Daz Dillinger『Im Daz Dillinger』は、西海岸ヒップホップの重鎮が自らの名を冠したタイトルに込めた、ストリート感とベテランの貫禄が交錯する一曲だ。1990年代のDeath Rowレーベル時代から第一線で活躍してきたDazらしく、このトラックにはG-Funkの系譜を受け継ぎながらも現代的なプロダクションを取り入れた、一言でまとめれば「西海岸ヒップホップの正統進化形」とも呼べるサウンドが広がっている。プレイリスト向きの一曲としても、シーンにおける彼の立ち位置を再確認させる重要なトラックと捉えられる。
ビートはミッドテンポでありながら重厚感があり、低音域を支配するベースラインが終始安定したグルーヴを生み出している。ドラムの鳴りは硬質でスネアの抜けがよく、ハイハットのパターンには現代的なトラップ以降の流れも感じさせるが、全体のサウンドの質感は90年代西海岸ヒップホップ的なアナログ感を保っている。シンセやキーボードの使い方も派手すぎず、Dazのラップを引き立てる構成になっており、プロデューサーとしても名高い彼の音作りへのこだわりが窺える仕上がりだ。
ラップのフロウは落ち着いた低音の声質を活かしたレイドバックしたスタイルで、無駄な力みがなく言葉をビートに乗せていく。メロディアスというよりは、リズムとライミングの正確さで聴かせるタイプのラッパーらしく、韻の踏み方にも西海岸特有のスムーズさがある。フック部分も耳に残りやすく、「Im Daz Dillinger」という自己言及的なフレーズの反復が、リスナーに彼のアイデンティティを強く印象づける構造になっている。リリックのテーマは自身のキャリアやストリートでの実績、そして揺るがない自信といったトーンが中心で、Daz Dillinger 新曲としてベテランラッパーの貫禄を示す内容と感じさせる。
この曲は深夜のドライブや、ひとりでリラックスしながら音楽に浸りたいチルタイムに最適だろう。また、90年代西海岸ヒップホップを愛するリスナーはもちろん、現代のトラップやドリルに慣れた若いリスナーにとっても、ルーツを知るための重要な一曲としてプレイリストに加える価値がある。Im Daz Dillinger 解説として語るべきは、この楽曲がDazのキャリアにおいて自己の確立と継続性を改めて宣言するフェーズを示しているように聞こえる点だ。シーン全体の中では、ベテランが現代の音像を取り入れつつも自らのスタイルを守り続ける姿勢を体現している。