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Concrete Boys「ONE TIME」レビュー|Lil Yachty率いる5人のポッセカット

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Concrete Boys「ONE TIME」レビュー|Lil Yachty率いる5人のポッセカット
Concrete Boys「ONE TIME」ジャケット
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Text by HIPHOPCs編集部|2026-02-27|Updated: 2026-02-28

Concrete Boys & Veeze「ONE TIME」— アトランタとデトロイトが交わる瞬間、『It’s Us Vol. 2』が示す次の地平

2026年2月27日、Lil Yachtyが率いるConcrete BoysはデトロイトのラッパーVeezeと組み、待望のコンピレーション第2弾『It’s Us Vol. 2』を全ストリーミングプラットフォームにリリースした。注目すべきは、VeezeがゲストフィーチャリングとしてではなくConcrete Boysと完全に対等なクレジット——「Concrete Boys & Veeze」——でアルバムに名を連ねていることだ。17曲、55分37秒。そのアルバム中盤から終盤へ向かう重要な位置、14曲目に収められたのが「ONE TIME」(4分54秒)である。

Concrete Boys & Veeze——この組み合わせが実現するまで

VeezeとLil Yachtyの縁は一夜にして生まれたものではない。本名Karon Malcolm Vantrees、デトロイト西部のセブンマイルロード育ちのVeezeは、2023年のデビューアルバム『Ganger』にYachtyをゲストとして迎えている。同作はBillboard 200の97位にチャートインし、Washington Postに「その年のベストラップアルバム」と評された作品だ。

その後、両者の交流はさらに深まった。2024年8月にリリースされた「Sorry Not Sorry」はVeezeにとってBillboard Hot 100初登場を果たした記念碑的なシングルとなった。同時期、Lil BabyがYachtyとVeezeを同じトラックに引き寄せた「Get Along」でも、この2人の声が交差する場面が生まれていた。続く2025年4月の「Can’t Be Crete Boy」はLyrical Lemonadeが手掛けたミュージックビデオと共にリリース。バーバラ・メイソンの「Yes I’m Ready(1972 Version)」をサンプリングしたChildboy & MitchGoneMad制作のビートが2人の相性の良さを世間に見せつけた。

「Can’t Be Crete Boy」のリリース時、Veezeのインスタグラムには「💿 otw」の一言があった。あのアルバムへの予告だった。アトランタとデトロイト、対極に位置する2つのシーンを代表する彼らが1枚のアルバムで全力を尽くすことの意味は、ファンにとって明白だった。

Concrete Boys——Vol. 2時点でのメンバー構成

『It’s Us Vol. 1』(2024年4月5日)から2年弱。Vol. 2に至るまでにConcrete Boysの陣容にも変化があった。Vol. 1の顔だったKarrahbooが離脱し、代わりにHonestが新メンバーとして加入。現在のラインナップはLil Yachty、Draft Day、Camo!、Dc2trill、そしてHonestの5名だ。

Draft Dayはフロリダ出身でアトランタに移り住み、Concrete Rekordz最初のサイニーとなった人物。Dc2trillのみがアトランタ外——テキサス州ポートアーサー——の出身で、そのテキサス的な質感がグループに地理的な奥行きを加えている。そこにデトロイトのVeezeが加わることで、『Vol. 2』は東西南北を横断するUSヒップホップの地理的多様性を体現した作品となった。

「ONE TIME」——アルバム14曲目の重量感

「ONE TIME」が収められた14曲目という位置は偶然ではない。17曲構成のアルバムにおいて、14曲目はクライマックスへ向かう最後の勾配に差し掛かる地点だ。Neon Musicによる「MILLIONAIRE」(17曲目・最終曲)のレビューでは、MitchGoneMad & WessGoneMad制作の重厚なオーケストラル・ローエンドと、ビートスイッチ後にヒューストンへとグラビテーションするサウンドが指摘されている。「ONE TIME」がその直前の助走を担う形で機能していることが、アルバム全体のアーク設計から透けて見える。

Concrete Boysのサウンドを規定する言葉は「ミニマリスト」だ。Vol. 1の時点からHypebeastが指摘していたように、このグループはジャズとブームバップの要素——トランペット、サックス、フルートの断片——を最小限のビート構造に重ね、各ラッパーのデリバリーが前面に出られる空間を意図的に確保する。「ONE TIME」もこの文法から逸脱しない。むしろそれを4分54秒で凝縮している。

注目すべきはVeezeのフロウが他メンバーとの対比においていかに機能するかだ。Pitchforkのマシュー・リッチーがVeezeのスタイルを「vocal oddities と笑いを誘うストリーム・オブ・コンシャスネスなバー」と評したその個性は、Draft Dayのダミ声による攻撃性、Camo!のパンチラインの切れ味、Dc2trillの滑らかな大気圧的フロウとはまったく異なる質感を持つ。Crack Magazineのインタビューでヴィーズ自身が語っている——「俺がラップするのは、俺が話す通りのやり方だ。声を荒げたことなんてない」。その静けさの中にある威圧感が、「ONE TIME」ではYachtyのアンカーとしての存在感と並んで際立つ。

Vol. 1からVol. 2へ——何が変わり、何が深まったか

2024年8月、PlaqueBoyMaxとConcrete Boysはロサンゼルスでの11時間のライブストリームで6曲を録音し、その内4曲を「fivestarcrete」として正式リリース(Hypebeast報道)。同ストリームの中でDraft DayがVol. 2について言及し、Dc2trillとYachtyが「今年中に出る」と断言した場面が話題になった。

そして2025年8月1日、Yachtyが自身のインスタグラムストーリーにCamo!、Dc2trill、Draft Day、Honest、Rio Amorをタグ付けし、Vol. 2の制作を正式に確認。約半年のインターバルを経て2026年2月27日に届いた本作は、17曲・55分37秒と前作(16曲・47分)よりも密度と尺の両方が増している。

Vol. 1でのピッチフォーク(6.1点)の「ワナビー」評価への不満は一部のファンに残っていたが、Vol. 2はその評価軸をそもそも相手にしない姿勢で作られた印象がある。Hypebeastの評論が指摘したように、Yachtyは「ヘアカラーからリーン依存のフェーズ、そしてサイケデリックロックへの突然の転向まで」——批評家の期待を無視し続けてきたアーティストだ。Concrete Boysというフォーマットはその自由さを集合的に実践する場として機能している。

デトロイトの文脈——Veezeという選択の意味

Veezeがアルバム全体を通じてConcrete Boysと共同クレジットされることには、音楽的にも象徴的にも意味がある。USヒップホップにおいてデトロイトシーンはBabyface Ray、Icewear Vezzo、42 Duggらが引率する形で近年かつてない注目を集めている。VeezeはそのシーンにおいてPitchfork関係者が「mixtape-era Lil Wayneのような漫遊者」と評す存在——過小評価しがたい批評的支持を持ちながら、メジャーなコマーシャル成功には慎重な距離を置いてきたラッパーだ。

Rolling Stoneとのインタビューでヴィーズはこう語っている——Yachtyのような人物を身近で観察することで自分の仕事への姿勢が変わったと。「Yachtyみたいな人間は楽できる金を持っている、でも毎日働いている。それを見て俺もスイッチが入った」。その相互リスペクトのもとに生まれた『It’s Us Vol. 2』は、単なる客演の集積ではなく、化学的に設計されたコラボレーションである。

HIPHOPCs編集部による評価

「ONE TIME」を単体で切り取ることは、意図的に設計された17曲のアーキテクチャを無視することになる。この楽曲の価値はアルバム『It’s Us Vol. 2』という文脈の中でこそ正確に測れる。14曲目という位置、4分54秒という尺(アルバム内でも長い部類)、そしてVeezeの声質とConcrete Boys各メンバーの声質が交差するダイナミズム——これらは「先行シングル」として切り取るべき楽曲ではなく、通し聴きの中で体験すべき楽曲だ。

アルバム全体を通じた強みは、メンバー各人の個性が希薄化せずに共存している点にある。Dc2trillのベルスでのスムーズさ、Draft Dayのしゃがれた緊張感、Camo!のウィットの切れ味、そしてVeezeの「寝言のように放たれる警告」——それぞれが独立したキャラクターとして耳に残る。Yachtyはアンカーとして全体を束ねるが、かつての「レーベルの主役が全部持っていく」構図はここにはない。

課題があるとすれば、17曲という尺の長さと楽曲密度の均質さだ。Vol. 1でも指摘された「ポッセカット形式の繰り返し感」は完全には払拭されていない。ただし「MILLIONAIRE」のように終盤に向けて明確に負荷が増すアルバムの設計は、Vol. 1より意識的なシーケンスを感じさせる。「ONE TIME」から「RACE TO AN M」「BREAK THE BANK」「MILLIONAIRE」へと続く最終4曲のグラデーションは、このアルバムのハイライトだ。

よくある質問(FAQ)

Q. VeezeはConcrete Boysのメンバーになったのですか?

正式なメンバー加入ではありません。ただし『It’s Us Vol. 2』は「Concrete Boys & Veeze」名義でリリースされており、全17曲にわたる対等なコラボレーションです。ゲストフィーチャリングを超えた扱いが与えられています。

Q. 「ONE TIME」はアルバムの先行シングルですか?

いいえ。「ONE TIME」は2026年2月27日リリースの『It’s Us Vol. 2』(全17曲)収録の14曲目です。先行シングルとして独立したプロモーションはされていません。Yachtyとのコラボ先行シングルとしては「Sorry Not Sorry」(2024年8月)、「Can’t Be Crete Boy」(2025年4月)が存在します。

Q. Concrete Boysの現在のメンバーは?

Lil Yachty、Draft Day、Camo!、Dc2trill、Honestの5名です。Vol. 1に参加していたKarrahbooはグループを離脱しており、HonestがVol. 2から新たに加わっています。

Q. Veezeとは何者ですか?

本名Karon Malcolm Vantrees、1995年2月28日生まれ。デトロイト西部・セブンマイルロード出身のラッパーです。2019年のデビューミックステープ「Navy Wavy」で注目を集め、2023年にWarner Recordsと自身のNavy Wavyレーベルを通じてリリースした『Ganger』がBillboard 200・97位にランクイン。Washington Postから「その年最高のラップアルバム」と評されました。Lil Uzi Vert、Babyface Ray、Lil Yachtyと共演歴を持ち、独特のかすれたデリバリーと笑いとシリアスが交錯するバーでデトロイトシーンを代表する存在です。

Q. 『It’s Us Vol. 1』と本作の違いは?

Vol. 1(2024年4月5日)は16曲・47分、メンバーはYachty、Karrahboo、Draft Day、Camo!、Dc2trillの5名でした。Vol. 2はVeezeという外部の強力なアーティストをほぼ共同名義で迎え、17曲・55分37秒と規模を拡大。Karrahbooの離脱とHonestの加入というメンバーチェンジも経た、より成熟した第2章です。

『It’s Us Vol. 2』をSpotifyで聴く:

ONE TIME — Spotifyで再生

参考・出典

本記事の楽曲・アルバム評価は編集部の分析に基づくものであり、アーティストの公式見解を代表するものではありません。情報は2026年2月28日時点のものです。