Kianna「LA」歌詞を読む グラミーの夢と、誰と関わるかの線引き
Kianna(キアナ)の「LA」は、グラミーへの夢と、そこへ向かうときに誰と関わるかを歌った曲だ。2026年9月18日に配信された1stアルバム『Instinct』の5曲目、2分36秒。全13曲からこの一曲だけ取り出すと、上空から見た街やエコノミー席が、夢の大きさを測る物差しになっているのが分かる。遠い目標と、いま座っている席。その二つを同じ言葉づかいで歌うところから聴いてほしい。
| 配信日 | 2026年9月18日 |
|---|---|
| 名義 | Kianna |
| 収録 | 『Instinct』5曲目(全13曲)/2分36秒 |
| 権利表記 | © 2026 Kianna / EMPIRE |
上から見たLAは、レゴみたいに小さい
歌い出しはアメリカにいる、という報告だ。夢だと言っていた場所が、すぐ上にある。飛行機の窓から見下ろすLAはレゴみたいに小さくて、ハザードランプは血みたいに濃い。ここが面白い。街は小さく見えるのに、機内の本人は街に「喰らって」いる。縮尺と感情が合っていない。憧れの場所は、小さく見えても小さくない。
そこにエコノミー席と、いつもと違う場所で眠る一週間が重なる。憧れの街の話なのに、移動や寝泊まりのことも省かない。街を征服した話ではない。まだ触れている途中の話だ。
グラミーをいつか獲りたい、と言った直後に来るのが、この2行だ。
ありきたりな夢
それがいいね
夢の大きさを競う言葉ではない。自分の夢を、自分で受け止めている。そのすぐ後に、いいから俺の話を聞け、と相手に向く一節があり、缶のスプライトを口に注いで音に揺れる場面へ進む。願いを認めたうえで、人にも聞かせる。独り言では終わらないし、こちらを圧倒する宣言でもない。願ったことをそのまま引き受ける。その率直さがこの並びにある。
冒頭のフックがもう一度出てきた後、歌詞には日本で暮らす自分も現れる。LAに触れた興奮はあっても、普段の自分を置き去りにはしていない。アメリカの風景と日本の暮らしを行き来しながら、やがてグラミーへの願いを口にする。この流れで聴くと、その夢が急に大きすぎる話には感じられない。機内で街に圧倒され、いつもと違う場所で眠る一週間を歌った人が、その先にある目標も話し始めた。そんな続きとして受け取れる。
稼ぎたい。ただし、誰とでもは関わらない
後半で、話は金に移る。銀行に積む、あの子を迎えに行く前に。懲りずに毎日ワークハード。金の話は嫌いじゃない、と本人が言う。金そのものを遠ざける気はない。
だが次の行で線を引く。稼ぎ方を選ばない奴とは関わりたくない。前半にあったビジネスマンへの反発が、ここで稼ぎ方の話として戻ってくる。稼ぎたい。でも、そのためなら誰とでも組む、とは言わない。欲しいものの大きさと、手放したくない基準。両方あるから、金の話が自慢で終わらない。
終盤に、小難しい言葉は嫌いだ、という一行がある。この曲の言葉づかいを本人が説明しているようだ。レゴ、スプライト、エコノミー。身近な物が、憧れの街や移動の時間を伝える材料になっている。比喩を使わないのではない。材料が生活の近くにあるだけだ。大きな夢を語るときも、その言葉づかいを手放さない。
ビジネスマンへの反発のそばには、人生を楽しむことを忘れた相手への苛立ちもある。単に仕事が嫌いだから突き放しているのではないのだと思う。実際、後半では働くことも、金を貯めることも歌っている。ならば、何が嫌なのか。稼ぐためなら何をしてもよい、という相手とは関わりたくないのだ。
金の話のそばには、あの子を迎えに行く前に、という日常の予定も置かれている。稼ぐ理由を大げさに語らず、会いに行く相手のことがふっと入る。グラミーを目指す話と、この小さな予定が同じ曲に無理なく収まっているのがいい。夢のために毎日を後回しにするのではなく、楽しみながら、働きながら先へ進もうとしているように聞こえる。
Xには、『Instinct』を「予想を遥かに超える前のめりなアルバム」と評する投稿がある。曲間のつながりや、スキットから最後の曲へ進む流れに触れ、「ストイック」と受け止める感想もあった。アルバム全体をたたえながら、特に「LA」の気持ちよさを挙げる投稿もある。
曲名のLAは、成功した後の自分を置く舞台というより、そこへ向かっている自分の視界として残る。小さく見える街と大きな目標のあいだに、エコノミー席の自分がいる。筆者はこの距離を、背伸びでも卑下でもないものとして受け取った。
筆者が引かれるのは、グラミーという大きな言葉の後に置かれた「それがいいね」だ。目標の高さを証明するのではなく、まず自分の願いを認める。そのうえで、関わりたくない相手には線を引く。遠くへ行きたい気持ちと、自分まで明け渡したくない気持ち。その二つを身近な言葉で並べたところに、この曲の率直さがある。
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出典
- Spotify「LA」トラックページ:収録作品、曲順、再生時間、権利表記。歌詞は同サービスのLyricFind提供表示を2026年9月21日に取得した原文に基づく
- Spotify『Instinct』アルバムページ:配信日、収録曲数
- Apple Music『Instinct』作品ページ:1stアルバムという位置づけ
- X上の反応:『Instinct』配信前後(2026年9月17日〜19日)の投稿3件(アルバムの受け止め、構成への感想、「LA」への言及)。2026年9月21日にX APIで取得し、引用は投稿原文に基づく
- 歌詞の引用は原文の改行に従う。要旨の言い換え、比喩や構成の読みは筆者による