via @lilpoppa instagram
2026/02/19/22:20 更新
ジャクソンビル出身ラッパーLil Poppa(リル・ポッパ)が25歳で死去|CMG所属の新鋭、キャリア最盛期での突然の訃報
2026年2月18日、フロリダ州ジャクソンビル出身のラッパーLil Poppa(本名:Janarious Mykel Wheeler)が25歳で亡くなったことが明らかになった。ジョージア州フルトン郡検死局が、同日午前11時23分(米東部時間)に死亡が確認されたと発表している。死因は現在も調査中であり、本稿執筆時点では公表されていない。
家族や所属レーベルからの公式コメントも出ていない状況であるが、SNS上ではファンや同業アーティストから追悼の声が相次いでいる。
Lil Poppaとは何者だったのか
2000年3月18日にジャクソンビルで生まれたLil Poppaは、幼少期から教会で歌い始め、12歳の頃にはクローゼットの中にノートPCとマイクだけの簡易スタジオを作り、ラップの制作を開始したとされる。クローゼットである。防音室でもガレージでもない。服の間に突っ込んだマイクに向かって、少年は言葉を紡ぎ始めた。その原体験が、彼の音楽に一貫する「飾らないストーリーテリング」の土台を形成したのである。
ブレイクのきっかけとなったのは、2018年にリリースされたミックステープシリーズ『Under Investigation』であった。中でも「Purple Hearts」は、自身の周囲で起きた銃撃事件によって友人を失った経験を赤裸々に綴った楽曲であり、サバイバーズ・ギルト(生存者の罪悪感)という重いテーマを正面から描いたことで、多くのリスナーの共感を得た。この楽曲がPolo Gの目に留まり、コラボ曲「Eternal Living」の制作、そして全米ツアーへの帯同につながっている。
2021年にはスタジオアルバム『Blessed, I Guess』をリリースし、Billboard 200にチャートイン。翌2022年4月、Yo Gottiが率いるCollective Music Group(CMG)との契約を締結した。CMGにはMoneybagg YoやEST Geeといった実力派が名を連ねており、Lil Poppaのキャリアにおいて大きな転機となった契約である。
メロディックトラップの旗手としての存在感
Lil Poppaの音楽的特徴は、メロディックトラップとペインミュージックの融合にある。ストリートの現実を描きながらも、そこに内省的な歌詞とメロディアスなフロウを重ねるスタイルは、ジャクソンビル・ラップシーンの中でも独自のポジションを確立していた。
代表曲「Love & War」「Mind Over Matter」「HAPPY TEARS」などは、いずれもSpotifyやApple Musicで数百万回以上再生されている人気楽曲である。歌詞の中ではメンタルヘルス、喪失感、信頼の問題、そしてサバイバーズ・ギルトといったテーマが繰り返し登場し、同世代の若いリスナーにとって「自分の感情を代弁してくれるアーティスト」として深い支持を集めていた。
ヒップホップというジャンルがしばしばブラバド(虚勢)に支配される中で、Lil Poppaは一貫して「内省」を選んだラッパーであった。その姿勢は、近年の日本のヒップホップシーンにおいても通じるものがある。たとえば、ZORNが自身の生い立ちや家族との関係を赤裸々に描くスタイル、あるいはC.O.S.A.が内面の葛藤を淡々と綴るアプローチは、Lil Poppaの音楽哲学と共鳴する部分が少なくない。ストリートのリアルを描きつつも、そこに「痛み」と「癒し」を同居させる表現は、国境を越えて共通する感性なのである。
最新作『Almost Normal Again』と精力的な活動
2025年8月にリリースされた最新アルバム『Almost Normal Again』は全16曲を収録し、Yungeen Ace、Mozzy、EELmaticらが客演で参加した意欲作であった。同作のリードシングル「Bout My Respect」や「Myself Again」は、彼の音楽的成長を如実に示す楽曲として高い評価を受けている。
その後も精力的にシングルをリリースし続け、「Real You」「Free Smiley」「Sprite On The Nightstand」といった楽曲を立て続けに発表。訃報のわずか5日前となる2月13日には、最新シングル「Out Of Town Bae」をミュージックビデオとともに公開したばかりであった。
さらに、3月21日にはニューオーリンズのフィルモアで「バースデー・バッシュ」と銘打ったライブイベントが予定されており、サプライズゲストの出演も告知されていた。3月18日が誕生日のLil Poppaは、26歳を祝うはずだったのである。誕生日まであと28日。キャリアがまさに上昇軌道に入ったタイミングでの訃報であった。
ちなみに、最新アルバムのタイトル『Almost Normal Again』——「もう少しで、また普通に戻れる」。この言葉が、今となっては痛烈な皮肉に聞こえてしまうのは筆者だけではないだろう。
ジャクソンビル・ラップシーンにとっての損失
ジャクソンビルは近年、全米のヒップホップ地図において急速に存在感を増してきた都市である。ペインミュージックとドリルの要素を融合させた独自のサウンドは、実体験に根ざしたリアリティで全米のリスナーを惹きつけてきた。Lil Poppaはそのムーブメントの中核を担う存在であり、「ストリートの信頼性と感情的な脆さは両立できる」ということを音楽で証明したアーティストであった。
同じジャクソンビル出身のTrap Beckhamは、Lil Poppaを「デュヴァルのレジェンド」と称し、「この街はもう同じではない」と追悼。ラッパーのBoosieもX(旧Twitter)で「TIP(Thug In Peace)、Lil Poppa…デュヴァルのレジェンド」とメッセージを送っている。Dej Loaf、Mozzy、Nardo Wickといったアーティストもそれぞれ追悼のコメントを発表した。
キャリア初期からLil Poppaに携わってきたGreat Day RecordsのCEO、Caroline Diazは「私の弟が逝ってしまった。Interscopeで最初に担当したアーティストの一人だった。4つのプロジェクトでA&Rを務めた。今はただ悲しい」とXに投稿している。「4つのプロジェクト」——それは、クローゼットのスタジオから始まった少年の物語を、業界のプロが本気で信じた証でもある。
日本のリスナーにとってのLil Poppa
日本におけるLil Poppaの知名度は、メインストリームでは決して高くなかったかもしれない。しかし、Apple MusicやSpotifyのプレイリストを通じて彼の音楽に触れ、その感情の深さに共鳴した日本のリスナーは確実に存在する。
特に近年、日本のヒップホップリスナーの中でも「ペインミュージック」への関心は高まっている。BAD HOPの解散、ZORNの「Letter」シリーズ、Awich「Queendom」に見られるような、痛みと向き合う音楽への共感は、Lil Poppaの世界観と地続きのものである。
25歳という若さでの逝去は、ヒップホップ界における若手アーティストの命の脆さを改めて突きつける出来事である。近年だけでも、Pop Smoke(20歳)、King Von(26歳)、PnB Rock(30歳)、そして今回のLil Poppaと、才能ある若手ラッパーの早すぎる死が続いている。奇しくも25歳——2Pacがこの世を去った年齢と同じである。2Pacもまた、痛みと希望を同居させる稀有なストーリーテラーであった。
Lil Poppaの音楽は、痛みを痛みのまま終わらせず、そこに希望と癒しの光を見出そうとするものであった。クローゼットの中で始まった物語は、全米のステージへと広がり、そしてあまりにも早く幕を閉じた。だが、SpotifyやYouTubeに刻まれた彼の声は消えない。「Love & War」のメロディは今夜も、ジャクソンビルのどこかで、東京のどこかで、誰かのイヤホンから流れ続けているはずである。
R.I.P. Lil Poppa(2000年3月18日 – 2026年2月18日)
Source: TMZ,Billboard
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