死後29年経っているのに、まだ昨日のことのように連日ニュースになること自体、このラッパーのカリスマとレガシーを物語っているようだ。相棒を2017年に亡くしてしまったものの、今年アルバム『Infinite』のリリースが予定されている、伝説のラップデュオMobb Deep(モブ・ディープ)のHavoc(ハヴォック)。その彼がインタビューで、ヒップホップ史の伝説となった東西合戦と、2Pac(2パック)が『Hit Em Up』でモブ・ディープをディスった理由を明かしたそうだ。
『Drink Champ(ドリンク・チャンプ…ラッパーN.O.R.E. とDJ EFNのポッドキャスト番組)』で、クイーンズブリッジの伝説的ラッパーは、誤解された歌詞と東西のラップ界のライバル関係の激化が、モブ・ディープと2パックの間の緊張の原因になったのではないかと推測した。
OGは語る。「色々な要素が重なったんだよ。『Survival of the Fittest(1995年5月リリース)』では”Thug life, we still livin’ it(俺たちはまだサグライフを生きてるんだぜ)”ってラップしてた。当時、2パックは”もうこんなサグみたいなクソはやりたくねえ”って記事をVibe誌に載せてたんだ。だから俺らが”サグライフを生きてるんぜ、あいつがやってることなんてクソ食らえだ”って言ったと奴は思い込んだんだろうな。それが『L.A., L.A.』にも積み重なって、”こいつらN___どもクソ食らえ”って感じになっちまった」
モブ・ディープがフィーチャーされているCapone-N-Noreaga(カポーン・アンド・ノリエガ…N.O.R.E.はノリエガの短縮形)の『L.A., L.A.(1996年4月リリース)』という楽曲は、Tha Dogg Pound(ザ・ドッグ・パウンド)の『New York, New York(1995年9月リリース)』に対するモブ・ディープ側の回答であり、その後の2パックの『Hit ‘Em Up(1996年6月リリース)』がモブ・ディープを含む東海岸のアーティスト数名を批判したことで、あの悪名高い90年代の東西対立が激化してしまったのだ。
『Hit Em Up』で2Pacは、かなり辛辣なラップのラインをモブ・ディープの故Prodigy(プロディジー)に放っていた。「Oh yeah, Mobb Deep, huh, you wanna fuck with us? /You lil’ young-ass motherfuckers / Don’t one of you n__as got sickle-cell or somethin?(オーイェイ、モブ・ディープさんよ、なあ、俺らとヤル気あんのか?/このクソ若造ども/お前らN___のどっちかが、鎌状赤血球症か何か持ってんだって?」
それに対し、伝説のデュオは『Drop A Gem On ‘Em(1996年8月リリース)』で反論したが、9月にパックが亡くなったため、彼らはこの曲のプロモーションを中止したという過去がある。そして、プロディジーは、2017年にこの病気による合併症で亡くなった。
MVは若干時代を感じるものの、上記で出てきたディス曲たちは、当時の東西のビートの特色が色濃く出ていて聴いていて面白い。ヒップホップ史で今もなお語り継がれている、この東西合戦。OG(先人)達が暴力と責任について深く考える時代を促し、後進のアーティストたちが進むべき指標を形作ってくれた。激しい競争は偉大なアーティストを生み出す一方で、抑制されない対立は壊滅的で不必要な損失につながることもある。そんなことを、この時代は教えてくれたのかもしれない。
