HIPHOPCs Global Hip-Hop, JP.

ZORNとは何者か──仕事と家族を隠さず、新小岩のままアリーナまで広げたラッパー

Japanese Rap News20 min read

ZORN(ゾーン)は、1989年生まれ、東京都葛飾区新小岩出身のラッパーだ。

MCバトルで名前を広めた。だが、20歳前後でその場から離れた。勝敗だけで自分を見られる前に、仕事、家族、地元を作品にする道を選んだ。

2015年の「My life」で、音楽とは別の仕事を持つ暮らしを隠すのをやめる。2020年のアルバム『新小岩』はBillboard JAPANの総合アルバム1位。翌年に日本武道館と横浜アリーナ、2022年にさいたまスーパーアリーナへ進んだ。

会場は大きくなった。それでも作品の題名は『生活日和』『柴又日記』『新小岩』『925』『RAP』のままだ。

ZORNが手放さなかったのは、仕事、家族、地元を言葉の起点にすることだ。変えたのは、その言葉が届く距離である。

プロフィール

項目 内容
名義 ZORN(ゾーン)
旧名義 ZONE THE DARKNESS
生年 1989年
出身 東京都葛飾区新小岩
活動開始 15歳頃、フリースタイルバトルを中心に活動開始
主な活動歴 2014年に『サードチルドレン』を昭和レコードから発表/独立後はAll My Homiesを活動の看板にする
主なプロデューサー BACHLOGIC、DJ OKAWARI、OMSB、dubby bunny、EVISBEATSほか
代表作 『The Downtown』『生活日和』『柴又日記』『LOVE』『新小岩』『925』『RAP』
公式 公式サイトInstagramXファンクラブ

公式プロフィールが公表している人物情報は「1989年生まれ」「東京都葛飾区新小岩出身」までだ。本稿では、一次確認できない本名と正確な生年月日をプロフィールに載せていない。初期レーベルの在籍年も、一次資料がそろわないため断定しない。

出典:ZORN公式プロフィール

バトルは目的ではなく、名前を広める手段だった

ZORNは15歳頃、ZONE THE DARKNESS名義でフリースタイルバトルを軸に活動を始めた。本人によれば、最初に出た大会で優勝し、その後も結果を残したという。

ただし、彼はバトルを最終目的にしていなかった。

2017年の本人インタビューでは、バトルを名前を広める手段と考えていたこと、20歳頃には十分に名前が届いたと感じて離れたことを説明している。理由は明快だった。

「勝ち負けとは違う視点のラップも作品として作りたかった」

これは後年の成功を知ってから作った説明ではない。『柴又日記』を出した2017年、まだ日本武道館より前の発言だ。

出典:HOUYHNHNM・ZORN本人インタビュー音楽ナタリー「サードチルドレン」

2009年の『心象スケッチ』から、2014年の改名まで

最初のアルバム『心象スケッチ』は、公式ディスコグラフィ上では2009年6月13日発売。旧稿や一部データベースにある「8月1日」ではない。収録曲には、すでに「一番線ホーム track 新小岩駅」がある。

この時点から駅名が作品に入っていた。『新小岩』という2020年のアルバム名は、売れてから付けた地元ブランドではない。

ZONE THE DARKNESS名義で作品を重ねたのち、2014年4月16日に『サードチルドレン』を昭和レコードから発表。名義をZORNへ短くした。

ZORN公式のクレジットでは、Fragment、PUNPEE、OMSBらのプロデュース参加を確認できる。

ここまでのZORNは、バトルで知られた技巧派MCとして読める。次の一枚から、評価の物差しそのものが変わる。

出典:ZORN公式『心象スケッチ』音楽ナタリー「ZONE THE DARKNESS、名義改め新作を昭和レコードから」

「まだ音楽で食えていない」を隠すのをやめた

2015年5月13日発売の『The Downtown』に「My life」が入っている。

当時のZORNは、週6日、建築関係の現場で働いていた。父、弟、叔父と同じ仕事をし、家に帰れば夫であり父親だった。インタビューも仕事を終えたあとに行われている。

音楽の外に仕事があることを歌えば、「まだラップで食えていない」と見られるかもしれない。本人にも、その抵抗があった。それでも生活をそのまま書いた。

反応は予想と逆だった。

ABEMA TIMESの取材で、本人は「My life」以降の変化をこう表した。

「ハンデだと思っていたものが全部武器になっていった」

Mikikiでは、音楽と生活を別々に考えなくてよくなったと振り返っている。HOUYHNHNMでは、10年目にしてようやくスタート地点に立てた曲だと話した。

「My life」の発明は、日常を歌ったことだけではない。ラッパーとして隠したくなるものを、信用の根拠へ反転したことにある。

成り上がって仕事を辞めるまでを成功譚にするのではなく、働いて家族を養っている現在を先に出した。その順序が、日本語ラップに別の主人公を増やした。会社員、職人、親になったリスナーも、自分の生活を置いたまま入れる歌になった。

主な出典:ZORN公式『The Downtown』ABEMA TIMES・ZORN本人インタビュー

「生活を歌った」だけでは、ZORNの発明を説明できない

生活を題材にした日本語ラップは、ZORN以前にもある。だから「等身大」「家族思い」だけでは、この人物の固有性に届かない。

違いは順序だ。まず、音楽以外の仕事や家族という、当時の本人が隠したかった現実を公開した。次に、その現実から得た信用を、独立後の流通、興行、カタログ管理へ移した。題材を豪華にせず、届け方だけを大きくした。

本稿で追う変化は三つある。主語は自分から家族、街、他人の記憶へ広がる。到達距離は現場仕事の帰りに書いた曲からチャートとアリーナへ伸びる。作品を届ける主体は、所属先からAll My Homiesへ移る。

これは本人が掲げた三段階ではない。作品、公演、本人発言の順序から組み立てたHIPHOPCs編集部の分析である。以降の作品名や数字は、その仮説を確かめるために置く。

日記に見えて、制作は遅くて細かい

ZORNの歌詞は、起きたことをそのまま録音した日記のように聞こえる。制作方法はむしろ逆だ。

2016年の『生活日和』を語った本人は、思いついてすぐ録るタイプの曲を好まず、一曲ずつ長い時間をかけたと説明している。ele-kingの本人取材では、現場で働きながら頭の中で書き、まずドラムより上モノの旋律をつかむ工程を話した。

平凡な題材だから平易に書けるわけではない。コインランドリー、ウインナー、帰宅後の家族との時間。説明すれば数秒で終わる場面を、韻と小節に耐える言葉へ削る。

『生活日和』は2016年10月26日発売。冒頭の「Life Size」から、EVISBEATSがトラックを手がけた最終曲「Letter」まで12曲ある。

翌2017年9月13日の『柴又日記』では、アルバム名に地域が入った。柴又、矢切の渡し、夕焼け。ZORNの題材は、家の内側から葛飾の風景へ少しずつ広がっていく。

「等身大」という便利な一語で済ませると、ここを落とす。ZORNの強さは、身の丈を小さく見せることではない。小さな範囲を、何年でも書き直せるほど細かく見ることだ。

主な出典:Mikiki・ZORN本人インタビューZORN公式『生活日和』

『LOVE』で、生活は家族から仲間へ広がった

2019年5月29日、9曲入りの『LOVE』を発表した。

題名は大きい。収録順は具体的だ。イントロの「In」に続いて「Love Yourself」が始まり、「Blood」「Tokyo」「246 feat. UA」「All My Homies」を通り、最後は「My Love」へ着く。

Billboard JAPANのDownload Albumsでは初週3,913ダウンロードで2位。全国9か所の「LOVE TOUR」が組まれ、7月28日には地元のかつしかシンフォニーヒルズに立った。

ツアーを区切りに昭和レコードを離れる。10月31日配信の「Don’t Look Back」は、その旅立ちを題材にし、BACHLOGICがプロデュースした。

この離脱を「メジャーな場所からインディへ戻った」とだけ読むと、後の動きを説明できない。ZORNは独立後、作品を出すだけでなく、All My Homiesをレーベル、ストア、興行の名義として育てていく。ファンとの直接の窓口には、別名の公式ファンクラブ「Chill Out Club」も置いた。

『LOVE』収録曲の題名だった「All My Homies」が、作品の外側で人と金と会場を動かす看板になった。

これは本人が語った命名意図ではなく、発表順から読めるHIPHOPCs編集部の見立てだ。ただし、曲名が先で、独立後のレーベル表記と主催名義が後なのは記録で確認できる。

主な出典:ZORN公式『LOVE』Billboard JAPAN『LOVE』Download Albums 2位

『新小岩』は住所をチャート1位へ運んだ

2020年10月28日、独立後初のフルアルバム『新小岩』を事前予告なしで発表した。

全13曲をBACHLOGICがプロデュース。客演はMACCHO、AKLO、NORIKIYO、ANARCHY、Kvi Baba、KREVA、鋼田テフロン、ILL-BOSSTINO。世代も地域も異なるMCが並ぶが、アルバム名は交差点の中心ではなく、ZORN自身の住所に近い駅名だ。

Billboard JAPANの2020年11月9日付Hot Albumsで総合1位。内訳を見ると、CDセールス20位、ルックアップ64位に対し、ダウンロードは8,470DLで1位だった。フィジカルの初動だけで押し上げた首位ではない。

地元の名前を冠した独立作が、デジタル購入を軸に全国の総合1位へ届いた。

この数字で、「生活を歌うラッパー」と「市場で勝つラッパー」が同じ人物になった。ZORNのキャリアでいちばん大きな変化は、題材が派手になったことではない。題材を変えないまま、流通の出口を自分の側へ引き寄せたことだ。

出典:ZORN公式『新小岩』Billboard JAPAN Hot Albums 1位・指標内訳

BACHLOGICとの三作が、カタログを一つの流れにした

独立後の作品は、BACHLOGICとの連続で読むと輪郭が出る。

『新小岩』は全曲BACHLOGIC。2021年8月4日の7曲入り『925』も全曲BACHLOGIC。2022年9月28日の『RAP』も全13曲BACHLOGICだ。

『RAP』はBillboard JAPANのDownload Albumsで11,795DLを記録し、1位。発売週には『925』が89位から19位へ上がり、『新小岩』『LOVE』『生活日和』も再びチャートに入った。

数字が示すのは、新作の発売週に過去作も同時にチャートへ戻ったことまでだ。聴かれた理由自体は、チャートだけでは断定できない。

BACHLOGICとの協働は、一曲のヒットではなく三作を通じて続いた。新作が出るたびに過去作が再浮上する聴かれ方と、全曲プロデュースの連続は、作品群をばらばらの時点ではなく一つの流れとして受け取る条件を作った。

ここはクレジットとチャート推移から読むHIPHOPCs編集部の分析であり、両者の公式見解ではない。確定しているのは、『新小岩』『925』『RAP』をBACHLOGICが全曲プロデュースし、『RAP』発売週に旧作もチャートへ戻ったことだ。音そのものの因果までは断定しない。

主な出典:ZORN公式『RAP』Billboard JAPAN『RAP』Download Albums 1位

住所は動かさず、会場だけが大きくなった

ZORNの会場史は、上京物語ではない。すでに東京にいるラッパーが、山手線の外側から中心の大箱へ進み、また葛飾へ戻る往復だ。東京Rap Atlasは、新小岩を一つの「東京サウンド」にまとめず、城東の地理の中に置いている。

最初の目盛りは2019年7月28日。「LOVE TOUR」の東京公演を、かつしかシンフォニーヒルズのモーツァルトホールで行った。

2021年は、1月24日に「My Life at 日本武道館」、9月12日に横浜アリーナ公演「無題」を開催した。前者は2時間半の映像作品に、後者は「汚名返上」として映像化され、旧曲をオーケストラで録り直したセルフカバー盤『Tuxedo』にもつながった。

2022年11月3日は、さいたまスーパーアリーナのメインアリーナで「LIVE」。翌年の映像版には38曲が収まり、「Letter」「My life」「家庭の事情」もセットリストに残った。

ZORNは会場が大きくなっても初期の生活曲を外さず、オーケストラとアリーナ演出を使って古い曲を大箱仕様へ持ち直した。

『My Life at 日本武道館』『無題/汚名返上』『LIVE』。会場規模に反して、公演名は短くなっていく。大きさを題名で説明する必要がなくなった、と読むこともできる。

主な出典:ZORN公式「My Life at 日本武道館」映像作品ZORN公式『LIVE at さいたまスーパーアリーナ』

「戦争と少女」で、自分の家族から他人の記憶へ

2025年、ZORNの書く「生活」の範囲が変わった。

NHKスペシャル『戦火の時代に紡ぐ歌 PASS THE MIC』で、地元・葛飾に関わる東京大空襲と戦災孤児を取材。体験者の話を聞き、「戦争と少女」を制作した。

ZORNは番組発表時にこう述べている。

「HIPHOPはそもそも『声なき声』を拾い上げてきた音楽」

これまで書いてきたのは、自分の仕事、自分の家族、自分の街だった。ここでは、語れる人が少なくなった他人の記憶を預かっている。

題材だけ見れば社会派への転向に見える。作法は変わっていない。遠い戦争を一般論で論じるのではなく、地元で起きたことを、そこで生きた個人の声まで降りて書く。

使用されたのは、Nujabesの「reflection eternal」。これは未発表トラックではなく、2005年のアルバム『modal soul』に収録された既発曲だ。ZORN公式は、Hydeout Productionsの全面協力で制作され、日本語のラップがNujabesの楽曲に公式起用された初の例だと発表している。

MVは山田健人。2025年8月19日に配信され、Billboard JAPANのDownload Songsで13,361DL、1位を記録した。テーマの重さと商業的な到達は、どちらか一方ではなかった。

『戦争と少女』は、ZORNが生活を離れて歴史へ行った曲ではない。生活の中に、歴史が残っている人を探した曲だ。

主な出典:ORICON NEWS・番組内容とZORN本人コメントZORN公式「戦争と少女」制作情報

All My Homiesは、2026年に武道館主催の名前になった

2026年2月16日、ZORN主宰のAll My Homiesは、日本武道館でOZROSAURUSとのツーマン「Family Day」を開催した。

ZORNが2021年に一人の名義で立った武道館へ、5年後はレーベル主催者として戻った。出演者であることと、場を作ることは違う。

そこで後藤真希がサプライズ出演し、「地元LOVE feat. 後藤真希」を初披露した。ZORN公式の告知は、写真集『flos』を読んだZORNが後藤へオファーした経緯を説明している。ZORNは葛飾区、後藤は隣の江戸川区出身で、その地理を曲の題名と映像が受け取った。BACHLOGICがプロデュースし、山田健人がMVを監督した。

2月17日の配信後、Billboard JAPANのDownload Songsで12,037DL、2位。異色コラボの話題だけで終わらず、購入数が残った。

HIPHOPCsは楽曲公開時、「なぜZORNとゴマキなのか」を葛飾と江戸川の距離から検証した。アリーナの次に出てきた言葉が、また「地元」だったことも、この人物らしい。

主な出典:音楽ナタリー公演レポートBillboard JAPAN Download Songs 2位

2026年8月28日の現在地──地元へ戻り、カタログを残す

4月8日には、ALI「FUNKIN’ BEAUTIFUL feat. ZORN」に客演した。ZORN公式の告知によれば、同曲はTVアニメ『左ききのエレン』のオープニングテーマとして配信された。自作だけでなく、2026年の客演活動もここに記録しておく。(ZORN公式)

ZORNは7月30日、かつしかシンフォニーヒルズで単独公演「地元LOVE」を開催した。2019年7月28日の「LOVE TOUR」以来、7年ぶりの同会場だった。公式ファンクラブの8月7日付案内は、当日の会場販売グッズを公演後に販売する内容で、開催自体を事後に確認できる。一方、公開資料で確認できないセットリスト、ゲスト、演出は補わない。

8月19日には、2月の日本武道館公演「Family Day」を収録したDVDを発売。公式の商品案内によれば、通常盤と、バックヤードの記録を付けた2枚組の生産限定盤がある。興行を一夜で終わらせず、映像カタログへ変えた。

8月26日には、All My Homiesで発表した『新小岩』『925』『RAP』「地元LOVE feat. 後藤真希」のアナログ4作が発売日を迎えた。すべて完全生産限定盤で、流通元ULTRA SHIBUYAの商品ページでも発売日と規格が確認できる。

次の予定は、AKLOとのツーマン「A2Z 2026」である。11月13日に東京ガーデンシアターで開催する。全国11か所を回った「AtoZ TOUR 2018」、新型コロナウイルス感染症の影響で中止された「AtoZ 2020」を経て、企画が戻る。

新作を連投するだけがレーベル運営ではない。中止した公演を回収し、過去作を別フォーマットで残し、旧作へ戻る入口を作る。All My Homiesは、曲名から看板へ、看板から公演とカタログを管理する場所へ進んでいる。

主な出典:ZORN公式・ALI客演告知ZORN公式ファンクラブ「地元LOVE」公演後案内同「Family Day」DVDZORN公式・4作品アナログ化ZORN公式「A2Z 2026」

まず聴く5曲。ZORNの変化が分かる順番

1. 「My life」(2015年)

仕事と家族を隠す対象から、ラップの芯へ変えた曲。ZORN本人が「スタート地点」と位置づける一曲で、最初に聴くべき理由は知名度ではなく、以後の作品の主語がここで決まったからだ。

2. 「Letter」(2016年)

『生活日和』の最終曲。EVISBEATSのトラックと、子どもへ向けた言葉が結びつく。「My life」で開いた家族の主題を、一枚の終わりまで運んだ。

3. 「All My Homies」(2019年)

『LOVE』収録。後に同じ言葉が独立後のレーベル名、ストア、主催興行に使われる。曲の外へ広がった題名として聴くと、2019年以降の動きが見える。

4. 「Shinkoiwa」(2020年)

独立後初のフルアルバムの冒頭。初作『心象スケッチ』の「新小岩駅」から11年後、地名そのものをアルバムの表札にした。

5. 「戦争と少女」(2025年)

自分の家族を語ってきたMCが、地元の戦争体験者から預かった記憶を書く。題材は最も遠くまで広がったが、個人の声から始める方法は変わらない。

作品情報:ZORN公式ディスコグラフィ

客演と制作陣。人脈は三つの層で見る

昭和レコードの家族には、般若とSHINGO★西成がいる。『サードチルドレン』以降の足場を作り、2018年には3人で『MAX』を発表。脱退後の「Don’t Look Back」にも、二人との関係が書き込まれた。

同時代のMCには、AKLO、NORIKIYO、MACCHO、ANARCHY、KREVA、ILL-BOSSTINOらがいる。『新小岩』の客演と、武道館・横浜アリーナ・さいたまスーパーアリーナのゲストを重ねると、音源だけの名刺交換ではないことが分かる。

作品の骨組みを担う人には、BACHLOGICと山田健人がいる。BACHLOGICは独立後の主要3作を全曲プロデュースし、2026年の「地元LOVE」まで続く。山田は、さいたまスーパーアリーナの演出、「戦争と少女」と「地元LOVE」のMVを担った。

そして下の世代へ線が延びる。徳島から登場したWatsonは、本人取材で、ZORNのインタビューを読んで歌詞の書き方の幅が広がったと話している。

HIPHOPCsが追ったWatsonの徳島から武道館までを読むと、家族と地元を隠さず、地方の言葉のまま大箱へ進む方法が次世代に渡ったことが見える。

出典:PRKS9・Watson本人インタビュー

ZORNの人脈は、客演数の多さでは測れない。生活の歌を大箱へ運ぶ音、映像、興行の担当者が長く残っている点に強さがある。

年表:新小岩から日本武道館、そして2026年へ

年月日 出来事・確認先
1989年 誕生。公式が公表するのは年まで。東京都葛飾区新小岩出身(公式プロフィール
15歳頃 ZONE THE DARKNESS名義でフリースタイルバトルを中心に活動開始(本人インタビュー
2009年6月13日 1stアルバム『心象スケッチ』。収録曲に「一番線ホーム track 新小岩駅」(公式
2014年4月16日 ZORNへ改名し、昭和レコードから『サードチルドレン』(音楽ナタリー
2015年5月13日 『The Downtown』。「My life」収録(公式
2016–2017年 『生活日和』から『柴又日記』へ。題材が家の内側から葛飾の風景へ広がる(公式『生活日和』
2019年 『LOVE』、地元でのツアー公演を経て昭和レコードを離れる(公式音楽ナタリー
2020年10–11月 独立後初の『新小岩』を発表。全曲BACHLOGIC、Hot Albums総合1位(公式Billboard JAPAN
2021年 日本武道館「My Life」、横浜アリーナ公演は「無題」から「汚名返上」へ公演中に改題。旧曲を大箱へ持ち直す(公式ファンクラブ音楽ナタリー横浜アリーナ公式
2022年 全曲BACHLOGICの『RAP』がDownload Albums 1位。さいたまスーパーアリーナで「LIVE」(Billboard JAPAN会場公式
2025年8月 NHKスペシャルで「戦争と少女」の制作過程を放送。配信後にDownload Songs 1位(公式Billboard JAPAN
2026年2月 All My Homies主催「Family Day」を日本武道館で開催。「地元LOVE feat. 後藤真希」はDownload Songs 2位(音楽ナタリーBillboard JAPAN
2026年4月8日 ALI「FUNKIN’ BEAUTIFUL feat. ZORN」に客演。TVアニメ『左ききのエレン』オープニングテーマ(ZORN公式
2026年7月30日 地元で単独公演「地元LOVE」を開催。公式ファンクラブが公演後のグッズ販売案内で確認(公式ファンクラブ
2026年8月19日 日本武道館「Family Day」のDVDを発売(公式ファンクラブ
2026年8月26日 『新小岩』『925』『RAP』「地元LOVE feat. 後藤真希」のアナログ4作を発売(ZORN公式流通元
2026年11月13日 AKLOとのツーマン「A2Z 2026」を東京ガーデンシアターで開催予定(公式

本人の言葉から読むための4本

よくある質問

ZORNはどこ出身?

東京都葛飾区新小岩出身。旧名義の作品から現在まで、新小岩と葛飾は単なる経歴欄ではなく作品の場所として残っている。

ZONE THE DARKNESSとZORNは同じ人物?

同じ人物。2014年にZORNへ改名し、昭和レコードから『サードチルドレン』を発表した。

ZORNの代表作は?

生活の主題を追うなら『The Downtown』『生活日和』『柴又日記』、独立後の到達点を見るなら『新小岩』『925』『RAP』が入口になる。

All My Homiesとは?

もともと曲名にも使われた言葉で、独立後は作品リリース、グッズ、興行を束ねるZORNの活動上の看板になった。法人設立日など、公式に固定できない細部は本稿で断定していない。

「地元LOVE feat. 後藤真希」はなぜ二人の組み合わせ?

公式告知によれば、写真集『flos』を読んだZORNが後藤真希へオファーした。ZORNは葛飾区、後藤は隣の江戸川区出身で、地元という共通項をBACHLOGICの制作と山田健人の映像が一曲へまとめた。(ZORN公式)

ZORNのライブ規模はどう広がった?

日本武道館、横浜アリーナ、さいたまスーパーアリーナへ進んだが、作品上の場所は新小岩のまま動かしていない。会場だけが広がった点が重要である。

資料と線引き

  • 最終事実確認:2026年8月28日。
  • 人物・作品:ZORN公式、会場公式、本人取材、Billboard JAPANを役割ごとに使い分けた。
  • 本人情報:本名、正確な生年月日、初期レーベルの在籍年など一次確認できない事項は載せていない。
  • 公演情報:「地元LOVE」は公演後の公式物販案内で開催を確認し、公開資料にないセットリストやゲストは補っていない。
  • 編集部の解釈:「仕事、家族、地元を起点にする主題を手放さず、その言葉が届く距離を伸ばした」という中心命題は、作品、会場史、本人発言を横断したHIPHOPCsの評価である。
  • 画像:人物写真の無許諾利用をやめ、HIPHOPCs制作・外部素材不使用のオリジナルカードへ差し替えた。

ZORNは、生活を捨てずに生活の外へ出た

ZORNを「家族や地元を歌うラッパー」とだけ説明するのは、半分しか合っていない。

仕事を歌った。家族を書いた。新小岩を題名にした。そこまでは主題の話だ。

残り半分は、その言葉を届かせる仕組みを作ったことにある。

BACHLOGICと三作を通しで組み、All My Homiesをレーベルと興行の看板にし、日本武道館へ一人の出演者としても主催者としても戻った。昔の作品をオーケストラで録り直し、2026年8月には「Family Day」をDVDで残し、アナログ4作を流通に戻した。

そして「戦争と少女」では、自分の家族を語る方法を、戦災孤児の記憶を渡すために使った。

生活を大きく見せたのではない。

生活のほうが、武道館、アリーナ、チャート、戦後史まで届くようにした。

それが、ZORNというラッパーの仕事だ。

アイキャッチ:HIPHOPCs制作のオリジナル・テンプレートカード。外部素材不使用。

HIPHOPCsで次に読む

コメントを残す