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ZORN × 後藤真希「地元LOVE」―なんでZORNとゴマキなのか。いや、なんでなのか。葛飾の中卒ラッパーと元モー娘。

公開20時間で36万再生、コメント欄は完全にお祭り状態。日本語ラップ史上、最もカオスなフィーチャリングが爆誕してしまったのである。 なんでZORNとゴマキなのか。いや、なんでなのか 2026年2月16日、日本武道館。ZORNとOZROSAURUSのツーマンライブ「All My Homies presents "Family Day"」のステージ上で、その曲は初披露されたのである。 https://youtu.be/H29mpVrtbCA?si=cSv04VDaVV_no2DW 「地元LOVE feat. 後藤真希」。 字面だけ見ると、何かの間違いかと思う。東京都葛飾区新小岩出身、中卒でガテン系の仕事を渡り歩いてきたストリートの詩人ZORNと、平成のアイドルシーンを根底から揺さぶったモーニング娘。の絶対的エース・後藤真希。この二人が同じ曲にいる。世界線がバグっている。 しかし、きっかけは意外とシンプルであった。ZORNが後藤真希の写真集『flos』を読んでいたら「天啓」が降りてきたのだという。天啓である。写真集を読んでいて天啓が降りてくるラッパー、日本にZORNしかいないのである。 そしてその熱いラブコールに、ゴマキは応えた。よく考えたら、後藤真希は江戸川区出身。江戸川と葛飾、下町同士のご近所コラボだったのである。 アイドルだって近所を歩く。ドンキにだって行く この楽曲の真骨頂は、「地元」というテーマの解像度が異常に高いことである。 MVを見ると、ゴマキがもんじゃを食っている。新小岩の飲み屋で、ZORNと向かい合ってもんじゃを食っている。元モー娘。のセンターが、である。「今ではゴマキともんじゃ食う」というテロップが画面に出た瞬間、全視聴者が「嘘だろ」と呟いたことは想像に難くない。 しかしこれこそが「地元LOVE」の本質なのである。アイドルだって近所を歩く。スーパーに行く。ドンキに寄る。チェーン店でみんなと飯を食う。華やかなステージの裏側にある、泥臭くて温かい日常。ZORNはずっとそれを歌ってきたラッパーであり、ゴマキもまた、デビューから25年以上を経てその「地に足のついた生活者」としての魅力を増し続けているのである。 恋愛レボリューション21を2026年にサンプリングする暴挙 楽曲のサウンドプロデュースはBACHLOGIC。そしてここに、とんでもない仕掛けが施されている。 モーニング娘。の「恋愛レボリューション21」の歌詞がサンプリングされているのである。 2000年リリース、つんく作詞・作曲。あの頃日本中の小学生から大人までが「超超超超いい感じ」と踊っていた、Y2Kの象徴的ナンバー。それを2026年に、葛飾のラッパーが引っ張り出してきた。カラオケで歌ういつかの平成ソング、やっぱりみんなと食うチェーン店——そうした2000年代のノスタルジーが、ZORNの描く下町の風景と見事に溶け合っているのである。 コメント欄では「みんな初めて聞いたはずなのに、超超超いい感じが全員で大合唱になってたのおもろかった笑」という証言が136いいねを獲得している。武道館で初披露の曲なのに全員が歌える。それは「恋レボ」のサビが日本人のDNAに刻まれているからに他ならない。恐るべしY2Kパワーである。 「中卒だらけ 職はガテン/自彫りのギャル...

J. Cole『The Fall-Off』初週28万枚で全米1位―アナログ8万枚が示す”信頼”の重さ

via @realcoleworld instagram 一つの数字がヒップホップの意味を問い直しました。 J. Cole『The Fall-Off』──初週280,000アルバム換算ユニットでBillboard 200 全米1位。通算7作連続のナンバーワン獲得です。 しかし、この記事で最も注目したいのはチャート順位ではありません。フィジカル売上113,000枚。そのうちヴァイナル(アナログ盤)だけで80,000枚。この数字が意味するものについて、掘り下げていきます。 初週の売上と数字の全体像 まず、『The Fall-Off』の初週成績を整理します。 総合アルバム換算ユニット:280,000 ストリーミング由来:約167,000ユニット(オンデマンド再生1億6,950万回) フィジカル/純売上:113,000(うちヴァイナル80,000枚) トラック換算ユニット:500 事前予測は約290,000ユニットでしたので、わずかに下回りました。しかし、2026年のヒップホップ/R&B作品として最大級のデビューであることに変わりはありません。Playboi Carti『MUSIC』の初週298,000ユニットに次ぐ、今年第2位の初動記録です。 ここから本題なのですが2026年において、音楽を聴くこと自体にはお金がほとんどかかりませんよね。月額1,000円前後のサブスクリプションで、世界中のほぼすべての楽曲に即座にアクセスできます。TikTokやInstagram...

ハイ散歩!DJ2highさんとLA散策:Marathon Burger、Biggie〇害現場、元Death Row Recordsオフィス編

以前「ヒップホップ飯」と題するヒップホップ関連のレストランやカフェを幾つか紹介してきたが、今回はその特別編をお届けする。 本サイト歴代インタビュー記事の中でも、閲覧数が群を抜いて大人気、且つ破天荒ライフで有名なDJ2highさんに、ロサンゼルスのヒップホップスポットをご紹介頂いた。 2月の日曜日の昼下がり。待ち合わせの11時過ぎにLAはダウンタウン在住のDJ2highさんをピックアップして、まずはメルローズ・アベニューにあるMarathon Burger(マラソンバーガー)に向かった。 https://hiphopnewscs.jp/2025/05/31/hiphopcs-dj2high-15794/ Nipsey HussleのMarathon哲学とは? 食レポの前にちょっとだけ蘊蓄にお付き合いいただきたい。「The Marathon(ザ・マラソン)」とは、ニプシーが2010年にリリースしたミックステープのタイトルであり、彼の人生哲学そのものである。生前、「一時的な流行や目先の利益を追うのではなく、忍耐、規律、一貫性を持って、長期的なビジョン(コミュニティへの投資や自立)に向かって走り続けることの重要性」を説いていたニプシー。成功はスプリント(短距離走)ではなく、マラソン(長距離走)であるという考えに基づいた彼のテーマであった。だが彼自身、虚しくもマラソンを完走せず、その短い人生の幕を降ろしてしまった。 https://youtu.be/ZOewCwzukOg?si=ctyT-gPaMkzCbMRu Marathon Burgerとは? このMarathon Burgerは、かの伝説的ラッパーNipsey Hussle(ニプシー・ハッスル)のお兄さんのBlacc Sam(ブラック・サム)さんがオープンしたバーガージョイントである。ニプシーもブラック・サムさんも、昔飲食店で働いていた経験があり、いつか自分らのお店を持つことを夢見ていたらしい。 元々はアパレルブランド「The Marathon...

『Not Like Us』から『チーム友達』まで:ブラックミュージックとCall and Responseについてさらっと考察!

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Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマ―)が2月9日のスーパーボウルのハーフタイムショーで『Not Like Us』を、Drake(ドレーク)とのビーフに関係無く演奏する予定である、ってニュースが流れたんだけど。昨年大流行したこの曲の後半部分で「Let me hear you say “OV-Ho”! 」って個所あるの覚えてるかな?DrakeのレコードレーベルOVOを揶揄ってるんだけど、ここでノリの良いリスナーや聴衆は一緒に「OV-Ho!」ってリピートするのね。なんなら筆者もこの曲かかるとつい一緒に口ずさんでしまうんだけどね。これは「複数の参加者間の音楽的な会話」を指すんだ。で、のっけから掲題の「Call and Response」についての定義を書いちゃってるんだけど、前回のラップのルーツで(活字数の問題もあり)あまり補足説明できなかった、この「Call and Response」について今回はいろいろ紹介してみようと思うんだよね。

ケンドリックラマー KOHH
Los Angeles, California – February 5, 2023 Kendrick Lamar received the award for Best Rap Album for his critically acclaimed project, “Mr. Morale & The Big Steppers”, during the 65th Annual GRAMMY Awards. The event took place at the Crypto.com Arena in Los Angeles, California. Standing onstage, Lamar delivered his acceptance speech, marking another milestone in his illustrious career. (Photo by Kevin Winter/Getty Images for The Recording Academy)IndianOrc, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons

ブラックミュージックの美学としてのCall and Response

アフリカ音楽の口頭伝承から生まれたプランテーションソング。または労働歌は、プランテーションで働く奴隷化されたアフリカ人のコミュニケーションの手段として、または退屈な野外作業を克服するための娯楽として演奏されたそう。この伝統は20世紀になっても刑務所の労働収容所で続いたんだって。

このCall and Response、19世紀~20世紀にかけて公共の集まり、宗教儀式、声や楽器による音楽表現…例えばゴスペルやソウル、ジャズ、ブルース、ロック、ヒップホップにまで波及したんだ。Caller(コーラー)またはリーダーは、ミュージシャンのガイドとして機能して、曲を開始してから音楽やストーリー展開を促進する役目を担う。Callの発信者は、参加者のエネルギーを押したり引いたりして、パフォーマンス全体の雰囲気を設定するんだって。Responder(リスポンダー/応答者)は、設定されたリリックスや歌詞に従ってCallerに従う、または質問や呼びかけに応える。この形式は、聴衆や群衆の参加を最大限に可能にして、包括性とコミュニティやユニティを強調するんだそう。Call and Responseは、ブラックミュージックの美学を最も完全に凝縮した1つの比喩としても挙げられるんだ。なぜなら、ブラックミュージックは固定された対象ではなく、集団的な経験であることを前提とするからだそう。さてさて、難しい話はこれ位にして、と。

『天使にラブソングを2』の「Oh Happy Day」のCall and Response

アフリカ系アメリカ人の精神的伝統における礼拝で使用される場合、通常Callerは説教者または他のコミュニティのリーダーであり、会衆はResponderとして機能する。これは日本人にあまりなじみが無くても、ハリウッド映画での教会のシーンや説教のシーンでよく観るよね。

ウーピー・ゴールドバーグの代表作でもあり、あのローリン・ヒルも初々しい学生役で出演してた1993年の『天使にラブソングを2(原題:Sister’s Act2)』(注:『天使にラブソングを』は1と2がある)という映画で、1968年エドウィン・ホーキンスが18世紀の賛美歌をアレンジした『Oh Happy Day』を歌ってるけれど、この「オーハッピーデー」ってフレーズをメインボーカルの後にコーラスが繰り返すように歌うんだよね。これもゴスペル音楽におけるCall and Responseの良い例なんだそう。ちなみに、去年この『天使にラブソングを2』のリユニオンがあって、初老のウーピーさんが大きくなった生徒(役だったみんな)を指揮してみんなで同曲を歌っていたよ。メインボーカルをしていたライアン・トービーさん(映画では小さかった少年だったのに、おっさんになっていました)が衰えない歌唱力で力強く歌ってた。残念ながらローリンさんはいなかったけど。

ヒップホップのCall and Response

上記の「集団的な経験」を上手く取り入れているのが、やはりヒップホップという音楽ジャンルではないかな。数日前、筆者のThreadsフォロワーが『Noah』という1940年代Jubalaires(ジュバレイアーズ)という4人組のゴスペルグループの動画を紹介していて、久しぶりに視聴した筆者も思わず引用してしまったんだけど、彼らが口頭伝承というテクニックを楽器とCall and Response形式で使用したのが、ヒップホップの初期形とも言われているんだよね(その形式が一般に広まるのは、前回の記事の通り)。ヒップホップの楽曲でこのCall and Responseの例を挙げるとキリが無いんだけど、例えばRun DMCの初期の作品…『Its’ like that』とかは強烈なビートとCall and Responseの歌詞をフィーチャーした特徴的なスタイルが有名だったし。あとはクラブや盛り上げるときに未だにかかるNaughty By Nature(ノーティーバイネイチャー)の『O.P.P.』 や 『Feel Me Flow』もその良い例だし。Pharell(ファレル)の『Happy』も手を一緒に叩いちゃうし、Migos(ミーゴス)も『Bad and Boujee』に代表されるように、Call and Responseを多用しているグループだよね。むしろグループとかデュオ間でよく見られるような気もする。もちろん、ソロアーティストでも冒頭に挙げたケンドリック・ラマ―、千葉雄喜さんの『チーム友達』しかり、アーティストがライブで盛り上げる手法としても、現在進行形でCall and Responseが多用されているのである。

『チーム友達』のCall and Response

今回この記事を書くに当たって、どうやってアプローチしたら読者に興味を持って読んでもらえるか考えていて、気づいたら数週間、書いたり消したりを繰り返して寝かせたままになっていたんだけど、やっとこさ記事に出来たよ。12月末、筆者は王子で開催されたDJ Ryowさんのイベントに行ったんだけど、そこでサプライズ出演で千葉雄喜さんが登場して『チーム友達東海バージョン』を披露したのね。で、やはり彼の「観客を巻き込む力」というか、もはや「観客のみならず出演者まで全員巻き込んじゃう力」みたいなの見せつけられて、凄いなぁと思ったのよね。もちろん観客に「俺たち何、え?」の後にCall and Responseで「チーム友達!」って言わせていたし。会場中が踊りながら大合唱だった。これこそ「集団的な経験」の最たるものだと思ったのよね。素晴らしかった。

と、前回に続きこの記事を最後まで読んでくださった皆様。やはりかなりの音楽好きですな。今回もご拝読、ありがとうございました。

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