DJ KANJIの「MONEY UP (feat. 7 & eyden)」は、ワンフレーズの執拗な反復という一点に賭けた楽曲である。重厚なトラップでも、緻密なサンプリング・コラージュでもない。ミニマルな素材を回し続けることで、フロアの体温を上げる──プロデューサーではなく、現場のDJとしてのDJ KANJIの判断が、そのままトラックの設計思想になっている。本日4月11日のZepp Hanedaワンマン『THE SOUL』公演当日に、改めてこの曲の機能と限界を整理しておきたい。
MONEY UP (feat. 7 & eyden) / DJ KANJI──ワンフレーズで殴り続けるという選択
DJ RYO-TAのプロダクション、引き算の論理
本作のトラックを手がけたのはDJ RYO-TA。耳を引くのは音の重さよりも、素材の少なさである。短いフレーズを反復させ、ベースとドラムで体重をかける。音数を絞り込んだ結果、7とeydenの声が前に出る余地が確保され、楽曲全体がヴォーカル中心の設計になっている。録音は7のパートをRyusei、eydenのパートをA-KAYが担当し、最終的なミックスとマスタリングはRyuseiが手がけた。役割分担の明確さが、ヴォーカルの粒立ちに表れている。
引き算の論理は、フロアでの機能を最優先する判断と直結している。情報量の多いトラックはヘッドフォンでは映えるが、クラブの音響では細部が潰れる。逆に、短いフレーズの反復はスピーカーの中で輪郭を保ちやすい。DJ KANJIはライブDJとして数多くの現場でプレイしてきた人物であり、「鳴らした時に何が起こるか」を起点に楽曲を組み立てる視座を持っている。本作はその視座が素直に反映された一曲と言える。
7とeydenを並べた意図──対比ではなく往復
7のラップは輪郭が硬く、子音をはっきり立てるタイプだ。一方のeydenは音の伸び方に余裕があり、フレーズの末尾を緩める癖がある。両者を一曲に並べると、本来であれば噛み合わない可能性の方が高い。それが成立しているのは、トラックがどちらの個性も飲み込まない音数に絞り込まれているからだ。二人が交代で同じフレーズの上を通過していくことで、対比というより往復の感覚が生まれる。「お金を稼ぐ」というテーマの単純さは、この往復構造を際立たせるために選ばれた最大公約数とも読める。
欲望を直接描きながら、二人のラップから過剰なテンションが感じられないのも、本作の手触りを決定づけている要素だ。札束を積み上げるマッチョイズムではなく、それを軽く扱う余裕の方が前に出る。この温度感は、日本語ラップの2020年代後半に共有されつつある、マネーテーマの新しい処理の仕方ともゆるやかに重なる。
『THE SOUL』というアルバムの中での位置
「MONEY UP」は2026年1月30日に先行配信され、4月3日にリリースされた2ndアルバム『THE SOUL』(Ovahead Records)に収録された。アルバムにはKaneeeとMasato Hayashiを迎えた「LoveMyself」、SWEE/BANNY BUGS/HIYADAMによる「Be alone」、MIKADOとTeteが参加した「Celebrate」などが並ぶ。ラップスタア出身者から実力派まで横断する人選で、DJ KANJIがライブDJとして関係を築いてきたアーティストが集合した一枚だ。
その中で「MONEY UP」が担うのは、最も身体に直接作用する曲としての役割である。叙情やストーリーテリングではなく、フロアでの機能性に振り切った楽曲が一枚の中に必要であり、それを引き受けたのが本作だ。前作『THE VOICE』(2024年)から渋谷O-EAST→Zepp Hanedaへと会場規模を上げてきたキャリアの流れの中で、より大きな空間で鳴ることを前提にした曲が求められたとも言える。
本日Zepp Haneda、その先に見えるもの
本日4月11日(土)、Zepp Hanedaで開催される『DJ KANJI ONEMAN LIVE “THE SOUL”』(OPEN 17:00 / START 18:00)には、3House、7、BANNY BUGS、dubby bunny、Elle Teresa、ENEL、eyden、G.O.D.、HARKA、HIYADAM、IO、Jin Dogg、Kaneee、lj、LUNV LOYAL、MALIYA、Masato Hayashi、MIKADO、M.O.J.I.、SWEE、Tete、thepini、TOMEらが客演として名を連ねる。シーンを横断する規模のラインナップだ。「MONEY UP」がこのステージでどう機能するかは、トラックの思想がそのまま試される瞬間でもある。アルバム文脈の中で聴いた時よりも、生のサウンドシステムで鳴った時の方がこの曲の本質に近づくはずだ。
4月上旬には公式MVも公開され、楽曲のリーチはさらに広がっている。配信とMV、そしてライブ。三つの場所で異なる聴かれ方をする楽曲だが、HIPHOPCsとして強調しておきたいのは、本作の評価軸はあくまで「鳴らした時にフロアで何が起こるか」に置くべきだという点だ。複雑さや深さを物差しにすると、この曲は意図的に低く見える設計になっている。それは欠点ではなく、選択である。
よくある質問
「MONEY UP (feat. 7 & eyden)」のリリース日は?
2026年1月30日(金)にOvahead Recordsから先行配信され、4月3日リリースの2ndアルバム『THE SOUL』に収録された。
プロデュースと録音クレジットは?
Composer:DJ RYO-TA/Recorded:Ryusei (7), A-KAY (eyden)/Mixed & Mastered:Ryusei/Cover Art:RYKDSGN。
DJ KANJIのワンマンライブはいつ?
2026年4月11日(土)、Zepp Haneda(TOKYO)で『DJ KANJI ONEMAN LIVE “THE SOUL”』が開催。OPEN 17:00 / START 18:00。
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