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Def TechのMicroに「AI量産」の声、毎週金曜、17回で59曲

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最終確認:2026年10月3日

10月2日の深夜2時58分。日本語ラップの新譜を毎週追いかけているアカウント、kfp(@kfp_harland)がXにこう書いた。

「千葉雄喜の件なんかより、今年に入ってからDef TechのMicroがAIでキモい曲毎週レベルで量産してることをブッ叩きたい」

10月3日午後の時点で、この投稿は表示164万回、いいね8,100件、ブックマーク1,400件を超えていた。千葉雄喜のアニメ主題歌をめぐる賛否が続いていた週に、矛先はまったく別の人物へ向いた。Def Tech(デフテック)のMicro(マイクロ)である。

ただし、本人がAIを使ったのかどうかは、分かっていない。分かっているのは配信の記録だけだ。

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毎週金曜、17回続いた

「毎週レベル」は大げさではない。Apple Music(アップルミュージック)の配信履歴を日付順に並べると、Micro名義の新作は6月12日から10月2日まで、金曜日に一度も途切れず17回続いている。単曲を出しながら、ほぼ月に1枚のペースでアルバムも配信している。

アルバムは6月26日の『波打ち際のLove Song』(17曲)、7月24日の『BETWEEN THE WAVES』(11曲)、8月28日の『Little Stellar』(16曲)、9月25日の『AFTER THE WAVES』(11曲)。どのアルバムにも入っていない単曲は、9月の「Barefoot King」「Gonna Love Me」「Soul Mate」と、10月2日の「Trick or Treat」の4曲だ。重なりを除くと、曲数は59になる。発売元はすべて、本人の個人事務所である株式会社Wergshireだ。

Def Techといえば、2005年1月に出た1枚目のアルバム『Def Tech』が「My Way」を携えてインディーズから280万枚超を売った、あのDef Techである。その片割れが、4カ月で59曲を出したことになる。

17週の配信一覧(6月12日〜10月2日)を開く
配信日作品形態曲数
6月12日Deep in the Oceanシングル(『波打ち際のLove Song』に収録)1
6月19日折れない心のメモシングル(『波打ち際のLove Song』に収録)1
6月26日波打ち際のLove Songアルバム17
7月3日愛の世界シングル(『Little Stellar』に収録)1
7月10日Summer Mindシングル(『Little Stellar』に収録)1
7月17日Marbleシングル(『Little Stellar』に収録)1
7月24日BETWEEN THE WAVESアルバム11
7月31日軌道修正Freestyleシングル(『Little Stellar』に収録)1
8月7日リフレインシングル(『Little Stellar』に収録)1
8月14日Feel Again 2.0シングル(『Little Stellar』に収録)1
8月21日Stay with me?シングル(『Little Stellar』に収録)1
8月28日Little Stellarアルバム16(うち先行配信7)
9月4日Barefoot Kingシングル(アルバム未収録)1
9月11日Gonna Love Meシングル(アルバム未収録)1
9月18日Soul Mateシングル(アルバム未収録)1
9月25日AFTER THE WAVESアルバム11
10月2日Trick or Treatシングル(アルバム未収録)1

Apple Musicの配信履歴をもとに作成(10月3日確認)。アルバムの収録曲は、TuneCore Japanの各作品ページの曲目と照らし合わせた。17作の曲数をそのまま足すと68曲。このうち8月までのシングル9曲は、あとで『波打ち際のLove Song』(2曲)と『Little Stellar』(7曲)にも入ったので、同じ曲名は1曲として数え、59曲とした。

数えたのは配信日と曲目だけで、曲を作るのにかかった時間や、AIを使ったかどうかは、この表からは分からない。

2月2日から6月11日まで

この配信が始まった6月12日は、東京地裁の判決の翌日である。その日を選んだ理由は、示されていない。

2月2日、関東信越厚生局麻薬取締部の捜索で東京都渋谷区の自宅から乾燥大麻3.517グラムが見つかり、Microこと西宮佑騎は現行犯逮捕された。2月8日に予定されていた「Def Tech 20th Anniv. Grand Final at 日本武道館」は、翌3日に中止が告知された。公演のわずか5日前だった。

2月20日、東京地検は大麻所持の罪で起訴した。3月13日には、コカインを使った疑いで追送致されていたことも報じられている。

6月1日の初公判で、本人は起訴内容を認めた。起訴状によると、逮捕された日に千葉県内を走る車の中で、コカインとMDMAを摂取していたという。同じ法廷で本人は、2022年ごろに使用を再開した理由として、良い新曲が作れるか、過去の曲を超えられるかという「生みの苦しみ」を挙げている。

6月11日、東京地裁は拘禁刑2年、執行猶予4年を言い渡した。同じ日、所属事務所の2VOXがアーティスト契約の終了と取締役の辞任を発表した。相方のShen(シェン)は2VOXに残っている。本人はInstagramで、個人事務所のWergshireを拠点に、Def Techとソロの活動を続けると書いた。

そして翌12日、1曲目の「Deep in the Ocean」が配信された。

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「AI」と言っているのは誰か

ここからが今回の争点になる。いちばん広がったのは、kfp本人のスレッドだ。本体の投稿に続けて「武道館ポシャった違約金がキツいのか知らねえけどプライド無さ過ぎだろ」と書き、ファンのコメント欄が「おかえり」という反応で埋まっていることにも噛みついた。それぞれ440いいね、275いいね。翌2日の夜には、動画を添えて「せめてボンゴのプロンプト変えろや」と引用で続け、こちらも1,950いいね、表示29万回に達した。

kfpの投稿を引用する形で、@minoru8888は今年だけでアルバム4枚60曲近くあると数え、「全部何も言ってない歌詞、適当なトラックでゾッとした」と書いた。kfpより2日早い9月30日には、@sorawoyesがAI満載の曲ばかり作っているのを誰か止めなかったのかと投稿している。ただし、この2件はそれぞれ表示4,100回と1,400回、いいねは13件と7件で、広がりとしては小さい。

一方で、こんな投稿もあった。@Murphy_ok_curryは、Spotifyで突然流れてきた曲が刺さらなくて、歌手名を見たらMicroで驚いた、「AIかどうかなんて全然分かんなかった」と書いている。聴いただけでは判断できなかった人もいるわけだ。

筆者が見た範囲では、Micro側がAIという言葉を使った形跡はない。『波打ち際のLove Song』のミュージックビデオの説明文には「一曲一曲に、言葉を込めて。」とあり、本人がサウンドに向き合ったアルバムだと書かれているだけで、生成ツールの記載はない。もちろん、この一文がAIを使っていない証明になるわけでもない。

本人のXは1月28日を最後に止まったままで、Instagramにも制作方法の説明は見当たらなかった。筆者はWergshireに問い合わせていない。

使ったのか、使っていないのか、どこまで使ったのか。そこは確認できていないので、本稿はAIで作られたという前提に立たない。確かなのは、59曲という数と、毎週金曜という間隔と、それをAIと呼ぶ声が164万回表示されたことまでである。

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雑感

8月、Tyga(タイガ)がAIの使用を公然と認めたアルバム『$TARFACE』に、Pitchfork(ピッチフォーク)は19年ぶりの0.0を付けた。あのときは、作り手の側がレビューより先に使用を認めていた。Pitchforkの批判は、歌や音の中身にも、作品の作り方そのものにも向いていた。

今回は順番が逆で、作り手の側からAIについての説明はなく、聴き手の側がAIだろうと言っている。しかも、聴いただけでは分からなかったという人までいる。

筆者が引っかかるのはそこだ。17週連続、59曲という数字は配信の速さであって、制作の速さではない。前から書きためていた曲かもしれないし、そうでないかもしれない。この数字だけでは、制作にかけた時間も、AIを使ったかどうかも分からない。

164万という数字も同じだ。Xの表示回数は、投稿が見られた回数で、同じ人による複数回の閲覧が数えられることもある(Xヘルプセンター)。見た人の数でもなければ、うなずいた人の数でもない。投稿が広まったことは、書かれた内容が正しいことの裏付けにはならない。

それでも数字は一人歩きして、その上にAIという説明が重ねられた。曲をどう聴くかと、何を根拠にAIと呼ぶかは、別の話である。好きか嫌いかは、聴いた人が決めればいい。でもAIかどうかは、曲の多さや聴いた印象では決められない。作り方を示すものが出てくるまで、かつて1枚のアルバムを280万枚以上売った人の2026年は、「聴いてどう思うか」で受け止めるしかないのだと思う。

ちなみに次の金曜は10月9日だ。18週目も続くのかどうか、筆者は配信履歴を見に行くつもりでいる。

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