2025年3月24日、最近の暴走で話題に尽きないカニエ・ウェストだが、再び衝撃を与えた。
公式リリースよりも数ヶ月早く、新作『BULLY』の初期バージョン「BULLY V1」をApple MusicおよびYouTube上で突如公開したのである。
彼が提示したのは、「アルバム」という枠を破壊した45分の白黒映像作品。その中では、彼の実子である9歳のセイント君が、巨大なマレットを手にプロレスラーたちを次々と血祭りに上げていくという、悪夢のようなストーリーが展開される。撮影と監督はカニエ自身が担当し、編集には伝説の映像作家ハイプ・ウィリアムスが参加。この狂気と芸術の融合は、まさにカニエの脳内そのものを映し出している。
楽曲内容にも“異常”なこだわり
「BULLY V1」に収録されている楽曲は全9曲。当初の構想では10曲入りであったが、Playboi CartiおよびTy Dolla $ignとの関係悪化により、コラボ曲「Melrose」は完全に削除された。楽曲の順番も大胆に再構築され、カニエは「この順番こそが魂の流れだ」と語る。いくら問題を起こしてもやはりカニエの音楽的才能は否定できないはずだ。
唯一の客演はメキシコのスーパースターPeso Plumaで、スペイン語を交えた「Last Breath」で共演。カニエがスペイン語をラップするという異例の展開も含め、このアルバムは従来のカニエ像を破壊しにかかっている。
AI技術と“手作業”の狂気
本人によれば、本作のビートは「すべて素手で切り刻んだ」という。ヴィンテージ・ソウルのサンプル、哀愁漂うループ、グリゼルダ的な埃まみれのブーンバップドラムが全編に散りばめられ、ここ数年で最も完成度の高いプロダクションと評価される一方で、ボーカルにはAIが大きく関与しているとカニエ自ら明かしている。
歌唱部分のおよそ半分はAIによって構築されており、これはヒップホップとテクノロジーの境界線を再定義する試みとも言えるだろう。
発売日・未来の動向は不明
当初、正式なリリースは娘ノースの誕生日である6月15日に予定されていた。しかし、カニエはここ数週間でストリーミングサービスへのボイコットを示唆しており、この計画が継続されるかは不透明だ。
また、Ty Dolla $ignとの共同プロジェクト『Vultures』三部作の最終章についても、彼のSNS上での度重なる罵倒により暗雲が立ち込めている。仲間たちさえ敵に変えるカニエ・ウェストの世界では、次に何が起こるか予測不可能だ。VIA