LAの新世代ラップを担う無敵コンビ:Shoreline Mafiaの魅力を徹底解剖!

ホーム » アーティスト情報 » LAの新世代ラップを担う無敵コンビ:Shoreline Mafiaの魅力を徹底解剖!

via @shorelinemafia instagram

まるでヒューマンジュークボックスのように膨大なヒップホップ系楽曲を脳内にストックしており、かつ弊社で筆力ピカイチのCook Oliver記者。その彼からある日、「Seiさんが最近注目している、あるいはよく聴いているアーティストは?」とたずねられ、迷わず「Shoreline Mafia(ショアライン・マフィア)!」と即答した。

LAのヒップホップ界の流れは簡単に言うと、90年代のGファンク→2010年代のDJ Mustard系のクラブラップ→2015年のDrako the Rulerや03 Greedo、YGらの活躍を経て現在に至っている。だが約10年前に颯爽と現れ、彼らLAのレジェンドの流れを継ぎつつ、現地の若者を筆頭にSNSや全米でバズったラップグループがいた。それが、Shoreline Mafia(ショアライン・マフィア)だ。

ここ1年、彼らがカムバックしてからというもの、LAのラジオでは彼らの楽曲を毎日のように耳にする。これまでに、BigXthaPlug、Coast Contra、Lefty Gunplay、AZChikeなど、筆者の独断と偏見で注目アーティストを何組か取り上げてきたが、今回はLAシーンを牽引する彼らの魅力をお届けしようと思う。

魅力①西海岸で大人気の秘訣

まず彼らの人気の秘訣として、そのサウンドを挙げる。彼らの音楽は、ミニマルで不穏なビートとモノトーン気味のラップを特徴としており、従来の西海岸ラップとは異なる新しいスタイルを確立した。彼らの初期の作品『Musty』は彼らのサウンドの特徴が顕著に表れている。プロデュースしたのは、Ron-RonTheProducer。彼とマネジメントチームがShoreline Mafiaを知ったきっかけは、同曲がRon-Ronのビートを無断使用していたことだった。最初はFaceTimeでやり取りしながら少し揉めたそうだが、最終的には和解し、素晴らしい相性を見せるようになった。シンプルながらも独特の空気感を持つビートが印象的で、リスナーの間で強いインパクトを残したのだ。

また特筆すべきは、SNSでの普及。彼らは、Sound Cloud、Snap Chat、YouTubeらを駆使して、パーティーの様子や仲間との日常をSNSに投稿し、ストリートのリアルな雰囲気をそのまま発信していた。その「本物」で「自然」な姿がファン層を増やした。

Shoreline Mafiaのもう一つの特徴は、メンバーのバックグラウンドが非常に多様だったことも含まれている。グループにはメキシコ系、黒人、白人、さらにはシカゴ出身のメンバーもいた。こうした多様な背景は、黒人、白人、アジア系、ラテン系など、さまざまな文化が共存する都市であるLAの構成そのものを反映している。Shoreline Mafiaはまさに「今のロサンゼルス」を象徴するグループなのだ。

最後の特徴が、彼らのラップスタイルだ。現在のメンバーOhGeesyとFenixのスタイルの違いも面白い。筆者も見事にハマってしまったのだが、気だるげで声の抑揚が少ないものの、時に披露するヒスパニック系アクセントや巻き舌の発音、LA独自のスラング、ビートにバチコン適合するフローが特徴的なOhGeesy。そのOhGeesyとは全く異なるエネルギーを発するのがFenixである。声は大き目、フローのテンポも変化自在で、エモーショナルなラップを得意としている。

魅力②名前の由来

LAことロサンゼルスにはSnoopらOGが有名にしたLong Beach、San Pedro、日系企業や日本人が多いTorranceエリアをSouth Bay(サウスベイ)と呼んでおり、それら「海岸沿いの地域」を英語にしたのがShorelineである。そしてMafiaはもちろん彼らが敬愛する、Three 6 Mafiaからも拝借しているが、そもそもMafiaはヒップホップ用語では結束の強い仲間を指した言葉であり、総括すると「L.A.海沿いの仲間たち」となる。ふむ。こう日本語表記すると、愉快な仲間たちのような平和な響きである。

現在のメンバーはOhGeesyとFenix Flexinの二人のみだが、メキシコ系アメリカ人で、本名Alejandro CoranzaことOhGeesyに関しては「OG=Original Gangsta」から来ており、そこに「っぽい人」という意味の「eesy」を足した「OGっぽい人」という意味だそうだ。

また、本名Fenix RypinskiことFenix Flexinは、本名のFenix(不死鳥のPhoenixからきている)と、「見せびらかす」「自慢」「成功」を意味するFlexinを足して「成功する不死鳥」という名にしたそうだ。彼はヒスパニックや黒人等々色々な人種のミックスらしい。

魅力③元は4人組だった

これは魅力と言えるのだろうか?との疑問は置いておいて、とりあえず事実から語ると彼らは元々4人組であった。OhGeesy、Fenix Flexin、Rob Vicious、Master Katoの4人の始まりは、ラップではなくグラフィティだったらしい。創設メンバーのOhgeesyとFenixは、2012年イースト・ハリウッドで落書きをしている時に出会った。二人は同じ高校に通っていたそうだ。2017年にリリースされたブレイク作のミックステープ『ShorelineDoThatShit』はすぐに注目を集め、熱心なファンベースを築くきっかけとなった。彼らの初期の作品『Musty』は彼らのサウンドの特徴が顕著に表れている。上記の通り、プロデューサーのRon-RonTheProducerとの相性はバッチリであった。

2018年にAtlantic Recordsと契約したことにより、彼らの音楽業界での地位はさらに確かなものとなり、より大きなオーディエンスへと扉が開かれた。彼らのスタジオアルバム『Mafia Bidness』では、アーティストとしての成長が示され、Lil Yachty、Future、Wiz Khalifa等々の著名なアーティストとのコラボレーションも収録されている。

だがしかし。『Mafia Bidness』リリース後、FenixがOhGeesyと揉めて、グループを脱退してしまう。その上、2020年頃からメンバーが個人活動を始め、事実上の解散となってしまった。

魅力④2024年に電撃復活

「Shorelineの黄金コンビ」と呼ばれているOhGeesyとFenix Flexin。解散後はそれぞれソロ活動を行っていたが、時間が経つにつれて関係が改善し、さらにはファンからの強い再結成の要望もあったことから再び一緒に音楽を作るようになった。2024年には復活シングルとして『Heat Stick』や『Work』をリリースし、続いて2025年にはカムバックアルバム『Back in Bidness』を発表。タイトルはその通り「ビジネスに戻ってきた」という意味で、Shoreline Mafiaの復活を象徴していた。ちなみに元メンバーのRob Vicious、及びMaster Katoは別グループやソロで活動を続けているそうだ。

魅力⑤今後が楽しみ

その彼らだが、再結成後はアメリカ国内でのツアーやフェス出演などライブ活動も活発化している。彼らのパーティー感の強い楽曲はクラブやフェスとの相性が良い。また、YGの楽曲『Hollywood』で客演し、YG本人をも凌駕する存在感を発揮していたが、今後は西海岸の若いラッパーやトラップ系アーティストとのコラボレーションも期待されており、新しいサウンドやファン層の拡大は間違いないだろう。

ストリート文化や多文化都市ロサンゼルスの雰囲気を反映したShoreline Mafiaの音楽は、現代の西海岸ヒップホップを象徴するスタイルの一つとも言われている。こうした背景から、彼らは新世代のL.A.ラップの第一世代として、若いアーティストに影響を与える存在になりつつあり、今後もシーンの中心的グループとしての活躍が期待されているのだ。

筆者もCook Oliver記者もハマったShoreline Mafia。きっと西海岸好きなヘッズならばハマること間違いなしだろう。チェキ!

おまけ:現在のLAのラップ勢力図をまとめてみた

Shoreline Mafia → パーティー系・クラブ系の代表。ライブ向きで若い世代に影響力が大きい

Kendrick Lamar / YG → 言わずもがな、現在西海岸の伝統と実力を象徴するスター

Roddy Ricch / 03 Greedo / Blxst → メロディ重視、ポップ寄りで全国的ヒット狙い

Drakeo the Ruler / Lefty Gunplay → ストリート感・リアルなラップを体現する新世代

もちろん西海岸のOG達の存在も忘れてはいないが、レジェンドが多すぎるので割愛した。お許しあれ。

HIPHOPCsの関連記事

📎 LAシーンをもっと深く知る

【HIPHOPCs独占インタビュー】西海岸のサムライDJ Couz:2Pac、Nipseyらレジェンドから得た英知や自身の哲学を語る
LAを拠点にSnoop Dogg、DJ Quik、Nipsey Hussleらと仕事をしてきたDJ Couzが語る、西海岸ヒップホップの現場のリアル。Shoreline Mafiaが継いだ西海岸の血脈を知る上で必読です。

Kendrick Lamar 徹底解説
LA勢力図でも筆頭に挙げた、西海岸の現役最高峰。キャリアからリリックまで網羅しています。

なぜ2Pacは史上最高のラッパーと呼ばれているのか?【ベイエリア編】
Shoreline Mafiaの名前の由来でもあるSouth Bayの文化的土壌。その源流にいたのが2Pacです。

📎 記事中で言及したアーティスト

BigXthaPlug 特集
Sei記者が以前取り上げた注目アーティスト。テキサスのストリートラップの現在を解説しています。

Lefty Gunplay 特集
LA勢力図に名前を挙げたLefty Gunplayの詳細記事。Drakeo the Rulerの系譜を継ぐストリートラップの新世代です。

Coast Contra 特集
筆者が注目アーティストとして取り上げてきたCoast Contraの解説記事です。

📎 グループの解散と復活という文脈

エミネムとBAD HOPの「リアル」──ヒップホップにおける文化の盗用とは何か?
Shoreline Mafiaと同じく解散・メンバー個別活動を経験したBAD HOP。グループの結束と個の活動をめぐる葛藤は、海を越えて共通するテーマです。


この記事を書いた人

Sei|HIPHOPCs LA特派員。ロサンゼルス在住。西海岸のクラブ・フェス・ラジオを日常的にカバーしており、本記事はLAの現場で日々耳にしているShoreline Mafiaの現在地を、日本語読者向けに伝えるために執筆。これまでにBigXthaPlug、Coast Contra、Lefty Gunplay、AZChikeなどの注目アーティスト記事を担当。本記事中のLA勢力図は、筆者の現地での取材・試聴経験に基づく主観的な整理です。


References


[2] OhGeesy, Fenix Flexin 各ソロ作品(Spotify / Apple Music)
[3] 『Back in Bidness』(2025年)、『Mafia Bidness』(2020年、Atlantic Records)
[4] Ron-RonTheProducer ビート無断使用エピソード:Shoreline Mafia「Musty」MV
[5] HIPHOPCs. DJ Couz独占インタビュー:西海岸ヒップホップのリアル


※本記事は筆者(Sei)のLA現地での体験と公開情報に基づいて構成しています。LA勢力図は筆者の主観に基づく整理であり、網羅的なものではありません。なお、Drakeo the Rulerは2021年12月にロサンゼルスで刺殺されており、本記事内の勢力図における言及はその音楽的影響力と系譜を指しています。記事内容に誤りがあった場合は、編集部までご連絡ください。

コメントを残す

Latest

ARTICLES