長い髪をバッサリ切ってショートヘアで新曲『Circulation』を電撃リリースした、大門弥生。去る4月3日の金曜日。当サイト挙げて応援している彼女がオレンジカウンティでパフォーマンスをするとの情報をキャッチしたので、筆者は早速南カリフォルニア最大の日系フェス『O.C. Japan Fair/Freedom L.A.』に足を運んだ。
OCジャパンフェアー/Freedom LAとは?
このフェアは、Japan Product Promotion主催で、2009年からオレンジカウンティで開催されている日本文化フェスティバルである。「The Skills of JAPAN(日本の技)」:日本の食・文化・伝統・イノベーションを楽しもう!のテーマのもと、アメリカに住むすべての人々に、日本の技術や伝統を見て学び、またユネスコ無形文化遺産にも登録されている日本の食文化を味わいながら学ぶなど、日本を体験・理解する機会を提供することを目的としているとのこと。会場では、コスプレショー、マグロ解体ショー、人気の日本人アーティストやコメディアンによるパフォーマンス、伝統楽器の演奏、人力車試乗、ゲーム、着物モデルとの交流会など、米国ではなかなか体験できない様々なイベントが金曜日~日曜日にかけて行われる。
そして、Freedom LAはOCジャパンフェアーと提携している、本格的な日本の音楽フェスティバルだそうだ。主に日本とアメリカを拠点に活動する、日本の音楽に情熱を注ぐアーティストたちが出演するイベントを開催している。
※OCジャパンフェアー(Instagram)/ Freedom LA(Instagram)
ゆりやんレトリーバーらのショーを観覧
午後7時に到着した筆者は、まずLAに拠点を移したゆりやんレトリーバーのワンマンショー、人力車試乗、屋台で飲食をした後、MINMI、ブリタニ―Tokyo、ゆりやん3人が最近のお洒落について話すKawaii Stageトークショーを観覧した。
その後、倉庫のようなFreedom LAのステージに移動し、今回の主役の大門弥生が後半にパフォーマーとして登場する『West Coast Fashion Show』を最前列で鑑賞した。
Freak City LAのファッションショー
おさらいとして前回のCook Oliver記者の記事を引用するが、このファッションショーはLAを拠点にカスタム衣装・スタイリング・クリエイティブディレクションを手がけるファッションブランドで、Billie Eilishとのコラボレーションで注目を集め、Nicki Minaj、Doechii、Kim Kardashian、Paris Hilton、Rico Nastyらが着用。ネオンカラーとパンクの精神を軸にした”はみ出し者のための服”を掲げ、2024年にはSS’24コレクション「THE NEW LA」をランウェイで発表している。
服はランウェイに登場した数十人のモデルたちの見目麗しさも相まって、ヒップホップ、パンク、ゴス、様々なストリートのテイストが良い塩梅に融合した、本サイト読者層も好きそうなお洒落なデザインだ。※ Freak City L.A.(@freakcityla)
Tokyo Gyal Partyのダンサー達
東京とLAのカルチャーを融合した「tokyo gyal party」では、カリスマダンサーSakura da Patraさん率いるシスターチックなギャル達がセクシーなTwerkingや尻振りダンスを繰り広げて、会場にいる老若男女の心をわしづかみしていた。
このOCジャパンフェアーにはステージが3つあったのだが、メインのパフォーマンス前、実は大門氏は一番小さな「仲見世ステージ」でギャルダンサー達と登場し自身のショーの告知をしていた。
圧倒的なカリスマを見せつけた大門弥生
さあ、本題の大門弥生のパフォーマンスは、ギャルダンサー達の後始まった。会場内の観客は、アメリカ人と日本人が半々くらいである。「大門弥生ご存知ですか?」と聞きたくなるようなご年齢や見た目の方、親子連れももちろんいたが、ストリート系のファッションショーの後という事もあって、日米問わず、ヒップホップやストリート系の服に身を包んでいた人が多いように見えた。
2人のダンサーを引き連れた我らの大門弥生は、英語でのトークも交えながら自身の数あるカタログから厳選した数曲を歌っていた。やはり特筆すべきは彼女のシンガーとしての実力と新境地を見せつけた新曲『Circulation』である。柔らかいメロディ、「Love is always inside you(愛は貴方の中にあるの)」から始まる繊細な歌詞。その小さな身体から発しているとは思えない声量と確実にキーを抑えたスキルフルな歌唱で丁寧に歌い上げ、観衆を惹きつけていた。
もちろん彼女の魅力はそのラップ力、掠れ気味の耳に残る歌声だけではない。ダンサー出身でステージを駆け巡る、その圧倒的なダンスと表現力も強みである。そう。彼女は骨の髄までパフォーマーなのだ。しっとりと歌い上げたかと思えば、力強く難易度の高いダンスを披露し、始終観衆を惹きつけていた。
そろそろパフォーマンスも終盤にさしかかった頃。ラストソングは何を出してくるのだろう?と私含め会場にいた観客はわくわくと期待していたが、彼女が選んだのはあの、「やったったらええやん♪」というフレーズが超有名な『Back It Up』であった。大門節でフィナーレを力強く歌い上げ、踊り上げ、ムンムンとした湯気が出そうなほど、会場を熱く熱く盛り上げていた。
米国での大門弥生の活躍は続く…
前回のインタビューで、春と夏に曲をリリースすると大門さんは告知していた。
その予告通り『Circulation』を発表し、突然の参加となったが、南カリフォルニア最大の日系フェスに降臨した彼女。初めて彼女のライブを観た筆者は、小さいながらも他のダンサーやパフォーマーを凌駕する彼女のカリスマと存在感にすっかり釘付けになった。やはり彼女は人を惹きつけるために、スターになるために、生まれてきたのだろう。
次は夏のリリースであろうか?本格的になってきた彼女の米国での活躍が期待される。
HIPHOPCs View──LA拠点2年目、大門弥生が「現場で勝ちにいく」フェーズに入った
Sei記者のレポートから読み取るべきは、単に「日系フェスに大門弥生が出た」という事実ではない。今回のOC Japan Fair/Freedom LA出演は、2024年にLA拠点を移して以降の彼女のキャリア設計において、明確な位置を持つステージである。
第一に、セットリストの組み方に注目したい。新曲『Circulation』の「Love is always inside you」から入るシンガーソングライター的な繊細さと、フィナーレの『Back It Up』に象徴されるラッパー大門弥生の押し出しの強さ。この二つを同じステージ、同じ30分前後のセットの中で両立させたこと自体が、現在の彼女の立ち位置を物語っている。Ice Spice・Sexyy Redと同じ舞台に立った4SHOOTERS ONLYでの強度と、『Circulation』で提示した新境地の柔らかさ。そのどちらをも手放さずに、現場で繋げてみせるパフォーマーは、日米のストリート文脈を跨いでも多くはない。
第二に、Freak City LAのショーの後に大門弥生が登場したという順番の意味である。Billie EilishやDoechii、Rico Nastyが着用するLA現地のストリートブランドが作った空気の中に、日本から来たアーティストが接続される。これは「日本人アーティストがLAで披露する」構図ではなく、LAのストリート・カルチャーの文脈そのものの中に大門弥生が置かれていた、ということだ。観客の半数がアメリカ人であり、ストリート系の服装が目立ったという現場描写は、その文脈接続が機能していたことの傍証と読める。
第三に、メインステージ前に仲見世ステージで告知を行い、Tokyo Gyal Partyのダンサー陣とともに会場を温めてから本番に入るという動き方は、LAのアンダーグラウンドで鍛えられたパフォーマーの立ち回りだ。大阪のアンダーグラウンド・ダンスシーンから始まった彼女が、LAでも同じ筋肉を使ってシーンに食い込んでいる。その意味で今回のステージは、2024年の拠点移行が単なる「海外進出」ではなく、現地のシーンに身体ごと入り込むフェーズに移っていることを示している。
夏のリリースを待つまでもなく、2026年の大門弥生は、LAで勝ちにいっている。
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Writer──Sei
HIPHOPCs主筆の一人。日米ヒップホップの現場とレジェンドを繋ぐ独占取材を数多く手掛けてきた、HIPHOPCsのDJ/プロデューサー取材の最前線を担う書き手である。
これまでに、北海道からニューヨークへ渡りMos Def、Common、Fat Joe、De La Soul、Gang Starrらと並んだ日本ヒップホップの巨匠dj hondaへの独占インタビュー前後編、そして西海岸のレジェンド日本人プロデューサーにしてSnoop Doggに最も近い日本人DJと呼ばれるDJ2highへの独占インタビュー前後編を手掛け、90年代NYヒップホップ黄金期から現在に至るまでの日本人プレイヤーたちの一次証言を引き出してきた。英語圏メディアでも稀な、日本ヒップホップ海外進出史の当事者たちから直接話を聞ける数少ない取材者の一人である。
今回の現場レポートでは、LA拠点2年目に入り本格的に米国シーンへ食い込み始めた大門弥生の動向を追うべく、南カリフォルニア最大の日系フェスに最前列から入り込み、新曲『Circulation』披露の夜を書き残した。過去から現在へ、日本人アーティストが海を越える瞬間を、Sei記者はHIPHOPCsで記録し続けている。