Hunxho「When I’m Gone」歌詞を読む 『I Quit Rap』の終盤で、子どもに残す言葉
Hunxho(ハンチョ)の「When I’m Gone」は、自分がいなくなったあとのことを、家族に頼む曲だ。2026年9月18日に配信されたアルバム『I Quit Rap』の終盤、4分12秒。アトランタ出身、1999年生まれのHunxhoは、2021年の「Let’s Get It」と21 Savageが加わったリミックスで名前を広げ、300 Entertainmentから作品を出してきた。ラップを辞める、と題したアルバムで、本人はいつもどおりラップしている。ただ、この曲は声の向きが違う。聴き手ではなく、残される人に向かって話している。アトランタのシーンについては、Rap Atlasと先週のQuavoの回で扱っている。
| 配信日 | 2026年9月18日 |
|---|---|
| 名義 | Hunxho |
| 収録 | 『I Quit Rap』17曲目(Spotify 全18曲)/4分12秒 |
| 権利表記 | © ℗ 2026 300 Entertainment |
父は良い男だった、と伝えてくれ
フックで頼んでいるのは、二つのことだ。自分が帰らない朝が来ても、強くいて、暮らしを続けてほしい。そして、子どもたちが分かる年になったら、父は良い男だったと伝えてほしい。その願いを、残される人に託している。
Hunxhoは、このあと自分を良い男、良い父と呼ぶ。それでも、子どもにどう記憶されるかは自分では決められない。だから、父のことを話してほしいと、残される人に頼む。自分がいなくなったあとも、その言葉が子どもに届くことを願っている。この頼みが、曲の最後まで続く。
ヴァースでは、娘には自分を大切にしてくれる相手を選んでほしいと願い、息子には自分を越えてほしいと祈る。だが、教える側で終わらない。自分には父と呼べる人がいなかった、と明かし、ときどき自分もその父と変わらないのではないかと思う、と続ける。それでも赦す、と言う。子どもを導く言葉に、自分もまだ迷っている、という告白が交じる。
話は、生活や心の問題を口にできない男の苦しさへ移る。金は細り、男は自分の問題を話せず、誰も聞かない。Hunxhoは、自分が味わったその苦しみを、子どもたちには背負わせたくないと願う。何を教えるかだけでなく、何を引き継がせたくないかも歌っている。
そのあとに短いリフレインが来る。Hunxhoは良い男、良い父だと自分を呼び、そのすぐ後に、人を傷つけたことを謝る。子どもたちには、自分が年老いるまでそばにいると語る。良い男だと名乗りながら、その名乗りに傷をつける言葉を、本人が同じ息で言う。
教えられることは教える
最後のヴァースでは、金や恋愛との付き合い方、家族との関係、不測の事態への備えを子どもたちに伝える。自分の経験から教えられることには限りがある、と前置きしたうえで、困ったときの判断に使える言葉を残そうとしている。
その中に、言いにくいが、と断ってから置かれる一行がある。
I hate to say this, son, but never leave without your hammer
Never be too flashy, ‘bout that paper, they’ll blam you
息子には武器を持って出ろと言い、金を見せびらかす危険を警告する。良い男でいてほしいという願いと、武装させてでも生き延びてほしいという願いが、同じ助言の中にある。母と祖母を敬え、という教えも、その隣に置かれる。筆者は、子どもを守ろうとする言葉が、暴力への備えを含んでいることに引っかかる。きれいな遺言にはなっていない。だからこそ、この曲は信じられる。
教訓を並べたあとで、彼は家族のために精一杯やったと振り返る。子どもに教える立場から、残される人に自分のことを託す立場へ戻っていく。最後に頼むのは、父は良い男だったと伝えてほしい、ということだ。
筆者が引かれるのは、良い父であろうとする言葉に、後悔も危うい助言も混ざっているところだ。子どもの手本になりたいのに、自分の失敗も知っている。そのうえで、父は良い男だったと伝えてほしいと頼む。『I Quit Rap』という題名と重ねると、最後に残るのは、ラップを辞めるかどうかではない。子どもに、どんな父として覚えていてほしいのか。その問いのほうだ。