【Red Bull RASEN EP34】車、KM、4人の配置/RASENが持っていた「編集性」が露わに

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Red Bull RASENの最新エピソード(EP34)が公開されたとの事。

出演は7、AOTO、Kaneee、Bonbero。ビートはKM。舞台は約500台のカスタムカーが並ぶウェアハウス。今回は3月21日に東京近郊で開催されるナイトパーティー「Red Bull Tokyo Drift 2026」記念回という位置づけだ。

同イベントは一般チケット販売のない完全招待制で、LA発のストリートブランド「Tokyo Drive Car Club」とのコラボアイテム購入者に招待券が付属する形式をとっている。

情報だけを追えば「カーカルチャー×ヒップホップのスペシャル回」で片付く。だが、この回で注目すべきはむしろ別の点にある。EP34は、RASENがもともと内包していた編集性——誰を、どこに、どんな音で置くかという設計の力——が、34回の蓄積を経て最も分かりやすい形で前景化した回である。

過去33回が積み上げたもの、EP34が更新したもの

RASENはこれまで、毎回異なるコンセプトでラッパーとビートメイカーを招集し、一発撮りのサイファーを収録してきた。EP1のLEX、SANTAWORLDVIEW、荘子it、Taeyoung Boy。EP8のSEEDA、MonyHorse、Hideyoshi。YENTOWNが初めてクルー単位で揃った回。EP30ではDJ RYOWの呼びかけで般若やAIまで参加し、世代の幅を一気に広げた。

これらの回に共通するのは、キャスティングの妙はあっても、空間とブランドまで含めた「映像全体の設計」は前面に出ていなかったという点だ。RASENの核はあくまでマイクを握る人間にあり、場所は舞台装置として機能していた。

EP34が更新したのはここだ。Red Bull Tokyo Driftという自社イベントとの連動、約500台のカスタムカーが構成する空間、KMという初回ビートメイカーの再起用、そして4人のMCのキャスティング——これらすべてが「一つのエピソードの設計」として統合されている。RASENが34回かけて培った企画力が、今回は音・人・空間・イベント文脈をここまで明瞭に一つの映像へ束ねてみせた。

この「フェスやイベントが出演者を並べるだけでなく、シーンの見え方そのものを編集する」という潮流は、HIPHOPCsが先日分析したPOP YOURS 2026の構造にも通じるものがある。POP YOURSが「次のヘッドライナーを自ら作る場」へギアを変えたように、RASENもまた企画の設計力を前面に押し出すフェーズに入りつつある。

EP1以来のKM再登板が刻む節目

KMのビート提供はEP1以来、実に33回ぶりの2度目となる。EP1はRASENの出発点であり、LEXや荘子itらが参加した企画の初期衝動そのものだった。その原点にビートを置いたKMが、34回を経た今ふたたび呼ばれている。

偶然の再コラボと見ることもできるが、EP34の性格を考えると、企画の節目を音で示す配置と読むほうが自然だ。しかもKM自身が車好きとして知られる人物であり、カーカルチャーとの接続が演出上の都合ではなくビートメイカーの資質と地続きになっている。ブランドコラボでありながら、音楽的な必然性が確保されている。ここにRASEN制作陣の設計意識が見える。

なお、KMは2026年に入ってからBERLINETTA BOY NEEDS TOO MUCH MONEY名義で自らボーカルを担当した実験的トラック「Language」をリリースしており、プロデューサーとしてだけでなく表現者としても新たなフェーズを模索している。その動向についてはHIPHOPCsのレビューで詳しく扱った。

4人の配置が描くシーンの断面図

7、AOTO、Kaneee、Bonbero。この4人を個別に紹介するだけでは、EP34の構造は見えてこない。重要なのは「なぜこの4人が同じ画角に置かれたのか」という配列の設計だ。

先陣を切る7は和歌山出身のフィメールラッパー。「儲けるだけの話ならもうええ」「どこまで行っても大事なのは友」というラインが示すように、利益や上昇志向とは別の軸——信念と地元への接続——でマイクを握る。続くAOTOは「RAPSTAR 2025」での活躍で一気に認知を広げた東京勢で、「バイオリン」がSpotify Viral 50 Japanに浮上したことでも話題を集めた(AOTOの楽曲拡散の構造についてはHIPHOPCsのディスカバリー分析でも取り上げている)。KaneeeはMV「Life is Romance」が700万回超の再生を記録するなどメロディとラップの往復で独自のポジションを確立した存在だ。二人は「足りねえ 足りねえ ガソリン」と車モチーフを自身の渇望にそのまま変換する回路を持ち込み、ロケーションに対する応答として機能している。そしてアンカーのBonberoは、EP23以来2度目のRASEN出演であり、KMと並んでこの回に「既知の文脈」を持ち込む唯一のMCだ。「常にやべえって言われてるやつよ」と自負するスキルで全体を締める重石の役割を担う。BonberoはHIPHOPCs Intelligence Series Vol.1でも日本語ラップ市場の「ミドル経済圏」を構成する重要アーティストとして位置づけている。

つまりこの4人は、地方と都市、渇望と自負、新鮮さと貫禄、そしてRASEN初出演と再登場という複数の対比軸を一本のマイクリレーの中に埋め込むために選ばれている。全員が同じ温度だったら、この構成は成立しない。

カスタムカーは「背景」ではなく世界観の構成要素

500台のカスタムカーが並ぶウェアハウスという空間設定にも、単なるビジュアルの派手さとは別の層がある。

過去のRASENでも撮影場所が空間として機能する回はあった。だがEP34では、その空間が「背景」を超えて世界観の主役級にまで前に出ている。Toyota GR86やNissan Skyline GT-Rといった車種が画面に映り込むことで、映像はMVでもドキュメンタリーでもない、空間ごと編集されたシーンの一断面として立ち上がっている。日本語ラップにおいて車は古くから成功やストリートの美学を示す記号として使われてきたが、今回それはラッパー個人の持ち物としてではなく、企画全体の世界観を構成する要素として配置されている。ラッパーが空間に入るのではなく、空間とラッパーが同じ設計図の上に統合されている。EP34は、RASENの編集性を最も視覚的に理解しやすい形で提示した回でもある。

EP34が可視化したもの

EP34で起きたことを整理する。ブランドイベントとの連動。空間演出の統合。ビートメイカー起用の文脈的必然性。キャスティングの対比構造。これらが一つの映像の中で同時に成立している。

もちろん、RASENはEP1の時点から「誰を選び、どう組み合わせるか」という編集行為で成り立つ企画だった。その意味で、EP34は突然変異ではない。だが、音の選択、人の配置、場の設計、イベント文脈がここまで明確に一つの映像へ束ねられた回は稀であり、EP34はRASENの編集性がもっとも見えやすく露出した回だった。

なお、3月21日開催の「Red Bull Tokyo Drift 2026」では、今回の出演メンバーによるライブパフォーマンスも予定されている。コラボアイテムの追加販売は3月17日19時から開始されている。

▼ 動画
Red Bull RASEN EP34

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