【HIPHOPCs独占インタビュー】大門弥生|LAで研ぎ澄まされた現在。「Circulation」に刻んだリアル

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Interviewer: Cook Oliver(HIPHOPCs)

はじめに

前回のインタビューから数ヶ月。
今回は筆者が単独で大門さんに話を聞く機会を頂いた。

改めて、大門弥生という人のキャリアの厚みを振り返っておきたい。

大阪出身。
SHINGO★西成プロデュースの「ヒールで仁王立ち」、あっこゴリラとのフェミニズム・アンセム「NO BRA!」(MVは100万再生超)、そしてアメリカ人女性のツイートをきっかけに1日で200万再生を叩き出した「KETSUFURE」。
この曲はニューヨークの伝説的ラジオ番組HOT97でも取り上げられた。

年間80本以上のライブをこなし、DJ×LIVEという独自のスタイルで日本のクラブシーンを席巻。
女性クルー”SISTERHOOD”を掲げ、各国で「SIS SIS」というイベントも開催(先月はLAで開催)。
avexでダンスインストラクター・振付師としても契約し、a-nationのステージプロデュースまで手がけてきた。

そしていま、彼女はLAにいる。

前回のインタビューはこちら

2025年には、グラミー賞ノミネート歴を持つMajor LazerのWalshy Fireと、ドミニカ共和国のJenn Morelを迎えた「BACK IT UP」をリリース。
日本語・スペイン語・英語が交差するトライリンガル楽曲で、活動の軸を完全にグローバルへ移している。

その後、出産を経て母になった。
「強め女子」「ヒールで仁王立ち」の大門弥生が、LAで何を考えているのか。
今回リリースされた新曲「Circulation」について話を伺った。

「Circulation」は直感で書けた曲

Cook Oliver よろしくお願いします。早速ですが今回の楽曲「Circulation」、リリックで意識したところとかってありますか?

大門弥生 この曲は結構すぐに書けて。いつもセッションで入って、テーマを決めて、その日に書けなかったら後は家で書く、みたいな感じにしてるんですけど、この曲はすぐでしたね。あんまり何も考えてない、その時の気持ちを書いただけで書けた。結構直感で書いた曲です。

Cook Oliver リリックの「Overthink you make me confuse」とか、今まで以上に大門さんの、人に与える感じの曲なのかなって勝手に思ってて。悩みを消化させたような曲ですか?

大門弥生 歌詞書く時に、私あんまり空想で書けなくて。起きた出来事とか、友達のこととか恋愛のこと、自分に起きたことをメインにいつも書いてるんですけど。

人生で壁にぶつかった時に、リリックで自分に向き合うことがめっちゃ多くて、それで消化することも多いんですよね。昔は「ヒールで仁王立ち」とか強い曲を書きつつも、自分の中身がまだその”強い部分”に追いついてなかった時もあって。

なんでうまくいかないんだろうなとか、色んな別れがあったりとかで、生きてく中でもっと気持ちよく生きれるのに、なんか絡まってるっていう感覚がずっと人生にあって。音楽もそうだし、恋愛もそうだけど、別れがある度にそれに向き合って、「なんでこうなってしまったんだろう」って考えていくうちに、結構心がそれに追いついてきて。強い熱意を持つ曲に、だんだん心が追いついてきて。

結局、誰かの正解に従うより、自分の心に従うのが一番。それが成功に近づくというか、まあそれしかないんだなという思想にたどり着いて。その時に書いたのがこれです。

「アンセム系の楽曲では無い」──でも、100%の自分

Cook Oliver 削ぎ落とされた感じがして。英語だからこそ余計バンッて来るのかなとも思ってて、手応えとしてはどうですか?

大門弥生 今までいろんな曲出してきて、やっぱりいっぱい人に聴いてもらえるのって強い曲が多くて。Cookさんはいろんなの聴いてくれてたから、いろんな曲があるのは知ってくれてると思うんですけど、今までメローな曲は自分の書きたいこと書いてるから出してるだけで、そんなに目立ってなかったっていうか。注目されるのはやっぱり強い曲だったから。

この曲は、周りにも「アンセムになるような感じではないよね」って言われてて。

Cook Oliver なるほど。

大門弥生 だけど自分の中では、これ自然に書けたし、作ってない自分が100%出せてるから、自分の中ではすごい自信があって。

Cook Oliver 本当にそう思ってて、英語だからちょっと歌詞が伝わってない人もいるかなとか思いつつ、でも「すごいな」って。

大門弥生 そう。だからじっくり伝わる。そんな感じします。

Cook Oliver 瞬殺でピューンってバズ、っていうよりかは、ゆっくり浸透していく楽曲なんだと思いました。「Work Hard, Love Hard」のアルバムのあの時の感じの歌い方に少し似てるのかなと。今回は全部英語ですよね。

大門弥生 そうですね。

好きなラインは「I just wanna follow my heart anyway」

Cook Oliver 今回の楽曲のバースで、特に好きなラインとかありますか?

大門弥生 サビの最後の「I just wanna follow my heart anyway」です。

Cook Oliver そこすごい好きです。

大門弥生 なんか色々あるけど、とりあえず自分の心に従うことにしてみたんだ、っていう意味で書いて。そこは好きです。

ベリーショートにした理由──「自分の心に従おう、って書いてるから」

Cook Oliver ショートにした理由ってあるんでしょうか?

大門弥生 ずっとしたくて。とりあえずずっとしたかったんすよ(笑)。ずっと変えたくて。

私がこの長い髪をずっとキープしてた理由が、音楽始めて一番最初にデビューした時に、ガールズグループに入ってて。今のK-POPっぽい感じの、歌って踊るガールズグループに入ってたんですけど、それに入る前からこの髪型してたから。

Cook Oliver なるほどなるほど。

大門弥生 事務所が「大門さんはこの髪型でキャラを定着したいから、変えないでください」っていう時期が3年ぐらいあって。で、「もう浸透したし、じゃあこれでずっといこか」って思って、ずっと変えずに来てたんですけど。

ずっと変えたくて、でも変える機会もなくて、「変えたいけどまだなんだよな」ってなってた。でも今回の曲で「自分らしくなろう、自分の心に従おうね」って書いてるから。

Cook Oliver とてもリアル(笑)

大門弥生 そう(笑)。で、自分で切りました。澪詩さんと一緒に。

Cook Oliver 自分で切ったんですか?

大門弥生 自分で切ったんすよ。

Cook Oliver え? インスタのやつですか!

▶ 大門弥生 Instagram

大門弥生 バサッと(笑)。そう。

Cook Oliver 転換点だったんですかね。

大門弥生 ちょうど去年に出産もしたし、母になって、ちょっと今までの感覚と違うように感じる1年でもあったりして。これからこのメローな楽曲ばっかり出していくわけではないけど、髪型もショートにして、ちょっと違うテイストで今回は出してみました。

Cook Oliver 次のリリースも非常に楽しみです。

実は全部その時の感情──ペルソナは「全然ない」

Cook Oliver JKKMNさんと「MOB」出してた時も結構英語多かったですよね。レゲエも好きだからやるし、ヒップホップも歌もやるし、リアーナが好きとか。そういうのって、ペルソナみたいなので作ったりするんですか?

大門弥生 ペルソナってなんですか?

Cook Oliver なんて言うんすかね。レゲエの時はレゲエを演じるとか。

大門弥生 いや、全然ないです。全部その時の感情みたいな。

Cook Oliver なるほど、さっきの作り方の話そのままなんですね。「ウタダイモン」も僕すごい見てて。

大門弥生 嬉しい。あれはめっちゃ私も趣味というか、好きでやってました。

Cook Oliver すごく大好きで。CHEHONの時も好きだったし、ジョインツさん達との掛け合いとか。LAに来て、もっと自分のことがクリアーに見えるようになりましたか?

大門弥生 嬉しいです、はい。人種とか色んなカルチャーも含めて、結構クリアーになってきた感はありますね。

LAは”ひとりで考える時間”が圧倒的に増えた

Cook Oliver 以前パフォーマンス前のインタビューで、タイラーとかを意識した面白さみたいな話をされてましたよね。大門さんってめっちゃ考えてるなと思ってて。今、パフォーマンスで意識してることって変わってないですか?

大門弥生 常にアップデートはしたいタイプなんで、良い意味で変わっていきたい人なんですけど。

特にアメリカに来てから。アメリカってめっちゃ広いから。日本で音楽やってた時って、もうちょっとコミュニティが強かったんですよ。週何回かクラブに行って仲間に出会う機会があったりとか、東京にいたらポップアップに顔出したりとか、色んな場所に出る機会が多くて、結構コミュニティで動いてた。

アメリカに来てからは、特にLAって1つ1つがめっちゃ離れてて。スタジオとか家とか。

Cook Oliver なるほど。

大門弥生 “横の繋がりで毎日会います”みたいな機会があんまり無くて。多分ニューヨークは東京に近いからその感じがあると思うんですけど、LAは結構みんなそれぞれのクリエイティブをそれぞれのスタジオで、って感じの、だだっぴろい、ピースな土地だから(笑)。

1人で考える時間が増えて、東京にいた時より自分の音楽のことについても1人で考える時間が増えて、仲間の意見も良い意味で聞かずにいけるようになったというか。妊娠の時期も挟んだら、結構1人で考えることがめっちゃ増えたんで。

Cook Oliver 「みんなウルサイ」っていう曲あるじゃないですか。言ってくれる人がいるのかなと勝手に思ってて(笑)。

大門弥生 いましたね(笑)。あの曲に関してはもう、言ってくれる人に「あなたに書いたよ」って言って届けた。

Cook Oliver 正直(笑)

大門弥生 日本にいたらそうやっていっぱい言ってくれる人が多かったから。良くも悪くもですけどね。「絶対こっちにいた方が良いよ」とか「絶対こうした方が良いよ」って言ってくれる人はめっちゃ多かった。

今はみんなと距離も離れてるからこそ、自然に1人でクリエイティブできる時間がめちゃくちゃ増えてて。気持ちのアップデートは、してるかもしれないです。

今回の楽曲について

Cook Oliver この楽曲聴くとすごい内省的というか、ありのままというか。

大門弥生 内省的かもしれないですね(笑)。

Cook Oliver ですよね。「Perfect Love」みたいなレゲエの感じもたまに聴きたくなります。あと大門さん、お父さんをすごい大事にしてるじゃないですか。かっこいいなって。

大門弥生 ありがとうございます。嬉しい。そこまで聴いてくれてる人、なかなかいないなって。

OC Japan Fair──「tokyo gal party」で日本を背負う

Cook Oliver 来月OC Japan Fairでのパフォーマンスがあるとのことで、意識してることとかありますか?

大門弥生 今度ファッションステージでライブなんですけど、Freak Cityっていうスタイリングチームと一緒にパフォーマンスするんですよ。

Freak Cityはアメリカですごい頑張ってて、Nicki Minajとか、今はSAILORRっていうR&Bのアーティストのスタイリングとかもされてて。彼らが結構トゲトゲな、カラフルな、東京のスタイルにも合うような感じなんで。

※ Freak City L.A.(@freakcityla
LAを拠点にカスタム衣装・スタイリング・クリエイティブディレクションを手がけるファッションブランド。Billie Eilishとのコラボレーションで注目を集め、Nicki Minaj、Doechii、Kim Kardashian、Paris Hilton、Rico Nastyらが着用。ネオンカラーとパンクの精神を軸にした”はみ出し者のための服”を掲げ、2024年にはSS’24コレクション「THE NEW LA」をランウェイで発表している。

大門弥生 今回は「tokyo gyal party」っていう題名にして!

Cook Oliver わ、良いですね!

大門弥生 東京とLAのカルチャーを融合して、Japan Fairだし、日本を背負って。日本スタイルのシスターフッドな、私らしい感じで攻めようと思ってます。

Cook Oliver ありがとうございました。現地でSei記者がレポートしに行ってくれるとのことで、とても楽しみにしています!

大門弥生 ありがとうございました。

編集後記

前回、LAのコリアタウンのタイ料理屋でSei記者が初めて大門さんに会った時、「スターになるために生まれてきた人っているんだなぁ」と書いていました。笑顔の度に覗くグリルズ、好きな話題になるとキラリと光る瞳。あの時の大門弥生さんは、まさに「強め女子」そのものでした。

今回、筆者が感じたのは少し違うものでした。

「ヒールで仁王立ち」で日本のクラブシーンを席巻し、「KETSUFURE」でHOT97に名前を刻み、Major LazerのWalshy Fireとトライリンガル楽曲を作り、年間80本のステージに立ち続けてきた人が、「この曲はアンセムにはならないよね」と言われた楽曲に一番の自信を持っている。その静かな確信が、伝わってきました。

前回のインタビューで大門さんは、「この仕事以外したことがない」と話してくれました。13歳で歌とダンスを始め、16歳でステージに立ち、10代でメジャーデビューし、ソロになってからはフェミニズムを掲げて走り続けてきた。その人が、LAという広大な土地で初めて「1人で考える時間」を手に入れた。出産を経て、母になった。そして書いた曲が「I just wanna follow my heart anyway」。とりあえず自分の心に従ってみることにした、という一行だったということに、深く感動しています。

ベリーショートに自分で切ったエピソードも象徴的で。3年間事務所に「変えないでください」と言われ続けた髪を、「自分の心に従おう」と書いた曲のリリースに合わせて、バサッと切った。

リリックと行動が一致している。それを「ペルソナ」(仮面)ではなく「全部その時の感情」だと言い切れるのが、大門弥生という人の芯の強さなのだと思います。

来月のOC Japan Fairでは、Freak City L.A.とタッグを組んだ「tokyo gal party」のパフォーマンスが控えています。東京とLAのカルチャーを融合し、「日本を背負って、シスターフッドな私らしい感じで攻める」と語ってくれた大門さんの姿を、現地ではSei記者がレポートしてくれる予定です。そちらもぜひ楽しみにしていてください。

鎧を纏った強い大門弥生もかっこいい。
でも、鎧を脱いだ大門弥生は、もっとかっこいいなと思いました。

そして、大門さんの動き方や楽曲はこれからもいろんな人に勇気を与えるだろうし、自分自身、これからの長い人生を生きていく上で、良い時も悪い時も寄り添ってくれる音楽を作ってくれる大門さんに感謝したいと思いました。

インタビューにお時間をいただき、本当にありがとうございました。

── Cook Oliver(HIPHOPCs編集部)


Interview by Cook Oliver(HIPHOPCs)

Yayoi Daimon(大門弥生)

大阪のアンダーグラウンド・ダンスシーンを出発点に、SHINGO★西成プロデュースの『ヒールで仁王立ち』、そしてIce SpiceやSexyy Redと同じステージに立つ4SHOOTERS ONLYへの参加。2024年からロサンゼルスに拠点を移し、シンガーソングライター/ラッパーとして日本語と英語の境界を越え続けている。

Yayoi Daimon

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