HIPHOPCs Global Hip-Hop, JP.

Yung Miami「Dear JT」歌詞を読む 追悼歌とDrakeの一行を借りて、元相方JTへ

USヒップホップ8 min read

『Watch Dis!』のジャケット(Uptown Records)。画像:Spotifyより。

トラックリストに一通だけ、宛名を伏せた手紙があった。

Yung Miami(ヤング・マイアミ)「Dear JT」は、10月23日に配信されたソロデビュー作『Watch Dis!』の19曲目だ。発売前に出た曲目では、この曲だけが「Dear —」となっていた。City Girls(シティ・ガールズ)で組んでいた元相方、JTへの手紙だ。

その歌詞には、よそから借りてきた言葉が2つある。Diana Ross(ダイアナ・ロス)がMarvin Gaye(マーヴィン・ゲイ)に捧げた追悼曲「Missing You」のフックと、2018年にDrake(ドレイク)が2人の名を呼んだ「In My Feelings」の一行だ。Yung Miamiはその2つを、まだ返事ができるJTに向け直している。

2人は2024年4月8日にX上で言い合い、電話で話して和解を伝えた。だが6月に公開された取材で、Yung Miamiはグループとしてはもう噛み合わないと語った。2人は少なくとも当面、ソロに専念することになった(Variety)。

この記事の要点

  • Yung Miamiのソロデビュー作『Watch Dis!』(2026年10月23日配信)の19曲目。City Girlsの元相方JTへの手紙だ。
  • 「JT, do you love me?」はDrake「In My Feelings」(2018年)の一行。フックはDiana Rossの「Missing You」(Marvin Gayeへの追悼曲)から借りている。
  • Yung Miamiは発売前の取材で、JTと最後に話したのは2年ほど前だと答えた(Complex)。この曲もJTに事前に聴かせていないという(Hot 97)。
配信日 2026年10月23日
収録 『Watch Dis!』19曲目/3分12秒(全21曲。20・21曲目は「Spend Dat」のリミックス)
フック/アウトロ Tiffany Evans(クレジット上はバックボーカル)
作詞・作曲 Yung Miami、J. White Did It、Bigg D、Cainon Lamb、Lionel Richie
プロデュース Yung Miami、Gumbo(GeniusではDJ Gumbo)
権利表記 ℗ 2026 Yung Miami LLC(UMG Recordings傘下のUptown Recordsへ独占ライセンス)

ピンクのお揃いから、生理の周期まで

1ヴァース目は、お揃いのピンクのセットアップからジェット機までの道のりを数える。撃ち合いのある地元で、母親が捕まり、JTも捕まった。それが今では、バルセロナで買い物だ。だが、何もかもが新しくなったと言った直後に、あんたを失っていく気がする、とヴァースは終わる。手に入れた物を数えるほど、隣にいた人の不在が目立ってくる。

2ヴァース目は、これは友達への手紙だ、と始まる。姉妹同然のJTと人前で揉めたのが恥ずかしかった。JTが入っている間は、自分が持ちこたえた。それなのに今は分かり合えない、なぜだろう、と首をかしげ、JTが完全に間違っていた時も見ないふりをしてきた、と続ける。かつては生理の周期まで同じだった、とも言う。それくらい近かったのだ。子どもを育てていなかったら自分も一緒に捕まっていた、とまで打ち明けている。

「持ちこたえた」には、対になる歌がある。2019年10月の「JT First Day Out」で、JTは「Yung Miami held me down」とラップしていた。支えられた側の言葉に、支えた側が7年後に答えている。

「JT, do you love me?」はDrakeの一行

2ヴァース目の後半に、問いが一つ挟まる。

JT, do you love me?

この一行は、2018年のDrake「In My Feelings」と同じ言葉だ。Drakeはサビで「’Resha」(Yung Miamiの愛称)とJTの名を呼び、愛してるかと歌いかけた。City Girlsはクレジットなしで声を入れ、曲はBillboard Hot 100で10週1位になった。すぐ後の行でYung Miamiは2018年を思い返し、「in my feelings」になる。これを偶然と読むのは、さすがに無理がある。作詞・作曲のクレジットにDrakeの名前はなく、借りたのは言葉だけだ。2人の名を広めた呼びかけを、今度は彼女がJT一人に向けている。

その2018年は、2人の名が一気に広まり、2人が引き離された年でもある。Drakeの『Scorpion』が出た6月末、JTはクレジットカード詐欺に絡むID窃盗の罪で、約2年の連邦刑に服するため出頭した(Billboard、TMZ)。11月に『Girl Code』が出た時も、JTは塀の中にいた。

JT自身も「JT First Day Out」で、Drakeが「In My Feelings」を出した日に入り、監房の寝台の上で本当に「in my feelings」だったとラップしている。

2ヴァース目は、一緒に歴史を作れたはずなのに、もう離れてしまった、と終わる。

追悼歌のフックを、まだ答えられる相手へ

フックを歌うのはTiffany Evans(ティファニー・エヴァンス)。会いたい、と繰り返すこのフックは、「Missing You」のサビをほぼそのまま借りている。作詞・作曲のクレジットにも、Lionel Richie(ライオネル・リッチー)の名前がある。Richieが書き、Diana Rossが1984年に出した、同じ年に亡くなったMarvin Gayeへの追悼曲だ。

借りた言葉はほぼそのままで、宛先だけが違う。Diana Rossが歌いかけた相手は、もう返事ができなかった。Yung Miamiが同じ言葉を向けるJTは、電話一本で答えられる。

アウトロも「Missing You」の後半、2度目のサビのあとに来る部分から借りている。そばにいようとしたのに、中に入れてくれなかった、という一節だ。Geniusの書き起こしでは、原曲で相手に呼びかけていた「boy」が消え、原曲にない一行が重なる。自分が何をして傷つけたのか、教えてほしい。主語は「I」だ。

2ヴァース目で「dead wrong」だったのは、JTのほうだった。当のJTは2024年の言い合いの後、Keke Palmer(キキ・パーマー)との対談で「2人とも完全に間違っていた(we both were dead ass wrong)」と振り返っている(Hot 97)。アウトロでTiffany Evansが歌う「教えてほしい」の一行で、手紙は初めて書き手の側の非を問う。2年前のJTの「2人とも」に、最後でようやく追いついたようにも読める。

発売前は一語、曲では一通

発売前の取材で、Yung MiamiはJTと最後に話したのは2年ほど前、JTの誕生日の頃だと答えた。また2人の曲が聴けるかと聞かれた答えは「Inshallah(神が望めば)」だった(Complex、10月17日)。取材では、聞かれて一語で返しただけだった。それが曲の中では、彼女のほうからJTに問いを重ねている。

アルバムの配信開始に合わせて公開されたHot 97のインタビューでは、事前にJTへ曲を聴かせていないと明かした。JTが聴くのも、ほかのみんなと同じタイミングだという。それでも、JTから電話が来たら出る、と話している(Hot 97)。

City Girlsの曲は、強気で、うるさくて、楽しかった。その片割れが、曲目では宛名まで伏せておいて、ソロデビュー作の本編の最後でこんなにまっすぐ会いたいと言うとは思わなかった。

2018年にDrakeが名を呼んだ2人は、今は別々に歌っている。JTはこの手紙にどう返すのか、それとも返さないのか。返すなら、筆者はそれをJTの次の曲で聴きたい。

宛先のJTのソロ曲は「No Hook」のレビューで、City Girlsが出てきた南フロリダのシーンはRap Atlas US:マイアミで読める。Weekly Songsの過去回はUSヒップホップの楽曲紹介一覧へ。

出典(2026年10月24日参照。歌詞はGeniusの書き起こしで、公式の歌詞表記ではない)

※作詞・作曲はApple Musicでは本名表記:Caresha Brownlee(Yung Miami)、Anthony White(J. White Did It)、Derrick Baker(Bigg D)、Cainon Lamb、Lionel Richie。Tiffany EvansはApple Music・Geniusともにバックボーカル表記で、曲名・名義には入っていない。