うかうかしてる間に始まってました『POP YOURS』…。現地にいる皆様、楽しんでいることと思います。
今回は前回に引き続き、今年の『POP YOURS』オリジナルソングを徹底レビュー!そこから楽曲が意味するメッセージを読み解いていきたいと思います!
「こんな日は」by LANA、Elle Teresa
もう女の子が大好きな「kawaii」を詰め込んだ、宝石箱みたいな曲ですよねこの曲は。この楽曲におけるLANAとElle Teresaは“Bad Bitch”ではなく、“Princess”です。
何故こんなにもPrincess味を感じるのか。それはこんなリリックが綴られているからでしょう。
「Fame & MoneyよりLove & Berry」
コレェぇぇぇ!まじでこれ。ラブベリーですよ!?共感しまくって頭ギャン振りしてる平成の民、集まってくれ。懐かしいですねぇ。
しっかり「ムシキング」世代だった私には見覚えがありすぎるアーケードゲームですよ。当時のゲーセンとかトイザらスには、「ムシキング」と「ラブベリー」の筐体が並んでたはず。実際、ムシキングの女の子版として開発されたという経緯もあったらしいですよ(余談ですが)。
今は大人の女性になったLANAにも「ラブベリー」で遊んでいた無邪気な女の子の時期があったと思うと、「こんなに立派になって…」みたいな親心のような感情がじわじわと浮かんできますよね。
ですが、子供だった彼女は成長し、ヒップホップに出会い、大人な女性に憧れるようになります。
「『大人の女性に憧れ』って歌詞に憧れつけたCoco Chanel」
これは完全に2017年のElle Teresaの楽曲「CHANEL」からのサンプリングですね。
懐かしいぃぃぃ。それこそ私がヒップホップを聴き始めたトラップ全盛期である2017年だったので、かなり思い入れがありますね。恐らくこの楽曲はKodie Shaneの「Drip On My Walk」リスペクトだと思うのですが、私的にはビートのキラキラ感とキャッチーなフックが歌いやすい「CHANEL」の方が好きだったりします。
あくまでも現時点でですが、SoundCloud上におけるLANAの1番古い楽曲は2020年の「HATE ME」(これもマジで懐かしいですね)。
ということは、Elle Teresaの存在がLANAがラップを始めるきっかけの1つだったと言っても過言ではないわけです。そんな2人が今は同じ幕張に立ってるんですよね…。王子様不在のシンデレラストーリーが完成してしまいました。
そしてElleのバース。説明的なリリックが少なく、メタファーが多いので「このリリックはこういう事だ!」とは言い切れないのですが…。
なんでしょうね。「私もただの女の子なの」と訴えかけてくるんです。彼女も一見強そうに見えて、やっぱり中身は女の子なんですよね。
「つけま必要愛、ママからお弁当/なんか心の壁がウォールマリア/ふわふわ体は雲丹、巻く海苔」
恐らく、彼女もラップゲームを生き抜かないといけない以上、武装しているんでしょう。つけまもその装備の1つ。加えて、内臓丸出しじゃ食べられてしまうから、好きなOutfitという海苔を巻いてステージに上がっている、そんなイメージです。
2016年から現在まで活動し続けているElle Teresaって若々しいが故に忘れがちですが、なんだかんだで結構OGなんですよね。だって、雑誌『WOOFIN』がまだ存在していた時期からシーンに身を置いているのですから。
今に至るまでに様々な声を浴びてきたことが伺えます。それでもなおシーンを引っ張り続けている彼女の偉大さは計り知れません。
「こんな日は肩を並べて、似たもの同士おんなじ景色へ、こんな日は」
2人のバースを見た後に改めてフックを聴くと、より深みが増すと思います。そう、みんな似たもの同士なんです。
ステージにいる2人も、ステージを見守るオーディエンスも、結局はヒップホップという音楽を愛してしまった同じ穴のムジナなんですよね。「1人じゃない」と思わせてくれる、すごくいい曲です。
続いてはー?
「違う」by Daichi Yamamoto、MIKADO、NENE
私個人の感覚として、この「違う」というフレーズは2通りの意味があると思います。
ラッパーとして成功を収めたことを誇示するFlexとしての「違う」、そして人間1人1人全員が唯一無二であるという意味での「違う」、この2つですね。「違うけど否定はしない、俺らと同じだと思うなら上がってこい」と背中を押してくれるような楽曲です。
まず、MIKADOのバース。軽く乗りこなしているように見えるんですけど、ちゃんと彼にしか吐けない言葉で埋め尽くされているんですよね。
「分からない普通、なりたくない普通、蹴り飛ばしてやるマルジェラの靴で、悔しい思いもしたからね」
彼の「分からない普通」という言葉はかなりリアルですよね。父親の命が奪われてしまったという壮絶な過去を持つ彼にとって、いわゆる一般的な「普通」とは明らかに違う。
そして今はシーンの最前線にいるMIKADOですが、彼も最初から順風満帆だったわけではありませんでした。過去の映像を見てみると、今とはスタイルも雰囲気もかなり違っていて、模索していた時期があったのが伝わってきます。
それでも折れずにブースに籠り続けた結果、今では“現象”と呼べる存在になったわけです。
「誰かの年収もpayする1ヶ月/We’re Phenomenon」
言ってみたいセリフTOP3には入りますよねこれ。「お前の年収が俺の月収」ってやつ。そしてそれが大げさに聞こえないのがすごい。積み重ねてきたものがあるからこそ、言葉にちゃんと重みがあるんですよね。
次はNENE。今回の姐様はもう止まらないです。ギラギラなバイブスが全開のバース。
「外野のpussy bitch共、ガヤはシカトして続けてる、メールフィメールとかいないそんな次元/普通の主婦じゃない外でかます5 Star Wife/競争してない独走、この口と足は止まらない」
この楽曲のMVPは間違いなくNENEだと思います。止められないです。
確かに、昨年1番oppsを増やしたラッパーの1人でしたよね。ちゃんみなとHANAに対するディス曲「OWARI」はかなり話題になりました。
当時、YouTubeに転載されていたNENEと渡辺志保さんのインタビューのコメント欄が荒れに荒れていたのを覚えています。ヒップホップという文化への理解がまだ浅い日本だからこその反応でもあったとは思うのですが…。
正直、「いや的外れだし叩きすぎじゃね?」っていうのが個人的な感想でした。エンタメとしてシーンを盛り上げる動きでもあるのに、本気で潰しにいく流れはちょっと異様でしたね。
でも、そんなことで折れる人じゃないんですよね姐様は。ガヤはシカトして進み続ける。だからこそ、今もなお前にいる。
日本におけるBad Bitchスタイルのパイオニアは間違いなくNENE。その時点で、すでに「違う」存在です。
最後にDaichi Yamamoto。彼のリリックすごい好きです。恐らく、違和感を感じていた自身の幼少期における原体験を反映してくれたのでしょう。違和感について具体的に説明してはいないものの、You Dig?分かりますよね。
「小さな頃から周りと違う、同じに憧れてお揃い欲しがる、まぁ結局チャーハンとピラフぐらいの違いでしょ、ずっと隣の色を見ている芝生」
そうなんですよね。人と人の違いなんて、実はそれくらいの差だったりする。でも、それに気づくまでには時間がかかる。大人になってから気づいた人もいるでしょうし、未だに苦しんでいる人もいるかもしれない。
Daichiはそんな人たちを先導し、答えへ導こうとしてくれるんですよね。
「違いたいとか案外、小さな問題right?真似から始まりここにいる」
何事も真似から始まるとはよく言います。彼のラップも最初はそこから磨かれてきたはずです。このリリックは優しさと同時に、「違いたいなら努力しろ」という厳しさも含んでいるように感じます。
結果、3人とも努力人なんですよね。「人は元から違うけど、その中でさらに違いを作りたいなら、自分で積み上げろ」と言ってくれている。是非戦いの前に聴きたい曲ですね。
『POP YOURS』オリジナルソングが示すメッセージとは?
さて、今回は「STARLIGHT」「こんな日は」「違う」についてレビューしました。その上で、これらの楽曲が示すメッセージについて結論を出していきましょう。
それは「ラッパーもリスナーも結局は同じ人間である」ということですね。(あくまでも私個人の結論とはなってしまいますが)
どの楽曲においても、アーティストたちがアーティストではなかった当時の姿が目に浮かぶようでした。私たちが普段何気なく目にしている場所で、かつて何者でもなかった彼らが同じように息をしていた。
是非その姿を想像して、自分と重ね合わせてみてください。…どうですか?めっちゃ普通の人間ですよね。
そんな普通の人間が、今は幕張という大舞台で人々に希望を与えている。そう思うと、私たちも何にでもなれる気がしてきますよね。
皆さんもそれぞれの楽曲から、自分なりのメッセージを受け取ってみてください。そして、自分の人生のバイブルにその言葉を刻み込んでほしいです。
ヒップホップの魅力って、やっぱりそういうところにあると思います。
ところで、まさかのもう1曲が追加されましたね!
昨年ラッパーとしての活動に区切りを付けることを宣言したTohji、そしてgummyboy、BIM、kZmによる「246」がイベント開催間近に公開されました。
なんというか、この楽曲がリリースされたことで、日本のヒップホップシーンの歴史に1つのピリオドが打たれたような気がしています…。普通に感慨深いです(泣)。
この楽曲についてはTohjiの引退も絡んでくるので、語らなければいけないことが多すぎる。
なので、Tohjiの歩みにフォーカスした回を後ほど執筆したいと思います。そのときにしっかり語ります。
最後までお読みいただきありがとうございました!では、またTohji回で。
この記事を書いた人
Lucie(HIPHOPCs)
2017年のSoundCloudラップ全盛期にヒップホップと出会い、以来どっぷり。HIPHOPCsではニュース記事の執筆に加え、Noah Ezraへの独占インタビューも担当。リリックを読み解くのが好きで、アーティストの言葉の奥にあるストーリーを掘り起こすことを大切にしている。
