuice WRLDの名を並べたこともある。「1ヶ月に1錠ずつ減らす」「記録をつける」──回復の道は、ちゃんとある。そういう記事だ。
だからHIPHOPCsにとってのKodakは、ゴシップのネタでも、悲劇の予告でもない。仲間を失いながら、それでもまだ生きている当事者だ。「異端児」でも「犯罪者ラッパー」でもなく、依存と再生の円環を生きている人。これが、何年も書いてきて辿り着いたHIPHOPCsの“定義”だ。
で、この「祝福」は本物なのか
ここで最初のジャケットに戻る。「祝福」というタイトルに、かじりかけのリンゴ。赦しを求める言葉と、堕ちることの象徴が、同じ一枚に乗っている。
『Kodak The Blessing』は、Kodakを「問題児」から「赦しを求める者」へと語り直そうとする試みに見える。でも、その発表が刑事事件のまっただ中で行われている事実が、その物語に緊張を走らせる。祝福を語る言葉と、係争中の現実。この落差こそ、Kodakの核にあるものだ。
引退宣言と重ねれば、本作はキャリアの一区切りになり得る。けれど彼は「引退」「最後」「もうやめた」を何度も言っては、そのたび撤回してきた。だから“終わり”として消費するのは早すぎる。HIPHOPCsとしては、宣言を鵜呑みにせず、リリース後の歌詞・発言・裁判の行方まで見て、初めてこの作品の意味は決まると考える。
日本だとKodakは、「Super Gremlin」のヒットと逮捕報道で断片的に知られるくらいだ。でも、彼の音楽が持つフロリダ・ストリートの土の匂いや、贖罪と暴力を行き来する歌詞の重みは、なかなか伝わらない。26曲は、その世界をまとめて浴びる機会になる。
だからこそ、このアルバムで本当に聴くべきなのは、事件への言及があるかどうかだけではない。声の荒れ方、ビートの湿度、祈りのようなフック、そして突然こぼれる弱さ。Kodakの音楽は、いつも言葉になる前の痛みを抱えている。『Kodak The Blessing』が本当に“祝福”になるなら、それは潔白を証明するからではなく、その痛みを音楽としてどこまで形にできるかにかかっている。
「祝福」を掲げるたびに、禁断の果実に手が伸びる。Kodak Blackのキャリアは、その円環そのものだ。かじりかけのリンゴを持った今回のジャケットは、堕落と贖罪を行き来し続けてきた男の、最新の一周に見える。それが何周目の“終わり”なのかは、まだ誰にも分からない。
HIPHOPCsがその答えを知りたいのは、面白半分ではない。同じ文化のなかに、すでに地中へ還っていった仲間がいるからだ。だから今回も、「本物か」を見届けたいと思う。
これからの見どころ
- 6月12日の配信後、26曲が「祝福/贖罪」のテーマをどこまで貫くか
- 「あと2作で引退」発言と本作の関係に、本人が触れるか
- 客演・プロデューサーの確定クレジット
- 並行する刑事事件の進行と、それがリリースやプロモに与える影響
- 初週のストリーミング/チャート成績と、前作『Just Getting Started』との比較
主要参照リンク
- Kodak Black Reveals New Album ‘Kodak The Blessing’ and Guest Features(The Source)
- Kodak Black Reveals New Album “Kodak The Blessing” Dropping Soon(HotNewHipHop)
- Upcoming Album Releases(Album of the Year)
- Kodak Black 公式サイト
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本記事の画像は、Kodak Black公式Instagram(@kodakblack)の投稿を、報道・批評を目的として引用したものです(著作権法32条)。著作権は権利者に帰属します。
