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Boldy James × Rome Streetz「Hot Plate」レビュー|東西ストリートラップの交差点

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Boldy James × Rome Streetz「Hot Plate」レビュー|東西ストリートラップの交差点
Hot Plate - Boldy James & Rome Streetz
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Text by HIPHOPCs編集部|2026-02-27

Boldy JamesとRome Streetzによる初の正式デュオEP『Manhunt』が、2026年2月27日に1301 LLC / New 11 Records / Mass Appealよりリリースされた。「Hot Plate」はその2曲目(0:34のイントロに続く実質的な1曲目)に位置し、全7曲・18分13秒というコンパクトな本EPの幕を開ける。デトロイトとロンドン生まれのクイーンズ育ち——二つの都市の語り部が、削ぎ落としたプロダクションの上で交差する瞬間だ。

EP『Manhunt』の全体像

本作は2人にとって初の本格的なデュオ作品だが、過去には「Open Door」「Serving」などで既に共演しており、今回はその化学反応を全面展開した形だ。プロデューサーはNicholas CravenとChuck Strangersが中心を担い(各曲クレジットは後述)、ドラムレスのソウルサンプルを基調とした音像設計が本EPの骨格となっている。

全収録曲リスト

01. Intro(0:34)/02. Hot Plate(2:20)/03. Like Biggie Did(3:48)/04. Tricky(3:01)/05. Only One(2:22)/06. Cheat the Grind(3:00)/07. Manhunt(3:08)——合計7曲、18分13秒。レーベルクレジット:© ℗ 2026 1301 LLC / New 11 Records / Mass Appeal。

各曲のプロデューサー

判明している制作クレジットは以下の通り。「Hot Plate」はDenny LaFlare制作のドラムレスサンプル。「Like Biggie Did」はNicholas Craven制作のチップマンクソウル。「Cheat the Grind」はChuck Strangers制作で、Boldy Jamesが同プロデューサーと組んだ傑作『Token of Appreciation』(2025年2月)と地続きのサウンドを持つ。「Only One」もNicholas Cravenが手がけており、EP内で最も評価が高いトラックだ。

二人のMCについて

Boldy James:デトロイトの記録者

本名Boldy James Lowe Jr.、デトロイト出身。The Alchemistとのコラボ作『Bo Jackson』(2021年)で批評的高評価を確立し、以降もNicholas Craven(『Fair Exchange No Robbery』)、Chuck Strangers(『Token of Appreciation』)、Sterling Toles(『Manger on McNichols』)、Harry Fraud(『The Bricktionary』)など、シングルプロデューサーとの一対一の緊張関係を積み重ねてきた。感情を排したフラットなモノトーンのデリバリーが特徴で、取引の細部を領収書のように読み上げる語り口は、本EP「Hot Plate」でも健在だ。2025年だけで複数プロジェクトをリリースした多作家で、『Manhunt』EPはその直前の『Salvation for the Wicked』(Nicholas Craven・Ransom参加)から約1週間後に届いたものだ。

Rome Streetz:ロンドン生まれ、クイーンズ育ちのGriselda砲

本名Jerome Allen、1986年生まれ。ロンドンでジャマイカ系の両親のもとに生まれ、幼少期にニューヨーク・クイーンズ(エルモント、ジャマイカ地区)へ移住。10代でロンドンに戻り、成人後に再び渡米してブルックリンを拠点にした。この3都市を往復した生い立ちが、ブームバップとグライムが混在する独自のスタイルを生んでいる。DJ MuggsとのコラボEP『Death & The Magician』(2021年)でアンダーグラウンドに足がかりを作り、Westside Gunn主宰のGriselda Recordsと2021年に契約。レーベル第1弾作品『KISS THE RING』(2022年)はRolling Stoneの2022年ベストラップアルバム23位、Pitchforkは7.3点を付けた。2025年にはConductor Williamsとの『Trainspotting』(Mass Appeal)をリリースし、本EPはその延長線上に位置する。

「Hot Plate」を聴く

ドラムレスの音像が作る緊張感

Denny LaFlare制作の「Hot Plate」は、ドラムパターンを持たないサンプルループの上に2人のバースが乗る構成だ。空白こそが圧力になる——このアプローチはEP全体を貫くテーマで、装飾を排した音像がリリックの密度をそのまま前面に押し出す。Boldy Jamesは「プラグに逃げること」「手のひらに積み上げた汚れ」を淡々と羅列し、Rome Streetzはキロ単位の取引、課税、手売りからブリック販売へのキャリアの移行を直截に語る。感情の起伏はない。あるのは、ルーティンを読み上げる声だけだ。

二人の対比——静と動

同じストリート・リアリズムを語りながら、二人のスタンスは鮮明に異なる。Boldy Jamesは「すでに何度もこの道を通ってきた人間」として話す。Rome Streetzは「まだ証明が必要だと思っている人間」として話す。前者は同じ作業を繰り返しすぎてマイルストーンを刻まなくなった者の声で、後者は証明を惜しまない者の声だ。この非対称さが「Hot Plate」に単なる共演以上の緊張を生んでいる。

EP『Manhunt』における「Hot Plate」の位置づけ

EP全体でみると、「Hot Plate」はイントロ(0:34)直後のアンカーとして機能する。続く「Like Biggie Did」がNicholas Craven制作のチップマンクソウルで感情の幅を広げ、「Only One」でEP最良のバースが出現し、「Manhunt」でマフィア的な締めくくりを迎える——という流れの中で、「Hot Plate」はこの世界観の基準値を設定する役割を担う。

なお「Tricky」(トラック4)はSpotifyクレジット上は両名連名だが、実質Rome Streetzのソロカットで、ブームバップのフレアでAMGを飛ばすRome単独の見せ場となっている。

グリゼルダ以降のアンダーグラウンドにおける本作の意味

Westside GunnがGriselda Recordsで作り上げたロスターは、今や個々のアーティストが独自のラベルや外部プロデューサーとのコラボを展開する段階に入っている。Rome StreetzがConductor Williamsと組んでMass Appealからリリースし、Boldy JamesがChuck Strangersやハリー・フロードと一対一の作品を重ねているように、「グリゼルダ産」という括りを超えてシーン全体を横断する存在になりつつある。『Manhunt』EPはその文脈で、2人が初めて「対等なデュオ」として向き合った記録だ。

USヒップホップのアンダーグラウンドにおいて、18分でここまで密度の高いステートメントを出せるアーティストは多くない。本EPは完成度より即興性を、スケールより密度を選択した作品であり、その選択自体がBoldyとRomeの美学を体現している。

HIPHOPCs編集部による総合評価

評価できる点:ドラムレスのサンプルループという音像設計が一貫しており、18分という尺の短さが弱点ではなく強みになっている。「Only One」でのBoldy・Romeのバースはそれぞれのキャリアでもトップクラスのラインが出ており、Nicholas Cravenのプロダクションとの化学反応が際立つ。「Hot Plate」のDenny LaFlare制作のトラックは、2人の非対称なデリバリーを最も素直に浮かび上がらせる設計だ。

課題となる点:18分はリスナーが深く没入するには短い。デュオ作品として「Only One」と「Manhunt」以外の曲ではRomeがBoldyの文体に引き寄せられる場面もあり、それぞれの個性の衝突よりも同化が優先されている印象を受ける場面もある。「Tricky」の実質ソロ構成は、EP全体のデュオとしての一体感をやや分断する。

90年代ニューヨークのブームバップとデトロイトのストリート・メモワールを愛するリスナー、リリックの密度を最優先するリスナーには必聴。初めてこの2人を聴く場合は、本EPを入口にBoldy Jamesの『Bo Jackson』、Rome Streetzの『KISS THE RING』へと遡るルートを推奨する。

よくある質問

「Hot Plate」のプロデューサーは誰ですか?

Denny LaFlareが手がけたドラムレスのサンプルトラックです。EP内では他にNicholas Craven(「Like Biggie Did」「Only One」)、Chuck Strangers(「Cheat the Grind」)がプロデュースを担当しています。

EP『Manhunt』の収録曲数と時間は?

全7曲、18分13秒です。トラックリストはIntro(0:34)、Hot Plate(2:20)、Like Biggie Did(3:48)、Tricky(3:01)、Only One(2:22)、Cheat the Grind(3:00)、Manhunt(3:08)。レーベルは1301 LLC / New 11 Records / Mass Appeal。

Boldy JamesとRome Streetzの過去のコラボ曲はありますか?

はい。本EP以前にも「Open Door」と「Serving」で共演しています。今回の『Manhunt』はその関係を発展させた初の本格的なデュオ作品という位置づけです。

Rome Streetzはどこ出身ですか?

ロンドン生まれ(ジャマイカ系の両親)で、幼少期にニューヨーク・クイーンズへ移住、10代にロンドンへ一時帰国後、成人してブルックリンを拠点にしています。このロンドン〜クイーンズ〜ブルックリンという経歴が、ブームバップとグライムが混在する彼の音楽的個性を形成しています。

「Hot Plate」をSpotifyで聴く:
Boldy James & Rome Streetz – Hot Plate (Spotify)

EP『Manhunt』をSpotifyで聴く:
Boldy James & Rome Streetz – Manhunt (Spotify)

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本記事の楽曲解釈は編集部の印象に基づくものであり、アーティストの公式見解を代表するものではありません。