⚠︎まずはじめに近年のヒップホップシーンを分析するうえで、ランキングやデータの「出どころ」を理解しておくことは欠かせない。本記事では、前回取り上げたSpotify公式のエディトリアル・プレイリストRapCaviar と、SNS上で影響力を持つデータアグリゲーター Hip Hop All Day の情報を併用しているが、両者は性質の異なる指標である。
RapCaviarはSpotify内部のデータと編集方針に基づいて構成された、Spotify自身が示す評価軸であるのに対し、Hip Hop All Dayはストリーミング動向をもとに独自に数値を集計・可視化した指標だ。特にHip Hop All Dayの数値は公式統計ではなく推定データであるため、本記事ではその特性を踏まえ、RapCaviarの公式的な視点と対照しながら読むための参考情報として位置づけていただきたい。⚠︎
さて。怒涛の2025年が過ぎ2026年を迎えたわけだが、早速Hip Hop All DayがSpotifyでストリーミングされたラップアルバムランキングを発表したので紹介する。どうやらこれが「最終版」だそうだ。
社会現象にもなったKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)の『GNX』のストリーミング再生回数は、なんと29億8000万回。カルト的な人気を博したPlayboi Carti(プレイボーイ・カルティ)の『MUSIC』は21億6000万回のストリーミング再生回数を記録した。
3位はTyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)の『CHROMAKOPIA』で、続いてKanye West(カニエ・ウェスト)の『Graduation』、またまたKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)の『DAMN.』、Doechii(ドーチ)の『Alligator Bites Never Heal』、Travis Scott(トラヴィス・スコット)の『UTOPIA』となっている。
Drake(ドレイク)の『Views』は8位、またまたTravis Scott(トラヴィス・スコット)の『ASTROWORLD』は9位、Metro Boomin(メトロ・ブーミン)の『HEROES & VILLAINS』が10位でトップ10を締めくくっている。
その他、今年リリースされたアルバムでトップ50にランクインしている注目すべき作品には、Central Cee(セントラル・シー)の『Can’t Rush Greatness』、Lil Tecca(リル・テッカ)の『DOPAMINE』、Lil Baby(リル・ベイビー)の『WHAM』などがある。
- #1: GNX — 2.98b
- #2: Music — 2.16b
- #3: CHROMAKOPIA — 1.66b
- #4: Graduation — 1.50b
- #5: DAMN. — 1.45b
- #6: Alligator Bites Never Heal — 1.39b
- #7: UTOPIA — 1.39b
- #8: Views — 1.35b
- #9: ASTROWORLD — 1.31b
- #10: Heroes & Villains — 1.29b
- #11: The Eminem Show — 1.29b
- #12: Take Care — 1.23b
- #13: Goodbye & Good Riddance — 1.13b
- #14: Get Rich Or Die Tryin’ — 1.12b
- #15: Black Panther OST — 1.10b
- #16: good kid m.A.A.d city — 1.08b
- #17: ? — 1.07b
- #18: Certified Lover Boy — 1.04b
- #19: For All The Dogs — 960m
- #20: More Life — 948m
- #21: Scorpion — 936m
- #22: Flower Boy — 927m
- #23: 17 — 912m
- #24: HARDSTONE PSYCHO — 860m
- #25: My Beautiful Dark Fantasy — 829m
- #26: TAKE CARE — 827m
- #27: Love Sick — 827m
- #28: Can’t Rush Greatness — 825m
- #29: We Don’t Trust You — 824m
- #30: 2014 Forest Hills Drive — 792m
- #31: 2001 — 782m
- #32: Marshal Mathers LP — 754m
- #33: Birds In The Trap — 730m
- #34: The Heist — 725m
- #35: Luv Is Rage 2 — 712m
- #36: Shoot For The Stars… — 712m
- #37: One Of Wun — 690m
- #38: Legends Never Die — 679m
- #39: Recovery — 676m
- #40: Dopamine — 673m
- #41: A Great Chaos — 642m
- #42: Mr. Morale & The Big Steppers — 638m
- #43: We Love You Tecca — 639m
- #44: Death Race For Love — 623m
- #45: Camp — 620m
- #46: Whole Lotta Red — 615m
- #47: WHAM — 608m
- #48: Dark Lane Demo Tapes — 607m
- #49: Encore — 603m
- #50: All Eyez On Me — 603m
やはり気になるのは、2025年にリリースされたアルバムではなく、往年の名作たちがチラホラ散見される点である。それだけ根強い人気を誇っているのだろう。またこの結果は、新作ヒットの苦戦を反映しているともいえる。
今年の新作に期待したい!
なお、本ランキングはあくまでHip Hop All Dayによる推定データをもとにした参考指標であり、Spotify公式の評価軸ではない。一方で、RapCaviarのような編集的プレイリストでは捉えきれない「旧譜を含めた実際の聴取傾向」や「日常的に再生され続けている作品群」を可視化している点は、本データの大きな意義でもある。公式指標と推定データ、その両方を並べて読むことで、2025年のヒップホップがどの作品によって“語られ”、どの作品によって“支えられていたのか”が、より立体的に浮かび上がってくるだろう。
