いよいよ間近に迫ってきましたね。国内最大級のヒップホップフェス『Pop Yours』が!
今年で5周年を迎えるこのイベント、今回は4月3日、4日、5日の3日間にわたって開催されます。
アーティストラインナップは豪華も豪華。
千葉雄喜やKEIJU、LANA、eyden、ANARCHYといった既にメインストリームで名を轟かせているアーティストはもちろんのこと。昨年『Rapstar』で見事王座を勝ち取ったPxrge Trxxxperや、ユーモアのあるリリックにより世間を賑わせたWorldwide Skippa、驚くべき速度でスター街道を駆け上がったLittyなど、新進気鋭の若手もピックアップされています。
改めて見てみると、日本のヒップホップシーンの急激な成長をひしひしと感じることができますね。
確かに、ラインナップに気を取られてしまうのはわかりますわかります。
が、私が注目すべきだと思うのは、2年前から恒例となっている『POP YOURS』オリジナル楽曲の存在です。
『POP YOURS』が提示する日本のヒップホップとは
前述の通り、オリジナル楽曲自体は2年前から作られていました。最初の楽曲はBonbero、LANA、MFS、Watsonによる「Makuhari」。
この楽曲はとてつもないバイラルになっていましたよね。皆さんにとっても、まだまだ記憶に新しいと思います。
その後もイベント開催に先駆けてシングルが毎年リリースされ、ヒット曲を生み出してきました。LEXとLANAの「明るい部屋」、Kohjiyaと唾奇による「Page One」が代表例として挙げられるでしょう。
それらの楽曲の多くで、ラッパーたちは「大きなステージに上がるまでの道のり」を歌っていました。“私たちと同じような場所からスターに成り上がった”。今までも彼らが伝えようとしていたメッセージは、しっかり伝わっていたんです。
確かに、伝わっていた。
で・す・が、今年の楽曲のメッセージ性は一段と強い。これほどまでに“ラッパー”というキラキラした存在が雲の上ではなく、横に立ってくれていると感じたことはありませんでした。
感涙、盛りなしで出ました。完全に個人的な感想ではあるのですが。
今回の『POP YOURS』が前面に押し出してきているのは、「かつてスターたちは私たちと同じ存在だった」というメッセージだと、個人的には感じています。
きっとすでに楽曲をチェックした人ならわかるはずです。聴けばわかる。聴けば聴くほどわかってくる。
というわけで、現時点でリリースされているオリジナル楽曲のレビュー、そしてそこから見えてくるメッセージを考察していきます。
「STARLIGHT」by Kianna、HARKA、AOTO、Siero
あくまでも個人的にですが、この楽曲「STARLIGHT」が今年の『POP YOURS』のハイライトになるんじゃないかと予想しています。
もう一言しか出てこない。素晴らしい。
メンツに始まり、リリックもフロウもビートも全てが…何というか、希望に満ちているんです。
ビートプロデュースはKM。言わずと知れたヒットメイカーですね。彼名義の作品を聴いたことがある人ならわかると思いますが、作曲センスはもはや変態の域。「リズムどこで取ってんの?」みたいな変則的なドラムが印象的で、メロディもオルタナティブ。ジャンル分けしようがない、圧倒的にオリジナルなビートメイカーです。
が、今回はイベントオリジナルということもあってか、『Rapstar 2024』のような“人を選ぶビート”ではありません。4人それぞれが乗りやすい、ポップな仕上がりになっています。
とはいえ、彼特有のバウンス感はしっかり残っている。聴きやすいのに変態性が消えていない。このバランス感覚ですよ。普通に脱帽です。
そして、最初に耳に飛び込んでくるのはKiannaのフック。
とにかくオートチューンの使い方が上手い。キャッチーなフロウを作るセンスが抜群で、一度聴けば自然と口ずさんでしまうはずです。
さらに彼は3バース目も担当しているのですが、そこではアングラ節が炸裂しています。ギリギリを攻めながらも、外れきらない絶妙なビートオフ。この技術、今アングラシーンでは主流になりつつありますが、Kiannaはそれをかなり高いレベルで成立させています。
元々ダンスをやっていたという背景もあってか、やはりリズムの取り方が独特なんでしょう。
彼は今年、『UDG Fresh Cypher 2026 JPN』で披露した「Blah Blah」によって一気に注目を集めた新星。というより、もはや神童です。
その余波は国外にも広がり、なんとYeの娘であるNorth Westのプレイリストにも食い込んでいました。
今回、個人的に一番驚いたのは、この『POP YOURS』のオリジナル楽曲に彼が参加していることでした。大型イベントの楽曲となれば、メインストリーム中心になると思っていたので…。
アングラから一気に跳ね上がった彼の存在は、今まさに何者でもない若者たちにとって、大きな希望になっているはずです。
1バース目を担当するのは、和歌山出身のHARKA。
やはりライミングスキルが抜群に高い。和歌山独特のフロウに乗せてトントンと踏んでくるので、とにかく気持ちよく聴けるんです。
「音とシンクロオレサーナイト」
ここ、ポケモン勢は思わず反応したはず。しかも、しっかり完踏みまで持ってくる。
「サナギから孵化今蝶、さあさあ皆で歌いましょう」
TofuやMIKADOのライブに食らってラップを始めた彼。元々はサナギだったかもしれませんが、今はまさに孵化直前。幕張のステージに立つという事実が、それを証明しています。そして、
「ゴールテープ切ったらまたStart line」
ここが重要。ゴールは終わりじゃない。次のスタートに過ぎない。
「成功したラッパー=楽してる」みたいなイメージを持つ人もいるかもしれませんが、実際は真逆。努力の連続です。HARKAもその一人で、結局は自分たちと同じ場所から積み上げてきた人間なんです。
続いては、AOTO!
『Rapstar』を経て、彼は明らかに一段階進化しています。元々はオルタナ寄りのサウンドを作っていた彼ですが、最近は明確に“日本語を聴かせにきている”と思いますね。
2月にリリースされたアルバム『Kiss My Life』でも、その変化は顕著でした。同アルバムもリピ確間違いなしの名作なのですが…。
はい、わかりましたよ。「STARLIGHT」に戻りますよっ。
「挨拶代わり頭ブロンド」
完全にトレードマークを手に入れましたね。あのブロンド、もう彼のものです。なぜか成立してしまう。キザなのに嫌味にならない。このバランス、なかなか出せるものじゃない。
「俺の腰回りビッチFENDI、物足りない、重てえやつ、重てえやつをくれ」
*おそらく千葉雄喜からのサンプリング
圧倒的な自信が感じ取れるでしょう。ただ、それだけじゃない。
彼は過去に精神的な問題に悩まされていたこともある。だからこそ、その言葉の裏にある“積み上げてきた時間”が透けて見えるんです。
「バチカでやるみたいかませる/変える1day根拠errday」
表に見えるのは強さ。でも奥にあるのは、不安や孤独を知っている人間のリアル。でも、暗部はひた隠しにして、自身の思うカッコいいを見せ続ける。そこがたまらなく人間臭くて…すち♡。
そしてラスト、Siero。ここで完全にやられました。
「小学校追ってたサッカーボールはイナイレに憧れてたけどダメで、指パッチンできないし止まらないTime」
平成男子、ここで確実に刺さる。『イナズマイレブン』の亜風炉照美に憧れて指パッチン練習した人、多いはずです。でも現実は違う。「ヘブンズタイム」なんて発動できないし、超人的な力が手に入る「神のアクア」も存在しない。私たちは主人公じゃなかった。Sieroもそうだった。でも、彼は過去を否定しない。さながらアツヤを受け入れた吹雪士郎のように。
「だけどそれで良いとありのままに/全部俺、ニキビを映す鏡」
そして、かつて彼は私たちと同じ時間に、同じ場所で、同じ景色を眺めていたのです。
「カツカツで買った一般チケット、若干後悔してるdrinkを持ってBADHOP - Friends、ステージで叫ぶ、必死に撮影、ちょっと前まで俺もそこにいたんだぜ」
ここが全て。ほんの少し前まで観客だった人間が、今はステージに立っている。この距離の近さが、とにかくリアルなんです。そして極めつけ。
「どうしようもないくらいダセェ時もある、それが人間だと思う」
これ、完全に救いの言葉です。今はダサくてもいい。その時間すら過程にできればいい。最終的にカッコよくなれればいい。それが人間だ、というメッセージ。
この楽曲を通して感じたのは、「ラッパーは特別な存在ではない」ということでした。
彼らもまた、自分たちと同じ場所から始まっている。だからこそ、この「STARLIGHT」を聴いている間、4人が隣に立ってくれているような感覚になるんです。
ヒップホップって、やっぱりすごいカルチャーです。ありがとう。感謝。
1曲目なのに書きすぎました。このまま3曲続けると、さすがに情報量が多くなりすぎるので、今回はここまで。次回は「こんな日は」「違う」について、しっかり語っていきます。
お楽しみに〜。ではでは後編で。
