via @50cent instagram
2026年3月15日、Fivio Foreign(フィヴィオ・フォーリン)がXで連続投稿を行いました。以前、リル・マブともユニークなコラボしていて、ドリルをかなり想起させるタイプのラッパーです。
面白かったので、見てみてください。↑
そして今回名前が挙がったのは50 Cent、Rooga、Boosie Badazz、Lil Baby、Young Thug。ただし、一連の投稿の核はひとつで、50 Cent(フィフティ・セント)への苦言です。
「50はold YN’s(NYの年長ラッパーたち)に向かってばかりで、T.I.のilliterateなcountry assが迫ってきてるのに話題をすり替えてる。NYが団結しなかったのも腹が立つ」
HotNewHipHopはこの一連をFivioによる「怒りの連投」として報じています。乱射に見えますが、並べ直すとFivioが批判しているのはひとつの原則です。ビーフには作法がある──そしてその作法が、50 Centの振る舞いとNYの結束の両面で崩れている。
50 Cent vs T.I.のビーフはどこまで来ているのか?
Fivioの発言を読むには、50 CentとT.I.(ティー・アイ)のビーフを押さえる必要があるはず。
2026年2月初旬、T.I.がShannon Sharpeの番組「Nightcap」で50にVerzuzバトルを挑みました。50は断り、代わりにT.I.の「密告者」疑惑を蒸し返す形で反撃。T.I.のCrimestoppers出演映像を投稿し、「お前の書類は持ってるぞ」と書き添えています。
T.I.は複数のディス曲で応戦。息子のKing HarrisとDomani Harrisもそれぞれディス曲を発表し、3月6日にはKingが「Droptop」のMVまで公開しました。本人だけでなく家族まで応戦している以上、このビーフが「T.I.個人の口喧嘩」では済んでいないのは確かです。
一方、50の返答は3月6日公開の『Power: Origins』テーマ曲(Leon Thomasとの共作)にT.I.側を示唆するラインを入れた程度。正面からのディス曲は出していません。50はT.I.に「返していない」わけではない。ただ、T.I.サイドの物量と比べると温度差は明らかです。
しかも同時期に、50はLet’s Rap About Itポッドキャスト勢(Maino、Jim Jones、Fabolous、Dave East)やPapoose、Dame Dashなど、NY内の複数のラッパーとも揉めています。Fivioの「old YN’sに向かってばかり」は、この状況を指しています。
XXLやRap-Upによれば、1月の時点でもFivioはYoung Thugの「ストリートとの距離を取る」姿勢に反発し、「ストリートを軽く扱うな」という軸で21 Savage側と衝突していました。今回の連投はその延長です。
Fivioの苦言は2つのルール違反を指摘している
Fivioの50 Centへの批判を分解すると、論点は2つです。
1つ目。ビーフの焦点がずれている。T.I.が正面からディスを連発しているのに、50はそこを返さず、NY内の別のラッパーたちに向かっている。「ビーフの相手を間違えている」という指摘です。
2つ目。NYの結束が機能しなかった。50がNYの仲間を攻撃しているとき、NY側がまとまって対応しなかった。「NYが団結しなかったのも腹が立つ」は、50だけでなくNY勢全体に向けた不満です。
共通するのは「ビーフの作法」という原則。誰と揉めているなら、そこに集中しろ。地元がやられたら、まとまれ。Fivioの発言は感情論ではなく原則論です。
Rooga、Boosie、Lil Baby、Young Thugにもすべて同じ問い
連投の残り4名への言及は、すべて同じ問いの変奏です。「ストリートの筋を通しているか」。
Roogaには、前夜のボクシング試合後にG Herboをコールアウトした件で「man to manで俺に応じなかった時点で永遠にpussy」。Boosie Badazzには、「protective custodyに入ったことがないラッパー」のリストから自分を外したことへの不満。Lil BabyとYoung Thugには、「BabyがThugと車で一緒にいるのはweird」──Young Thugの保釈後の「ストリートとの距離」をめぐる議論が背景にあります。
いずれも50 Centへの苦言と同じ軸上にある発言です。
1月の21 Savage衝突が伏線だった説
実は今回の連投は突発ではないようで。
XXLやRap-Upによれば、1月の時点でもFivioはYoung Thugの「ストリートとの距離を取る」姿勢に反発し、「ストリートを軽く扱うな」という軸で21 Savage側と衝突していました。今回の連投はその延長です。
Fivioが問うているのは「ビーフの作法はまだ機能しているか?」
事実を並べると、Fivioの連投が批判しているものがはっきりします。
50 Centには「ビーフの相手を間違えるな」。と言いますし、Roogaには「コールアウトに応じろ」。
Boosieには「ストリートの実績を正しく認定しろ」。Lil Baby/Thugには「ストリートを降りた人間に寄り添うな」。
すべてに共通するのは、「ストリートのビーフと結束にはルールがあり、それが守られていないことが気に入らない」という不満のよう。
50 Centはどう出るか「曲で返さない」パターンの実態
50がFivioに真正面から反応する可能性は低いです。根拠は、ここ数週間の50の行動パターンそのものにありそうです。
Papooseは3月に2曲のディストラック(「Agent Provocateur」と「Many Men」フリースタイル)を公開しました。
50の返しは、AI生成のホワイトボード画像をInstagramに投稿し、ヒット曲を1曲でも作ったら返答するとキャプションを付けた程度です。曲ではなくミーム。
しかもその投稿は数時間後に削除されたとのことで。PapooseのパートナーであるボクサーのClaressa Shieldsは「曲で返さず人格攻撃に走った」と指摘しています。
Let’s Rap About It勢(Fabolous、Jim Jones、Maino、Dave East)がフリースタイルで50をディスした際も、50の返答はAI加工した『アベンジャーズ/エンドゲーム』の映像でした。
T.I.をアイアンマン、Papooseをキャプテン・アメリカ、Fabolousをソーに配し、自分をサノスに見立てた投稿。キャプションは「Everybody dies one day, THE ALGORITHM coming soon!」。曲ではなく、ドラマと新プロジェクト「The Algorithm」の宣伝を兼ねたミームです。めちゃくちゃ50セントらしいなとを思いました笑
50のパターンは一貫してディス曲には曲で返さない。ミームで煽り、ドラマやプロジェクトの宣伝に絡め、相手が怒るのを待つ。
T.I.にも、Papooseにも、Let’s Rap About It勢にも、20年超の因縁があるJa Ruleに対しても、同じ手法をやっていらっしゃいましたね。Fivioの発言がこのパターンを崩す可能性は、現時点では見えません。
定義:2026年のビーフは、曲の前にタイムラインで裁かれる?
最後に、この一件が示していることを考察してみようと思います。
かつてのビーフはスタジオで火がつき、ディス曲がリリースされ、リスナーがジャッジしました。2026年は構造が違います。T.I.の息子たちは楽曲を出しましたが、50の返しはドラマのテーマ曲とAIミーム。Papooseは2曲出しましたが、50の返しはホワイトボードの画像1枚。そしてFivioの参戦はツイートです。
2026年のビーフは、曲が作られる前にタイムラインでリスナーとかの意見で裁かれているイメージ。誰が何を言ったか。誰が応じなかったか。誰が筋を通したか。その判定はリスナーではなくフォロワーが下し、楽曲はその事後報告として届くようになったのでしょうか。
Fivio Foreignの連投は、その構造を最も鮮明に体現した事例なのかも。そして彼が投げた問いビーフの作法はまだ機能しているかに対して、ヒップホップはまだ答えが出ていないんだと思いました。
この記事について
本記事は、各メディアの公開報道、および各アーティストのX(旧Twitter)・Instagram投稿を一次情報として構成しています。Fivio Foreignの投稿原文は2026年3月15日付のX投稿に基づいており、HotNewHipHopの3月16日付記事で報道が確認されています。分析・考察部分はHIPHOPCs編集部の独自視点によるものです。
文責: Cook Oliver(HIPHOPCs)
HIPHOPCsでUSヒップホップのニュース・ビーフ動向・カルチャー分析を担当。Cz TIGER、SEDY NEZZ、Alif Wolfなど国内アーティストへの独占インタビューも手がける。
記事内容は2026年3月17日時点の情報に基づきます。最新情報は各アーティストの公式アカウントをご確認ください。
