2026年6月19日(金)、Tiji Jojoが日本武道館でソロワンマンライブ「LONG LIVE LOUD」を開催する。チケットは3月30日(月)20:00より発売開始。一般チケット9,000円(税抜)、GOLDチケット12,000円(税抜)。OPEN 17:30 / START 18:30。
注目すべきは、この公演の決定プロセスである。
3月25日、BAD HOPの公式Xアカウント(@badhop_official)が告知を投稿した。「なかなかワンマンライブをしない本人の代わりに内緒で日本武道館を予約しました。MV撮影中にネタバラシしてみました」──投稿にはサプライズで知らされるTiji Jojoの映像が添えられている。音楽ナタリーも同日付で「周囲の仲間が内緒で企画した」と報じた。
つまり、日本のアーティストにとって最大級の舞台であるソロ武道館が、本人不在のまま周囲の判断で決められた。告知の投稿元がTiji Jojo個人のアカウントではなく、2024年2月に解散済みのBAD HOP公式アカウントだったことも見逃せない。グループはもう存在しない。しかしこのアカウントが動いたということは、メンバー間の結束──そしてTiji Jojoの音楽に対する「この男は武道館でやるべきだ」という確信──が、今もなお機能していることを意味する。
これは単なるサプライズ企画として消費される話ではない。ワンマンをやらないアーティストのために、周囲が最高峰の舞台を用意せずにはいられない。その構造自体が、Tiji Jojoというラッパーの求心力を証明している。
BAD HOPからソロへ──川崎サウスサイドの10年
Tiji Jojoは、神奈川県川崎市川崎区池上町出身。T-PablowとYZERRの双子を中心に結成された8人組ヒップホップクルー・BAD HOPのメンバーとして、2014年から約10年にわたり活動した。
グループ内におけるTiji Jojoの立ち位置は独特だった。USトレンドを意識したメロディアスなフロウと、一度聴いたら忘れられない高音の声質。「Kawasaki Drift」や「Suicide」といったグループの代表曲でも、Tiji Jojoのバースが入る瞬間に楽曲の色が変わる。YZERRのカリスマ性、T-Pablowのアグレッシブさとは異なる、浮遊感のある歌心が彼の武器だった。2015年に公開されたソロ曲「White T-Shirt」はYouTubeで230万再生を突破しており(TuneCore Japan)、グループ内でも早くからソロでの表現力を示していた存在である。
2018年11月にはBAD HOPとして日本武道館ワンマン「BreatH of South」を開催し、約8,000人を動員(音楽ナタリー)。先行チケットは3時間で完売した。そして2024年2月19日、東京ドームでのラストライブ「BAD HOP THE FINAL at TOKYO DOME」をもってグループは解散。チケットは完全ソールドアウトとなり、日本のヒップホップアクトとして初の東京ドーム単独公演を成功させた。その後、YZERRはブロックチェーン事業へ、Benjazzyはソロアルバム『UNTITLED』へと舵を切る中、Tiji Jojoが選んだのは「ラッパーとしての道」をそのまま歩き続けることだった。YZERRが主催したFORCE FESTIVAL 2025でも「完全に覚醒してた」と評されるパフォーマンスを見せており、解散後もシーンの最前線に立ち続けている。
ソロキャリアと聴いておくべき楽曲
解散から約1年後の2025年2月にソロ初シングル「Malibu Dream」をリリースし、同年3月7日に1stソロアルバム『FNF』を発表した。全16曲。タイトルは『金曜ロードショー』のテーマソング「Friday Night Fantasy」から取られており、Apple Musicのインタビューで本人は「ファンタジーのような現実の世界をテーマにしています」と語っている。JJJ、Deech、MaRIらが客演参加し、プロデューサー陣にはアトランタ在住のBig PapitoやJIGGなどUS人脈が並ぶ。
武道館を前に聴いておくべきは「NRE.」と「SOSOGU(feat. JJJ)」の2曲だ。「NRE.」は本人が「アルバムで一番大事にしてるテーマ」と語るヒップホップの成り上がり精神を正面から歌った楽曲で、後述する「EXP」でもセットリスト終盤に配置されて会場を最高潮に持っていった。「SOSOGU」は川崎の先輩JJJとの共演で、仲間・家族・忠誠に人生を「注ぐ」という主題がTiji Jojoのプライベートな側面を映し出す。
BAD HOP時代の楽曲では、Spotify再生数約4,600万回の「High Land(feat. Tiji Jojo, Vingo & YZERR)」がメロディセンスの真骨頂。東京ドームのセットリストでも終盤に配置された。「Last Party Never End」は約3,200万再生、「Suicide(Remix)」は約2,300万再生である。ソロ移行後もSEEDAの「SLICK BACK」やDJ CHARI & DJ TATSUKIの「Private Night」など主要楽曲への客演が続いており、Spotifyの月間リスナーは約66万人(2026年3月26日時点で662,322人)。BAD HOP解散後もファンベースを維持・拡大していることがデータから読み取れる。HIPHOPCs Intelligence Series Vol.1で定義した「ミドル層」の中でも上位に位置する水準だ。
「EXP」が証明したもの──武道館への布石
武道館決定の背景を読み解くうえで、2025年6月14日に東京・Zepp DiverCityで開催されたバンドセットイベント「EXP」の存在は無視できない。
Tiji Jojo、Jin Dogg、Kohjiyaが全編バンドセットでライブを行うこのイベントは、客席からのライブ撮影を全面禁止し「一夜限りの体験」を提供するというコンセプトで初開催された。Hypebeast JPのライブレポートによれば、悪天候にもかかわらずZepp DiverCityは満杯。Tiji Jojoはトリを務め、『FNF』の楽曲を中心にバンドの生演奏で構成したセットリストを披露した。終盤にはBAD HOP名義の「Fam*ly」で観客が大合唱に加わり、「NRE.」で熱狂がピークに達している。
そしてこのステージでTiji Jojoは、こう語った。「BAD HOPを解散しても、みんなの前に立てていることに感謝しています。山あり谷ありだけど、幸せな人生はこれ以上ないよ」(Hypebeast JP)。ワンマンを自分からはやらない。けれどステージに立てば、満員の会場を掌握する。この「EXP」での実績と、本人の自走しない性格の両方を見た周囲が「だったら、こっちで武道館を押さえる」と動いた──と考えるのは、不自然ではないだろう。
「武道館ラッシュ」のなかでの固有文脈
2025年から2026年にかけて、日本語ラップシーンでは武道館ワンマンの開催が相次いでいる。GADORO、LANA、Red Eye(少年A)、唾奇、ピラフ星人、そして徳島から武道館に到達したWatson。若手ラッパーが武道館に立つこと自体が、もはやニュースではなくなりつつある時代だ。POP YOURS 2026の構造分析でも触れたように、日本語ラップシーンは規模と多様性の両面で急速に拡大しており、武道館はその到達点のひとつとして機能し始めている。
しかしTiji Jojoの武道館には、固有の文脈が3つある。
第一に、BAD HOPとしてすでに2018年に武道館を経験している点。グループで約8,000人を動員した会場に、ソロで戻る。それは「BAD HOPのメンバー」から「Tiji Jojo個人」への完全な脱皮を意味する。
第二に、「本人不在の決定」という異例のプロセス。自分でワンマンをやらない人間のために、周囲が武道館を予約する。これは信頼と実績の両方がなければ成立しない話だ。EXPでのZepp満杯という事実を踏まえれば、その判断には根拠がある。
第三に、1stアルバム『FNF』リリースからわずか1年3ヶ月という速度感。ソロキャリアの日が浅いなかでこの規模の公演を仕掛けること自体が、BAD HOP時代に築いた基盤の厚さと、ソロとしてのポテンシャルの両方を示している。
公演概要
Tiji Jojo ONE MAN LIVE「LONG LIVE LOUD」
日程:2026年6月19日(金)
会場:日本武道館
OPEN:17:30 / START:18:30
一般チケット:9,000円(税抜)
GOLDチケット:12,000円(税抜)
チケット発売日:2026年3月30日(月)20:00〜
※チケット発売の詳細は近日発表予定
編集後記
BAD HOPの東京ドーム解散ライブでT-Pablowは「みんなの心の中で生きてたら、俺たちBAD HOPは永遠に死なない」と語った。その言葉から約2年。メンバーはそれぞれの道を歩み、Tiji Jojoは1stアルバムと武道館ワンマンという、最もオーソドックスで最も強い形で「ラッパーとしての道」を選んだ。
2025年6月、EXPのステージで彼はこう言っていた。「BAD HOPを解散しても、みんなの前に立てていることに感謝しています」。あのとき武道館が決まっていたのかどうかはわからない。しかし、あのZeppの満杯の客席を見た誰かが「次は武道館だ」と動いた──その流れは、十分にあり得る。
「LONG LIVE LOUD」。大きな声で、長く生きろ。音楽を鳴らし続けろ。ワンマンをやらない男が、武道館に立つ。しかもそれは、自分で決めたことではない。周りが決めた。その事実が、Tiji Jojoのすべてを物語っている。
文責: Ito Kotaro|J. Cole『The Fall-Off』全24曲レビュー|Number_iチャート独占問題|SKY-HI報道コラム
