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Tohjiとは何者か──「インターネット発」を、終わりまで設計したラッパー

アーティスト情報12 min read

Tohjiはインターネットから現れたラッパーである。しかし、インターネットにとどまった人ではない。部屋で始めた制作をMall Boyzの場へ、「angel」を外部との共同制作へ、u-haをパーティーへ、アリーナを一夜の空間へ、「zero-one」と「zero-two」を固定チームの実験へ変えてきた。

2025年10月に2026年での音楽活動終了を表明した後も、終わりは一つの日付に固定されなかった。2026年8月9日のアリーナ公演で、11月17日の東京ドーム公演「TOKYO MALL」を新たなLast Liveとして発表した。引退という結論を撤回せず、終わりの場所を更新した。この動きまで含めると、Tohjiの変化はジャンル変更より、作品が生まれ、聴かれ、終わる「部屋」を作り替えることにあったと分かる。

30秒でわかるTohjiプロフィール

項目 内容
名義 Tohji
出生・成長 ロンドン生まれ。幼少期から日本で暮らし、東京・横浜で育つ
役割 ラッパー、シンガー、プロデューサー、イベント企画
クルー Mall Boyz(gummyboyらとの共同体)
主要作 『angel』『Oreo』『zero-one』『zero-two』、Mall Boyz『Mall Tape 3』
場の企画 u-ha、Boiler Room TokyoでのTohji Presents u-ha
2025年の発表 2026年をもって音楽活動を終える意向を表明
2026年の確認済み予定 11月17日、東京ドームでTohji Last Live “TOKYO MALL”

先に結論──作品より先に、作品が生まれる「部屋」を変えた

Tohjiを「ネット発」「オルタナティブ」「ベースミュージック」と呼ぶことはできる。しかし、どの言葉も一定期間の音だけを指す。本人は同じ音色を守る代わりに、制作環境を組み替えてきた。誰と暮らし、誰と作り、どこで鳴らし、観客をどう入れるかが変わると、曲の形も変わる。

HIPHOPCsは、この環境の単位を「部屋」と呼ぶ。個室だけではない。クルー、パーティー、海外レーベル、固定制作チーム、アリーナ、無料配信も含む。Tohjiのキャリアは、完成品を同じ方法で積み上げるより、次の作品が生まれる部屋を作り直す連続だった。

ロンドン生まれ、東京・横浜育ち──出自を神話にしない

DIGLEの本人インタビューEastern Marginsのプロフィールは、ロンドン生まれで幼少期から日本へ移り、東京・横浜で育った経路を示す。区名や細かな年齢は資料によって精度が異なるため、本稿では必要以上に固定しない。

重要なのは「海外生まれだから国際的になった」という単純な因果ではない。日本の生活圏でMall Boyzを作り、後に海外の制作者や場へ接続した。出生地は入口の一つであって、その後の音楽性を自動的に説明する答えではない。

Mall Boyz──「地元のフッド」ではなく、共有された生活圏から始める

Mall BoyzはTohjiとgummyboyを中心に知られるクルーである。本人たちのインタビューを読むと、伝統的な地元クルーの型へ自分たちを合わせるより、同じ時間と場所を共有する生活圏から始まったことが分かる。

ここで「Mall」は商業施設の固有名だけでなく、目的の違う人が同じ空間に集まる比喩としても読める。Mall Boyzの曲には、一人の強い主人公より、複数の声が出入りする感覚がある。後のu-haやzero期の固定チームも、名前は変わっても一人で完結しない制作という点で続いている。

『angel』──部屋で作ったものを、外の人と作り始める

『angel』はTohjiの初期を代表する作品である。WWDJAPANの本人取材では、部屋の中で完結していた制作から、外部の人と作る方向へ進んだ変化が語られている。音のジャンル名より、制作関係が変わったことが重要だ。

2019年のリリースパーティーには2,000件を超える応募があったとSPACE SHOWERの発表が記録する。ただし応募数を人気の証明として独り歩きさせない。個室で作った作品が、観客を集める実際の場へ変わった転換点として使う。

「Oreo」──音源、映像、ネットワークが同時に広がる

「Oreo」は、Tohjiの名前が広く共有される入口の一つになった。配信情報はTuneCore公式ページで確認できる。短いフレーズ、映像で伝わる身体性、ネット上で切り出される強さが一つの曲に重なった。

ただし「バイラルヒット」で説明を止めると、Tohji本人が何を作ったかが見えにくい。曲が広がる経路を次の制作環境へ変えた点が重要である。注目を同じ形式の反復に使わず、パーティー、海外との制作、アリーナへ接続した。

u-haとBoiler Room──出演者から、場を組む側へ

u-haは一つの曲名ではなく、音、出演者、観客を組む場である。2023年にはBoiler Room公式に「Tokyo: Tohji Presents u-ha」として記録された。世界的なプラットフォームに出演したという実績だけでなく、Tohjiが「Presents」として場の構成側に立ったことが分かる。

ここではラップのライブとクラブのDJセット、国内外の音が同じ夜に置かれる。Tohjiの仕事は、自分の持ち時間を成功させるだけではない。自分の音が自然に聞こえる周囲の環境まで作ることへ広がった。

ぴあアリーナMM──規模の拡大を、表現の拡大と混同しない

2025年2月2日、TohjiはぴあアリーナMMで初のアリーナ単独公演を行った。日程は会場公式で確認できる。大きな会場に立った事実だけなら、動員の物語で終わる。

Tohjiの場合、アリーナは既存のライブを大きくしただけではない。映像、照明、観客の移動、登場する仲間を含め、一夜の部屋として設計する必要がある。ネットからアリーナへ、という上昇物語より、画面の中で成立していた距離感を大空間でどう作り直したかを見る方が、キャリアの連続性を説明できる。

『zero-one』『zero-two』──固定チームで、完成品より過程を出す

2025年3月7日の『zero-one』は7曲、5月30日の『zero-two』は8曲。発売情報はQobuzApple Musicで確認した。短い間隔で連作を出したこと自体より、同じ制作陣との実験を継続したことが重要である。

032cの本人取材では、Big Animal Theory、Gentoku、Xansei、UKDらとのチームが語られる。一方、配信クレジットと「制作チームにいた人」は同じ意味ではないため、作品ごとの名義を混ぜない。本稿では固定した関係の中で音を更新した事実を中心に置く。

2025年の引退表明──「終わる」を作品の外へ置かなかった

2025年10月18日、TohjiはPOP YOURS OSAKAのステージで、2026年をもって音楽活動を終える意向を表明した。音楽ナタリーはMCの内容を記録している。ここで確認できるのは「2026年をもって」という本人の発表であり、発表時点で最後の曲、最後の日、全活動の停止方法まで確定していたわけではない。

引退発表を、それ以前の全作品が死へ向かっていたかのように読み直すのは危険である。本人が終わりを告げた事実は重要だが、過去作の意味を一つに固定しない。引退はキャリア全体の答えではなく、最後の部屋をどう作るかという新しい制作条件になった。

2026年──「LAST LIVE」は一度で終わらなかった

2026年にはPOP YOURSでSpecial Actとu-ha主催ステージを担い、6月10日にMall Boyzで19曲の『Mall Tape 3』を発表した。Mall Boyzの作品情報はTuneCoreで確認できる。ソロの終わりへ向かいながら、クルーの作品は大きく更新された。

8月6日には「Amelie」を発表。HIPHOPCsは引退宣言後初の単独名義曲として記事化した。8月9日、LaLa arena TOKYO-BAYの「Volcanic Summer 頂上 Dimension」で、11月17日に東京ドームでTohji Last Live “TOKYO MALL”を行うと発表した。公演日と会場はチケットぴあの公演情報でも確認できる。公演当夜の発表と無料配信を翌週の記録に残している。

それまで「最後のアリーナ公演」とされていた場所で、さらに大きな最後を告げた。引退を撤回したのではなく、終わりの位置を動かした。この更新は、Tohjiが最後まで観客のいる空間を作品として扱っていることを示す。東京ドーム公演は本稿執筆時点では予定であり、実施済みとは書かない。

関係者地図──誰と、どの部屋を作ったか

人物/組織 関係 位置づけ
gummyboy/Mall Boyz 初期から続くクルー 共有された生活圏と複数の声
MURVSAKI 初期作品を含む制作上の重要人物 一曲ごとのクレジットを基準に扱う
u-ha Tohjiが組むイベント/場 出演ではなくキュレーションへ広がる
Big Animal Theory、Gentoku、Xansei、UKD zero期の制作チーム チーム参加と配信上の個別クレジットを分ける
Eastern Margins 国外での活動・近作の流通に関わる 全期間の固定所属レーベルとは断定しない
LEX 同世代の共演・シーン上の接点 似た「ネット世代」と一括せず、制作法の差を見る

最初に聴く・観る7作──部屋が変わる順番で

作品 入口になる理由
1 Mall Boyz「Higher」/『Mall Tape』 ソロより先に、共有空間の感覚を聴く
2 『angel』 部屋の外の人と作り始めた転換
3 「Oreo」 音、映像、ネットの広がりが重なる入口
4 Boiler Room Tokyo: Tohji Presents u-ha 曲ではなく、場の設計を見る
5 『zero-one』 固定チームで音を作る前半
6 『zero-two』 同じ関係を短期間で更新した後半
7 「Amelie」 引退表明後の単独名義曲。最後と断定せず現在地として置く

年表──作品と場を同じ時間軸で見る

出来事
2010年代後半 Mall Boyzとして作品を発表し、ソロ活動を広げる
2019 『angel』期。リリースパーティーに2,000件超の応募と主催発表
2023 Boiler Room TokyoでTohji Presents u-ha
2025年2月2日 ぴあアリーナMMで初アリーナ単独公演
2025年3月7日 『zero-one』発表
2025年5月30日 『zero-two』発表
2025年10月18日 2026年をもって音楽活動を終える意向を表明
2026年6月10日 Mall Boyz『Mall Tape 3』発表
2026年8月6日 「Amelie」発表
2026年8月9日 LaLa arena TOKYO-BAY公演で、11月17日の東京ドーム「TOKYO MALL」を発表
2026年11月17日 Tohji Last Live “TOKYO MALL”を東京ドームで開催予定

調査で直したこと、断定しなかったこと

  • 出自:区名や移住時の細かな年齢は固定せず、本人取材で確認できるロンドン生まれ、東京・横浜育ちまでとした。
  • Mall Boyz:結成年を一次資料で固定せず、共有された生活圏と作品の関係を中心にした。
  • 海外活動:「世界進出」と一般化せず、Eastern Margins、Boiler Room、個別作品の確認できる接点を記した。
  • zero期:制作チームにいた人物と各曲の配信クレジットを同一視していない。
  • 引退:本人の発表は「2026年をもって音楽活動を終える」。最後の曲や全活動の停止日を推測していない。
  • 東京ドーム:2026年8月9日に発表された予定として記し、開催済みとはしていない。

よくある質問

Tohjiはどこで育った?

ロンドン生まれで、幼少期から日本へ移り、東京・横浜で育った。資料で確定できない細かな区名は本稿では断定していない。

Mall Boyzとは何?

Tohjiとgummyboyを中心に知られるクルー。単なる所属名ではなく、初期の制作と生活を共有した場として重要である。

u-haとは何?

Tohjiが出演者や音を組むイベント/場。2023年にはBoiler Room TokyoでTohji Presents u-haとして記録された。

『zero-one』と『zero-two』の違いは?

2025年に短い間隔で発表された連作。別々の変身というより、固定した制作関係で行った実験の前半と後半として聴くと分かりやすい。

Tohjiは本当に引退した?

2025年10月に、2026年をもって音楽活動を終える意向を発表した。2026年8月24日時点では11月17日の東京ドーム公演が予定されており、活動終了後の状態を先回りして断定できない。

「Amelie」は最後の曲?

最後の曲とは確認されていない。引退表明後に発表された単独名義曲として位置づけるのが正確である。

最後のライブはいつ?

2026年8月9日の公演で、11月17日の東京ドーム「TOKYO MALL」をLast Liveとして発表した。本稿執筆時点では予定である。

HIPHOPCsで次に読む

資料と線引き

  • 最終事実確認:2026年8月24日。
  • 本人の来歴・制作観:DIGLE、TuneCore、WWDJAPAN、032cの本人取材を中心にした。
  • 作品・公演:配信クレジット、Boiler Room、会場、POP YOURSの公式情報を優先した。
  • 最新情報:8月9日の公演と東京ドーム発表はHIPHOPCsの当週記録へつなぎ、予定と実施済みを分けた。
  • 編集部の解釈:「部屋を作り替えた」「終わりまで設計した」は、作品と公演の配置を踏まえたHIPHOPCsの評価である。

主要参照

Tohjiをどう評価するか

Tohjiのキャリアを、SoundCloudからアリーナへ上がった成功物語だけで読むと、本人が繰り返し壊してきたものを再び固定してしまう。Mall Boyz、angel、u-ha、zero期、アリーナは、それぞれ同じ音を大きくした段階ではない。作る人と聴く人が入る部屋そのものを変えた段階である。

引退表明後も、その方法は変わらなかった。最後とされたアリーナで、次の東京ドームを発表した。終わりを先延ばしにしたというより、終わりをもう一度空間として作り直した。2026年11月の予定が実施されるまで結論は書けない。それでも、Tohjiが最後まで完成品より環境を更新していることは、現在の記録から確認できる。

アイキャッチ:HIPHOPCs制作のオリジナル・テンプレートカード。外部素材不使用。

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