Text by HIPHOPCs編集部
一言で言えば、金が無い時も信念を曲げずに自分を貫くというDaBabyの姿勢を感じさせる楽曲だ。2025年12月19日にリリースされた「Paper Low」は、アルバム『BE MORE GRATEFUL』に収録されたトラック7。逆境と自立をテーマに、南部ラップらしい自信に満ちたフロウが印象的な新曲として注目される。
リリックとテーマの分析
DaBabyは本作で「I ain’t got no fee to sell my soul」(魂を売る報酬はいらない)と明確に述べ、業界の圧力に屈しない決意を示している。このフレーズが象徴するのは、商業的成功と引き換えに自己を犠牲にする道を拒絶する態度のように読める。Sean Da FirztとKayoTheWizardによるプロダクションは、ヘヴィなキックとタイトなハイハットで空間を締め上げ、808ベースが低域を支配する構造だ。上ネタはミニマルで、メロディックなシンセが微かに鳴る程度に抑えられ、ラッパーの声に焦点が集まる設計となっている。DaBabyのボーカルは声質として中低音の芯が強く、コーラスでは反復によってリズムをロックする。一方でヴァースでは緩急をつけたフロウを採用し、語頭のアクセントを強調して押し込むように言葉を並べていく。この対比が楽曲全体に緊張と弛緩のバランスをもたらしているように感じられる。
HIPHOPCs編集部としては、この曲がヒップホップにおける「自立と孤立の距離感」をどう描くかに注目した。内省的な語りと誇示的なトーンが同居する構造は、逆境を経験したラッパーが外部への不信と内面への信頼を同時に語る姿勢として読み取れる。特にヴァース2では、チケット売上の隠蔽や周囲の裏切りといった具体的な経験が語られ、その後に「My daughters knew they daddy was that nigga」(娘たちは父親が本物だと知っていた)と家族への言及が続く。このような視点の切り替えが、パブリックな戦いとプライベートな誇りを往復させ、楽曲に立体感を与えている。ビートは感情を押し上げるのではなく、むしろ淡々と刻むことで、ボーカルの重量を際立たせる役割を果たしているように思われる。同時代のサザンラップとしては、攻撃性よりも耐久性を前面に出す配置にあるのではないだろうか。
全体を通して、「Paper Low」は金銭的困窮という状況を起点に、それでも揺るがない自己像を描き出す楽曲だと言える。逆説的に、物質的な欠乏が精神的な強度を証明する構造になっており、その姿勢がコーラスの反復とともに聴き手に刻まれていく。ヒップホップにおける”リアル”とは何かという問いに対し、DaBabyは自分自身であり続けることこそが答えだと提示しているようにも聴こえる。ビートの硬質な質感とボーカルの生々しさが噛み合い、装飾を削ぎ落とした音像が、メッセージの直截性を補強する結果となっている。
FAQ
「Paper Low」はどんな曲ですか?
DaBabyが2025年12月19日にリリースした楽曲で、アルバム『BE MORE GRATEFUL』の7曲目に収録されている。金銭的困窮と自立心をテーマに、南部ラップらしいヘヴィなビートと自信に満ちたフロウが特徴だ。Sean Da FirztとKayoTheWizardがプロデュースを担当している。
どんな気分のときに聴くとよいですか?
逆境に直面しても自分を貫きたいとき、外部からの圧力に抵抗したいときに適していると感じられる。内省的でありながら誇示的でもあるトーンは、孤独な状況で自己を再確認する場面にも合うだろう。
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※本記事はSpotify公開情報およびGeniusの歌詞データに基づき、HIPHOPCs編集部の視点で独自に構成したレビューです。アーティスト本人の公式見解ではありません。
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