SEEDA『Kawasaki Blue』|レビュー&解説

    Text by HIPHOPCs編集部

    『Kawasaki Blue』は、都市の夜景を思わせるメロウなビートと洗練されたフロウが印象的なヒップホップトラックだ。クールな質感の中に熱を宿す新曲として注目したい。Spotify上の表記では2025年3月21日リリース。

    トラックの幕開けから耳を捉えるのは、深く沈み込むようなキックと、空間に広がるシンセパッドの響きだ。ベースラインは主張しすぎず、それでいて楽曲全体のグルーヴを下支えする絶妙なバランスで配置されている。『Kawasaki Blue』というタイトルが示唆するように、どこか工業都市の夜を彷彿とさせる無機質さと、そこに息づく人間味が同居したサウンドスケープを描き出しているように聞こえる。

    ボーカルは落ち着いたトーンを基調としながらも、要所で緩急をつけたフロウが光る。声質はやや低めで、言葉の一つひとつを丁寧に置いていくようなライミングが特徴的だ。メロウなビートに寄り添いながらも、決して埋もれることなく存在感を放っている。このラッパーの表現力が、トラック全体の説得力を高めていると感じさせる。

    リリックの世界観は、都市生活における孤独や内省を描いているような印象を受ける。具体的な物語というよりも、断片的なイメージや感情の連なりとして展開されているように聞こえ、聴き手それぞれの解釈を許容する余白が残されている。深夜のドライブや、一人で過ごす部屋の中で再生すると、その空気感がより鮮明に立ち上がってくるだろう。終電後の街を歩きながら聴くのも似合いそうだ。

    この新曲は、派手なドロップで攻めるタイプの楽曲とは一線を画し、じっくりと浸れる作品に仕上がっている。ヒップホップというジャンルの中でも、内省的かつ映像的なアプローチの系譜にあるように聞こえる一曲だ。青という色が持つ冷たさと深さを音で体現したかのような本作は、聴き込むほどに新たな発見がありそう

    Spotifyで今すぐ聴く