年始から断続的にDeath Row Records(デス・ロウ・レコーズ)やSuge Knight(シュグ・ナイト)の記事を書いているので、HiphopCs読者もどんどん知識が蓄積され、おたくレベルがアップしているのではないだろうか。懲りずに関連記事を、また1つお届けする。どうやらシュグは、2015年にコンプトンのハンバーガースタンド前で車に轢かれ、死亡したTerry Carter(テリー・カーター)の遺族と、150万ドルの和解に達したそうだ。
150万ドルの和解金
この和解は、再審となるはずだった陪審員選任開始の数日前、4月29日(火)の法廷審問で成立した。当初の民事裁判は陪審員が7対5で、シュグにテリー・カーター氏の死の責任を認める評決を下し、2022年に無効判決となった。和解条件に基づき、同氏の未亡人Lillian Carter(リリアン・カーター)氏と、夫妻の二人の娘、Nekaya(ネカヤ)さんとCrystal(クリスタル)さんは、それぞれ50万ドルを受け取る。
不満足だが、裁判による精神的負担からの解放を選択
裁判所が和解を承認する前に、シュグは弁護士のDavid Kenner(デイビッド・ケナー)抜きで裁判を進める可能性について問い合わせた。ケナー氏は最近、訴訟からの撤退を申し立てていたものの、ロサンゼルス郡上級裁判所のJudge Thomas Long(トーマス・ロング判事)は、ケナー氏の関与の有無にかかわらず、木曜日に陪審員選任手続きが開始されることを確認し「これ以上の延期はない。この訴訟は期限切れだ」と述べていた。リリアン・カーター氏は、金銭的な結果には不満を表明したものの和解によって家族は再び長期にわたる裁判による精神的負担から解放されたと述べた。「結果には全く満足していないけれど、彼にまた道化芝居を披露して、ビッチのように振る舞う機会を与えたくないのよ」彼女は続ける。「誰かが彼を刑務所で刺すかもしれない」
シュグのひき逃げ事件のおさらい
シュグ・ナイトは2015年1月29日、N.W.A.の伝記映画『Straight Outta Compton(ストレイト・アウタ・コンプトン)』のコンサルタントであったCle “Bone” Sloan(クレ・“ボーン”・スローン)とコンプトンのハンバーガースタンド外で口論となり、ピックアップトラックでスローンとビジネスマンのTerry Carter(テリー・カーター)を轢き、現場から逃走した。これにより、スローンは負傷し、カーターは死亡した。シュグは2018年9月21日、殺人、殺人未遂、ひき逃げの罪で起訴され、28年の刑期を言い渡される。カーターの遺族はその後「不法な死」を理由に提訴し、2022年に弁護士は8100万ドルの賠償金支払いを主張した。
「死は事故で故意ではない」というシュグの主張
一方、シュグ・ナイトは「死は事故だった」と主張している。「テリーは俺の友人だった。決して故意ではなかったんだ。あいつを傷つけるためにやったわけでもない」と和解後、彼はインタビューで語った。「和解した理由の一つは、テリーを尊敬していたからだ。つまり、奴の家族を尊敬しているってことだ。家族にこれ以上の苦しみを与えたくなかったんだよ」彼は続ける「俺が何か悪いことをしたわけじゃねぇ。決してそんなことはしねぇ。だが、家族が経験しなければならなかったこの出来事に対して、俺は謝罪する義務がある」
雑感
今年の2月、The Art of Dialogueとのインタビューで獄中から色々ぶっちゃけ話や妄想話のネタを振りまいていたシュグさん。いやいやいやいや。車や人が多いハンバーガースタンドなら、ことさら注意して運転するものだし、ターゲットが違ったにせよ、故意でなければそもそもピックアップトラックで人を轢くような運転はしないはず、という突っ込みどころ満載の今回の言い訳。そして「悪いことはしていない」という開き直り発言。一方、精神的な苦痛よりも和解という方法を選んだカーター氏の遺族。だが夫人の、自身の願望を反映したかのような「誰かが彼を刑務所で刺すかもしれない」という言葉が、不気味に印象付けていた。