1月に未発表の曲がリークし、話題となっていたEminem（エミネム）。本人も怒り心頭だった上、Suge Knight（シュグ・ナイト）の息子からはこの曲について父親を責めた件で非難されたりと、被害に遭ったのみならず大迷惑な事態となっている本件。どうやら決着がつきそうだ。彼の側近の元スタッフが逮捕され、エミネムの未発表曲を盗んで利益を得た罪で起訴された。
デトロイトのABC系列局によると、46歳のJoseph Strange（ジョセフ・ストレンジ）はエミネムの個人アーカイブから未発表曲を漏洩して販売したとして、著作権侵害と州間盗品輸送の罪で連邦法違反の罪で起訴された。Ferndale （ファーンデール）にあるエミネムのスタジオで14年間働いていたストレンジは隠しハードドライブから音楽を盗み、複数の人に販売したとされる人物として特定された。読者もご存知の通り、この漏洩に関する憶測は1月に初めて浮上し、エミネム陣営は公に反応した。ラッパーの広報担当Dennis Denneh（デニス・デネー）は、ビルボードへの声明でこの状況について次のように述べていた「これらの流出した曲は決して一般向けに作られたスタジオ作品ではなく、何年も経った今では時代遅れで関連性のないデモ、実験、アイデアです。アーティストの意志に反し、許可なくリリースされた一連の未完成作品の最新版です」
裁判所の文書によると、FBIは1月にエミネムのスタジオチームから未発表曲がネット上で流通しているのを発見したという情報提供を受け、捜査を開始した。2007年から2021年までデトロイトのMCと仕事をしていたストレンジは、エミネムの曲を保存したハードドライブに直接アクセスできるわずか4人のうちの1人だったそうだ。検察は、ストレンジが在籍中、同氏がオンタリオ州を拠点とするバイヤー（オンラインではドージャ・ラット/Doja Ratとして知られる）に5万ドルのビットコインで曲を売る取引を画策したと主張している。ドージャ・ラットによると、ストレンジは300曲以上の曲と手書きの歌詞カードを持っていると主張していたという。FBIはまた、Kali Kush（カリ・クッシュ）やATLなど、エミネムの曲の共同購入に関与していた他の数人の人物も特定した。流出した曲は、ストレンジがまだ在籍していた2019年から2020年の間に最後にアクセスされたスタジオのハードドライブのファイルにまで遡ったという。
1月28日にストレンジの自宅を家宅捜索したところ、オリジナルのエミネムの歌詞シート、未発表曲が入ったVHSテープ、エミネムや他のアーティストの曲も含まれた1万2000以上のオーディオファイルが入ったハードドライブなど、盗まれた大量の資料が発見された。ミシガン州担当のFBI特別捜査官Cheyvoryea Gibson（チェイヴォリア・ギブソン）は、アーティストの創作的財産を保護することの重要性を強調し「この捜査は、違法に利益を得ようとする個人によるアーティストの知的財産の搾取から保護するという、FBIの取り組みを強調するものである。 Mathers Music Studio（マザーズ・ミュージック・スタジオ）の協力のおかげで、オークランド郡駐在局のFBI捜査官は連邦法を迅速に執行し、ジョセフ・ストレンジが自身の行動の責任を負わされるようにすることができた」と述べた。
この事件は、アーティストが作品を無許可の漏洩やデジタル著作権侵害から守るために直面している継続的な闘いを浮き彫りにしている。法的手続きが進むにつれ、ストレンジはヒップホップ界の大物の一人の信頼を裏切ったとして連邦から重大な告訴を受けることになる。著作権侵害の罪で有罪判決を受けた場合、ストレンジは法定最高刑である懲役5年と最高25万ドルの罰金が科せられるという。州間盗品輸送の罪で有罪判決を受けた場合では、法定最高刑である懲役 10年が科せられる。現時点で告訴状は告訴にすぎず、有罪の証拠ではない。告訴状で重罪の罪に問われても裁判は開かれないものの、捜査が完了すると重罪の起訴を求めるかどうかが決定される。
14年も一緒に仕事をしていた人物に煮え湯を飲まされてしまった、レジェンドMC。彼の芸術的遺産と創造的誠実性に与えた甚大な損害への代償を、払ってもらおうでは無いか。因果応報、悪因悪果は免れないだろう。
