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人気急上昇中!27AM、1stシングル『Frozen Car』をレビュー

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人気急上昇中!27AM、1stシングル『Frozen Car』をレビュー
Image via @27am27am on Instagram. Used under fair use for editorial review purposes.

Write by 佐藤 杜美

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神奈川県川崎市出身のラッパー、27AM(トゥエンティセブンエーエム)をご存知だろうか。ABEMAのオーディション番組「RAPSTAR 2025」に出演し、ヘッズたちだけでなく、有名ラッパーも心を鷲掴みにした期待の新鋭ラッパーである。地元の幼馴染とレーベルを立ち上げ、2026年4月に3曲入りの1stシングル『Frozen Car』をリリースした。その中でも今回はYouTubeでも話題となった『PASSO』をレビューしていく。

現在と未来をのせている?

曲名にある『PASSO』はトヨタの最小コンパクトカー、パッソを表している。価格も手ごろな自動車で、リリックには「黒のベンツに乗るためにPASSO走らしてる2days」とある。今現在乗っている安価な自動車と、いつか手に入れたい黒のベンツ(高級車)という対比が表現されている。

等身大のリリックが魅力

単に高級車に乗りたいという意思にも見られるが、それだけではないと考える。「意思を持ったみたくひたすら走れパッソ いつかに乗りたいランボ」「ダラダラしてる間に過ぎる タラタラしてる奴はジープかバンとかに轢かれとけばいい ソイツら死ぬまでボンビー」というリリックからは、怠け者やだらしない人間を批判しているようにも見えるが、もしかすると自戒も含んでいるのではないか。次から次へと新時代を彩る若手ラッパーが出てきている中で、進み続けないと止まってしまう。車のようなスピードで駆け抜けていかなければならないことを暗示しているのではないか。

生活の断面が垣間見える

他にも「俺らイイ歳で金がないのに 意地でも出来ないぜ9時5時」というフレーズでは、年齢的に(27AMは24歳)も安定した仕事に就いて、ある程度のお金があることが望ましいとされている世の中と、自分自身に対するジレンマのようなものを表現しているのではないか。意地でも出来ないぜとあるように、今後ラッパーとしてキャリアを築いていくという覚悟も感じられる。「RAPSTAR 2025」では、バイトのとび癖について話しているので、社会に適合できないようなものも含んでいそうな感じもする。

彼の魅力は生々しいほどの“リアルさ”

派手な生活やFlex、恋愛、非日常感のようなものではなく、坦々とリリックに綴る。それが十分すぎるほど魅力で、ヘッズ達にもラッパー達の心にも響いているのではないだろうか。




HIPHOP CS編集部より──佐藤の見立てに重ねて

佐藤が『PASSO』の魅力として指摘した「派手な生活やFlexではない、坦々と綴られるリリック」という見立てに、編集部から一つだけ補助線を引いておきたい。日本語ラップにおける「車」のモチーフは、ベンツやマイバッハという形で「達成済みの記号」として歌われてきた歴史がある。27AMの『PASSO』が独特なのは、その記号の手前──まだ届いていない側から、今乗っている安価な車の名前そのものを曲名に置いた点にある。佐藤が読み取った「等身大のリアルさ」は、車モチーフの系譜の中で見ると、なお新しい位置に立っている。

そしてもう一点。佐藤も冒頭で触れている通り、27AMは神奈川県川崎市出身である。川崎という土地は、日本語ラップの文脈において固有の重みを持つ場所だ。本稿の筆者・佐藤杜美は、2025年11月にBAD HOPの出身地である川崎市池上町を実際に踏破した取材記録を別所に残している。工場地帯の匂いと迷路のような路地を自分の足で歩いた書き手が、24歳の27AMの「黒のベンツに乗るためにPASSO走らしてる」を読んでいる──この事実は、本稿の「等身大のリアルさ」という言葉の重みを、机上の評語ではなく地続きの身体感覚にしている。佐藤の言う「今後ラッパーとしてキャリアを築いていくという覚悟」は、川崎という土地の引力ごと聴き取られている。


Writer──佐藤杜美

2000年生まれ。アパレル企業勤務を経てライターに転身し、現在は都内を拠点に複数のWEBメディアで執筆。東京報道新聞では「軽度知的障害」「境界知能」など、公的支援の網からこぼれ落ちた当事者へのインタビューを手がけている。

上京を機にHIP HOPを聴き始め、毎月のようにクラブやフェスへ足を運ぶ現場派。好きなラッパーには唾奇、Watson、Yvng Patra、rirugiliyangugili、Lil Ash 懺悔の名前が並ぶ──Watsonの川崎、Lil Ashとrirugiliyangugiliの大阪アンダーグラウンド、Yvng Patraと唾奇の沖縄ライン。日本のヒップホップを土地と現場の両軸で聴き続けている耳が、執筆の地盤になっている。

取材は紙面の上だけでは終わらない。2025年11月にはBAD HOPの出身地・川崎市池上町を実際に歩いた現地レポートを執筆。工場地帯の匂い、迷路のような路地、戦後の在日コミュニティの歴史までを自分の足で記録し、『Kawasaki Drift』『Stay』のリリックと町の風景を一行ずつ照合してみせた。聴いて書くだけでなく、歩いて書く──これが彼女の仕事の地肌である。

HIPHOPCsでは「毎年恒例?rirugiliyangugiliとLil Ash懺悔のsantaシリーズ」「CNG SquadがCANDY TUNEとコラボ──『倍倍FIGHT!』サンプリング」を執筆。大阪アンダーグラウンドの内側を、外から眺めるのではなく、現場で体重をかけて聴いている書き手として頭角を現している。

本稿『PASSO』レビューで27AMの「等身大のリアルさ」を即座に言語化できたのは、池上町の路地を踏破した足と、社会の周縁から声を拾うインタビュー仕事で培ってきた感度が、同じ場所から同時に動いた結果である。2000年生まれの書き手が、川崎・24歳の一行に込められたテンポと覚悟を読み解く──その近さこそ、HIPHOPCsが彼女の文章に託している領分である。

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